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JP2024143342A - ワーク加工用保護シートおよびワーク個片化物の製造方法 - Google Patents

ワーク加工用保護シートおよびワーク個片化物の製造方法 Download PDF

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JP2024143342A JP2023055968A JP2023055968A JP2024143342A JP 2024143342 A JP2024143342 A JP 2024143342A JP 2023055968 A JP2023055968 A JP 2023055968A JP 2023055968 A JP2023055968 A JP 2023055968A JP 2024143342 A JP2024143342 A JP 2024143342A
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Abstract

【課題】多数回の熱履歴を受けてもその変形量が少なく、かつ変形量が一定範囲であるワーク加工用保護シートを提供する。【解決手段】基材10と、当該基材の少なくとも一方の面側に設けられた緩衝層20と、当該基材の他方の面側に設けられた粘着剤層30とを有するワーク加工用保護シート1であって、該ワーク加工用保護シートの熱機械分析を行った際に、第1回の50℃加熱時の変形割合Df1が0.67%以内であり、第1回の加熱時の変形割合Df1と第2回50℃加熱時の変形割合Df2の差の絶対値が0.067%以内である、ワーク加工用保護シート。【選択図】図1

Description

本発明は、ワーク加工用保護シートおよびワーク個片化物の製造方法に関する。特に、ワークの裏面研削を行い、その応力等でワークを個片化する方法に好適に使用されるワーク加工用保護シート、および、当該ワーク加工用保護シートを用いるワーク個片化物の製造方法に関する。
各種電子機器の小型化、多機能化が進む中、それらに搭載される半導体チップも同様に、小型化、薄型化が求められている。チップの薄型化のために、半導体ウエハの裏面を研削して厚さ調整を行うことが一般的である。また、薄型化されたチップを得るために、ウエハの表面側から所定深さの溝をダイシングブレードにより形成した後、ウエハ裏面側から研削を行い、研削面を溝または溝近傍まで到達させてウエハを個片化し、チップを得る先ダイシング法(DBG:Dicing Before Grinding)と呼ばれる工法を利用することもある。DBGでは、ウエハの裏面研削と、ウエハの個片化を同時に行うことができるので、薄型チップを効率よく製造できる。
また、近年、先ダイシング法の変形例として、レーザーでウエハ内部に改質領域を設け、ウエハ裏面研削時の応力等でウエハの個片化を行う方法が提案されている。以下、この方法をLDBG(Laser Dicing Before Grinding)と記載することがある。LDBGでは、ウエハは改質領域を起点として結晶方向に切断されるため、ダイシングブレードを用いた先ダイシング法よりもチッピングの発生を低減できる。その結果、抗折強度に優れたチップを得ることができ、また、チップのさらなる薄型化に寄与できる。さらに、ダイシングブレードによりウエハ表面に所定深さの溝を形成するDBGと比較して、ダイシングブレードによりウエハを削り取る領域がないため、つまり、カーフ幅が極小であるため、チップの収率に優れる。
従来、半導体ウエハ等のワークの裏面研削時や、DBGやLDBGによるワークの個片化時には、ワークやその個片化物を保護し、また、ワーク及びワーク個片化物を保持するために、ワークにバックグラインドシートと呼ばれるワーク加工用保護シートを貼付するのが一般的である。裏面研削後には研削面に接着剤層を有する接着テープを貼付したり、あるいは保護膜を形成するための保護膜形成用テープを貼付する。その後、ワーク表面に貼付したワーク加工用保護シートは、紫外線等のエネルギー線を照射することによりその粘着力を低下させた後、剥離される。このような工程により、ワーク個片化物には接着剤層や保護膜形成層が形成される。
ワーク加工用保護シートとしては、基材と粘着剤層と緩衝層とを含む積層保護シートが使用されることがある。このようなワーク加工用保護シートの具体例は、たとえば特許文献1(特開2015-183008号公報)などに記載されている。緩衝層は、ワーク研削時に生じる振動を吸収し、また異物による凹凸差を緩和して、ワークを安定して平坦に保持するために設けられている。
特開2015-183008号公報
半導体機器の小型化が進み、チップ等のワーク個片化物の最終的な仕上げ厚みも薄くなる傾向にある。しかし、ワーク個片化物の薄化が進むに従い、ワーク個片化物が破損する「チッピング」と呼ばれる現象が増加した。この原因を鋭意探求したところ、本発明者らは以下の知見を得た。
ワーク裏面研削時には、ワーク加工用保護シートをワークの回路面に仮着し、水を噴霧しながらワークの裏面(回路面の反対面)を研削する。水を噴霧することで裏面研削時に発生する摩擦熱を除去し、また研削により発生するワークの研削屑や砥石の破片を洗い流している。以下、ワークの研削屑や砥石の破片を総称して「研削屑」と記載することがある。また、研削時に噴霧する水を「研削水」と記載することがある。
表面の凹凸差が大きな半導体ウエハ等のワークの裏面にワーク加工用保護シートを貼付する際に、ワーク加工用保護シートを加温し、粘着剤層を軟化させた後に、ワーク表面にワーク加工用保護シートを加熱貼付することがある。ワーク加工用保護シートを加熱することで、粘着剤層が軟化し、ワーク表面の凹凸差に追従して変形し、表面の凹凸を埋め込み、研削水が回路面に浸入することを確実に防止できる。
また、ワークの裏面研削後にさらにドライポリッシュと呼ばれる研磨を行うことがある。ドライポリッシュとは、個片化されたチップの裏面を乾式砥石により、鏡面仕上げする工程を言う。この工程を経ることで、チップ裏面の破砕層が減少し、抗折強度が高くなる。この際には水は噴霧しないため、ワークの研削面では摩擦熱が発生し、ワーク加工用保護シートが加熱される。
表面の凹凸差が大きなワークの裏面研削を行う際には、上記のように少なくとも2回は、ワーク加工用保護シートが加温される。このため、ワーク加工用保護シートは少なくとも2回の熱履歴を受ける。ワーク加工用保護シートが加温されると、一般に軟化し、変形する。前記したDBG法やLDBG法によれば、カーフ幅(チップ間隔)が極めて狭い形態で、ワーク加工用保護シート上にチップ群が得られる。特にLDBG法によればカーフ幅は実質的に0(ゼロ)である。
ワーク加工用保護シートを加温し、ワークに加熱貼付を行い、ワークを個片化すると、常温に戻った際に、ワーク加工用保護シートは加温前の形状、サイズに戻ろうとする。この際に、カーフ幅が狭小であると、チップ同士が接触し、チッピングが発生することがある。
また、ドライポリッシュ工程でワーク加工用保護シートが加温されると、再度ワーク加工用保護シートが変形し、チップ間隔が変化し、この際にもチッピングが発生する。
ワーク加工用保護シートが多数回の熱履歴を受けるとチッピング発生する可能性がさらに増大する。
このため、ワーク加工用保護シートが多数回の熱履歴を受けてもその変形量が少なく、かつ変形量が一定範囲であることが求められる。
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 基材と、当該基材の少なくとも一方の面側に設けられた緩衝層と、当該基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを有するワーク加工用保護シートであって、
該ワーク加工用保護シートの熱機械分析を下記条件で行った際に、第1回の加熱時の変形割合Df1が0.67%以内であり、第1回の加熱時の変形割合Df1と第2回加熱時の変形割合Df2の差の絶対値が0.067%以内である、ワーク加工用保護シート。
熱機械分析条件
サンプルサイズ:長さ20mm、幅4.5mm
チャック間隔:15mm
荷重:10g、昇温速度:3℃/分で23℃から50℃まで昇温し、23℃になるまで放冷後、再び荷重:10g、昇温速度:3℃/分で50℃まで昇温する。第1回の50℃到達時の変形割合をDf1(%)、第2回の50℃到達時の変形割合Df2(%)を測定する。
Df1、Df2は下記式より求める。
Df1=100×(S1-S0)/S0
Df2=100×(S2-S0)/S0
ここでS0は試験前のチャック間隔、S1は第1回の50℃到達時のチャック間隔、S2は第2回の50℃到達時のチャック間隔である。
(2) 第2回の50℃到達時の変形割合Df2(%)が0.67%以下である、(1)に記載のワーク加工用保護シート。
(3) 前記緩衝層が、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物の硬化物である、(1)に記載のワーク加工用保護シート。
(4) 表面に溝が形成され、又は内部に改質領域が形成されたワークの裏面を研削することによりワークをワーク個片化物に個片化する工程において、ワークの表面に貼付されて使用される、(1)に記載のワーク加工用保護シート。
(5) 基材と、当該基材の両方の面に設けられた緩衝層と、一方の緩衝層の表面に設けられた粘着剤層とを有する(1)に記載のワーク加工用保護シート。
(6) 基材の両方に面に設けられた緩衝層が、いずれもポリオレフィン系の樹脂フィルムである、(5)に記載のワーク加工用保護シート。
(7) 上記(1)~(6)のいずれかに記載のワーク加工用保護シートをワークの表面に加熱貼付する工程と、
