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JP3201246U - 溶接のためにフィラーワイヤ送給装置と高強度エネルギー源との組み合せを開始及び使用するシステム - Google Patents

溶接のためにフィラーワイヤ送給装置と高強度エネルギー源との組み合せを開始及び使用するシステム Download PDF

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Abstract

【課題】溶け落ちやスパッタを引き起こすアークの発生を防止する溶接システムを提供する。【解決手段】溶接システムは、ワークピース115に高強度エネルギー110を提供し、溶接継手に溶接溜まりを形成する高強度エネルギー源130と、溶接溜まり内で溶融する温度にフィラーワイヤ140を加熱する加熱電源170と、溶接作業の間にフィラーワイヤと溶接溜まりの接触を維持するようにフィラーワイヤを前進させるワイヤ送給機構150と、を含む。加熱電源170は、電流コントローラ195を介してフィラーワイヤの加熱信号からのフィードバックを観察し、フィードバックが上限の閾値に達した場合にアークが発生しないようにフィラーワイヤの加熱を止める。【選択図】図1

Description

本願は、米国特許出願第12/352667号の一部継続出願であり且つ該特許出願の優先権を主張する米国特許出願第13/212025号の一部継続出願であり、該特許出願の優先権を主張する。米国特許出願第13/212025号及び第12/352667号は、参照により本願に全体的に組み込まれる。
本考案は、請求項1に記載の溶接システムに関する。特定の実施形態は、フィラーワイヤ肉盛(overlaying)施工に加えて、溶接及び接合施工に関する。より具体的には、特定の実施形態は、ろう付け、クラッディング、上盛り(building up)、充填、表面硬化肉盛、接合及び溶接の施工うちのいずれかのために、フィラーワイヤ送給装置とエネルギー源とを組み合わせたシステムを開始及び使用するシステムに関する。
従来のフィラーワイヤ溶接法(例えば、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)フィラーワイヤ法)は、従来のアーク溶接単独の場合よりも高い溶着速度及び溶接速度を提供する。トーチに先行するフィラーワイヤは別の電源によって抵抗加熱される。ワイヤはコンタクトチップを通してワークピースの方に供給され、コンタクトチップを越えて延びる。その延伸部分は、延伸部分が融点に近づくか又は融点に達するように抵抗加熱され、溶接溜まりと接触することがある。ワークピースを加熱溶融して溶接溜まりを形成するのにタングステン電極が用いられ得る。電源は、フィラーワイヤを抵抗溶融するのに必要なエネルギーの大半を提供する。ワイヤ送給装置がスリップするか又はぐらつき、ワイヤ内の電流によってワイヤの先端とワークピースとの間にアークが生じる場合が時としてある。そのようなアークの余分な熱は溶け落ちやスパッタを引き起こることがある。そのようなアーク発生のリスクは、ワイヤが最初に小さな点でワークピースと接触するプロセスの開始時においてより大きい。ワイヤ内の初期電流が高すぎると、上記の点が燃え尽きアークの発生を引き起こし得る。
本願の残りの部分に記載の本考案の実施形態と、従来のアプローチ、既存のアプローチ及び提案されているアプローチとを図面を参照しながら比較することにより、それらのアプローチのさらなる限界やデメリットが当業者に明らかになる。
米国特許第4866247号明細書 米国特許第5148001号明細書 米国特許第6051810号明細書 米国特許第7109439号明細書
本考案は、上記の限界やデメリットを解消することを目的とする。さらに、本考案はアーク発生のリスクを最小限に抑えることも目的とする。これらの課題は、請求項1に記載の溶接システムによって解決される。さらなる実施形態は従属項の主題である。本考案の実施形態は、フィラーワイヤ送給装置とエネルギー源とを組み合わせたシステムを開始及び使用するシステム及び方法を含む。本考案の第1の実施形態は、ろう付け、クラッディング、上盛、充填、表面硬化肉盛、溶接及び接合の施工のうちのいずれかのためにフィラーワイヤ送給装置とエネルギー源とを組み合わせたシステムを開始及び使用する方法に関する。当該方法は、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤとワークピースとの間に電源を通じて検知電圧を印加することと、前記少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤの遠位端を前記ワークピースの方に前進させることとを含む。当該方法は、前記少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤがワークピースと最初に接触したときにそれを検知することを含む。当該方法は、前記検知に応じて、前記少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤへの前記電源を所定の期間オフにすることも含む。当該方法は、前記所定の期間の終わりに前記電源をオンにして前記少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤに加熱電流の流れを印加することをさらに含む。当該方法は、少なくとも前記加熱電流の流れを印加している間に高強度エネルギー源(high intensity energy source)からのエネルギーを前記ワークピースに印加して前記ワークピースを加熱することも含む。前記高強度エネルギー源は、レーザー装置、プラズマアーク溶接(PAW)装置、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)装置、ガス金属アーク溶接(GTAW)装置、フラックスコアードアーク溶接(FCAW)装置及びサブマージアーク溶接(SAW)装置のうちの少なくとも1つを含み得る。
本考案のこれらの特徴及び他の特徴に加えて、本考案の例示の実施形態の詳細は、下記の説明及び図面からより完全に理解することができる。
図1は、ろう付け、クラッディング、上盛、充填及び表面硬化肉盛の施工のうちのいずれかのためのフィラーワイヤ送給装置とエネルギー源とを組み合わせたシステムの例示の実施形態の概略的な機能ブロック図を示す。 図2は、図1のシステムにより用いられる始動方法の実施形態のフローチャートを示す。 図3は、図1のシステムにより用いられる始動後の方法の実施形態のフローチャートを示す。 図4は、図3の始動後の方法に関連する一対の電圧波形及び電流波形の第1の例示の実施形態を示す。 図5は、図3の始動後の方法に関連する一対の電圧波形及び電流波形の第2の例示の実施形態を示す。 図6は、溶接作業を行うのに用いられる本考案のさらなる例示の実施形態を示す。 図6Aは、溶接作業を行うのに用いられる本考案のさらなる例示の実施形態を示す。 図7、図7A及び図7Bは、本考案を用いた溶接の追加の例示の実施形態を示す。 図8は、継手の両側を同時に接合するさらなる例示の実施形態を示す。 図9は、本考案を用いた溶接の別の例示の実施形態を示す。 図10は、複数のレーザー及びワイヤを用いた継手の溶接における本考案の別の例示の実施形態を示す。 図11Aは、本考案の実施形態で用いられるコンタクトチップの例示の実施形態を示す。 図11Bは、本考案の実施形態で用いられるコンタクトチップの例示の実施形態を示す。 図11Cは、本考案の実施形態で用いられるコンタクトチップの例示の実施形態を示す。 図12は、本考案の実施形態に係るホットワイヤ電源システムを示す。 図13Aは、本考案の例示の実施形態により形成された電圧波形及び電流波形を示す。 図13Bは、本考案の例示の実施形態により形成された電圧波形及び電流波形を示す。 図13Cは、本考案の例示の実施形態により形成された電圧波形及び電流波形を示す。 図14は、本考案の例示の実施形態に係る別の溶接システムを示す。 図15は、本考案の実施形態により形成された溶接溜まりの例示の実施形態を示す。 図16A〜図16Fは、本考案の実施形態に係る溶接溜まり及びレーザービームの利用の例示の実施形態を示す。 図17は、本考案の別の例示の実施形態に係る溶接システムを示す。 図18は、本考案の実施形態で使用可能なランプダウン回路の例示の実施形態を示す。 図19は、本考案に係るヒューム排出ノズルの例示の実施形態を示す。 図20Aは、アーク溶接法を用いる薄肉溶接プロセスの結果を示す。 図20Bは、本考案を用いる薄肉溶接プロセスの例示の実施形態の結果を示す。
本明細書では「肉盛(overlaying)」という用語を広い意味で用いており、ろう付け、クラッディング、上盛、充填及び表面硬化を含む任意の施工を意味し得る。例えば、「ろう付け」施工では、継手のぴったりした表面の間で金属フィラーが毛管現象により分散される。それに対して、「ろう付け溶接」施工では、金属フィラーが間隙に流入するようにされる。しかしながら、本明細書で用いるように、それら双方の技法は広い意味で肉盛施工と呼ばれる。
図1は、ろう付け、クラッディング、上盛、充填、表面硬化肉盛及び接合/溶接の施工のうちのいずれかを行うための、フィラーワイヤ送給装置とエネルギー源とを組み合わせたシステム100の例示の実施形態の概略的な機能ブロック図を示す。システム100は、ワークピース115にレーザービーム110を集束させてワークピース115を加熱することが可能なレーザーサブシステムを含む。レーザーサブシステムは高強度エネルギー源である。レーザーサブシステムは任意の種類の高エネルギーレーザー源であってよく、限定されないが炭酸ガスレーザーシステム、Nd:YAGレーザーシステム、Ybディスクレーザーシステム、YBファイバーレーザーシステム、ファイバー伝送レーザーシステム又はダイレクトダイオードレーザーシステムが挙げられる。また、白色光レーザー又は石英光レーザー型のシステムであっても、それらに十分なエネルギーがあれば使用できる。上記システムの他の実施形態は、高強度エネルギー源としての役割を果たす電子ビーム、プラズマアーク溶接サブシステム、ガスタングステンアーク溶接サブシステム、ガス金属アーク溶接サブシステム、フラックスコアードアーク溶接サブシステム及びサブマージアーク溶接サブシステムのうちの少なくとも1つを含み得る。以下、本明細書ではレーザーシステム、ビーム及び電源に繰り返し言及するが、任意の高強度エネルギー源を用いてよいため係る言及は例示に過ぎないことが分かる。例えば、高強度エネルギー源は少なくとも500W/cmを提供できる。レーザーサブシステムはレーザー装置120及びレーザー電源130を含み、レーザー装置120とレーザー電源130とは互いに作動的に接続されている。レーザー電源130はレーザー装置120を動作させるためにレーザー装置120に電力を供給する。
システム100は、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ(resistive filler wire)140を提供し、レーザービーム110の近傍で該フィラーワイヤをワークピース115に接触させることが可能なホットフィラーワイヤ(hot filler wire)送給装置サブシステムも含む。当然ながら、本明細書におけるワークピース115を参照して、溶融溜まりはワークピース115の一部であると考えられるため、ワークピース115との接触への言及は溶融溜まりとの接触を含むものであることが分かる。ホットフィラーワイヤ送給装置サブシステムは、フィラーワイヤ送給装置150、コンタクトチップ160及びホットワイヤ電源170を含む。動作中、レーザービーム110に先行するフィラーワイヤ140は、コンタクトチップ160とワークピース115との間に作動的に接続されたホットワイヤ溶接電源170からの電流により抵抗加熱される。本考案の一実施形態によれば、ホットワイヤ溶接電源170はパルス直流(DC)電源であるが、交流(AC)又は他の種類の電源も同様に可能である。ワイヤ140は、コンタクトチップ160を通してフィラーワイヤ送給装置150からワークピース115の方に供給され、コンタクトチップ160を越えて延びる。ワイヤ140の延伸部分は、ワークピース上の溶接溜まりに接触する前に該延伸部分が融点に近づくか又は達するように抵抗加熱される。レーザービーム110は、ワークピース115の母材の一部を溶融して溶接溜まりを形成し、また、ワークピース115上でワイヤ140を溶融する役割を果たす。電源170は、フィラーワイヤ140を抵抗溶融するのに必要なエネルギーの大半を提供する。本考案の他の特定の実施形態によれば、送給装置サブシステムは1つ以上のワイヤを同時に提供することが可能であり得る。例えば、ワークピースに表面硬化及び/又は耐腐食性を施すのに第1のワイヤを使用し、ワークピースに構造を付加するのに第2のワイヤを使用してもよい。
システム100は、レーザービーム110(エネルギー源)と抵抗性フィラーワイヤ140とが固定関係を維持するようにレーザービーム110及び抵抗性フィラーワイヤ140をワークピース115に沿って(少なくとも相対的な意味で)同じ方向125に移動させることが可能なモーションコントロールサブシステムをさらに含む。様々な実施形態によれば、ワークピース115とレーザー/ワイヤの組み合せとの相対動作は、ワークピース115を実際に動かすことで又はレーザー装置120及びホットワイヤ送給装置サブシステムを動かすことで実現され得る。図1では、モーションコントロールサブシステムは、ロボット190に作動的に接続されたモーションコントローラ180を含む。モーションコントローラ180はロボット190の動作を制御する。ロボット190はワークピース115に作動的に接続されており(例えば機械的に固定されている)、レーザービーム110及びワイヤ140がワークピース115に沿って効果的に移動するようにワークピース115を方向125に動かす。本考案の代替的な実施形態によれば、レーザー装置120及びコンタクトチップ160は1つのヘッドに統合され得る。該ヘッドは、該ヘッドに作動的に接続されたモーションコントロールサブシステムによりワークピース115に沿って動かされ得る。
一般に、ワークピースに対して高強度エネルギー源/ホットワイヤを相対的に動かすいくつかの方法がある。例えば、ワークピースが丸い場合、高強度エネルギー源/ホットワイヤを固定し、高強度エネルギー源/ホットワイヤの下でワークピースを回転させてもよい。あるいは、ロボットアーム又はリニアトラクターを丸いワークピースと平行に動かし、ワークピースが回転されたときに、例えば高強度エネルギー源/ホットワイヤを連続的に動ごかすか又は回転毎に一度インデックス(index)させて丸いワークピースの表面を肉盛してもよい。ワークピースが平らであるか又は少なくもとも丸くない場合、ワークピースは図1に示すように高強度エネルギー源/ホットワイヤの下で動かされ得る。しかしながら、高強度エネルギー源/ホットワイヤのヘッドをワークピースに対して相対的に動かすのにロボットアーム若しくはリニアトラクター又はビーム搭載キャリッジを用いてもよい。
システム100は、検知/電流コントロール(sensing and current control)サブシステム195をさらに含む。検知/電流コントロールサブシステム195はワークピース115及びコンタクトチップ160に作動的に接続され(即ち、ホットワイヤ電源170の出力に有効に接続されている)、ワークピース115とホットワイヤ140との電位差(即ち、電圧V)並びにワークピース115及びホットワイヤ140を通る電流(I)を測定することができる。検知/電流コントロールサブシステム195はさらに、測定した電圧及び電流から抵抗値(R=V/I)及び/又は電力値(power value)(P=V×I)を算出することが可能であってもよい。一般に、ホットワイヤ140がワークピース115と接触している場合、ホットワイヤ140とワークピース115との電位差は0ボルトであるか又は極めて0ボルトに近い。その結果、検知/電流コントロールサブシステム195は抵抗性フィラーワイヤ140がワークピース115と接触している場合にそれを検知することができる。また、本明細書において後でより詳細に説明するように、検知/電流コントロールサブシステム195は、係る検知に応じて抵抗性フィラーワイヤ140を通る電流の流れを制御することがさらにできるようにホットワイヤ電源170に作動的に接続されている。本考案の他の実施形態によれば、検知/電流コントローラ195はホットワイヤ電源170の不可欠な部分であり得る。
本考案の一実施形態によれば、モーションコントローラ180はさらにレーザー電源130及び/又は検知/電流コントローラ195に作動的に接続されていてもよい。このように、モーションコントローラ180及びレーザー電源130は、ワークピース115が何時移動しているかがレーザー電源130に分かるように且つレーザー装置120がアクティブかどうかがモーションコントローラ180に分かるように互いに通信してもよい。同様に、このような形で、モーションコントローラ180及び検知/電流コントローラ195は、ワークピース115が何時移動しているかが検知/電流コントローラ195に分かるように且つホットフィラーワイヤ送給装置サブシステムがアクティブかどうかがモーションコントローラ180に分かるように互いに通信してもよい。そのような通信は、システム100の様々なサブシステム間でのアクテビティを調整するのに用いられ得る。
図2は、図1のシステム100が用いる始動方法200の実施形態のフローチャートを示す。ステップ210では、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140とワークピース115との間に電源170により検知電圧が印加される。検知電圧は、検知/電流コントローラ195の命令の下でホットワイヤ電源170により印加され得る。さらに、本考案の一実施形態によれば、印加される検知電圧はワイヤ140を大幅に加熱するのに十分なエネルギーを提供しない。ステップ220では、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤの遠位端をワークピース115の方に前進させる。この前進はワイヤ送給装置150によって行われる。ステップ230では、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140の遠位端がワークピース115と最初に接触したときにそれを検知する。例えば、検知/電流コントローラ195は、ホットワイヤ140に非常にレベルの低い電流(例えば、3〜5アンペア)を提供するようホットワイヤ電源170に命令し得る。そのような検知は、検知/電流コントローラ195がフィラーワイヤ140(例えばコンタクトチップ160を介して)とワークピース115との間の約0ボルト(例えば0.4V)の電位差を測定することにより実現され得る。フィラーワイヤ140の遠位端がワークピース115に短絡されている場合(即ち、ワークピースと接触している場合)、フィラーワイヤ140とワークピース115との間に(0ボルトを超える)有意な電圧レベルは存在しない場合がある。
ステップ240では、前記検知に応じて、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140に対して電源170を所定の期間(例えば、数ミリ秒)オフにする。検知/電流コントローラ195はオフになるよう電源170に命令し得る。ステップ250では、所定の期間の終了時に電源170をオンにして、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140に加熱電流の流れを印加する。検知/電流コントローラ195はオンになるよう電源170に命令し得る。ステップ260では、少なくとも加熱電流の流れを印加しながら、高強度エネルギー源110からのエネルギーをワークピース115に印加してワークピース115を加熱する。
オプションとして、方法200は、前記検知に応じて、ワイヤ140の前進を止めることと、所定の期間の終了時にワイヤ140の前進を再開すること(即ち再び進めること)と、加熱電流の流れを印加する前に、フィラーワイヤ140の遠位端が依然としてワークピース115に接触しているかを確認することとを含み得る。検知/電流コントローラ195は送給を停止するようワイヤ送給装置150に命令し、システム100に待つ(例えば数ミリ秒)よう命令し得る。そのような実施形態では、検知/電流コントローラ195は、ワイヤ送給装置150に開始及び停止を命令するためにワイヤ送給装置150に作動的に接続されている。検知/電流コントローラ195は、ワイヤ140を加熱するために加熱電流を印加するように、また、ワークピース115の方にワイヤ140を再度送給するようにホットワイヤ電源170に命令し得る。
始動方法が完了すると、システム100は動作の始動後モードに突入し得る。このモードでは、ろう付け施工、クラッディング施工、上盛施工、表面硬化施工又は溶接/接合作業のうちの1つを行うために、レーザービーム110及びホットワイヤ140がワークピース115に関連して動かされる。図3は、図1のシステム100が用いる始動後の方法(post start-up method)300の実施形態のフローチャートを示す。ステップ310では、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140がワークピース115の方に供給されるときに高強度エネルギー源(例えばレーザー装置120)からのエネルギー(例えばレーザービーム110)及び/又は加熱されたワークピース115(即ち、ワークピース115はレーザービーム110により加熱される)がワークピース115上にフィラーワイヤ140の遠位端を溶融するよう、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140の遠位端が高強度エネルギー源(例えばレーザー装置120)に先行するか又は一致するように、高強度エネルギー源(例えば、レーザー装置120)及び少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140をワークピース150に沿って動かす。モーションコントローラ180は、レーザービーム110及びホットワイヤ140と関連してワークピース115を動かすようロボット190に命令する。レーザー電源130は、レーザービーム110を形成するためにレーザー装置120に電源を供給して動作させる。ホットワイヤ電源170は、検知/電流コントローラ195に命令されることによりホットワイヤ140に電流を供給する。
ステップ320では、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140がワークピース115との接触を失いそうになる度にそれ検知する(即ち、予測能力の提供)。そのような検知は、検知/電流コントローラ195内の予測回路(premonition circuit)が、フィラーワイヤ140とワークピース150との間の電位差(dv/dt)、抵抗(dr/dt)、フィラーワイヤ140及びワークピース150を通る電流(dr/dt)又は電力(dp/dt)のうちの1つの変化率(rate of change)を測定することで実現され得る。この変化率が所定の値を上回ると、検知/電流コントローラ195は接触がまもなく失われると正式に予測する。そのような予測回路はアーク溶接の技術分野では公知である。
ワイヤ140の遠位端が加熱により高度に溶融すると、遠位端がワイヤ140から千切れてワークピース115上に移り始める。例えば、その時の電位差又は電圧は、遠位端が千切られてワイヤの遠位端の断面が急激に減少するため増加する。従って、そのような変化率を測定することで、システム100はいつ遠位端が千切られてワークピース115との接触が失われることになるのかを予測し得る。また、接触が完全に失われた場合、0ボルトよりも大幅に大きい電位差(即ち電圧レベル)が検知/電流コントローラ195によって測定され得る。ステップ330における措置が取られていないと、この電位差によりワイヤ140の新たな遠位端とワークピース115との間で(望ましくない)アークの形成が引き起こされ得る。当然ながら、他の実施形態では、ワイヤ140ははっきりと千切れるのではなく、ほぼ一定の断面溶融を維持しながら連続的に溶融溜まりに流入する。
ステップ330では、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140の遠位端とワークピース115との接触が失われようとしていることの検知に応じて、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140を通る加熱電流の流れをオフにする(又は少なくとも大幅に、例えば95%減らす)。接触が失われようとしていることを検知/電流コントローラ195が判断すると、コントローラ195はホットワイヤ140に供給されている電流を止める(又は少なくとも大幅に減らす)ようホットワイヤ電源170に命令する。このように、不要なアークの形成が防止され、スパッタ又は溶け落ち等の望ましくない効果の発生が防止される。
ステップ340では、ワイヤ140がワークピース115の方に前進を続けることにより少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤ140の遠位端がワークピース115と再度接触する毎に検知を行う。そのような検知は、検知/電流コントローラ195がフィラーワイヤ140(例えばコンタクトチップ160を介して)とワークピース115との間の約0ボルトの電位差を測定することで実現され得る。フィラーワイヤ140の遠位端がワークピース115に短絡されている場合(即ち、ワークピースと接触している場合)、フィラーワイヤ140とワークピース115との間に0ボルトを超える有意な電圧レベルが存在しない場合がある。本明細書で使用の「再度接触する」という表現は、ワイヤ140の遠位端が実際にワークピース115から完全に千切れるかどうかに関係なく、ワイヤ140がワークピース115の方に進み、ワイヤ140(例えばコンタクトチップ160を介して)とワークピース115との間で測定した電圧が約0ボルトである状況を意味する。ステップ350では、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤの遠位端がワークピースと再度接触したことの検知に応じて、少なくとも1つの抵抗性フィラーワイヤを通る加熱電流の流れを再び印加する。検知/電流コントローラ195は、ワイヤ140の加熱を続けるために加熱電流を再度印加するようホットワイヤ電源170に命令し得る。このプロセスは肉盛施工の間続けられ得る。
例えば、図4は、図3の始動後の方法300に関連する一対の電圧波形410及び電流波形420の第1の例示の実施形態を示す。電圧波形410は、検知/電流コントローラ195によりコンタクトチップ160とワークピース115との間で測定される。電流波形420は、ワイヤ140及びワークピース115を介して検知/電流コントローラ195により測定される。
抵抗性フィラーワイヤ140の遠位端がワークピース115との接触を失いそうになる度に電圧波形410の変化率(即ち、dv/dt)は所定の閾値を上回り、千切れが発生しそうであることを示す(波形410の点411における傾斜を参照)。あるいは、それに替えて、千切れが発生しそうであることを示すのにフィラーワイヤ140及びワークピース115を通る電流の変化率(di/dt)、電力の変化率(dp/dt)又はフィラーワイヤ140とワークピース115との間の抵抗の変化率(dr/dt)を用いてもよい。そのような変化率予測技術は当該技術分野で公知である。その時点で、検知/電流コントローラ195はワイヤ140を通る電流の流れを停止する(又は少なくとも大幅に減らす)ようホットワイヤ電源170に命令する。
ある期間430の後にフィラーワイヤ140の遠位端がワークピース115と再度しっかり接触している(例えば、点412で電圧レベルが再び約0ボルトに下がる)ことを検知/電流コントローラ195が検知すると、検知/電流コントローラ195は、抵抗性フィラーワイヤ140を通る電流の流れを所定の出力電流レベル450の方にランプアップ(ランプ425参照)させるようホットワイヤ電源170に命令する。本考案の一実施形態によれば、ランプアップは所定の設定値440から始まる。このプロセスは、エネルギー源120及びワイヤ140がワークピース115に対して相対的に移動し、ワイヤ送給装置150によりワイヤ140がワークピース115の方に前進するのに伴って繰り返される。このように、ワイヤ140の遠位端とワークピース115との接触が概ね維持され、ワイヤ140の遠位端とワークピース115との間でのアークの形成が防止される。加熱電流のランピングは、千切れ状態又はアーク状態が存在していないのにそのような状態として電圧の変化率が誤って解釈されるのを防止するのに役立つ。電流の大きな変化は、加熱回路におけるインダクタンスによって誤った電圧の測定を引き越し得る。電流を徐々に上昇させた場合、インダクタンスの効果が低減される。
図5は、図3の始動後の方法に関連する一対の電圧波形510及び電流波形520の第2の例示の実施形態を示す。電圧波形510は、コンタクトチップ160とワークピース115との間で検知/電流コントローラ195により測定される。電流波形520は、ワイヤ140及びワークピース115を通じて検知/電流コントローラ195によって測定される。
抵抗性フィラーワイヤ140の遠位端がワークピース115との接触を失いそうになる度に電圧波形510の変化率(即ち、dv/dt)は所定の閾値を上回り、千切れが発生しそうであることを示す(波形510の点511における傾斜を参照)。あるいは、それに替えて、千切れが発生しそうであることを示すのにフィラーワイヤ140及びワークピース115を通る電流の変化率(di/dt)、電力の変化率(dp/dt)又はフィラーワイヤ140とワークピース115との間の抵抗の変化率(dr/dt)を用いてもよい。そのような変化率予測技術は当該技術分野で公知である。その時点で、検知/電流コントローラ195はワイヤ140を通る電流の流れを停止する(又は少なくとも大幅に減らす)ようホットワイヤ電源170に命令する。
ある期間530の後にフィラーワイヤ140の遠位端がワークピース115と再度しっかり接触している(例えば、点512で電圧レベルが再び約0ボルトに下がる)ことを検知/電流コントローラ195が検知すると、検知/電流コントローラ195は、抵抗性フィラーワイヤ140を通る加熱電流の流れを印加するようホットワイヤ電源170に命令する。このプロセスは、エネルギー源120及びワイヤ140がワークピース115に対して相対的に移動し、ワイヤ送給装置150によりワイヤ140がワークピース115の方に前進するのに伴って繰り返される。このように、ワイヤ140の遠位端とワークピース115との接触が概ね維持され、ワイヤ140の遠位端とワークピース115との間でのアークの形成が防止される。この場合では加熱電流が徐々にランピングされないため、加熱回路におけるインダクタンスにより所定の電圧測定値が不注意又は誤りとして無視され得る。
要約すれば、ろう付け、クラッディング、上盛、充填及び表面硬化肉盛の施工のうちのいずれかのためのワイヤ送給装置とエネルギー源とを組み合わせたシステムを開始及び使用する方法及びシステムが開示される。ワークピースを加熱するために高強度エネルギーがワークピースに印加される。印加される高強度エネルギーの位置又はその直前の位置において1つ以上の抵抗性フィラーワイヤがワークピースの方に供給される。1つ以上の抵抗性フィラーワイヤが印加される高強度エネルギーの位置又はその付近においてワークピースと接触したことを検知することが実現される。1つ以上の抵抗性フィラーワイヤへの加熱電流は、1つ以上の抵抗性フィラーの遠位端がワークピースと接触しているがどうかに基づいて制御される。印加される高強度エネルギー及び1つ以上の抵抗性フィラーワイヤは、ワークピースに沿って互いに固定された関係で同じ方向に動かされる。
さらなる例示の実施形態では、本考案のシステム及び方法が溶接又は接合作業に用いられる。前で説明した実施形態では、肉盛作業における金属フィラーの使用に焦点を当てていた。しかしながら、本考案の態様は、金属フィラーを用い、溶接作業を使用してワークピースを接合する溶接及び接合用途に用いることができる。前で説明した実施形態、システム及び方法は金属フィラーを肉盛することに関するものであるが、以下でより詳細に説明する溶接作業で用いられるものと同様である。従って、以下の説明では、特に明記がない限り上記の説明が概ね当てはまることが分かる。また、下記の説明は図1〜図5への参照を含み得る。