前記ワークの表面側から溝を形成し、又は前記ワークの表面若しくは裏面からワーク内部に改質領域を形成する工程と、
前記保護シートが表面に貼付され、かつ前記溝又は前記改質領域が形成されたワークを、裏面側から研削して、前記溝又は前記改質領域を起点として複数のワーク個片化物に個片化させる工程と、
個片化後にドライポリッシュを行う工程と、を備えるワーク個片化物の製造方法。
本発明に係るワーク加工用保護シートでは、ワーク加工用保護シートが多数回の熱履歴を受けてもその変形量が少なく、かつ変形量が一定範囲にある。このため、ワーク加工用保護シートが多数回の熱履歴を受けても、ワーク個片化物の接触が無く、高い収率でワーク個片化物が得られる。
図1は、本実施形態に係るワーク加工用保護シートの一例を示す断面模式図である。 図2は、本実施形態に係るワーク加工用保護シートが半導体ウエハの表面に貼付された様子を示す断面模式図である。
以下に、本発明に係るワーク加工用保護シートについて具体的に説明する。まず、本明細書で使用する主な用語を説明する。
ワークとは本実施形態に係るワーク加工用保護シートが貼付されて、その後、個片化される板状体を言う。ワークとしては、円形(ただし、オリエンテーションフラットを有する場合を含む)のウエハ、角形のパネルレベルパッケージおよびモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)等が挙げられ、その中でも本発明の効果が得られ易い観点から、ウエハが好ましい。ウエハとしては、例えばシリコンウエハ、ガリウム砒素ウエハ、炭化ケイ素ウエハ、窒化ガリウムウエハ、インジウム燐ウエハなどの半導体ウエハや、ガラスウエハ、タンタル酸リチウムウエハ、ニオブ酸リチウムウエハなどの絶縁体ウエハであってもよく、また、ファンアウトパッケージ等の作製に用いる樹脂と半導体から成る再構成ウエハであってもよい。本発明の効果が得られ易い観点から、ウエハとしては、半導体ウエハまたは絶縁体ウエハが好ましく、半導体ウエハがより好ましい。
ワーク加工用保護シートとは、基材と、基材の少なくとも一方の面側に設けられた緩衝層と、基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを含む積層体を意味し、これら以外の他の構成層を含むことを妨げない。例えば、粘着剤層側の基材表面にはプライマー層が形成されていてもよく、粘着剤層の表面には、使用時まで粘着剤層を保護するための剥離シートが積層されていてもよい。緩衝層は、基材の両面に設けられていてもよく、この場合、一方の緩衝層の表面に粘着剤層が形成される。緩衝層は、基材の表面に直接形成されていてもよく、易接着層などの他の層を介して形成されていてもよい。基材の両面に緩衝層を設け、その一方の緩衝層の表面に粘着剤層を設ける場合も同様であり、粘着剤層が設けられる緩衝層の表面には、プライマー層が形成されていてもよい。また、ワーク加工用保護シートは、帯電防止性を有する構成層を有していてもよい。さらに、基材は単層であってもよく、多層であってもよい。緩衝層および粘着剤層も同様である。
半導体加工用保護シートはワーク加工用保護シートの一例であり、「半導体加工用」とは、半導体ウエハの搬送、裏面研削、ダイシングや半導体チップのピックアップ等の各工程において使用できることを意味する。
ワークの個片化は、ワークを回路毎に分割し、ワーク個片化物を得ることを言う。例えば、ワークが半導体ウエハである場合には、ワーク個片化物は半導体チップであり、ワークがパネルレベルパッケージまたはモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)である場合には、ワーク個片化物は半導体パッケージである。
ワークの「表面」は、回路、電極等が形成された面を指し、ワークの「裏面」は、回路等が形成されていない面を指す。電極としては、バンプ等の凸状電極であってもよい。
DBG(Dicing Before Grinding)は、ワーク(例えばウエハ)の表面側に所定深さの溝を形成した後、ワーク裏面側から研削を行い、研削によりワークを個片化する方法を言う。ワークの表面側に形成される溝は、ブレードダイシング、レーザーダイシングやプラズマダイシングなどの方法により形成される。
また、LDBG(Laser Dicing Before Grinding)は、DBGの変形例であり、レーザーでワーク(例えばウエハ)内部に改質領域を設け、ワーク裏面研削時の応力等でワークの個片化を行う方法を言う。
「ワーク個片化物群」とは、ワークの個片化後に、本発明に係るワーク加工用保護シート上に保持された、複数のワーク個片化物をいう。これらのワーク個片化物は、全体として、ワークの形状と同様の形状を構成する。また、「チップ群」は「ワーク個片化物群」の一例であり、ウエハの個片化後に、本実施形態に係るワーク加工用保護シート上に保持されている複数のチップをいう。これらのチップは、全体として、ウエハの形状と同様の形状を構成する。例えば、半導体チップ群は、半導体ウエハの個片化後に、半導体加工用保護シート上に保持されている複数の半導体チップをいい、これらの半導体チップは、全体として、半導体ウエハの形状と同様の形状を構成する。
「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
「エネルギー線」は、紫外線、電子線等を指し、好ましくは紫外線である。
「重量平均分子量」は、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8120GPC」に、高速カラム「TSK guard column HXL-H」、「TSK Gel GMHXL」、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用い、カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
剥離シートは、粘着剤層を剥離可能に支持するシートである。シートとは、厚みを限定するものではなく、フィルムを含む概念で用いる。
粘着剤層用組成物等の組成物に関する説明における質量比は、有効成分(固形分)に基づいており、特段の説明が無い限り、溶媒は算入しない。
次に、本発明に係るワーク加工用保護シートの各部材の構成をさらに詳細に説明する。なお、本発明に係るワーク加工用保護シートを、単に「保護シート」と記載することがある。
(1.ワーク加工用保護シート)
本実施形態に係るワーク加工用保護シート1は、基材10と、基材10の少なくとも一方の面側に設けられた緩衝層20と、基材10の他方の面側に設けられた粘着剤層30とを有する。その具体的な一例は、図1に示すように、基材10と、基材の片面に形成された緩衝層20と、基材の他面に形成された粘着剤層30とを有する。また、基材10と、基材の両面に形成された緩衝層20と、一方の緩衝層20の表面に形成された粘着剤層30とを有する構造であってもよい。ワーク加工用保護シート1は、本発明の効果が得られる限りにおいて、他の層を有していてもよい。すなわち、ワーク加工用保護シートが、基材、緩衝層および粘着剤層を有していれば、たとえば、基材と緩衝層との間に他の層が形成されていてもよいし、基材と粘着層との間に他の層が形成されていてもよい。
図2に示すように、被着体としてのワーク(例えば半導体ウエハ)100の回路面、すなわち、ワーク(例えば半導体ウエハ)100の表面100aに、粘着剤層30が貼付されることにより、本実施形態に係るワーク加工用保護シート(具体的には半導体加工用保護シート)1は半導体ウエハ100の裏面100bを研削する際に半導体ウエハ100の表面100aを保護する。
以下、ワーク加工用保護シートの構成要素について詳細に説明する。
(2.基材)
基材10は、ウエハ等のワークの裏面研削前にワークを支持でき、裏面研削後のワークまたはワーク個片化物群を保持できる材料で構成されていれば制限されない。たとえば、基材として、バックグラインドシートの基材として使用されている各種の樹脂フィルムが例示される。基材は、1つの樹脂フィルムからなる単層フィルムから構成されていてもよいし、複数の樹脂フィルムが積層された複層フィルムから構成されていてもよい。
(2.1 基材の物性)
本実施形態では、基材は剛性が高いことが好ましい。基材の剛性が高いことにより、裏面研削時の振動等を抑制でき、その結果、ウエハ等の支持および保持性能が向上し、ウエハ等の破損やクラックがより低減される。また、ワーク加工用保護シートをウエハ等から剥離する際の応力を小さくすることが可能になり、剥離時に生じるウエハ等の破損やクラックがより低減される。さらに、ワーク加工用保護シートをウエハ等に貼付する際の作業性も良好になる。具体的には、基材の23℃におけるヤング率は、1000MPa以上であることが好ましく、2000MPa以上であることがより好ましい。ヤング率の上限は特に制限されないが、取り扱い易さの観点から、10000MPa以下が好ましく、6000MPa以下がより好ましく、5000MPa以下が特に好ましくい。
基材の厚さは、本実施形態では、20μm以上800μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることがより好ましく、40μm以上80μm以下であることが特に好ましい。基材の厚さが上記範囲にあると、裏面研削時にウエハ等を確実に保持でき、クラックの発生をより抑制しうる。
(2.2 基材の材質)
基材の材質としては、基材のヤング率が上記の範囲内となるように材料を選択すればよい。本実施形態では、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、二軸延伸ポリプロピレンから選ばれる1種以上であることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることがさらに好ましい。