溶接/接合作業では、一般に複数のワークピースを溶接作業で一緒に接合することが知られており、金属フィラーがワークピースの金属の少なくとも一部と合体して継手を形成する。溶接作業における製造スループットを高める要望から、より高速で且つ基準以下の品質の溶接部をもたらさない溶接作業に対する絶えない需要がある。さらに、離れた作業場(remote work sites)等の逆境環境条件下で素早く溶接することができるシステムを提供する必要がある。以下で説明するように、本考案の例示の実施形態は既存の溶接技術に勝る大きな利点を提供する。そのような利点としては限定されないが、全体的な入熱が少なくワークピースの変形が少ないこと、溶接移動速度が非常に速いこと、スパッタ率(spatter rate)が非常に低いこと、遮蔽(shielding)なしで溶接できること、スパッタがないか又は少ない状態でめっき材又は被覆材を高速に溶接できること及び複雑な材料を高速に接合できることが挙げられる。
本考案の例示の実施形態では、アーク溶接と比較した場合、被覆ワークピースを用いて非常に速い溶接速度が得ることができる。被覆ワークピースは通常大規模な準備作業を必要とし、アーク溶接法を使用する速度の遅い溶接プロセスである。例えば、下記の説明では亜鉛めっきワークピースの溶接に焦点を当てる。金属の亜鉛めっきは、係る金属の耐腐食性を高めるために用いられ、多くの産業用途においてそれは望ましいものである。しかしながら、従来の亜鉛めっきワークピースの溶接には課題がある。具体的には、溶接の間に亜鉛めっき中の亜鉛が気化し、溶接溜まりが固化するときにこの亜鉛の蒸気が溶接溜まりに閉じ込められて、ポロシティを生じさせる。このポロシティは溶接継手の強度に悪影響を与える。そのため、既存の溶接技術では、亜鉛めっきを取り除くか又はある程度の欠陥を伴って亜鉛めっきを介して遅い処理速度で溶接する第1の工程(これは非効率で遅延を生じさせる)が必要になるか又は溶接プロセスをゆっくり行うことが必要になる。プロセスを減速させることで、溶接溜まりはより長い期間溶融した状態のままとなるため、気化した亜鉛が逃げ出す。しかしながら、速度が遅いために生産速度は遅く、溶接部への全体的な入熱が高くなり得る。同様の問題を引き起こし得る他のコーティングとしては、限定されないが塗料、スタンピング潤滑剤、ガラスライニング、アルミ化コーティング、表面加熱処理、窒化又は炭化処理、クラッディング処理又は他の気化するコーティング又は材料が挙げられる。下記で説明するように、本考案の例示の実施形態はこれらの問題を解消する。
図6及び図6Aに代表的な重ね溶接継手(lap joint)を示す。この図面では、2つの被覆(例えば亜鉛めっき)ワークピースW1/W2が重ね溶接で接合される。重ね継手の表面601及び603に加え、ワークピースW1の表面605が先ずコーティングで覆われる。一般の溶接作業(例えなMIG)では、被覆面605の一部を溶融させる。これは、標準的な溶接作業の溶け込みの一般的な深さが原因である。表面605が溶融されるため、表面605のコーティングが気化するが、表面605から溶接池の表面までの距離が大きいために溶融池が固化するときにガスが閉じ込められ得る。本考案の実施形態を用いればこの問題は起こらない。
図6及び図6Aに示すように、レーザービーム110がレーザー装置120から溶接継手、具体的には表面601及び603に向けられている。レーザービーム110は、溶接表面の一部を溶融して、一般的な溶接溜まりを形成する溶融溜まり601A及び603Aを形成するエネルギー密度のものである。また、(前で説明したように抵抗加熱される)フィラーワイヤ140は、溶接ビードに必要な充填材を提供するために溶接溜まりに向けられる。ほとんどの溶接プロセスとは異なり、フィラーワイヤ140は溶接プロセスの間に溶接溜まりと接触し、溶接溜まり内に突入する。これは、本プロセスではフィラーワイヤ140を移動するのに溶接アークを用いるのでなく、単にフィラーワイヤを溶接溜まり内で溶融させるからである。
フィラーワイヤ140はその融点に又はその融点近くに予め加熱されるため、それが溶接溜まり内に存在しても溶接溜まりを大幅に冷却又は固化することはなく、溶接溜まり内で素早く消費される(consumed)。フィラーワイヤ140の一般的な動作及び制御は肉盛の実施形態との関連で前に説明したものと同じである。
レーザービーム110を正確に集束させて表面601/603に向けることができるため、溶融池601A/603Aのための溶け込みの深さを正確に制御することができる。この深さを慎重に制御することで、本考案の実施形態は表面605の不必要な溶け込み又は溶融を防止する。表面605があからさまに溶解されないため、表面605のコーティングは気化せず溶接溜まりに閉じ込められない。また、溶接継手601及び603の表面のコーティングはレーザービーム110により容易に気化され、溶接溜まりが固化する前に溶接領域からそのガスを逃がすことができる。ガス排出システムを用いて気化したコーティング材料を取り除くのに役立てることが考えられる。
溶接溜まりの溶け込みの深さを正確に制御することができるため、ポロシティを最小限に抑えるか又は解消しながら、被覆ワークピースの溶接速度を大幅に高めることができる。一部のアーク溶接システムでは、溶接のために優れた移動速度を得ることができるが、高速域ではポロシティやスパッタ等の問題が生じ得る。本考案の例示の実施形態では、(本明細書で説明するように)ポロシティ若しくはスパッタがないか又は少ない状態で非常に速い移動速度を実現でき、実際に、多くの様々な種類の溶接作業のために50インチ/分を上回る移動速度を容易に実現できる。本考案の実施形態では、80インチ/分を上回る溶接移動速度を実現できる。また、他の実施形態では、本明細書で説明するようにポロシティ又はスパッタがないか又は最小限に抑えられた状態で100〜150インチ/分の移動速度を実現できる。当然ながら、得られる速度はワークピースの特性(厚さ及び組成)及びワイヤの特性(例えば直径)の関数であるが、これらの速度は、本考案の実施形態を用いた場合に多くの様々な溶接及び接合用途で容易に得ることができる。また、これらの速度は、二酸化炭素100%のシールドガスを用いて実現されるか又は遮蔽を全く用いずに実現することができる。それに加えて、これらの移動速度は、溶接溜まりの形成及び溶接の前に表面コーティングを何ら除去することなく実現できる。当然ながら、より速い移動速度が実現できることが考えられる。さらに、溶接部への入熱が少ないため、これらの高い速度は、より薄いワークピース115においても実現できる。一般に、より薄いワークピース115では変形を避けるために入熱を小さく維持しなければならないため、溶接速度が通常遅い。本考案の実施形態は、ポロシティ又はスパッタがないか又は少ない状態で上記の速い移動速度を実現できるだけでなく、少ない混合で非常に高い溶着速度を実現することもできる。具体的には、本考案の実施形態は、シールドガスを用いず且つポロシティ又はスパッタがないか若しくは少ない状態で10lb/時の溶着速度を実現できる。一部の実施形態では、溶着速度は10〜20lb/時である。
本考案の例示の実施形態では、ポロシティ及びスパッタがないか又は少ない状態でこれらの非常に速い移動速度が実現される。溶接部のポロシティは、ポロシティ率を特定するために溶接ビードの断面及び/又は長さを観察することにより求めることができる。断面ポロシティ率は、所定の断面におけるポロシティの全面積の、その点における溶接継手の全断面積に対する割合である。長さポロシティ率は、溶接継手の所定の単位長さにおける空隙の累積した全長である。本考案の実施形態は、断面ポロシティが0〜20%の状態で上記の移動速度を得ることができる。そのため、気泡又は空隙のない溶接ビードのポロシティは0%である。他の例示の実施形態では、断面ポロシティは0〜10%であり、別の例示の実施形態では2〜5%であり得る。一部の溶接用途では、ある程度のポロシティが許容される。また、本考案の例示の実施形態では、溶接部の長さポロシティは0〜20%であり、0〜10%であり得る。さらなる例示の実施形態では、長さポロシティ率は1〜5%である。そのため、例えば、断面ポロシティが2〜5%で長さポロシティ率が1〜5%の溶接部を作ることができる。
さらに、本考案の実施形態では、スパッタがないか又は少ない状態で上記の移動速度で溶接することができる。スパッタは、溶接溜まりの溶滴が溶接領域の外に飛び散ることによって生じる。溶接スパッタが起こると、溶接部の品質が損なわれ、生産の遅延を引き起こし得る。何故なら、溶接プロセスの後でワークピースからスパッタを落さなければならないのが一般的だからである。そのため、スパッタなしで高速に溶接を行うことには大きな利点がある。本考案の実施形態は、スパッタ係数(spatter factor)が0〜0.5の状態で上記の速い移動高速で溶接を行うことができる。ここで、スパッタ係数とは、所定の移動距離Xに対するスパッタの重量(mg)/同じ距離Xに対する消費されたフィラーワイヤ140の重量(kg)である。即ち、
スパッタ係数=(スパッタ重量(mg)/消費されたフィラーワイヤの重量(kg))
距離Xは、溶接継手の代表サンプルの抽出が可能な距離であるべきである。即ち、距離Xが短すぎる場合、例えば0.5インチの場合、それは溶接部を代表しない。そのため、スパッタ係数が0の溶接継手は、距離Xに亘って消費されたフィラーワイヤに対してスパッタがなく、スパッタ係数が2.5の溶接部は消費されたフィラーワイヤ2kgに対して5mgのスパッタがあった。本考案の例示の実施形態では、スパッタ係数は0〜1である。さらなる例示の実施形態では、スパッタ係数は0〜0.5である。本考案の他の例示の実施形態では、スパッタ係数は0〜0.3である。なお、本考案の実施形態は、シールドガス又はフラックス遮蔽(flux shielding)のいずれかを含む外部の遮蔽ありで又はなしで上記のスパッタ係数の範囲を実現できる。さらに、上記のスパッタ係数範囲は、亜鉛めっきされたワークピースを含む被覆ワークピース又は非被覆ワークピースを溶接する場合に溶接作業の前に亜鉛めっきを除去する必要なく実現できる。
溶接継手用にスパッタを測定する方法が数多く存在する。1つの方法は「スパッタボート(spatter boat)」の使用を含み得る。そのような方法の場合、溶接部の代表サンプルを、溶接ビードにより生成されるスパッタの全て又は略全てを捕捉可能な十分なサイズの容器の中に設置する。容器又は容器の一部、例えば上部は、スパッタが捕捉されるように溶接プロセスと共に動かすことができる。一般に、ボートは銅製のため、スパッタは表面に付着しない。代表的な溶接部は、溶接の間に形成されるスパッタが容器の中へと落下するように容器の底の上で行われる。溶接の間、消費したフィラーワイヤの量を観察する。溶接が完了した後、容器の溶接前及び溶接後の重さに違いがあればそれを求めることができる十分な正確性を有する装置によってスパッタボートが計量される。この違いはスパッタの重さを表し、そして消費されたフィラーワイヤの量(kg)で除される。あるいは、スパッタがボートに付着しない場合は、スパッタを取り除いてそれ自体を計量することもできる。
前で説明したように、レーザー装置120を用いることで、溶接溜まりの深さを正確に制御できる。さらに、レーザー120を用いることで、溶接溜まりのサイズ及び深さの調整を容易に行うことができる。これは、レーザービーム110を容易に集束/非集束させることができるか又はそのビーム強度をとても簡単に変えることができるためである。これらの能力により、ワークピースW1及びW2上の熱分布を正確に制御することができる。この制御により、精密溶接のために非常に狭い溶接溜まりの形成が可能となるのに加えて、ワークピース上の溶接領域のサイズを最小限に抑えることができる。これは、溶接ビードにより影響を受けていないワークピースの領域を最小限に抑える上での利点も提供する。具体的には、溶接ビードに隣接するワークピースの領域が溶接作業から受ける影響が最小限になる。アーク溶接作業では通常これは当てはまらない。
本考案の例示の実施形態では、ビーム110の形状及び/又は強度を溶接プロセスの間に調整/変化させることができる。例えば、ワークピース上の特定の場所で溶け込みの深さを変更すること又は溶接ビードのサイズを変更することが必要になる場合がある。そのような実施形態では、溶接パラメータにおける必要な変更を提供するために、溶接プロセスの間にビーム110の形状、強度及び/又はサイズを調整することができる。
前で説明したように、フィラーワイヤ140はレーザービーム110と同じ溶接溜まりに影響を与える。例示の実施形態では、フィラーワイヤ140はレーザービーム110と同じ位置で溶接溜まりに影響を与える。しかしながら、他の例示の実施形態では、フィラーワイヤ140はレーザービームから離れて同じ溶接溜まりに影響を与えることができる。図6Aに示す実施形態では、フィラーワイヤ140は溶接作業の間にビーム110に後行する。しかしながら、フィラーワイヤ140を先行位置に配置できるためそれは要件ではない。本考案はこの点に関して限定されない。何故なら、フィラーワイヤ140がビーム110と同じ溶接溜まりに影響を与える限りフィラーワイヤ140はレーザービーム110に対して他の場所に位置することができるからである。
上記の実施形態は、亜鉛めっき等のコーティングを有するワークピースとの関連で説明した。しかしながら、本考案の実施形態はコーティングを有さないワークピースに対しても使用可能である。具体的には、前で説明したのと同じ溶接プロセスを被覆されていないワークピースにも用いることができる。そのような実施形態は、被覆材に関連して前で説明したのと同じ性能属性を実現できる。
また、本考案の例示の実施形態はスチールのワークピースを溶接することに限定されず、アルミニウム又は(後でさらに説明する)より複雑な金属の溶接にも用いることができる。
本考案の他の有利な側面はシールドガスに関するものである。一般的なアーク溶接作業では、大気中の酸素及び窒素又は他の有害な要素が溶接溜まり及び金属転移と相互作用するのを防止するためにシールドガス又はシールドフラックスが用いられる。そのような障害は溶接部の品質及び外観に有害となり得る。従って、略全てのアーク溶接プロセスでは、外部的に供給されるシールドガス、フラックスが形成された電極(例えばスティック電極又はフラックスコアード電極等)の消費により形成されるシールドガス又は外部的に供給される粒状フラックス(例えばサブアーク溶接)の使用により遮蔽が提供される。また、特殊な金属の溶接又は亜鉛めっきされたワークピースの溶接等の一部の溶接作業では、特殊なシールドガスの混合物を用いなければならない。そのような混合物は非常に高価であり得る。また、極端な環境で溶接を行う場合、大量のシールドガスを作業場に搬送するのは通常困難であり(例えばパイプラインで)又は風が吹いてアークからシールドガスを遠ざける傾向にある。また、近年ではヒューム排出システムの使用が増えている。これらのシステムはヒュームを除去する傾向にあるが、溶接作業の近くにそれらを配置した場合にシールドガスも引き離す傾向にある。
本考案の利点は、溶接の際にシールドガスを使わないか又はその量を最小限に抑えることができることを含む。あるいは、本考案の実施形態は、特定の溶接作業では通常用いることができないシールドガスの使用を可能にする。これを以下でさらに説明する。
アーク溶接プロセスで一般的な(非被覆の)ワークピースを溶接する場合、その形態に関係なく遮蔽が必要となる。本考案の実施形態を用いて溶接を行った場合、遮蔽が必要ないことが見出された。即ち、シールドガス、粒状フラックス及び自己シールド電極を用いる必要がない。しかしながら、アーク溶接プロセスの場合とは異なり、本考案は高品質の溶接部を生成する。即ち、遮蔽を何ら用いることなく、前で説明した溶接速度を実現できる。これは、先行技術のアーク溶接プロセスでは成し得なかったことである。
一般的なアーク溶接プロセスの間、フィラーワイヤの溶滴は溶接アークを通じてフィラーワイヤから溶接溜まりに移送される。遮蔽なしでは、溶滴の表面全体が移送の間に大気に晒され、その結果大気中の窒素及び酸素を取り込み、溶接溜まりに窒素及び酸素を運ぶ傾向にある。これは望ましくない。
本考案では、溶滴又は同様のプロセスを使用せずにフィラーワイヤを溶接部に運ぶため、フィラーワイヤはさほど大気に晒らされない。従って、多くの溶接用途では、遮蔽の使用は要求されない。そのため、本考案の実施形態ではポロシティ又はスパッタがないか又は少ない状態で速い溶接速度を実現できるだけでなく、それをシールドガスを用いることなく実現できる。
遮蔽を用いる必要がないことから、溶接の間にヒューム排出ノズルを溶接継手のかなり近くに配置することができるため、より効率的でより効果的なヒューム排出を提供できる。シールドガスを用いる場合、ヒューム排出ノズルがシールドガスの機能を妨げないような場所にヒューム排出ノズルを配置する必要がある。本考案の利点により、そのような制限は存在せず、ヒューム排出を最適化できる。例えば、本考案の例示の実施形態では、レーザー120からのレーザービームをワークピース115の表面の近くまで保護するレーザーシュラウドアセンブリ1901によってレーザービーム110が保護されている。これを図19に図示する。シュラウド1901(断面で示す)はレーザービーム110を障害から保護し、作業の間に追加の安全性を提供する。さらに、溶接ヒュームを溶接領域から遠ざけるヒューム排出システム1903にシュラウドを連結することができる。シールドガスなしで実施形態を用いることができるため、シュラウド1901を溶接部の非常に近くに配置して、溶接領域からヒュームを直接遠ざけることができる。実際に、シュラウド1901は、溶接部の上のその距離Zが0.125〜0.5インチとなるように配置することができる。当然ながら、他の距離を用いることができるが、溶接溜まりを妨げるか又はシュラウド1901の効率性を大幅に低減させないよう注意を払わなければならない。ヒューム排出システム1903は溶接業界で一般的に理解され且つ既知であるため、本明細書ではそれらの構成及び動作についての詳述は省略する。図19にはビーム110のみを保護するシュラウド1901を示しているが、ワイヤ140及びコンタクトチップ160の少なくとも一部を取り囲むようにシュラウド1901を構成することももちろん可能である。例えば、ヒューム排出を高めるためにシュラウド1901の底部開口を溶接溜まり全体を略覆うような十分な大きさのものにするか又は溶接溜まりよりも大きくすることもできる。
亜鉛めっきワークピース等の被覆ワークピースの溶接に用いられる本考案の例示の実施形態では、より安価なシールドガスが使用され得る。例えば、軟鋼を含む多くの様々な材料を溶接するためにCO100%のシールドガスを用いることができる。これは、窒素100%のシールドガスのみで溶接が可能なステンレス鋼、二相鋼又はスーパー二相鋼等のより複雑な金属を溶接する場合にも当てはまる。一般的なアーク溶接作業では、ステンレス鋼、二相鋼又はスーパー二相鋼の溶接には、かなり高価なシールドガスのより複雑な混合物が必要となる。本考案の実施形態では、これらのスチールを窒素100%のシールドガスのみで溶接することが可能になる。また、他の実施形態では、これらのスチールをシールドガスなしで溶接することができる。亜鉛めっき材のための一般的な溶接プロセスでは、アルゴン/CO混合物等の特別な混合シールドガスを用いなければならない。この種のガスは、一部に、通常のアーク溶接の間に陰極及び陽極が溶接領域に存在するため使用が必要になる。しかしながら、前で説明し、また後で詳述するように、溶接アークが存在せず、そのため溶接領域に陰極又は陽極が存在しない。従って、アーク及び溶滴転移が存在しないため、金属フィラーが大気から有害な要素を拾う機会が大幅に低減される。なお、本考案の多くの実施形態ではシールドガス等の遮蔽を使用することなく溶接を行うことができるが、溶接部の上でガス流を用いて溶接領域から蒸気又は汚染物質を除去することができる。即ち、溶接の間に、溶接領域から汚染物質を除去するために、溶接部の上で空気、窒素、CO又は他の気体を吹き出すようにすることが考えられる。
被覆材を高速に溶接できることに加えて、本考案の実施形態は、熱影響部(「HAZ」)を大幅に低減させて二相鋼を溶接するのに用いることもできる。二相鋼はフェライト微細構造及びマルテンサイト微細構造の双方を有する高強度スチールであるため、該スチールは高い強度と良好な成形性を有する。二相鋼の性質から、熱影響部の強度によって二相鋼の強度が制限される。熱影響部は溶接継手(金属フィラーを含まない)の周りの領域であり、アーク溶接プロセスによりその微細構造が不利な形で変化してしまうほどに溶接プロセスで大きく加熱される。既知のアーク溶接プロセスでは、アークプラズマのサイズ及び溶接領域への入熱が大きいため熱影響部が非常に大きい。熱影響部が非常に大きいため、熱影響部が溶接部の強度を限定する部分になる。そのため、アーク溶接プロセスでは、高強度電極の使用は必要ないため、一般に軟鋼のフィラーワイヤ140(例えばER70S−6型又はER70S−3型電極)を用いてそのような継手を溶接する。さらに、このような理由から、設計者は、自動車のフレーム、バンパー、エンジンクレードル等の高応力構造の外に戦略的に二相鋼の溶接継手を配置しなければならない。
前で説明したように、レーザー装置120の使用により、溶接溜まりの形成に際して高レベルの正確性が提供される。この正確性により、溶接ビードを取り囲む熱影響部を非常に小さく維持することができるか又はワークピースに対する熱影響部の全体的な影響を最小限に抑えることができる。実際に、一部の実施形態では、ワークピースの熱影響部を略解消できる。これは、レーザービーム110の集束を溶接溜まりが形成されるワークピースの部分に対してのみ維持することによりなされる。熱影響部のサイズを大幅に低減することにより、アーク溶接プロセスを用いる場合ほど母材の強度が損なわれない。そのため、熱影響部の存在又は場所は溶接構造の設計における制限要因にはならない。本考案の実施形態は強度がより高いフィラーワイヤの使用を可能にする。何故なら、熱影響部ではなくワークピースの組成及び強度並びにフィラーワイヤの強度が構造デザインの推進要因(driving factors)になるからである。例えば、本考案の実施形態は、ER80S−D2型電極等の降伏強度が少なくとも80ksiの電極の使用を可能にする。当然ながら、この電極は一例である。さらに、アーク溶接の場合よりも全体的な入熱が少ないため、溶融溜まりの冷却速度がより速くなる。これは、使用するフィラーワイヤの化学的構造(chemistry)をより効率的なものにし既存のワイヤ以上の性能を付与できることを意味する。
それに加えて、本考案の例示の実施形態は、遮蔽の要件を大幅に緩和してチタンを溶接するのに用いることができる。アーク溶接プロセスでチタンを溶接する場合、受け入れ可能な溶接部が形成されるように細心の注意を払わなければならない。これは、溶接プロセスの間に、チタンが酸素と反応する親和性が高いためである。チタンと酸素との反応によって二酸化チタンが形成され、二酸化チタンが溶接池内に存在すると溶接継手の強度及び/又は延性が大幅に低下し得る。このような理由から、チタンをアーク溶接する場合は、大気からアークを遮蔽するだけでなく、後行の溶融溜まりを冷却するときに大気から溶融溜まりを遮蔽するために大量の後行のシールドガスを提供する必要がある。アーク溶接から生成される熱により、溶接溜まりがかなり大きくなり長期に亘って溶融したままになるため、大量のシールドガスが必要となる。本考案の実施形態は材料が溶融している時間を大幅に低減し素早く冷却するため、余分なシールドガスの必要性が軽減される。
前で説明したように、レーザービーム110を非常に慎重に集束させて、溶接領域への全体的な入熱を大幅に低減することができるため、溶接溜まりのサイズを大幅に低減できる。溶接溜まりがより小さくなるため、溶接溜まりはより素早く冷却する。そのため、溶接部での遮蔽のみが必要で後行のシールドガスは必要ない。また、前で説明したのと同様の理由から、チタンを溶接する場合、溶接速度が向上する一方でスパッタ係数が大幅に低下する。
図7及び図7Aはオープンルート型(open root type)の溶接継手を示す。オープンルート継手は厚いプレートやパイプを溶接する場合に通常用いられ、離れた場所や困難な環境にある場所で一般的に生じる。オープンルート継手を溶接する既知の方法が数多く存在し、それらの方法としては、シールド金属アーク溶接(SMAW)、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)、ガス金属アーク溶接(GMAW)、フラックスコアードアーク溶接(FCAW)、サブマージアーク溶接(SAW)及びセルフシールドフラックスコアードアーク溶接(FCAW−S)が挙げられる。これらの溶接プロセスには、遮蔽の必要性、速度制限、スラグの形成等の様々なデメリットがある。
そのため、本考案の実施形態は、このような種類の溶接を行う際の効率性や速度を大幅に改善する。具体的には、シールドガスの使用を解消するか又は大幅に低減し、スラグの生成を完全に解消することができる。さらに、スパッタ及びポロシティを最小限に抑えて高速で溶接を実現できる。
図7及び図7Aは、本考案の例示の実施形態により溶接されたオープンルート溶接継手を図示する。当然ながら、本考案の実施形態は、重ね型継手又はオープンルート型継手だけでなく多種多様な溶接継手の溶接に用いることができる。図7では、ワークピースW1/W2の間に間隙705が示され、ワークピースW1/W2は傾斜面701/703をそれぞれ有する。前で説明したように、本考案の実施形態ではレーザー装置120を用いて表面701/703上に正確な溶融溜まりを形成し、前で説明したように予め加熱したフィラーワイヤ(図示せず)が溶融溜まり内に溶着される。
実際に、本考案の例示の実施形態は、1つのフィラーワイヤを各溶接溜まりに向けることに限定されない。本明細書で説明する溶接プロセスでは溶接アークが生成されないため、1つの溶接溜まりに2つ以上のフィラーワイヤを向けることができる。所定の溶接溜まりに向けられるフィラーワイヤの数を増やすことで、入熱を大幅に増やすことなく溶接プロセスの全体的な溶着速度を大幅に高めることができる。そのため、1つの溶接パスでオープンルート溶接継手(図7及び図7Aに図示の種類のもの等)を充填できることが考えられる。
また、図7に示すように、本考案の一部の例示の実施形態では、複数のレーザービーム110及び110Aを用いて溶接継手における2つ以上の場所を同時に溶融することができる。これは多くの方法で実現することができる。図7に示す第1の実施形態では、ビームスプリッター121が用いられ、レーザー装置120に連結されている。ビームスプリッター121はレーザー装置についての知識を有するものに知られており、本明細書ではその詳細な説明を省略する。ビームスプリッター121はレーザー装置120からのビームを2つ(以上)の別々のビーム110/110Aに分割し、それらを異なる2つの表面に向けることができる。そのような実施形態では、複数の表面を同時に照射することでき、溶接のさらなる精度及び正確性を提供する。他の実施形態では、別々のビーム110及び110Aのそれぞれを別個のレーザー装置で形成することができ、各ビームが専用の装置から出射される。
そのような実施形態では、複数のレーザー装置を用い、様々な溶接ニーズに適合するために溶接作業の様々な側面を変更することができる。例えば、別々のレーザー装置により生成されるビームは、異なるエネルギー密度を有すること、異なる形状を有すること及び/又は溶接継手において異なる断面積を有することができる。この柔軟性により、溶接プロセスの側面を変更及びカスタム化して必要とされる特定の溶接パラメータを満たすことができる。当然ながら、これは1つのレーザー装置とビームスプリッター121とを用いることでも実現できるが、用いるレーザービーム源が1つだと柔軟性の一部が制限され得る。また、所望により任意数のレーザーを用いることができるものと考えられるため、本考案はレーザーが1つ又は2つの構成に限定されない。
さらなる実施形態では、ビーム走査装置を用いることができる。そのような装置はレーザー又はビーム出射の技術分野で知られており、ワークピースの表面に亘ってパターン状にビーム110を走査するのに用いられる。そのような装置を用いることで、走査速度及びパターンに加えて滞留時間を用いてワークピース115を所望な形で加熱することができる。また、所望の溶接溜まりを形成するために、所望によりエネルギー源(例えばレーザー)の出力パワーを調節することができる。それに加えて、レーザー120内で使用されている光学を所望の動作パラメータ及び接合パラメータに基づいて最適化できる。例えば、ライン光学及び積分光学を用いて、幅広い溶接又はクラッディング作業用に集中ラインビーム(focused line beam)を生成するか又は積分器を用いてパワー分布が均一な正方形/長方形のビームを生成することができる。
図7Aは本考案の別の実施形態を図示する。この実施形態では、表面701/703を溶融するために1つのビーム110がオープンルート継手に向けられている。
レーザービーム110及び110Aの精度により、ビーム110/110Aを間隙705から離れて、表面701/703上のみで集束させることができる。そのため、(間隙705を通常通り抜け得る)溶融(melt-through)を制御することができ、後方溶接ビード(間隙705の底面にある溶接ビード)の制御を大幅に改善する。
図7及び図7Aのそれぞれでは、ワークピースW1とW2との間に間隙705が存在し、溶接ビード707で充填される。例示の実施形態では、この溶接ビード707はレーザー装置(図示せず)によって形成される。そのため、例えば溶接作業の間、第1のレーザー装置(図示せず)はワークピースW1及びW2をレーザー溶接ビード707と共に溶接するために間隙705に第1のレーザービーム(図示せず)を向け、他方で第2のレーザー装置120は、溶接を完了するためにフィラーワイヤ(図示せず)が溶着される溶接溜まりを形成するために表面701/703に少なくとも1つのレーザービーム110/110Aを向ける。間隙の溶接ビード707は間隙が十分小さい場合はレーザーのみで形成することができ、間隙705がレーザー及びフィラーワイヤを必要とする場合はそれらを用いて形成できる。具体的には、間隙705を適切に充填するのに金属フィラーを追加する必要があり得るため、フィラーワイヤを用いるべきである。この間隙ビード705の形成は、本考案の様々な例示の実施形態に関して前で説明したものと同様である。
なお、本明細書で説明するレーザー装置120等の高強度エネルギー源は、所望の溶接作業に必要なエネルギー密度を提供する十分なパワーを有する種類のものであるべきである。即ち、レーザー装置120は、溶接プロセスを通して安定した溶接溜まりを形成及び維持し且つ所望の溶け込みに到達する十分なパワーを有するべきである。例えば、一部の用途では、レーザーは溶接されるワークピースに「キーホール(keyhole)」を形成できる能力を有するべきである。これは、レーザーがワークピースを完全に貫通する十分なパワーを有しながら、レーザーがワークピースに沿って移動するときにその貫通のレベルが維持されることを意味する。例示のレーザーは1〜20kWの出力能力を有するべきであり、5〜20kWの出力能力を有し得る。より高出力のレーザーを用いることができるがコストが非常にかかり得る。当然ながら、ビームスプリッター121又は複数のレーザーは他の種類の溶接継手でも用いることができ、図6及び図6Aに図示したもの等の重ね継手にも用いることができる。