また、基材は、本発明の効果を損なわない範囲において、可塑剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、触媒等を含んでもよい。また、基材は、透明なものであっても、不透明なものであってもよく、所望により着色または蒸着されていてもよい。
また、基材の少なくとも一方の主面には、他の層との密着性を向上させるために、コロナ処理等の接着処理を施してもよい。また、基材は、主面の少なくとも一方に、主面上に形成される緩衝層との密着性を向上させるために、薄いプライマー層を有してもよい。
プライマー層を形成するプライマー層形成用組成物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等を含む組成物が挙げられる。プライマー層形成用組成物には、必要に応じて、架橋剤、光重合開始剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等を含有してもよい。
プライマー層の厚さは、好ましくは0.01~10μm、より好ましくは0.03~5μmである。プライマー層の材質は柔らかいため、基材の剛性に与える影響は小さく、例えば、基材の引張荷重とプライマー層付き基材の引張荷重とは実質的に同一である。
例えば、基材のヤング率は、樹脂組成の選択、可塑剤の添加、樹脂フィルム製造時の延伸条件などにより制御できる。
(3.粘着剤層)
粘着剤層30は、ワークの回路面に貼付され、回路面から剥離されるまで、回路面を保護し、ワークまたはワーク個片化物を支持する。粘着剤層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。粘着剤層を単層とすることで、コストは低減され、またワーク加工用保護シートを剥離する際に、粘着剤層内の層間剥離も防止できる。粘着剤層が複数層を有する場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層を構成する層の組み合わせは特に制限されない。
粘着剤層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは3μm以上200μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上70μm以下、特に好ましくは15μm以上45μm以下である。粘着剤層の厚さが上記の範囲内であることにより、ワークの割れやワーク個片化物の移動を抑制できる。
なお、粘着剤層の厚さは、粘着剤層全体の厚さを意味する。たとえば、複数層から構成される粘着剤層の厚さは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
(3.1 粘着剤層の組成)
粘着剤層の組成は、粘着剤層がワークの回路面を保護できる程度の粘着性を有していれば特に制限されない。本実施形態では、粘着剤層は、アクリル系粘着剤層用組成物、ウレタン系粘着剤層用組成物、ゴム系粘着剤層用組成物、シリコーン系粘着剤層用組成物等から構成され、粘着性を発現し得る重合体(粘着性重合体)を含有することが好ましい。粘着剤層は、ワークとの粘着性を効率よく制御する観点から、アクリル系粘着剤層用組成物から構成されることがより好ましい。アクリル系粘着剤層用組成物は、粘着性重合体としてアクリル系重合体を含有する。
また、粘着剤層は、エネルギー線硬化性の粘着剤層用組成物から構成されることが好ましい。粘着剤層は、エネルギー線硬化性の粘着剤層用組成物から構成されることで、エネルギー線照射による硬化前には、十分な粘着力で回路面を保護でき、硬化後においては容易に剥離できる。
(3.2 粘着剤層用組成物)
以下では、粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合を例にとり、粘着剤層を構成する粘着剤層用組成物を詳述するが、これらは非制限的な例示であり、粘着剤層は、非エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤層用組成物、ウレタン系粘着剤層用組成物、ゴム系粘着剤層用組成物、シリコーン系粘着剤層用組成物等から構成されていてもよい。
エネルギー線硬化性の粘着剤層用組成物は、粘着性重合体と当該粘着性重合体とは別にエネルギー線硬化性化合物を含有していてもよく、粘着性重合体自体がエネルギー線硬化性を有していてもよい。粘着性重合体自体がエネルギー線硬化性を有する場合、粘着性重合体にエネルギー線硬化性基が導入されるが、エネルギー線硬化性基は粘着性重合体の主鎖または側鎖に導入されることが好ましい。
また、粘着性重合体とは別にエネルギー線硬化性化合物が配合される場合、そのエネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線硬化性基を有するモノマー、オリゴマーが使用される。具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート,ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられる。オリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が10000未満のオリゴマーであり、これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
本実施形態では、粘着剤層用組成物におけるエネルギー線硬化性化合物の含有量は、エネルギー線硬化性の炭素-炭素二重結合量を制御する観点から、粘着性重合体100質量部に対して、好ましくは0.1~300質量部、より好ましくは1~100質量部、さらに好ましくは5~50質量部である。
以下、粘着剤層用組成物に含有されるエネルギー線硬化性の粘着性重合体が、エネルギー線硬化性のアクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(A)」ともいう)である場合についてより詳細に説明する。
(3.2.1 アクリル系重合体(A))
アクリル系重合体(A)は、エネルギー線硬化性基が導入され、かつ(メタ)アクリレート由来の構成単位を有するアクリル系重合体である。エネルギー線硬化性基は、アクリル系重合体の側鎖に導入することが好ましい。
アクリル系重合体(A)は、アルキル(メタ)アクリレート(a1)由来の構成単位と、官能基含有モノマー(a2)由来の構成単位とを有するアクリル系共重合体(A0)に、エネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性物質(Xa)を反応させた反応物であることが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート(a1)としては、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレートが使用される。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アクリル系共重合体(A0)における、アルキル(メタ)アクリレート(a1)由来の構成単位の含有量は、形成される粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、アクリル系共重合体(A0)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは40~98質量%、より好ましくは45~95質量%、さらに好ましくは50~90質量%である。
官能基含有モノマー(a2)は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基、窒素原子含有環基、アルコキシシリル基等の官能基を有するモノマーである。官能基含有モノマー(a2)としては、上記した中でも、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、及びエポキシ基含有モノマーから選ばれる1種以上が好ましく、アクリル系共重合体(A0)に、エネルギー線硬化性物質(Xa)を反応させ易い観点から、ヒドロキシ基含有モノマーがより好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール等が挙げられる。
官能基含有モノマー(a2)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル系共重合体(A0)における、官能基含有モノマー(a2)由来の構成単位の含有量は、アクリル系共重合体(A0)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは1~35質量%、より好ましくは3~32質量%、さらに好ましくは6~30質量%である。
含有量が1質量%以上であれば、エネルギー線硬化性物質(Xa)との反応点となる官能基を一定量確保できる。そのため、エネルギー線の照射により粘着剤層を適切に硬化できるので、エネルギー線照射後の粘着力を低くすることが可能になる。また、含有量が30質量%以下であれば、粘着剤層用組成物の塗布剤を塗布し、粘着剤層を形成する際、十分な塗布剤のポットライフを確保することができる。
アクリル系共重合体(A0)は、アルキル(メタ)アクリレート(a1)と官能基含有モノマー(a2)の共重合体であってもよいが、(a1)成分と、(a2)成分と、これら(a1)及び(a2)成分以外のその他のモノマー(a3)との共重合体であってもよい。