図7Bは本考案の別の例示の実施形態を示す。この実施形態では、溝が狭く深いオープンルート継手(narrow groove, deep open root joint)を示す。(深さが1インチよりも大きい)深い継手をアーク溶接する場合、溝の間隙Gが狭いと継手の底部を溶接するのが困難であり得る。これは、そのような深い溝内にシールドガスを効果的に送るのが困難であり、溝の狭い壁部がアーク溶接の安定性を妨げ得る。ワークピースは一般に鉄鋼材であるため、継手の壁部が磁気的に溶接アークを妨げる。そのため、一般的なアーク溶接の手順を用いる場合、溝の間隙Gはアークが安定した状態を保てるように十分広くなければならない。しかしながら、溝が広いほど、溶接を完了するのにより多くの金属フィラーが必要になる。本考案の実施形態はシールドガスを必要とせず、溶接アークを使用しないため、これらの問題が最小限に抑えられる。これにより、本考案の実施形態は深くて狭い溝を効率的且つ効果的に溶接することができる。例えば、ワークピース115の厚さが1インチよりも大きい本考案の例示の実施形態では、間隙の幅Gはフィラーワイヤ140の直径の1.5〜2倍の範囲にあり、側壁の角度は0.5〜10°の範囲にある。例示の実施形態では、そのような溶接継手のルートパス準備物の間隙RGは1〜3mmであり、ランドは1/16〜1/4インチである。そのため、通常のアーク溶接プロセスよりもずっと少ない充填材で深いオープンルート継手をより速く溶接できる。また、本考案の側面は溶接領域に導入する熱がより少ないため、ワイヤが側壁と接触するのを避けるために溶接溜まりのより近くに送るのが容易になるようにコンタクトチップ160を設計できる。即ち、コンタクトチップ160を小さくし、細い構造の絶縁ガイドとして構成できる。さらなる例示の実施形態では、継手の両側を同時に溶接するために溶接部の幅全体に亘ってレーザー及びワイヤを移動させるのに平行移動(translation)装置又は機構を用いることができる。
図8に示すよう、本考案の実施形態を用いてバット型継手を溶接することができる。図8にフラッシュバット型継手を示すが、溶接継手の上面及び底面にv字状の切り欠き溝を有するバッド型継手も溶接できることが考えられる。図8に示す実施形態では、溶接継手の各側に2つのレーザー装置120及び120Aを示し、それぞれ自身で溶接溜まり801及び803を形成している。図7及び図7Aのように、加熱されたフィラーワイヤはレーザービーム110/110Aに後行するため図示されていない。
既知のアーク技術を用いてバット型継手を溶接する場合、「磁気吹き」に関する大きな問題が起こり得る。「磁気吹き」は、溶接アークによって生成される磁界が互いに干渉し合ってそれぞれを不規則に移動させる。また、同じ溶接継手上で溶接を行うために2つ以上のアーク溶接システムが使用される場合、各溶接電流の干渉によって起こる大きな問題がある。それに加えて、(高い入熱を部分的に原因とした)アーク溶接法の溶け込みの深さから、溶接継手の何れかの側でアークを用いて溶接できるワークピースの厚さが限られている。即ち、そのような溶接を細いワークピースに対して行うことができない。
本考案の実施形態を用いて溶接を行う場合、これらの問題は解消される。溶接アークが使用されないため、磁気吹き干渉又は溶接電流干渉の問題がない。また、レーザーの使用により可能となる溶け込みの深さ及び入熱の正確な制御により、溶接継手の両側でより細いワークピースを同時に溶接することができる。
本考案のさらなる例示の実施形態を図9に示す。この実施形態では、ユニークな溶接プロファイルを形成するために、2つのレーザービーム110及び110Aが互いに並んで(in line with each other)用いられている。図示の実施形態では、(第1のレーザー装置120から出射される)第1のビーム110を用いて第1の断面積及び深さを有する溶接溜まり901の第1の部分を形成する一方、(第2のレーザー装置(図示せず)から出射される)第2のビーム110Aを用いて第1とは異なる第2の断面積及び深さを有する溶接溜まり903の第2の部分を形成する。この実施形態は、溶け込みの深さが溶接ビードの残りの部分よりも深い溶接ビードの部分を有することが望ましい場合に用いることができる。例えば、図9に示すように、溶接溜まり901は、溶接溜まり903よりも深く且つ狭くなるように形成されている(溶接溜まり903は溶接溜まり901よりも広く且つ浅く形成されている)。そのような実施形態は、溶接継手の全体としては望ましくない(ワークピースが交わる部分である)深い溶け込みレベルが必要な場合に用いることができる。
本考案のさらなる例示の実施形態では、第1の溶接溜まり903は継手のための溶接部を形成する溶接溜まりであり得る。この第1の溶接溜まり/継手は第1のレーザー120及びフィラーワイヤ(図示せず)を用いて形成され、適切な溶け込み深さに形成される。この溶接継手の形成後、第2のレーザービーム110Aを出射する第2のレーザー(図示せず)は継手の上を通り、プロファイルの異なる第2の溶接溜まり903を形成する。この第2の溶接溜まり903は、前の実施形態で説明したある種の肉盛を溶着するのに用いられるものである。この肉盛は、第1のフィラーワイヤとは化学的構造が異なる第2のフィラーワイヤを用いて溶着される。例えば、本考案の実施形態は、溶接継手を溶接した少し後又は直後に係る継手の上に耐腐食性の肉盛層を設置するのに用いることができる。この溶接作業は1つのレーザー装置120を用いて実現することもでき、その場合ビーム110は所望の溶接溜まりのプロファイルを提供するために第1のビーム形状/密度と第2のビーム形状/密度との間でオシレート(oscillated)される。そのため、複数のレーザー装置を用いる必要はない。
前で説明したように、ワークピース上の耐腐食性コーティング(例えば亜鉛めっき)は溶接プロセスの間に取り除かれる。しかしながら、耐腐食性のために溶接継手を再度被覆するのが望ましい場合がある。そのため、第2のビーム110A及びレーザーを用いて、継手901の上に肉盛層等の耐腐食性の肉盛903を加えることができる。
本考案の様々な利点により、溶接作業により異種金属を容易に接合することも可能である。アーク溶接プロセスにより異種金属を接合するのは困難である。何故なら、異種材料及び充填材に必要な化学的構造は亀裂及び質の劣った溶接部に繋がり得るからである。これは、溶融温度が大きく異なるアルミニウムとスチールとのアーク溶接を試みる場合又はステンレス鋼を軟鋼に溶接することを試みる場合、それらの化学的構造が違うために特に当てはまる。しかしながら、本考案の実施形態を用いることでそのような問題が緩和される。
図10は本考案の例示の実施形態を示す。V字型の継手を示しているが、本考案はこの点で限定されない。図10には、溶接継手1000で接合される2つの異種金属を示す。この例では、2つの異種金属はアルミニウム及びスチールである。この例示の実施形態では、2つの異なるレーザー源1010及び1020が用いられている。しかしながら、2つの異なる材料を溶融するのに必要なエネルギーを提供するために1つの装置をオシレートできるため(これについては後でさらに説明する)、全ての実施形態で2つのレーザー装置が必要になるわけではない。レーザー1010は、スチールのワークピースに向けられるビーム1011を出射し、レーザー1020はアルミニウムのワークピースにビーム1021を出射する。各ワークピースは異なる金属又は合金でできているため、それらの溶融温度は異なる。そのため、レーザービーム1011/1021は溶接溜まり1012及び1022においてそれぞれエネルギー密度が異なる。エネルギー密度が異なるため、溶接溜まり1012及び1022のそれぞれを適切なサイズ及び深さで維持することができる。これは、溶融温度が低い方のワークピース、例えばアルミニウムのワークピースにおいて過度の溶け込みや入熱も防止する。一部の実施形態では、少なくとも溶接継手により、(図10に示すような)2つの個別の溶接溜まりを有する必要なく、むしろ双方のワークピースにより1つの溶接溜まりを形成することができ、その場合、各ワークピースの溶融部分が1つの溶接溜まりを形成する。また、ワークピースの化学的構造が異なるものの溶融温度が同様の場合は、一方のワークピースが他方のワークピースよりもより溶融するという理解の下で1つビームを用いて双方のワークピースを同時に照射することができる。また、前で簡潔に説明したように、1つのエネルギー源(レーザー装置120等)を用いて双方のワークピースを照射することができる。例えば、レーザー装置120は第1のワークピースを溶融するのに第1のビーム形状及び/又はエネルギー密度を用い、次いで第2のビーム形状及び/又はエネルギー密度にオシレート/変更して第2のワークピースを溶融することができる。ビーム特性のオシレート及び変更は、溶接溜まりが溶接プロセスの間に安定し且つ一貫して維持されるように双方のワークピースが適切に溶融されるよう十分な速度で行うべきである。他の1つのビームの実施形態では、各ワークピースが十分溶融されるように一方のワークピースよりも他方のワークピースにより多くの入熱を提供する形状のビーム110を用いることができる。そのような実施形態では、ビームのエネルギー密度はビームの断面に対して均一である。例えば、ビーム110は、ビームの形状によって一方のワークピースへの全体的な入熱が他方のワークピースへのものよりも少なくなるように台形又は三角形の形状を有することができる。あるいは、他の実施形態では、その断面においてエネルギー分布が非均一なビーム110を用いることができる。例えば、ビーム110は(双方のワークピースに影響を与えることができるように)矩形を有するが、ビームの第1の領域は第1のエネルギー密度を有し、ビーム110の第2の領域は第1の領域とは異なる第2のエネルギー密度を有し、各領域は各ワークピースを適切に溶融できる。一例として、ビーム110はスチールのワークピースを溶融するためにエネルギー密度が高い第1の領域を有する一方で、第2の領域はアルミニウムのワークピースを溶融するためにエネルギー密度が低い。
図10には、溶接溜まり1012及び1022にそれぞれ向けられた2つのフィラーワイヤ1030及び1030Aを示す。図10に示す実施形態では2つのフィラーワイヤを用いているが、本考案はその点について限定されない。他の実施形態との関連で前で説明したように、所望のビードの形状や溶着速度等の所望の溶接パラメータに応じて1つのフィラーワイヤのみを用いることができるし、3つ以上のワイヤを用いることができると考えられる。1つのワイヤを用いる場合、そのワイヤを(双方のワークピースの溶融部分から形成された)共通の溶接溜まりに向けるか又は溶接継手に一体化するために溶融部分の一方のみにワイヤを向けることができる。そのため、例えば図10に示す実施形態では、ワイヤを溶融部分1022に向けることができ、係る溶融部分はその後溶接継手の形成のために溶融部分1012と組み合わされる。当然ながら、1つのワイヤを用いる場合、ワイヤが浸漬される部分1022/1012内でワイヤが溶融するようにある温度に加熱しなければならない。
異種金属が接合されるため、接合される金属にワイヤを十分に接合できるようにフィラーワイヤの化学的構造を選択すべきである。さらに、フィラーワイヤの組成は、フィラーワイヤが温度の低い方の溶接溜まり内で溶けて消費されるようにする好適な溶融温度をフィラーワイヤが有するように選択すべきである。実際に、適切な溶接の化学特性を得るために複数のフィラーワイヤの化学的構造は異なり得ることが考えられる。これは、2つの異なるワークピースが、それらの材料の間で最小限の混合が生じる材料組成を有する場合にとりわけ当てはまる。図10では、温度が低い方の溶接溜まりがアルミニウム溶接溜まり1012であるため、フィラーワイヤ1030(A)は溶接溜まり1012で簡単に消費されるように同様の温度で溶融するように調製されている。アルミニウムのワークピース及びスチールのワークピースを用いる上記の例では、フィラーワイヤはケイ素青銅、ニッケルアルミニウム青銅又はアルミニウム青銅ベースで、ワークピースの溶融温度と同様の溶融温度を有するワイヤであり得る。当然ながら、フィラーワイヤの組成は所望の機械特性及び溶接性能特性と合致する一方で、それと同時に溶接されるワークピースの少なくとも一方と同様の溶融特性を提供するように選択すべきであることが考えられる。
図11A〜図11Cは使用可能なコンタクトチップ160の様々な実施形態を図示する。図11Aは、一般的なアーク溶接のコンタクトチップと構成及び動作の点で非常に類似したコンタクトチップ160を示す。本明細書で説明のホットワイヤ溶接の間、加熱電流は電源170からコンタクトチップ160に向けられ、コンタクトチップ160からワイヤ140に渡される。そして、その電流はワイヤを通り、ワイヤ140とワークピースWとの接触を介してワークピースに向けられる。本明細書で説明したように、この電流の流れがワイヤ140を加熱する。当然ながら、電源170は図示のようにコンタクトチップに直接連結されておらず、電流をコンタクトチップ160に向けるワイヤ送給装置150に連結され得る。図11Bは本考案の他の実施形態を示す。この実施形態では、コンタクトチップ160が2つの構成要素160及び160’から構成されており、電源170の負極が第2の構成要素160’に連結されている。そのような実施形態では、加熱電流は第1のコンタクトチップ構成要素160からワイヤ140に流れ、そして第2のコンタクトチップ構成要素160’に流れる。構成要素160と160’との間でワイヤ140を通る電流の流れは、本明細書で説明したようにワイヤを加熱させる。図11Cは別の例示の実施形態を示す。この実施形態では、コンタクトチップ160は誘導コイル1110を含み、誘導コイル1110は誘導加熱によりコンタクトチップ160とワイヤ140とを加熱させる。そのような実施形態では、誘導コイル1110はコンタクトチップ160と一体的に形成されていてもよいし、コンタクトチップ160の表面に周りに巻かれていてもよい。当然ながら、ワイヤが溶接作業にとって望ましい温度を得ることができるようにコンタクトチップが必要な加熱電流/電力をワイヤ140に供給することができる限り、コンタクトチップ160に他の構成を用いることができる。
本考案の例示の実施形態の動作を説明する。前で説明したように、本考案の実施形態は高強度エネルギー源及びフィラーワイヤを加熱する電源の双方を使用する。このプロセスの各側面を順番に説明する。なお、以下の説明及び解説は、前述の肉盛の実施形態に関連して前で述べた説明のいずれかにとって代わるか又はそれを置き換えることを意図したものではなく、溶接又は接合用途に対する説明を捕捉することを意図したものである。肉盛作業に関する前の説明も、接合及び溶接のために組み込まれる。
接合/溶接のための例示の実施形態は、図1に図示のものと同様であり得る。前で説明したように、フィラーワイヤ140に加熱電流を提供するホットワイヤ電源170が設けられている。電流はコンタクトチップ160(任意の既知の構成のものでよい)からワイヤ140に、そしてワークピースへと流れる。この抵抗加熱電流は、コンタクトチップ160とワークピースとの間のワイヤ140を、使用されているフィラーワイヤ140の溶融温度に又は溶融温度に近い温度に到達される。当然ながら、フィラーワイヤ140の溶融温度はワイヤ140のサイズ及び化学的構造に応じて変化する。従って、溶接の間のフィラーワイヤの所望の温度はワイヤ140に応じて変化する。以下でさらに説明するように、フィラーワイヤの所望の作業温度は、所望のワイヤ温度が溶接の間に維持されるように溶接システムに入力されるデータであり得る。いずれにせよ、ワイヤの温度は、ワイヤが溶接作業の間に溶接溜まりの中で消費されるようなものであるべきである。例示の実施形態では、ワイヤが溶接溜まりに入るときにフィラーワイヤ140の少なくとも一部が固体である。例えば、フィラーワイヤが溶接溜まりに入るときにフィラーワイヤの少なくとも30%が固体である。
本考案の例示の実施形態では、ホットワイヤ電源170は、フィラーワイヤの少なくとも一部をその溶融温度の75%以上の温度で維持する電流を供給する。例えば、軟鋼のフィラーワイヤ140を用いる場合、溶接溜まりに入る前のワイヤの温度は約華氏1600度であるのに対して、ワイヤの溶融温度は約華氏2000度である。当然ながら、各溶融温度及び所望の作業温度は、少なくともフィラーワイヤの合金、組成、直径及び送給速度によって異なることが分かる。他の例示の実施形態では、電源170は、フィラーワイヤの一部をその溶融温度の90%以上の温度で維持する。さらなる例示の実施形態では、ワイヤの一部がその溶融温度の95%以上の温度で維持される。例示の実施形態では、ワイヤ140は、ワイヤ140及び溶接溜まりに加熱電流が与えられた時点から温度勾配を有し、溶接溜まりにおける温度は加熱電流の入力時点における温度よりも高い。ワイヤ140の効率的な溶融を促進するために、ワイヤ140の温度はワイヤが溶接溜まりに入る時点又はその近くで最も高くなることが望ましい。そのため、上述の温度割合は、ワイヤが溶接溜まりに入る時点又はその近くにおけるワイヤ上で測定される。フィラーワイヤ140をその溶融温度で又はその溶融温度の近くの温度で維持することで、ワイヤ140は熱源/レーザー120により形成される溶接溜まり内で容易に溶融するか又は消費される。即ち、ワイヤ140は、ワイヤ140が溶接溜まりと接触する際に溶接溜まりの大幅な冷却をもたらすことのない温度のものである。ワイヤ140の温度が高温であるため、ワイヤは溶接溜まりと接触すると素早く溶融する。ワイヤが溶接池で底に達する(溶接池の非溶融部分と接触する)ことのないようなワイヤ温度を有することが望ましい。そのような接触は溶接部の品質に悪影響を及ぼす。
前で説明したように、一部の例示の実施形態では、ワイヤ140が溶接溜まりに入ることによってのみワイヤ140の完全な溶融を促進することができる。しかしながら、他の例示の実施形態では、溶接溜まりと、ワイヤ140の一部に影響を与えるレーザービーム110との組み合わせによりワイヤ140を完全に溶融することができる。本考案のさらに他の実施形態では、レーザービーム110がワイヤ140の加熱に寄与することで、ワイヤ140の加熱/溶融をレーザービーム110で支援することができる。しかしながら、多くのフィラーワイヤ140は反射性を有し得る材料で構成されているため、反射型レーザーを用いる場合、ワイヤ140をその表面の反射性が低下するような温度に加熱して、ビーム110がワイヤ140の加熱/溶融に寄与できるようにすべきである。この構成の例示の実施形態では、ワイヤ140とビーム110とはワイヤ140が溶接溜まりに入る点で交差する。
図1に関連して前で説明したように、電源170及びコントローラ195は、溶接の間にワイヤ140がワークピースとの接触を維持し且つアークが生成されないようにワイヤ140への加熱電流を制御する。アーク溶接技術とは反対に、本考案の実施形態を用いて溶接を行う場合は、アークの存在によって溶接部に大きな欠陥がもたらされ得る。そのため、(前で説明したもの同様に)一部の実施形態では、ワイヤ140と溶接溜まりとの間の電圧を(ワイヤがワークピース/溶接溜まりに短絡されているか又は接触していることを示す)0ボルトで又は0ボルト近くで維持すべきである。
しかしながら、本考案の他の例示の実施形態では、アークが生成されることなく0ボルトを上回る電圧レベルが得られるようなレベルの電流を提供することができる。より高い電流値を利用することで、より高いレベルの温度であって電極の溶融温度に近い温度で電極140を維持することができる。これにより、溶接プロセスをより速く進めることができる。本考案の例示の実施形態では、電源170は電圧を観察し、電圧が0ボルトを多少上回る電圧値に達するか又は近づいたときに、電源170はアークが形成されることがないようにワイヤ140への電流の流れを停止する。電圧の閾値レベルは、少なくとも部分的に、使用する溶接電極140の種類により通常変化する。例えば、本考案の一部の例示の実施形態では、電圧閾値レベルは6ボルト以下である。他の例示の実施形態では、閾値レベルは9ボルト以下である。さらなる例示の実施形態では、閾値レベルは14ボルト以下であり、追加の例示の実施形態では、閾値レベルは16ボルト以下である。例えば、軟鋼のフィラーワイヤを用いる場合、電圧の閾値レベルは低いタイプのものになる一方、フィラーワイヤがステンレス鋼用である場合、溶接はアークが形成される前に高い電圧に対処できる。
さらなる例示の実施形態では、上述のように電圧レベルを閾値よりも低く維持するのではなく、電圧を作業範囲で維持する。そのような実施形態では、フィラーワイヤをその溶融温度で又はその溶融温度の近くの温度で維持するのに十分に高い電流を確保できる最小量よりも大きく、溶接アークが形成される電圧レベルよりも小さいレベルで電圧を維持することが望ましい。例えば、電圧を1〜16ボルトで維持することができる。さらなる例示の実施形態では、電圧が6〜9ボルトで維持される。他の例では、電圧を12〜16ボルトで維持することができる。当然ながら、所望の作業範囲は、溶接作業に用いられる範囲(又は閾値)が使用するフィラーワイヤ又は使用するフィラーワイヤの特性に少なくとも部分的に基づいて選択されるように溶接作業で用いるフィラーワイヤ140の影響を受ける。そのような範囲を用いる上で、範囲の下限は、フィラーワイヤが溶接溜まり内で十分に消費される電圧に設定され、範囲の上限はアークの形成が防止される電圧に設定される。
前で説明したように、電圧が所望の電圧閾値を上回ると、アークが形成されないように、加熱電流が電源170により止められる。本考案のこの側面を以下でさらに説明する。
上述した多くの実施形態では、電源170は上述したように電圧を観察及び維持するのに用いられる回路を含む。そのような種類の回路の構成は当業者には公知である。しかしながら、従来では、そのような回路はアーク溶接のために電圧を所定の閾値よりも上で維持するのに使用されていた。
さらなる例示の実施形態では、加熱電流を電源170により観察及び/又は調節することができる。これは、代替的に、電圧、電力又は電圧/アンペア特性のあるレベルを観察することに加えて行うことができる。即ち、電流は、ワイヤ140が溶接溜まり内で適切に消費されるように適切な温度で維持されるようなレベルであるがアーク生成電流レベル未満である所望のレベルで維持される。例えば、そのような実施形態では、電圧及び/又は電流は、一方又は双方が特定の範囲内にあるか又は所望の閾値よりも低くなるように観察される。そして、電源は、アークが形成されず、また所望の作業パラメータが維持させるように供給される電流を調節する。
本考案のさらなる例示の実施形態では、加熱電力(V×I)も電源170により観察及び調節することができる。具体的には、そのような実施形態では、加熱電力のための電圧及び電流が所望のレベルで又は所望の範囲内で維持されるように観察される。そのため、電源はワイヤへの電圧又は電流を調節するだけではなく電流及び電圧の双方を調節できる。そのような実施形態は、溶接システム対する制御を向上し得る。そのような実施形態では、ワイヤへの加熱電力は、電力が閾値レベル未満で又は所望の範囲内で維持されるように(電圧に関連して上述したのと同様に)上限閾値レベルに又は最適な作業範囲内に設定できる。ここでも、閾値又は範囲設定はフィラーワイヤの特徴及び行われる溶接に基づくものであり、また、選択されたフィラーワイヤに少なくも部分的に基づくことができる。例えば、直径が0.045”の軟鋼電極にとっての最適な電力設定が1950〜2050ワットであると決定されたとする。電源は、電力がこの動作範囲内にとどまるように電圧及び電流を調節する。同様に、電力閾値が2000ワットに設定されている場合、電源は、電力レベルがこの閾値を上回らないが閾値近くにあるように電圧及び電流を調節する。
本考案のさらなる例示の実施形態では、電源170は加熱電圧(dv/dt)、電流(di/dv)及び/又は電力(dp/dt)の変化率を観察する回路を含む。そのような回路は一般に予測回路(premonition circuits)と呼ばれ、それらの一般構成は公知である。そのような実施形態では、電圧、電流及び/又は電力の変化率は、変化率が所定の閾値を上回った場合にワイヤ140への加熱電流が停止されるように観察される。
本考案の例示の実施形態では、抵抗(dr/dt)の変化も観察される。そのような実施形態では、ワイヤにおけるコンタクトチップと溶接溜まりとの間の抵抗が観察される。溶接の間にワイヤが加熱されるとワイヤは下に曲がり始め、アークを形成する傾向がある。その期間、ワイヤにおける抵抗が急激に増加する。この増加が検出されると、アークが形成されないように、前で説明したように電源の出力が停止される。実施形態は、ワイヤにおける抵抗が所望のレベルで維持されるように電圧、電流又はその双方を調節する。
本考案のさらなる例示の実施形態では、電源170は閾値レベルが検出された場合に加熱電流を停止するのではなく、加熱電流を非アーク生成レベルに低下させる。そのようなレベルは、ワイヤが溶接溜まりから離れている場合にアークが生成されないバックグラウンド電流レベルであり得る。例えば、本考案の例示の実施形態は、50アンペアの非アーク生成電流レベルを有することができる。その場合、アークの生成が検出されるか若しくは予測されるか又は(前で説明した)上限閾値に到達した場合に、電源170は、所定の期間(例えば1〜10ms)又は検出された電圧、電流、電力及び/又は抵抗が上限閾値未満に下がるまで加熱電流をその動作レベルから非アーク生成レベルに低下させる。この非アーク生成閾値は電圧レベル、電流レベル、抵抗レベル及び/又は電力レベルであり得る。そのような実施形態では、アーク生成イベントの間に電流出力が低レベルで維持されるにも関わらず、加熱電流の動作レベルに素早く復帰させることができる。
本考案の他の例示の実施形態では、溶接作業の間にアークが実質的に生成されないように電源170の出力が制御される。一部の例示の溶接作業では、フィラーワイヤ140と溶接溜まりとの間でアークが実質的に生成されないように電源を制御できる。アークは、フィラーワイヤ140の遠位端と溶接溜まりとの間の物理的な間隙において形成されることが一般的に知られている。前で説明したように、本考案の例示の実施形態では、フィラーワイヤ140と溶接溜まりとの接触を維持することによってアークの生成を防止する。しかしながら、一部の例示の実施形態では、ごくわずかにアークが存在しても溶接部の品質が損なわれることはない。即ち、一部の例示の溶接作業では、短期間にごくわずかなアークが形成されても、それは溶接品質を損なう入熱のレベルをもたらさない。そのような実施形態では、溶接システム及び電源は、アークを完全に防止することに関連して本明細書で説明したように制御及び操作されるが、電源170はアークがある程度生成されるがそのアークはごくわずかとなるように制御される。一部の例示の実施形態では、電源170は形成されるアークの期間が10ms未満になるように操作される。他の例示の実施形態では、アークの期間は1ms未満であり、別の例示の実施形態では、アークの期間は300μs未満である。そのような実施形態では、そのようなアークの存在によって溶接品質が損なわれることはない。何故なら、そのようなアークは実質的な入熱を溶接部に与えないか又は大きなスパッタ又はポロシティを引き起こさないからである。そのため、そのような実施形態では、電源170は、アークが生成されるが、溶接品質が損なわれないように期間的にごくわずかになるように制御される。他の実施形態に関して本明細書で説明したのと同じ制御ロジック及び構成要素をこれらに例示の実施形態で用いることができる。しかしながら、電源170は所定の又は予測されるアーク生成点未満の(電流、電力、電圧、抵抗の)閾値ではなくアークの生成の検出を上限閾値として用いることができる。そのような実施形態では溶接作業をその限度の近くで行うことを可能にする。
フィラーワイヤ40は常に短絡状態(溶接溜まりと常に接触した状態)であることが望ましいため、電流は緩やかな速度で減衰する傾向にある。これは、電源、溶接ケーブル及びワークピースに存在するインダクタンスが原因である。一部の用途では、ワイヤ内の電流がより速い速度で減少するように電流をより速い速度で減衰させる必要があり得る。一般に、電流を素早く減少させることができるほど、接合方法に対するより良い制御が得られる。本考案の例示の実施形態では、閾値に到達したか又は閾値を上回ったことが検出された後に電流を下降させるランプダウン時間(ramp down time)は1ミリ秒である。本考案の他の例示の実施形態では、電流のランプダウン時間は300マイクロ秒以下である。別の例示の実施形態では、ランプダウン時間は100〜300マイクロ秒である。
例示の実施形態では、そのようなランプダウン時間を得るために、ランプダウン回路が電源170に導入されている。ランプダウン回路は、アークが予測されるか又は検出された場合にランプダウン時間を短縮するのを支援する。例えば、アークが検出されるか又は予測された場合、ランプダウン回路が開放し、係る回路に抵抗が導入される。例えば、係る抵抗は、電流の流れを50マイクロ秒で50アンペア未満に下げる種類のものであり得る。そのような回路の簡略例を図18に示す。回路1800は抵抗器1801及びスイッチ1803を有する。抵抗器1801及びスイッチ1803は、電源が作動し電流を供給している場合にスイッチ1803が閉じられるように溶接回路内に配置されている。しかしながら、(アークの生成を防止するために又はアークが検出された場合に)電源が電力の供給を停止すると、スイッチが開いて抵抗器1801に誘導電流が流れるようにする。抵抗器1801は回路の抵抗を大幅に増加させ、より早いペースで電流を減少させる。そのような回路の種類は溶接業界では一般的に知られており、表面張力移動技術(「STT」)が組み込まれたリンカーンエレクトリック社(オハイオ州クリーブランド)製のパワーウェーブ(登録商標)溶接電源に見ることができる。STT技術は、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に広く記載されており、それらの特許文献は参照により本願に全体的に組み込まれる。当然ながら、これらの特許文献では、開示の回路を用いてアークを生成し維持することが概して述べられているが、当業者であれば、そのようなシステムをアークが生成されないようにするように容易に適合できる。
上記の説明は、例示の溶接システムを示す(なお、レーザーシステムは明確性の点から図示していない)図12を参照することでさらに理解することができる。ホットワイヤ電源1210(図1に図示の170と同様の種類のものであり得る)を有するシステム1200が図示されている。電源1210は、インバータ型電源等の既知の溶接電源構成のものであり得る。そのような電源のデザイン、動作及び構成は既知であるため、本明細書ではそれらについての詳述は省略する。電源1210はユーザー入力部1220を含む。ユーザー入力部1220は、限定されないがワイヤ送給速度、ワイヤの種類、ワイヤの直径、所望の電力レベル、所望のワイヤ温度、電圧及び/又は電流レベルを含むデータをユーザーが入力できるようにする。当然ながら、必要に応じて他の入力パラメータを用いることができる。ユーザーインターフェース1220はCPU/コントローラ1230に連結されている。CPU/コントローラ1230はユーザー入力データを受信し、その情報を用いてパワーモジュール1250に必要な動作設定値又は範囲を生成する。パワーモジュール1250はインバータ又はトランス型モジュールを含む任意の既知の種類又は構成のものであり得る。
CPU/コントローラ1230は、ルックアップテーブルの使用を含む様々な方法で所望の動作パラメータを決定できる。そのような実施形態では、CPU/コントローラ1230は入力データ、例えばワイヤ送給速度、ワイヤの直径及びワイヤの種類を用いて、(ワイヤ140を適切に加熱するための)出力のための所望の電流レベル及び閾値電圧又は電力レベル(又は電圧若しくは電力の許容可能な動作範囲)を決定する。これは、ワイヤ140を適切な温度に加熱するのに必要な電流が少なくとも入力パラメータに基づいているためである。即ち、アルミニウムワイヤ140は軟鋼電極よりも溶融温度が低くいため、ワイヤ140を溶融するのに必要な電流/電力が少ない。それに加えて、直径が小さいワイヤ140は直径が大きい電極よりも必要な電流/電力が少ない。また、ワイヤ送給速度が上昇すると(従って溶着速度も)ワイヤの溶融に必要な電流/電力レベルはより高くなる。
同様に、入力データは、アークの生成が回避されるような動作のための電圧/電力閾値及び/又は範囲(例えば、電力、電流及び/又は電圧)を決定するためにCPU/コントローラ1230によって使用される。例えば、直径が0.045インチの軟鋼電極の電圧範囲設定は6〜9ボルトであり、パワーモジュール1250は6〜9ボルトの範囲の電圧を維持するように駆動される。そのような実施形態では、電流、電圧及び/又は電力は、電極を適切に加熱するのに電流/電力が十分高いことを確保する最小の6ボルトが維持され、アークが生成されず且つワイヤ140の溶融温度を上回らないように電圧が9ボルト以下で維持されるように駆動される。当然ながら、CPU/コントローラ1230は、電圧、電流、電力又は抵抗の変化率等の他の設定値パラメータを必要に応じて設定してもよい。