その他のモノマー(a3)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。その他のモノマー(a3)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エネルギー線硬化性物質(Xa)は、エネルギー線硬化性基と、アクリル系共重合体(A0)の(a2)成分由来の構成単位中の官能基と反応し得る置換基(以下、単に「反応性置換基」ともいう)とを有する化合物である。
エネルギー線硬化性基は、エネルギー線硬化性の炭素-炭素二重結合を含む基であればよい。たとえば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
エネルギー線硬化性物質(Xa)における反応性置換基としては、官能基含有モノマー(a2)が有する官能基に応じて適宜変更すればよいが、例えば、イソシアネート基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、反応性等の観点から、イソシアネート基が好ましい。エネルギー線硬化性物質(Xa)がイソシアネート基を有すると、例えば、官能基含有モノマー(a2)の官能基がヒドロキシ基である場合に、アクリル系共重合体(A0)に容易に反応することが可能になる。
具体的なエネルギー線硬化性物質(Xa)としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらのエネルギー線硬化性物質(Xa)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エネルギー線硬化性の炭素-炭素二重結合量を制御する観点から、エネルギー線硬化性物質(Xa)は、アクリル系共重合体(A0)における官能基含有モノマー(a2)由来の官能基全量(100当量)のうち、好ましくは50~98当量、より好ましくは55~93当量が官能基に反応される。
アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万~160万、より好ましくは40万~140万である。このようなMwを有することで、粘着剤層に適切な粘着性を付与することが可能になる。
粘着性重合体がエネルギー線硬化性を有する場合であっても、粘着剤層用組成物には、粘着性重合体以外の上述のエネルギー線硬化性化合物が含まれることが好ましい。
(3.2.2 架橋剤)
粘着剤層用組成物は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。粘着剤層用組成物は、例えば、ヒドロキシ基等の官能基を有する粘着性重合体と、架橋剤中の官能基とが反応して架橋する。粘着剤層は、粘着性重合体が架橋剤によって架橋されることで、粘着剤層としての機能を発揮しやすくなる。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤が挙げられ、これらの中では、イソシアネート系架橋剤が好ましい。架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イソシアネート系架橋剤としては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートの多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン等)アダクト体などが挙げられる。
架橋剤の含有量は、粘着性重合体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~7質量部である。
(3.2.3 光重合開始剤)
粘着剤層用組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。粘着剤層用組成物が、光重合開始剤を含有することで、粘着剤層用組成物の紫外線等によるエネルギー線硬化を進行させやすくなる。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジフェニサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ベンジルジメチルケタール、ジベンジル、ジアセチル、1-クロルアントラキノン、2-クロルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-フォスフィンオキサイド等の低分子量重合開始剤、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}等のオリゴマー化された重合開始剤などが挙げられる。なお、光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の含有量は、粘着性重合体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~7質量部、さらに好ましくは0.05~5質量部である。
粘着剤層用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。これらの添加剤を含有する場合、それぞれの添加剤の含有量は、粘着性重合体100質量部に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.02~2質量部である。
なお、粘着剤層の粘着力は、例えば、粘着性重合体(例えばアクリル系重合体(A))を構成するモノマーの種類及び量、粘着性重合体に導入されるエネルギー線硬化性基の量等により調整可能である。例えば、エネルギー線硬化性基の量を増やすと、硬化後の粘着力は低くなる傾向にある。しかしながら、粘着剤層の粘着力は、上記の要因以外の要因によっても調整可能である。たとえば、粘着剤層用組成物に配合される架橋剤の量、光重合開始剤の量等によっても適宜調整可能である。
(4.緩衝層)
緩衝層20は、図1に示すように、粘着剤層が形成されている基材の主面と反対側の主面上に形成されている。また、基材10の両面に緩衝層20が形成され、一方の緩衝層の表面に粘着剤層が形成された構成であってもよい。緩衝層20は、基材と比較して軟質の層であり、ウエハ等のワークの裏面研削時の振動や応力を緩和して、ワークに割れ及び欠けが生じることを防止する。また、ワーク加工用保護シートを貼付したワークは、裏面研削時に、ワーク加工用保護シートを介して吸着テーブル上に配置されるが、ワーク加工用保護シートの構成層として緩衝層を有することで、ワークが吸着テーブルに適切に保持されやすくなる。また、吸着テーブル上に異物があっても、緩衝層の変形により異物の凹凸が吸収でき、ワークを平滑かつ均一な厚さに研削できる。
緩衝層の厚さは、15~80μmであることが好ましく、20~70μmであることがより好ましい。緩衝層の厚さを上記範囲とすることで、緩衝層が裏面研削時の応力を適切に緩和できる。
緩衝層は、エネルギー線硬化性化合物を含む緩衝層用組成物から形成される層であってもよいし、ポリオレフィン系の樹脂フィルムであってもよい。
<ポリオレフィン系の樹脂フィルム>
ポリオレフィン系の樹脂フィルムとしては、密度900kg/m3以上のポリオレフィン樹脂からなることが好ましく、密度930kg/m3以上のポリオレフィン樹脂からなることがさらに好ましく、密度950kg/m3以上のポリオレフィン樹脂からなることが特に好ましい。かかるポリオレフィン樹脂からなるフィルムとしては、LDPEフィルム、LLDPEフィルム、HDPEフィルム等が挙げられ、中でも密度920~942kg/m3のLDPEフィルム、密度942~980kg/m3のHDPEフィルムが好ましく用いられる。特に、緩衝層がポリオレフィン系の樹脂フィルムからなる場合には、基材10の両面に緩衝層20が形成され、一方の緩衝層の表面に粘着剤層が形成された構成であることが好ましい。
緩衝層はそのすべてが上記ポリエチレン(PE)フィルムから構成されていてもよい。また積層フィルムであってもよい。
<エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物から形成される層>
エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物は、エネルギー線が照射されることで硬化することが可能になる。
また、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物は、より具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)を含むことが好ましい。また、緩衝層形成用組成物は、上記(a1)に加えて、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(a2)及び/又は官能基を有する重合性化合物(a3)を含有することがより好ましい。また、緩衝層形成用組成物は、上記(a1)~(a3)成分に加えて、多官能重合性化合物(a4)を含有することが好ましい。さらに、緩衝層形成用組成物は光重合開始剤を含有することが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤や樹脂成分を含有してもよい。
以下、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物中に含まれる各成分について詳細に説明する。
(ウレタン(メタ)アクリレート(a1))
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)とは、少なくとも(メタ)アクリロイル基及びウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合硬化する性質を有するものである。ウレタン(メタ)アクリレート(a1)は、オリゴマーまたはポリマーである。