図示のように、電源1210の正極1221はホットワイヤシステムのコンタクトチップ160に連結され、電源の負極はワークピースWに連結されている。そのため、加熱電流は正極1221を通じてワイヤ140に供給され、負極1222を通じて戻る。そのような構成は一般的に知られている。
当然ながら、他の例示の実施形態では、負極1222もコンタクトチップ160に連結することができる。ワイヤ140を加熱するのに抵抗加熱を用いることができるため、コンタクトチップは、正極1221及び負極1222をコンタクトチップ160に連結してワイヤ140を加熱することができる(図11に示すような)構成のものであり得る。例えば、コンタクトチップ160は(図11Bに示すような)デュアル構成を有するか又は(図11Cに示すような)誘導コイルを用いることができる。
フィードバック検知リード線1223も電源1210に連結されている。このフィードバック検知リード線は電圧を観察し、検出した電圧を電圧検出回路1240に送ることができる。電圧検出回路1240は検出した電圧及び/又は検出した電圧の変化率をCPU/コントローラ1230に通信し、CPU/コントローラ1230はそれに従ってモジュール1250の動作を制御する。例えば、検出された電圧が所望の動作範囲よりも低い場合、CPU/コントローラ1230は、モジュール1250に、その出力(電流、電圧及び/又は電力)を検出された電圧が所望の動作範囲に入るまで高めるよう指示する。同様に、検出された電圧が所望の閾値以上である場合、CPU/コントローラ1230は、アークが生成されないようにコンタクトチップ160への電流の流れを停止するようモジュール1250に指示する。電圧が所望の閾値未満に低下すると、CPU/コントローラ1230はモジュール1250に対して溶接プロセスを続けるために電流若しくは電圧又はその両方を供給するよう指示する。当然ながら、CPU/コントローラ1230は所望の電力レベルを維持又は供給するようにモジュール1250に指示することもできる。
なお、検出回路1240及びCPU/コントローラ1230は図1に図示のコントローラ195と同様の構成及び動作を有することができる。本考案の例示の実施形態では、サンプリング/検出速度は少なくとも10KHzである。他の例示の実施形態では、検出/サンプリング速度の範囲は100〜200KHzである。
図13A〜図13Cは本考案の実施形態で用いられる例示の電流波形及び電圧波形を示す。これらの各波形を順番に説明する。図13Aは、アーク検出イベント後に電源出力を再度オンにした後でフィラーワイヤ140が溶接溜まりに接触する実施形態のための電圧波形及び電流波形を示す。図示のように、電源の出力電圧は所定の閾値(9ボルト)未満のある動作レベルにあったが、その後溶接の間にこの閾値まで上げられる。動作レベルは、(前で説明した)様々な入力パラメータに基づく所定のレベルであってもよいし、設定動作電圧、電流及び/又は電力レベルであってもよい。この動作レベルは、所定の溶接作業にとって望ましい電源170の出力であり、フィラーワイヤ140に望ましい加熱信号を提供するためのものである。溶接の間、アークの生成に繋がるようなイベントが発生し得る。図13Aでは、そのようなイベントは電圧の上昇を引き起こし、電圧をポイントAまで上昇させる。ポイントAでは、電源/制御回路は9ボルトの閾値(アーク検出点又は単にアーク生成点よりも低い所定の上限閾値であり得る)にヒットし、電源の出力を停止して、電流及び電圧をポイントBにある低いレベルに低下させる。電流低下の傾斜は、システムのインダクタンスから電流合力(current resultant)を素早く減少させるのを支援する(本明細書で説明した)ランプダウン回路を含めることで制御することができる。ポイントBにおける電流又は電圧レベルは予め決定されてもよいし、所定の期間の後で到達するようにしてもよい。例えば、一部の実施形態では、溶接のために電圧(又は電流若しくは電力)の上限閾値が設定されるだけでなく下限の非アーク生成レベルも設定される。この下限レベルは、アークが生成されないことが確実になり、電源が再度オンにしてもアークが形成されない下限の電圧、電流又は電力レベルである。そのような下限のレベルを有することで、電源は素早く再びオンにしてアークが生成されないようにすることができる。例えば、溶接のための電源設定値が2000ワットに設定され、電圧閾値が11ボルトの場合、この下限電力設定を500ワットに設定できる。そのため、電圧の上限閾値(実施形態に応じて電流又は電力閾値にすることもできる)に到達すると、出力が500ワットに落とされる(この下限閾値も下限電流若しくは電圧設定又はその両方であり得る)。あるいは、検出下限を設定する代わりに、タイミング回路を用いて設定した期間の後に電流供給を開始するようにできる。本考案の例示の実施形態では、そのような期間は500〜1000msであり得る。図13Aでは、ポイントCは出力が再びワイヤ140に供給される時点を表す。なお、ポイントBとポイントCとの間に示されている遅延は意図的な遅延の結果又は単にシステム遅延の結果によるものである。ポイントCで、フィラーワイヤを加熱するために電流が再度供給される。しかしながら、フィラーワイヤは溶接溜まりにまだ接触していないため、電圧が上昇する一方で電流は上昇しない。ポイントDでワイヤは溶接溜まりと接触し、電圧及び電流は所望の動作レベルに戻る。図示のように、電圧は、ポイントDにおける接触の前に上限閾値を上回り得る。それは電源が動作閾値よりも高いOCVレベルを有する場合に起こり得る。例えば、この高いOCVレベルは、電源のデザイン又は製造の結果として電源において設定される上限であってもよい。
図13Bは、電源の出力が高められる際にフィラーワイヤ140が溶接溜まりに接触している点を除き、前で説明したものと同様である。そのような状況では、ワイヤは溶接溜まりから離れないか又はワイヤはポイントCの前に溶接溜まりと接触していた。図13BはポイントC及びDを一緒に示す。何故なら、出力を再びオンにしたときにワイヤは溶接溜まりと接触しているからである。そのため、電流及び電圧の双方がポイントEで所望の動作設定に高められる。
図13Cは、出力がオフにされるとき(ポイントA)と、再びオンにされるとき(ポイントB)との間に遅延がないか又はあっても少なく、ワイヤがポイントBの前のある時点で溶接溜まりと接触している実施形態を示す。図示の波形は、(電流、電力又は電圧に関わらず)下限に到達した場合に、遅延なしで又は少しの遅延で出力が再びオンにされるように下限が設定されている上述の実施形態で用いることができる。なお、この下限設定は、本明細書で説明した動作上限閾値又は範囲と同じ又は同様のパラメータを用いて設定することができる。例えば、この下限閾値はワイヤの組成、直径、送給速度又は本明細書で説明した他の様々なパラメータに基づいて設定できる。そのような実施形態は、溶接のための所望な動作設定値に戻る際の遅延を最小限に抑えることができ、ワイヤにおいて生じ得るネッキングを最小限に抑えることができる。ネッキングを最小限に抑えることは、アークの生成の可能性を最小限に抑えるのに役立つ。
図14は本考案のさらに別の例示の実施形態を示す。図14は、図1に図示の実施形態と同様のものを示す。しかしながら、明確性の点から特定の構成要素及び接続が図示されていない。図14は、ワイヤ140の温度を観察するために熱センサ1410が用いられるシステム1400を示す。熱センサ1410は、ワイヤ140の温度を検出することが可能な任意の公知の種類のものでよい。センサ1410は、ワイヤの温度を検出するためにワイヤ140に接触できるか又はコンタクトチップ160に連結することができる。本考案のさらなる例示の実施形態では、センサ1410はレーザー又は赤外線ビームを用いる種類のものであり、フィラーワイヤの直径等の小さなオブジェクトの温度をワイヤ140に接触することなく検出できる。そのような実施形態では、センサ1410は、ワイヤ140の温度がワイヤ140の突出部、即ちコンタクトチップ160の端部と溶接溜まりとの間のどこかの点で検出できるように配置されている。センサ1410は、ワイヤ140用のセンサ1410が溶接溜まりの温度を感知しないように配置されるべきである。
センサ1410は、システム1400の制御を最適化することができるよう温度フィードバック情報を電源170及び/又はレーザー電源130に提供できるように(図1に関連して説明した)検知/コントロールユニット195に連結されている。例えば、電源170の電力又は電流出力をセンサ1410からのフィードバックに少なくとも基づいて調整することができる。即ち、本考案の実施形態では、ユーザーが(所定の溶接及び/又はワイヤ140にとって)望ましい温度設定を入力するか又は検知/コントロールユニットが他のユーザー入力データ(ワイヤ送給速度、電極の種類等)に基づいて所望の温度を設定することができ、そして検知/コントロールユニット195はその所望の温度を維持するために少なくとも電源170を制御し得る。
そのような実施形態では、ワイヤが溶接溜まりに入る前にレーザービーム110がワイヤ140に影響を及ぼすことによって起こり得るワイヤ140の加熱が可能になる。本考案の実施形態では、ワイヤ140の温度は電源170を介してワイヤ140内の電流を制御することによってのみ制御できる。しかしながら、他の実施形態では、ワイヤ140の加熱の少なくとも一部はワイヤ140の少なくとも一部に作用するレーザービーム110に起因し得る。そのため、電源170からの電流又は電力のみがワイヤ140の温度を表さない場合がある。そのため、センサ1410を利用することで、電源170及び/又はレーザー電源130の制御を通じたワイヤ140の温度の調節を支援することができる。
(図14にも図示の)さらなる例示の実施形態では、温度センサ1420が溶接溜まりの温度を検知するように構成されている。この実施形態では、溶接溜まりの温度も検知/コントロールユニット195に連結されている。しかしながら、他の例示の実施形態では、センサ1420をレーザー電源130に直接連結することができる。センサ1420からのフィードバックを用いてレーザー電源130/レーザー120からの出力を制御することができる。即ち、所望の溶接溜まり温度を得ることができるようにレーザービーム110のエネルギー密度を変更することができる。
本考案のさらなる例示の実施形態では、センサ1420を溶接溜まりにさし向けるのではなく、ワークピースの溶接溜まりに隣接する領域にさし向けることができる。具体的には、溶接部に隣接するワークピースへの入熱を最小限に抑えることが望ましい場合がある。センサ1420は、溶接部の付近で閾値温度が上回らないようこの温度敏感領域を観察するように設置できる。例えば、センサ1420はワークピース温度を観察し、検知した温度に基づいてビーム110のエネルギー密度を低減できる。そのような構成によって、溶接ビード付近の入熱が所望の閾値を上回らないようにすることができる。そのような実施形態は、ワークピースへの入熱が決定的に重要な意味を持つ精密溶接作業において用いることができる。
本考案の他の例示の実施形態では、検知/コントロールユニット195を、ワイヤ送給機構(図示していないが、図1の150参照)に連結された送給力(feed force)検出ユニットに連結することができる。送給力検出ユニットは既知であり、ワイヤ140がワークピース115に送給されるときにワイヤ140に加えられる送給力を検出する。例えば、そのような検出ユニットは、ワイヤ送給装置150のワイヤ送給モーターによって加えられるトルクを観察することができる。ワイヤ140が完全に溶融しないまま溶融した溶融溜まりを通過すると、ワイヤ140はワークピースの固体部分に接触することになる。モーターは設定された供給速度を維持しようと試みるため、そのような接触によって送給力の増加が引き起こされる。この力/トルクの増大を検出し、コントローラ195に伝達することができる。コントローラ195はこの情報を用いてワイヤ140への電圧、電流及び/又は電力を調整して溶融溜まりにおけるワイヤ140の溶融が適切なものになるようにする。
なお、本考案の一部の例示の実施形態では、ワイヤが溶接溜まりに絶えず送給されるのではなく、所望の溶接プロファイルに基づいて途切れ途切れに送給され得る。具体的には、本考案の様々な実施形態の多様性によって、オペレータ又はコントロールユニット195のいずれかが望み通りに溶融溜まりへのワイヤ140の送給を開始及び停止できる。例えば、溶接継手の一部には金属フィラー(ワイヤ140)の使用を必要とするが、同じ継手又は同じワークピースの他の部分は金属フィラーの使用を必要としない複雑な溶接プロファイルや形状が種々に数多く存在する。そのため、溶接の第1の部分では、コントロールユニット195はレーザー120のみを操作して継手の第1の部分がレーザー溶接されるようにするが、溶接作業が(金属フィラーの使用を必要とする)溶接継手の第2の部分に到達すると、コントローラ195は電源170及びワイヤ送給装置150に対して溶接溜まりにワイヤ140の溶着を開始させる。そして、溶接作業が第2の部分の端部に到達したときに、ワイヤ140の溶着を停止できる。これは、ある部分と別の部分とでプロファイルが大きく異なる連続溶接部の形成を可能にする。そのような能力によって、個々の溶接作業を数多く有することとは対照的に単一の溶接作業でワークピースを溶接することを可能にする。当然ながら、多くの変更を実施できる。例えば、溶接部は、異なる形状、深さ及びフィラーの要件を有する溶接プロフィールを必要とする3つ以上の異なる部分を有し、各溶接部分でレーザー及びワイヤ140の使用が異なり得る。さらに、必要に応じて、さらなるワイヤを加えてもよいし除いてもよい。即ち、第1の溶接部分はレーザー溶接のみを必要とする一方で、第2の部分は1つのフィラーワイヤ140の使用のみを必要とし、溶接部の最後の部分は2つ以上のフィラーワイヤの使用を必要とする。コントローラ195は、連続溶接ビードが単一の溶接パスで形成されるよう係る様々な溶接プロファイルを連続溶接作業で得ることができるようにシステムの様々な構成要素を制御できるように構成できる。
図15は、本考案の例示の実施形態に従って溶接する場合の一般的な溶接溜まりPを示す。前で説明したように、レーザービーム110はワークピースWの表面に溶接溜まりPを形成する。溶接溜まりは長さLを有し、長さLは、ビーム110のエネルギー密度、形状及び動きの関数である。本考案の例示の実施形態では、ビーム110は、溶接溜まりの後端から距離Zの位置で溶接溜まりPに向けられている。そのような実施形態では、高強度エネルギー源(例えばレーザー120)は、エネルギー源120がワイヤ140を溶融するのではなく、ワイヤ140の溶融はワイヤ140が溶接溜まりと接触することによって達成されるようにするために、自身のエネルギーがフィラーワイヤ140に直接作用するようにしない。一般に、溶融溜まりPの後端は溶接溜まりが終了し、形成される溶接ビードWBの固化が始まる点として定義される。本考案の実施形態では、距離Zは溶接溜まりPの長さLの50%である。さらなる例示の実施形態では、距離Zは溶接溜まりPの長さLの40〜75%である。
図15に示すように、フィラーワイヤ140は(溶接部の移動方向において)ビーム110の後ろで溶接溜まりPに影響を与える。図示のように、ワイヤ140は、溶接溜まりPの後端の前の距離Xとして溶接溜まりPに影響を与える。例示の実施形態では、距離Xは溶接溜まりPの長さの20〜60%である。他の例示の実施形態では、距離Xは溶接溜まりPの長さLの30〜45%である。他の例示の実施形態では、ワイヤ140及びビーム110は、溶接プロセスの間にビーム110の少なくとも一部がワイヤ140に作用するように溶接溜まりPの表面で又は溶接溜まりPの上の点で交差する。そのような実施形態では、溶接溜まりPにワイヤ140を溶着するためワイヤ140を溶融するのを支援するためにレーザービーム110が用いられる。ビーム110を用いてワイヤ140の溶融を支援することにより、ワイヤ140を溶接溜まりP内で素早く消費するにはその温度が低すぎる場合にワイヤ140が溶接溜まりPを急冷してしまうのを防止するのを支援する。しかしながら、前で述べたように、(図15に示すように)一部の実施形態では、フィラーワイヤ140の溶融は溶接溜まりの熱によって達成されるため、エネルギー源120及びビーム110はフィラーワイヤ140のどの部分もはっきりとは溶融しない。
図15に示す実施形態では、ワイヤ140はビーム110に後行し、ビーム110と並んでいる。しかしながら、ワイヤ140は(移動方向で)ビーム110に先行することができるため、本考案はこの構成に限定されない。また、移動方向でワイヤ140がビームと並んでいる必要はなく、ワイヤの好適な溶融が溶接溜まりで起こる限り、任意の方向から溶接溜まりにワイヤを当ててもよい。
図16A〜図16Fは、レーザービーム110の足跡(footprint)を示した状態の様々な溶融溜まりPを示す。図示のように、一部の例示の実施形態では、溶融溜まりPは円形の足跡を有する。しかしながら、本考案の実施形態はこの構成に限定されない。例えば、溶接溜まりは楕円形又は他の形状を有することも考えられる。
また、図16A〜図16Fでは、断面が円形のビーム110を図示している。ここでも、本考案の他の実施形態はこれに関連して限定されない。何故なら、ビーム110は溶接溜まりPを有効に形成するために楕円、矩形又は他の形状を有することができるからである。
一部の実施形態では、レーザービーム110は溶接溜まりPに対して静止可能である。即ち、ビーム110は、溶接の間に溶接溜まりPに対して比較的一定の位置に留まる。しかしながら、図16A〜図16Dで例示するように、他の実施形態はそのような形に限定されない。例えば、図16Aは、ビーム110が溶接溜まりPの周りを円状に動かされる実施形態を示す。この図では、ビーム110における少なくとも1つの点が溶接溜まりの中心Cと常に重なるようにビーム110が移動する。他の実施形態では、円状パターンが用いられるが、ビーム110は中心Cと接触しない。図16Bはビームが1つの線に沿って前後に移動される実施形態を示す。この実施形態は、所望の溶接溜まりPの形状に応じて溶接溜まりPを長くするか又はその幅を広げるのに用いることができる。図16Cは異なる2つのビーム断面を用いる実施形態を示す。第1のビーム断面110は第1の形状を有し、第2のビーム断面110’は第2の断面を有する。そのような実施形態は、溶接溜まりP内のある点で溶け込みを大きくしつつ、(必要に応じて)より大きな溶接溜まりのザイズを維持するのに用いることができる。この実施形態は、1つのレーザー120を用いて、レーザーのレンズ又は光学の使用によりそのビーム形状を変化させることにより又は複数のレーザー120の使用により実現できる。図16Dは、溶接溜まりPにおいて楕円状に動かされるビーム110を示す。ここでも、そのようなパターンは必要に応じて溶接溜まりPを長くするか又はその幅を広げるのに用いることができる。ビーム110を別の形で移動させて溶接溜まりPを形成することができる。
図16E及び図16Fは、異なるビーム強度を用いたワークピースW及び溶接溜まりPの断面を示す。図16Eは、より幅広のビーム110によって形成された浅く幅が広い溶接溜まりPを示す一方、図16Fは、通常「キーホール」と呼ばれる深く幅が狭い溶接溜まりPを示す。この実施形態では、ビームは、その焦点がワークピースWの上面の近くになるように集束される。そのような集束により、ビーム110はワークピースの全深さを貫通することができ、ワークピースWの底面上に後部ビード(back bead)BBを形成するのを支援できる。ビームの強度及び形状は、溶接の間の溶接溜まりの所望の特性に基づいて決定されることになる。
レーザー120は任意の既知の方法及び装置により移動、平行移動又は操作することができる。レーザーの動き及び光学は一般的に知られているため、本明細書ではそれらについての詳述を省略する。図17は、本考案の例示の実施形態に係るシステム1700を示す。システム1700では、レーザー120を動かすことができ、動作の間にその光学(そのレンズ等)を変更又は調整することができる。このシステム1700では、検知/コントロールユニット195がモーター1710及び光学駆動ユニット1720の双方に連結されている。モーター1710は、溶接溜まりに対するビーム110の相対位置を溶接の間に動かすことができるようにレーザー120を動かすか又は平行移動させる。例えば、モーター1710は、例えばビーム110を前後に平行移動させたり、円状に動かしたりする。同様に、光学駆動ユニット1720は、レーザー120の光学を制御するよう検知/コントロールユニット195から指示を受ける。例えば、光学駆動ユニット1720はビーム110の焦点をワークピースの表面に対して動かすか又は変化させることができるため、溶接溜まりの溶け込み又は深さが変更される。同様に、光学駆動ユニット1720はレーザー120の光学を変化させてビーム110の形状を変更する。そのため、溶接の間、検知/コントロールユニット195はレーザー120及びビーム110を制御して、作業の間に溶接溜まりの特性を維持及び/又は変更する。
図7Bを参照して前で説明したように、本考案に合致するホットワイヤレーザー溶接は、アーク型溶接プロセス又はレーザーのみ(laser only)の溶接プロセスでは困難であり得る狭い間隙の溶接を可能にする。前で説明した利点に加えて、本考案のホットワイヤレーザー溶接は、従来のアーク溶接プロセスでは不可能であった、例えば10mm未満の薄肉のワークピースの溶接を可能にする。これは、溶接の深さが材料の厚さよりも大きい場合にとりわけ当てはまる。例えば、図20Aに示すように、継手の深さは各ワークピース115A/115Bの厚さよりも大きい。即ち、本考案の例示の実施形態では、継手の深さ又は溶接ビードの深さはワークピースの少なくとも一方の厚さよりも大きく、他の実施形態では、ビードは双方のワークピースの厚さよりもその深さが大きい。しかしながら、GMAW等のアーク溶接プロセスでは、より幅広の溶接溜まりと、ワークピースを変形させ得るより高い入熱とが得られる傾向にある。何故なら、そのような方法では過剰な充填材が必要だからである。これは、前で説明したように、アーク溶接プロセスでは、シールドガスを提供し、溶接溝の鉄の側壁がアークに干渉するのを防止するためにより広い間隙が必要だからである。過剰な充填材を溶融するのに必要な入熱は薄肉のワークピースを変形させ得る。
アーク溶接プロセスでは、継手の間隙の幅を狭くする試みは別の問題に繋がり得る。例えば、図20Aに示すように、アーク型プロセスにおける溶接溜まりは深い溶け込みなしに継手をブリッジでき、これは完成した継手において応力の押し上げ要因(stress riser)になる。それに加えて、図20Aに示すように、薄肉のワークピース115Aと115Bとを接合する場合、アーク型プロセスでは幅広の溶接キャップができ、溶接部の深さを判断するのを困難にする。一般に、ワークピース115B上で見える熱ライン(visible heat line)116は溶接溜まりの溶け込みの深さの指標、即ち溶接継手の底部の指標になる。しかしながら、GMAWプロセス等の一般的なアーク溶接プロセスにおける幅広の溶接キャップは、ワークピース115B等の薄いワークピースの外端を覆う。ワークピースの上部外端は溶接継手の上部に対応する。ワークピース115Bの上部外端(即ち、溶接継手の上部)がどこにあるかが分からなければ、溶け込みの深さを知るのが難しい。
レーザーのみの溶接プロセスでは、入熱及び溶接キャップのサイズに関する上記の欠点を制御することができるが、レーザーのみの溶接プロセスには他の欠点がある。例えば、レーザーのみの溶接プロセスでは、ワークピースを溶融して溶接溜まりを形成する強度を提供するために肉盛型のプロセスよりもレーザーがより集束される。しかしながら、一般的に、ワークピースは、例えば1mm未満の間隙等、非常にタイトにフィットしなければならない。さもなければ、レーザーは継手内の間隙を通過する及び/又はレーザーにより形成された溶接溜まりは間隙をブリッジすることができない。
図20Bに示すように、本考案に合致するホットワイヤレーザー溶接プロセスは前で説明した欠点を解消することができる。それに加えて、該プロセスはホットワイヤレーザープロセスであるため、プロセスに関連するスパッタがないか又は少なく、シールドガスも必要としない。レーザー及びホットワイヤのセットアップ及び制御は、図7Bに示すレーザー120及びホットワイヤ140のものと同様である。従って、ホットワイヤレーザーシステムのセットアップ及び制御のさらなる説明は省略する。図20Bではワークピース115A及び115Bが狭い間隙GPと共に配置されている。間隙GPは、ワークピース115A及び115B並びにホットフィラーワイヤ140の溶融により形成される溶接ビードのブリッジ能力に依存する。しかしながら、間隙GPはワイヤ140の直径の1〜3倍の平均間隙幅を有することが考えられる。他の例示の実施形態では、平均間隙幅はワイヤ140の直径の1〜2倍である。一般に、平均間隙幅は継手の深さのための継手の各側壁間の平均距離を意味する。本考案の例示の実施形態では、レーザー120及びホットワイヤ140は、ホットワイヤ140の直径の約2倍の溶接溜まりを形成する。また、(前で説明した)本考案の実施形態の特性により、本考案のプロセスでは溶け込み深さをホットワイヤ140の直径の4〜10倍とすることができる一方、本考案の他の例示の実施形態では、溶け込みをホットワイヤ140の直径の6〜10倍にすることができる。なお、上記の説明では「溶け込み」深さに言及しているが、これは上盛り深さも含まれることが分かる。例えば、図20Aに示すように、ワークピース間に間隙が存在するため、レーザーはワークピースの深さを完全に貫通する必要はなく、図示のように継手の間隙に溶接ビードを上盛りするのに用いられる。一部の実施形態では、ワークピースを完全に通過するのとは対照的に継手を上盛りするため、ワークピースにキーホールを形成するのにレーザーを用いる場合よりも必要となるレーザーのエネルギーが少ない。また、本考案の実施形態の利点から、ワークピースの厚みは比較的薄いものでもよい。例えば、図20Bに示すように、ワークピース115A及び115Bは溶接継手において4〜15mmの厚さを有し、一部の実施形態では4〜10mmの厚さを有し得るが、それによってあきらかな変形がもたらされることはない。そのような厚さは、溶接継手における溶接継手の深さのためのワークピースの平均厚さであり、溶接継手の長さ全体のための長さであってもいいしなくてもよい。そのため、本考案の例示の実施形態は、従来の溶接作業では得ることができない間隙の幅が非常に狭いが溶け込みが深い溶接継手を提供することができる。
図20Bに示すように、前で説明したホットワイヤレーザープロセスは継手の根に至る溶け込みを生成し、一般的なアーク溶接プロセスよりも少ない充填材及び入熱を用いて強い継手を形成する。それに加えて、溶着速度及びワイヤ送給速度は従来のアーク溶接プロセスのものと同等である。例えば、溶接パラメータに基づいて、100ipmよりも速い移動速度及び400ipmより速いワイヤ送給速度を実現できる。また、アーク型プロセスのように溶接キャップが薄肉のワークピース115Bの上端を覆うことがないため、溶接部の検査が容易である。ワークピース115Bの上部外端を見ることができるため、継手の上部(上端)と継手の底部(熱ライン116)との間の距離を容易に測定できる。
図1、図14及び図17のそれぞれでは、レーザー電源130、ホットワイヤ電源170及び検知/コントロールユニット195を明確性の点から別々に示している。しかしながら、本考案の実施形態では、これらの構成要素を単一の溶接システムに統合することができる。本考案の態様では、前で個別に説明した構成要素が別々の物理的ユニット又はスタンドアローン構造で維持されている必要はない。
特定の実施形態を参照しながら本考案を説明してきたが、当業者であれば本考案の範囲から逸脱することなく様々な変更が加えられ、同等物に置換され得ることが分かる。それに加えて、特定の状況又は材料を本考案の教示に適合するために、本考案の範囲から逸脱することなく多くの変更が加えられ得る。従って、本考案は開示した特定の実施形態に限定されず、本考案は添付の請求項の範囲に含まれる全ての実施形態を含む。
100 システム
110 レーザービーム
110A レーザービーム
115 ワークピース
115A ワークピース
115B ワークピース
116 熱ライン
120 レーザー装置
120A レーザー装置
121 ビームスプリッター
125 方向
130 電源
140 フィラーワイヤ
150 フィラーワイヤ送給装置
160 コンタクトチップ
170 電源
180 モーションコントローラ
190 ロボット
195 電流コントロールサブシステム
200 始動方法
220 ステップ
230 ステップ
240 ステップ
250 ステップ
260 ステップ
310 ステップ
320 ステップ
330 ステップ
340 ステップ
350 ステップ
410 電圧波形
411 点
412 点
420 電流波形
425 ランプ
430 間隔
440 設定値
450 出力電流レベル
510 電流波形
511 点
512 点
520 電流波形
525 加熱電流レベル
530 期間
601 重ね継手表面
601A 溶融溜まり
603 重ね継手表面
603A 溶融溜まり
605 表面
701 傾斜面
703 傾斜面
705 間隙
707 溶接ビード
801 溶接溜まり
803 溶接溜まり
901 溶接溜まり
903 溶接溜まり
1000 溶接継手
1010 レーザー源
1011 ビーム
1012 溶接溜まり
1020 レーザー源
1021 レーザービーム
1022 溶接溜まり
1030 フィラーワイヤ
1030A フィラーワイヤ
1110 コイル
1200 システム
1210 電源
1220 ユーザー入力部
1222 負極
1223 検知リード線
1230 CPU/コントローラ
1240 電圧検出回路
1250 パワーモジュール
1400 システム
1410 センサ
1420 センサ
1700 システム
1710 モーター
1720 光学駆動ユニット
1800 回路
1801 抵抗器
1803 スイッチ
1901 レーザーシュラウドアセンブリ
1903 ヒューム排出システム
A ポイント
B ポイント
BB バックビード
C 点/中心
D ポイント
E ポイント
L 長さ
P 溶接溜まり
WB 溶接ビード
X 距離
Z 距離

Claims (6)

  1. 溶接システムであって、
    複数のワークピースに高強度エネルギーを向けてオープンルート溶接継手に溶接溜まりを形成するための少なくとも1つの高強度エネルギー源と、
    少なくとも1つのフィラーワイヤにワイヤ加熱信号を提供し、該フィラーワイヤが前記溶接溜まりと接触した場合に該フィラーワイヤが前記溶接溜まり内で溶融する温度に該フィラーワイヤを加熱するための加熱電源と、
    溶接作業の間に前記フィラーワイヤが前記溶接溜まりと接触を維持するように前記フィラーワイヤを前記溶接溜まりに前進させるワイヤ送給機構と、
    を含み、
    前記加熱電源は前記フィラーワイヤの加熱信号からのフィードバックを観察し、該フィードバックが上限の閾値に達した場合に前記フィラーワイヤと前記溶接溜まりとの間にアークが発生しないように前記フィラーワイヤの加熱信号を止め、そして前記加熱電源は前記フィラーワイヤの加熱を続けるために前記フィラーワイヤの加熱信号をオンにし、
    前記オープンルート溶接継手は、前記フィラーワイヤの直径の1〜3倍の平均間隙を間に有する少なくとも2つのワークピースにより形成され、前記オープンルート溶接継手の深さは前記フィラーワイヤの直径の4〜10倍である、システム。
  2. 前記オープンルート溶接継手の深さは前記フィラーワイヤの直径の6〜10倍であり及び/又は前記平均間隙は前記フィラーワイヤの直径の1〜2倍である、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記オープンルート溶接継手における前記ワークピースの少なくとも一方の厚さは4〜15mmである、請求項1又は2に記載のシステム。
  4. 溶接の移動速度は少なくとも100ipmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
  5. 前記フィラーワイヤの加熱信号は、前記フィラーワイヤをその溶融温度の90%以上に加熱する、請求項1に記載のシステム。
  6. 前記閾値は電圧閾値であり及び/又は該電圧閾値は16ボルト以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
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