成分(a1)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~60,000、さらに好ましくは10,000~30,000である。また、成分(a1)中の(メタ)アクリロイル基数(以下、「官能基数」ともいう)としては、単官能、2官能、もしくは3官能以上でもよいが、単官能又は2官能であることが好ましい。
成分(a1)は、例えば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。なお、成分(a1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
成分(a1)の原料となるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されない。具体的なポリオール化合物としては、例えば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル型ポリオールまたはポリカーボネート型ポリオールが好ましい。
なお、ポリオール化合物としては、2官能のジオール、3官能のトリオール、4官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、2官能のジオールが好ましく、ポリエステル型ジオールまたはポリカーボネート型ジオールがより好ましい。
多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類等が挙げられる。
これらの中でも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが好ましい。
上述のポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させてウレタン(メタ)アクリレート(a1)を得ることができる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1分子中にヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。
具体的なヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール、ビニルフェノール、ビスフェノールAのジグリシジルエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応物;等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
末端イソシアネートウレタンプレポリマー及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させる条件としては、必要に応じて添加される溶剤、触媒の存在下、60~100℃で、1~4時間反応させる条件が好ましい。
緩衝層形成用組成物中の成分(a1)の含有量は、緩衝層形成用組成物の全量(100質量部)に対して、好ましくは10~70質量部、より好ましくは20~60質量部である。
(環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(a2))
成分(a2)は、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物であり、さらには、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、より好ましくは1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。成分(a2)を用いることで、得られる緩衝層形成用組成物の成膜性を向上させることができる。
なお、成分(a2)の定義と、後述する成分(a3)の定義とは重複する部分があるが、重複部分は成分(a3)に含まれる。例えば、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基と、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基と、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基とを有する化合物は、成分(a2)と成分(a3)の両方の定義に含まれるが、本発明において当該化合物は、成分(a3)に含まれるものとする。
成分(a2)が有する脂環基又は複素環基の環形成原子数は、好ましくは6~20であるが、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~16、特に好ましくは7~12である。当該複素環基の環構造を形成する原子としては、例えば、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
なお、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造の化合物の当該環自体を構成する原子の数を表し、環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子に結合した水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。
具体的な成分(a2)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート等の脂環基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等の複素環基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
なお、成分(a2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環基含有(メタ)アクリレートの中ではイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
緩衝層形成用組成物中の成分(a2)の含有量は、緩衝層形成用組成物の全量(100質量部)に対して、好ましくは0~80質量部、より好ましくは0~70質量部である。
(官能基を有する重合性化合物(a3))
成分(a3)は、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基を含有する重合性化合物であり、さらには、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、より好ましくは1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
成分(a3)は、成分(a1)との相溶性が良好であり、緩衝層形成用組成物の粘度を適度な範囲に調整しやすくなる。また、緩衝層を比較的薄くしても緩衝性能が良好になる。
成分(a3)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有化合物、アミド基含有化合物、アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシー3-フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中では、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
アミド基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、第1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する水酸基含有(メタ)アクリレートがより好ましい。
なお、成分(a3)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
緩衝層形成用組成物中の成分(a3)の含有量は、緩衝層形成用組成物の全量(100質量部)に対して、好ましくは0~40質量部、より好ましくは0~35質量部、さらに好ましくは0~30質量部である。
(多官能重合性化合物(a4))
多官能重合性化合物とは、光重合性不飽和基を2つ以上有する化合物をいう。光重合性不飽和基は、炭素-炭素二重結合を含む官能基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルベンジル基等が挙げられる。光重合性不飽和基は2種以上を組み合わせてもよい。多官能重合性化合物中の光重合性不飽和基と成分(a1)中の(メタ)アクリロイル基とが反応したり、成分(a4)中の光重合性不飽和基同士が反応することで、三次元網目構造(架橋構造)が形成される。多官能重合性化合物を使用すると、光重合性不飽和基を1つしか含まない化合物を使用した場合と比較して、エネルギー線照射により形成される架橋構造が増加しやすい。
なお、成分(a4)の定義と、先述した成分(a2)や成分(a3)の定義とは重複する部分があるが、重複部分は成分(a4)に含まれる。例えば、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有し、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物は、成分(a4)と成分(a2)の両方の定義に含まれるが、本発明において当該化合物は、成分(a4)に含まれるものとする。また、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基を含有し、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物は、成分(a4)と成分(a3)の両方の定義に含まれるが、本発明において当該化合物は、成分(a4)に含まれるものとする。
上記観点から、多官能重合性化合物中における光重合性不飽和基の数(官能基数)は、2~10が好ましく、3~6がより好ましい。
また、成分(a4)の重量平均分子量は、好ましくは30~40000、より好ましくは100~10000、さらに好ましくは200~1000である。
具体的な成分(a4)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリコール由来の繰り返し単位の数が200~800のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸ビニル、アジピン酸ジビニル、N,N'-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、はグリコール単位の数を括弧内に表すことが一般的で、たとえばグリコール単位の数が600の場合には、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレートと表示される。
なお、成分(a4)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
緩衝層形成用組成物中の成分(a4)の含有量は、緩衝層形成用組成物の全量(100質量部)に対して、好ましくは2~40質量部、より好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは5~15質量部である。
(成分(a1)~(a4)以外の重合性化合物(a5))
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の成分(a1)~(a4)以外のその他の重合性化合物(a5)を含有してもよい。
成分(a5)としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル化合物:等が挙げられる。なお、成分(a5)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
緩衝層形成用組成物中の成分(a5)の含有量は、緩衝層形成用組成物の全量(100質量部)に対して、好ましくは0~20質量部、より好ましくは0~10質量部、さらに好ましくは0~5質量部、特に好ましくは0~2質量部である。
(光重合開始剤)
緩衝層形成用組成物には、緩衝層を形成する際、光照射による重合時間を短縮させ、また、光照射量を低減させる観点から、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物、さらには、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられ、より具体的には、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8-クロールアンスラキノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
緩衝層形成用組成物中の光重合開始剤の含有量は、エネルギー線重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.3~5質量部である。
(その他の添加剤)
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。これらの添加剤を配合する場合、緩衝層形成用組成物中の各添加剤の含有量は、エネルギー線重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.1~3質量部である。
(樹脂成分)
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、樹脂成分を含有してもよい。樹脂成分としては、例えば、ポリエン・チオール系樹脂や、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、及びスチレン系共重合体等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
緩衝層形成用組成物中のこれらの樹脂成分の含有量は、緩衝層形成用組成物の全量(100質量部)に対して、好ましくは0~20質量部、より好ましくは0~10質量部、さらに好ましくは0~5質量部、特に好ましくは0~2質量部である。
エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物から形成される緩衝層は、上記組成の緩衝層形成用組成物をエネルギー線照射により重合硬化して得られる。つまり、当該緩衝層は、緩衝層形成用組成物の硬化物である。
したがって、当該緩衝層は、成分(a1)由来の重合単位を含む。また、当該緩衝層は、成分(a2)由来の重合単位、成分(a3)由来の重合単位、成分(a4)由来の重合単位及び/又は成分(a5)由来の重合単位を含有していてもよい。緩衝層における各重合単位の含有割合は、通常、緩衝層形成用組成物を構成する各成分の比率(仕込み比)に一致する。例えば、緩衝層形成用組成物中の成分(a1)の含有量が緩衝層形成用組成物の全量(100質量部)に対して10~70質量部の場合、緩衝層は成分(a1)に由来する重合単位を10~70質量部含有する。また、緩衝層形成用組成物中の成分(a2)の含有量が緩衝層形成用組成物の全量(100質量部)に対して10~80質量部の場合、緩衝層は成分(a2)に由来する重合単位を10~80質量部含有する。成分(a3)~(a5)についても同様である。
(5.ワーク加工用保護シートの熱変形性)
ワーク加工用保護シート1は、図1に示すように、基材10と、緩衝層20と、粘着剤層30とを有する。本発明では、ワーク加工用保護シートの熱変形性を特定範囲に制御したことを最大の特徴としている。
すなわち、2回の温度変化を伴う条件下でワーク加工用保護シート1の熱機械分析を行った際に、第1回の加熱時の変形割合Df1が0.67%以内であり、第1回の加熱時の変形割合Df1と第2回加熱時の変形割合Df2の差の絶対値が0.067%以内であることを特徴としている。
熱機械分析は、ワーク加工用保護シートを切り出して得た、長さ20mm、幅4.5mmサンプルを用いて行う。なお、サンプルの厚みは、ワーク加工用保護シートの厚みと同一である。
上記のサンプルをチャック間隔15mmで保持した状態で、荷重10gを加え、2回の昇温/降温を行い、その際のチャック間隔の変化からサンプルの変形割合を求める。第1回の昇温では、昇温速度:3℃/分で23℃から50℃まで昇温し、その後、23℃になるまで放冷する。第2回の昇温では、再び荷重10gを加えた状態で、昇温速度:3℃/分で50℃まで昇温する。
第1回の50℃到達時の変形割合をDf1(%)、第2回の50℃到達時の変形割合Df2(%)を測定する。
Df1、Df2は下記式より求める。
Df1=100×(S1-S0)/S0
Df2=100×(S2-S0)/S0
ここでS0は試験前のチャック間隔、S1は第1回の50℃到達時のチャック間隔、S2は第2回の50℃到達時のチャック間隔である。
第1回の加熱時の変形割合Df1は上記のとおり0.67%以内であり、好ましくは0.33%以内であり、さらに好ましくは0.17%以内であり、特に好ましくは0.13%以内である。
また、第1回の加熱時の変形割合Df1と第2回加熱時の変形割合Df2の差の絶対値は上記のとおり0.067%以内であり、好ましくは0.033%以内であり、さらに好ましくは0.020%以内であり、特に好ましくは0.0067%以内である。
さらに、第2回の加熱時の変形割合Df2は、好ましくは0.67%以内であり、さらに好ましくは0.33%以内であり、なお好ましくは0.17%以内であり、特に好ましくは0.13%以内である。
ワーク加工用保護シートの熱変形性は、基材のヤング率や、緩衝層の構造を適宜に設定することで制御できる。
たとえば、基材のヤング率を大きく設定することで、Df1、Df2を低くでき、その差の絶対値も低くできる。基材の厚みを厚くすることで、Df1、Df2を低くでき、その差の絶対値も低くできる。
また、緩衝層がエネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物の硬化物である場合には、該硬化物中に三次元網目構造(架橋構造)を多く含むと、Df1、Df2を低くでき、その差の絶対値も低くできる。前記した緩衝層を構成する官能重合性化合物中の光性不飽和基と成分(a1)中の(メタ)アクリロイル基とが反応したり、成分(a4)中の光重合性不飽和基同士が反応することで、三次元網目構造(架橋構造)が形成される。多官能重合性化合物を使用すると、光重合性不飽和基を1つしか含まない化合物を使用した場合と比較して、エネルギー線照射により形成される架橋構造が増加しやすい。
たとえば、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)の(メタ)アクリロイル基の数が多いと緩衝層内に架橋構造が増加し、緩衝層は硬くなり、Df1、Df2を低くでき、その差の絶対値も低くできる。このため、架橋構造の形成に関与する成分量を調整することで、ワーク加工用保護シートの熱変形性を適切な範囲に制御できる。架橋構造の形成に関与する成分としては、たとえばウレタン(メタ)アクリレート(a1)の(メタ)アクリロイル基、多官能重合性化合物(a4)があげられる。特に多官能重合性化合物(a4)は、使用が容易であり、架橋構造の形成に有用な成分である。
多官能重合性化合物(a4)を加えることで、硬化物内部の分子の運動が阻害され、応力緩和性を低く、Df1、Df2を低くでき、その差の絶対値も低く設計できる。すなわち、多官能重合性化合物(a4)の添加量を増量することで上記物性の発現が容易になる。ウレタン(メタ)アクリレート(a1)や長鎖構造の形成に関与する成分は、応力緩和率の低下に伴い、緩衝層が脆くなるのを緩和する役割がある。
緩衝層がポリオレフィン系フィルムから構成される場合には、該ポリオレフィンフィルムを構成するポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)、ガラス転移温度(Tg)、融点(m.p.)などを適宜に設定することでワーク加工用保護シートの熱変形性を制御できる。
たとえば、ポリオレフィン樹脂のMFRを小さくすると、Df1、Df2を低くでき、その差の絶対値も低くできる。また、ポリオレフィン樹脂のTg、m.p.を高くすると、Df1、Df2を低くでき、その差の絶対値も低くできる。
なお、粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合には、上記の熱機械分析は、エネルギー線照射前のワーク加工用保護シートについて行う。
(6.剥離シート)
ワーク加工用保護シートの表面には、剥離シートが貼付されていてもよい。剥離シートは、具体的には、ワーク加工用保護シートの粘着剤層の表面に貼付される。剥離シートは、粘着剤層表面に貼付されることで輸送時、保管時に粘着剤層を保護する。剥離シートは、剥離可能にワーク加工用保護シートに貼付されており、ワーク加工用保護シートが使用される前(すなわち、ワーク貼付前)には、ワーク加工用保護シートから剥離されて取り除かれる。
剥離シートは、少なくとも一方の面が剥離処理をされた剥離シートが用いられ、具体的には、剥離シート用基材の表面上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離シート用基材としては、樹脂フィルムが好ましく、当該樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。剥離剤としては、例えば、シリコーン系剥離剤、アルキド系剥離剤、フッ素系剥離剤等が挙げられる。
剥離シートの厚さは、特に制限ないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μmである。
(7.ワーク加工用保護シートの製造方法)
本実施形態に係るワーク加工用保護シートを製造する方法は、特に制限されず、公知の方法を用いればよい。以下では、図1に示すワーク加工用保護シートを製造する方法について説明する。
まず、粘着剤層を形成するための粘着剤層用組成物の塗布剤として、たとえば、上述した成分を含有する粘着剤層用組成物、または、当該粘着剤層用組成物を溶媒等により希釈した組成物を調製する。同様に、緩衝層として、たとえば、上述したPEフィルムを準備する。
溶媒としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン、n-プロパノール、イソプロパノール等の有機溶剤が挙げられる。
そして、前記基材とPEフィルムとを接着する。ラミネートは、たとえばプライマー層を用いたドライラミネート法でもよく、熱圧着であってもよい。
また、剥離シートの剥離処理面に粘着剤層用組成物の塗布剤を、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法により塗布して、必要に応じて乾燥させて粘着剤層を形成する。その後、剥離シート上の粘着剤層と、基材とを貼り合わせることにより、基材の一方の主面上に粘着剤層がこの順で形成され、基材の他方の主面上に緩衝層が形成されたワーク加工用保護シートが得られる。なお、剥離シートは、ワーク加工用保護シートの使用時に除去すればよい。
緩衝層がエネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物から形成される場合には、剥離シート上に緩衝層形成用組成物を塗工、硬化して設けた緩衝層と、基材とを貼り合わせ、剥離シートを除去することで、緩衝層と基材との積層体が得られる。
そして、剥離シート上に設けた粘着剤層を、積層体の基材側に貼り合わせ、粘着剤層の表面に剥離シートが貼付されたワーク加工用保護シートを製造することができる。粘着剤層の表面に貼付される剥離シートは、ワーク加工用保護シートの使用前に適宜剥離して除去すればよい。
剥離シート上に粘着剤層を形成する方法は上記のとおりである。剥離シート上に緩衝層を形成する方法としては、剥離シート上に緩衝層形成用組成物を、公知の塗布方法にて、直接塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜にエネルギー線を照射することで、緩衝層を形成することができる。また、基材の片面に、緩衝層形成用組成物を直接塗布して、加熱乾燥あるいは塗布膜にエネルギー線を照射することで、緩衝層を形成してもよい。
緩衝層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。また、塗布性を向上させるために、緩衝層形成用組成物に対して有機溶媒を配合し、溶液の形態として、剥離シート上に塗布してもよい。
緩衝層形成用組成物がエネルギー線重合性化合物を含む場合、緩衝層形成用組成物の塗布膜に対して、エネルギー線を照射することで硬化させ、緩衝層を形成することが好ましい。緩衝層の硬化は、一度の硬化処理で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。例えば、剥離シート上の塗布膜を完全に硬化させて緩衝層を形成した後に基材に貼り合わせてもよく、当該塗布膜を完全に硬化させずに半硬化の状態の緩衝層形成膜を形成し、当該緩衝層形成膜を基材に貼り合わせた後、再度エネルギー線を照射して完全に硬化させて緩衝層を形成してもよい。当該硬化処理で照射するエネルギー線としては、紫外線が好ましい。なお、硬化する際は、緩衝層形成用組成物の塗布膜が暴露された状態でもよいが、剥離シートや基材で塗布膜が覆われ、塗布膜が暴露されない状態でエネルギー線を照射して硬化することが好ましい。
なお、基材の両面に緩衝層が設けられた保護シートの製造方法は、例えば、上述の方法により、緩衝層と基材と緩衝層とがこの順に積層された積層体を得、その後、一方の緩衝層側に粘着剤層を形成すればよい。
(7.ワーク個片化物の製造方法)
本発明に係るワーク加工用保護シートは、半導体ウエハ、半導体チップ、ガラス、セラミック等のワークの加工時にワークを一時的に保持するために用いられる。ワークの加工は、たとえば切断、研磨等であるが、これに限定はされない。これらの用途の中でも、特に好ましくは、半導体ウエハ等のワークの表面に貼付してワークの裏面研削を行い、半導体チップ等のワーク個片化物を製造する方法に使用される。より好ましくは、本発明に係るワーク加工用保護シートは、半導体ウエハ等のワークの裏面研削とワークの個片化とを同時に行うDBGにおいて好ましく使用される。特に好ましくは、本発明に係るワーク加工用保護シートは、半導体ウエハを個片化した際に、カーフ幅の小さいチップ群が得られるLDBGに好ましく使用される。
ワーク加工用保護シートの非限定的な使用例として、以下に半導体装置の製造方法をさらに具体的に説明する。
ワーク個片化物の製造方法は、具体的には、以下の工程1~工程4を少なくとも備える。
工程1:上記のワーク加工用保護シートをワークの表面に加熱貼付する工程
工程2:ワークの表面側から溝を形成し、又はワークの表面若しくは裏面からワーク内部に改質領域を形成する工程
工程3:ワーク加工用保護シートが表面に貼付され、かつ上記溝又は改質領域が形成されたワークを、裏面側から研削して、溝又は改質領域を起点として、複数のチップに個片化させる工程
工程4:個片化されたワーク個片化物の裏面にドライポリッシュを行う工程
上記の工程後には、個片化された複数のワーク個片化物(すなわち、ワーク個片化物群)から、ワーク加工用保護シートを剥離する。
以下、上記樹脂シート付きワーク個片化物の製造方法の各工程を詳細に、ワーク加工用保護シートが半導体加工用保護シートであり、ワークが半導体ウエハであり、ワーク個片化物が半導体チップである場合について説明する。
工程1では、図2に示すように、半導体ウエハ100の表面100aに、本実施形態に係る半導体加工用保護シート1の粘着剤層30を加熱貼付する。半導体加工用保護シートを半導体ウエハの表面に加熱貼付することにより、半導体ウエハの表面が十分に保護される。半導体ウエハに加熱貼付した後に、半導体ウエハの形状に比べて、半導体加工用保護シートが大きい場合には、必要に応じて、半導体ウエハの形状に合わせて半導体加工用保護シートを切断し、余剰部分を除去してもよい。
本工程は、後述する工程2の前に行ってもよいし、工程2の後に行ってもよい。例えば、半導体ウエハに改質領域を形成する場合には、工程1を工程2の前に行うことが好ましい。一方、半導体ウエハ表面に、ダイシング等により溝を形成する場合には、工程2の後に工程1を行う。すなわち、後述する工程2で形成した溝を有するウエハの表面に、本工程1にて半導体加工用保護シートを貼付することになる。
半導体加工用保護シート1の加熱貼付の条件は特に限定はされないが、半導体加工用保護シート1の粘着剤層が適度に軟化し、また半導体ウエハの表面の回路に損傷を与えない程度の圧力をロールなどにより加えればよい。加熱温度は、たとえば40~80℃程度であればよい。
半導体ウエハの研削前の厚さは特に限定されないが、通常は500~1000μm程度である。また、半導体ウエハは、通常、その表面に回路が形成されている。ウエハ表面への回路の形成は、エッチング法、リフトオフ法などの従来汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。
(工程2)
工程2では、半導体ウエハの表面側から溝を形成する。あるいは、半導体ウエハの表面若しくは裏面から半導体ウエハの内部に改質領域を形成する。
本工程で形成される溝は、半導体ウエハの厚さより浅い深さの溝である。溝の形成は、従来公知のウエハダイシング装置等を用いてダイシングにより行うことが可能である。また、半導体ウエハは、後述する工程3において、溝に沿って複数の半導体チップに分割される。
また、改質領域は、半導体ウエハにおいて、脆質化された部分であり、研削工程における研削によって、半導体ウエハが薄くなったり、研削による力が加わったりすることにより半導体ウエハの改質領域が破壊されて半導体チップに個片化される起点となる領域である。すなわち、工程2において溝及び改質領域は、後述する工程3において、半導体ウエハが分割されて半導体チップに個片化される際の分割線に沿うように形成される。
改質領域の形成は、半導体ウエハの内部に焦点を合わせたレーザーの照射により行い、改質領域は、半導体ウエハの内部に形成される。レーザーの照射は、半導体ウエハの表面側から行っても、裏面側から行ってもよい。なお、改質領域を形成する態様において、工程2を工程1の後に行いウエハ表面からレーザー照射を行う場合、半導体加工用保護シートを介して半導体ウエハにレーザーを照射することになる。
半導体加工用保護シートが貼付され、かつ溝又は改質領域を形成した半導体ウエハは、吸着テーブル上に載せられ、吸着テーブルに吸着されて保持される。この際、半導体ウエハは、表面側がテーブル側に配置されて、半導体加工用保護シートを介して吸着される。
(工程3)
工程1及び工程2の後、吸着テーブル上の半導体ウエハの裏面100bを研削して、半導体ウエハを複数の半導体チップに個片化して、チップ群が得られる。
ここで、裏面研削は、半導体ウエハに溝が形成される場合には、少なくとも溝の底部に至る位置まで半導体ウエハを薄くするように行う。この裏面研削により、溝は、ウエハを貫通する切り込みとなり、半導体ウエハは切り込みにより分割されて、個々の半導体チップに個片化される。
一方、改質領域が形成される場合には、研削によって研削面(ウエハ裏面)は、改質領域に至ってもよいが、厳密に改質領域まで至らなくてもよい。すなわち、改質領域を起点として半導体ウエハが破壊されて半導体チップに個片化されるように、改質領域に近接する位置まで研削すればよい。また、個片化が不十分な場合には、例えば、後述するピックアップテープを貼付してからピックアップテープを延伸することで個片化を進行させてもよい。
個片化された半導体チップの形状は、方形でもよいし、矩形等の細長形状となっていてもよい。また、個片化された半導体チップの厚さは特に限定されないが、好ましくは5~100μm程度であるが、より好ましくは10~45μmである。レーザーでウエハ内部に改質領域を設け、ウエハ裏面研削時の応力等でウエハの個片化を行う、LDBGによれば、個片化された半導体チップの厚さを50μm以下、より好ましくは10~45μmとすることが容易になる。また、個片化された半導体チップの大きさは、特に限定されないが、チップサイズが好ましくは600mm2未満、より好ましくは400mm2未満、さらに好ましくは120mm2未満である。
(工程4)
次いで個片化された半導体チップの裏面にドライポリッシュを行う。ドライポリッシュとは、水や砥粒のスラリーを用いずに研磨パフにより研磨する工程を意味する。研磨パフとしては各種汎用の研磨パフが用いられ、市販品としては、ディスコ社の研磨ホイール「Gettering DP」や、「DP08 SERIES」が用いられるが、これらに限定されない。ドライポリッシュによりチップのダメージ部、すなわち研削痕を除去する。
ドライポリッシュ時には水を用いないため、チップの裏面は摩擦に加熱され、ワーク加工用保護シートも60℃程度に加熱される。この状態でドライポリッシュを続けると、ワーク加工用保護シートが変形し、チップ同士が衝突することがあるが、本発明のワーク加工用保護シートによれば、熱変形性が抑制されているため、ドライポリッシュ時や、その後の放冷によりワーク加工用保護シートの温度が変化しても、シート形状が変形することなく、チップ同士の衝突が起こらず、チッピングの発生を抑制できる。
以上の工程を経て、ワーク加工用保護シート上に、ワーク個片化物が得られ、ワークが半導体ウエハの場合には、切断前のウエハ形状に整列した複数の半導体チップが得られる。ワーク個片化物が貼付されているワーク加工用保護シートを吸着テーブルから取り外し、次工程に移送する。
ドライポリッシュの終了後、研削面には、後のダイボンド工程で使用するフィルム状接着剤や、保護膜(あるいはその前駆体フィルム)を貼付してもよい。フィルム状接着剤や保護膜を形成する際には、接着剤や保護膜となる樹脂フィルムをチップ裏面に圧着する。
本発明のワーク加工用保護シートでは、上記したように特異な熱変形性を有するため、ワーク加工用保護シートが多数回の熱履歴を受けてもその変形量が少なく、かつ変形量が一定範囲にある。このため、ワーク加工用保護シートが多数回の熱履歴を受けても、ワーク個片化物の接触が無く、高い収率でワーク個片化物が得られる。
次に、個片化されたワーク(すなわち、複数のワーク個片化物)から、ワーク加工用保護シートを剥離する。本工程は、例えば、以下の方法により行う。
まず、ワーク加工用保護シートの粘着剤層が、エネルギー線硬化性粘着剤から形成される場合には、エネルギー線を照射して粘着剤層を硬化する。次いで、個片化されたワーク個片化物の裏面側に、ピックアップテープを貼付し、ピックアップが可能なように位置及び方向合わせを行う。この際、ワーク個片化物の外周側に配置したリングフレームもピックアップテープに貼り合わせ、ピックアップテープの外周縁部をリングフレームに固定する。ピックアップテープには、ワーク個片化物とリングフレームを同時に貼り合わせてもよいし、別々のタイミングで貼り合わせてもよい。次いで、ピックアップテープ上に保持された複数のワーク個片化物からワーク加工用保護シートを剥離する。
その後、ピックアップテープ上にある複数のワーク個片化物をピックアップする。ワーク個片化物が半導体チップの場合には、半導体装置用の基板等の上に固定して、半導体装置を製造する。
なお、ピックアップテープは、特に限定されないが、例えば、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層を備える粘着テープによって構成される。
また、ピックアップテープの代わりに、接着テープを用いることもできる。接着テープとは、フィルム状接着剤と剥離シートとの積層体、ダイシングテープとフィルム状接着剤との積層体や、ダイシングテープとダイボンディングテープの両方の機能を有する接着剤層と剥離シートとからなるダイシング・ダイボンディングテープ等が挙げられる。すなわち、本実施形態では、ダイシング・ダイボンディングテープをワークの裏面に貼付する工程を含んでもよい。また、ピックアップテープを貼付する前に、個片化されたワークの裏面側にフィルム状接着剤を貼り合わせてもよい。フィルム状接着剤を用いる場合、フィルム状接着剤はウエハと同形状としてもよい。
接着テープを用いる場合やピックアップテープを貼付する前に個片化されたワークの裏面側にフィルム状接着剤を貼り合わせる場合には、接着テープやピックアップテープ上にある複数のワーク個片化物は、ワーク個片化物と同形状に分割された接着剤層と共にピックアップされる。そして、ワーク個片化物は接着剤層を介して基板等の上に固定化され、半導体装置が製造される。接着剤層の分割は、レーザーやエキスパンドによって行われる。また、接着テープに代えて、チップ裏面に保護膜を形成するための保護膜形成用テープを用いてもよい。
以上、本発明に係るワーク加工用保護シートについて、DBGまたはLDBGによりワークを個片化する方法に使用する例について説明したが、本発明に係るワーク加工用保護シートは、通常の裏面研削に使用することも可能であり、また、ガラス、セラミック等の加工時にも被加工物を一時的に保持するために使用することもできる。また、各種の再剥離保護シートとしても使用できる。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
測定方法、評価方法を以下に示す。なお、以下の評価において、緩衝層上および粘着剤層上の剥離フィルムは、適宜剥離の後に測定に供した。
[熱変形量]
実施例および比較例で作成したワーク加工用保護シートを切り出して得た、長さ20mm、幅4.5mmサンプルを用いて行う。なお、サンプルの厚みは、ワーク加工用保護シートの厚みと同一である。
上記のサンプルをチャック間隔15mmで保持した状態で、荷重10gを加え、2回の昇温/降温を行い、その際のチャック間隔の変化からサンプルの変形割合を求める。第1回の昇温では、昇温速度:3℃/分で23℃から50℃まで昇温し、その後、23℃になるまで放冷する。第2回の昇温では、再び荷重10gを加えた状態で、昇温速度:3℃/分で50℃まで昇温する。
第1回の50℃到達時の変形割合をDf1(%)、第2回の50℃到達時の変形割合Df2(%)を測定する。
Df1、Df2は下記式より求める。
Df1=100×(S1-S0)/S0
Df2=100×(S2-S0)/S0
ここでS0は試験前のチャック間隔、S1は第1回の50℃到達時のチャック間隔、S2は第2回の50℃到達時のチャック間隔である。
[クラック評価]
直径12インチ、厚み775μmのシリコンウエハに、実施例および比較例で製造したワーク加工用保護シートを、バックグラインド用テープラミネーター(リンテック社製、装置名「RAD3510F/12」)のテーブル温度を50℃に加温した状態で貼付した。レーザーソー(ディスコ社製、装置名「DFL7361」)を用い、ウエハに格子状の改質領域を形成した。なお、格子サイズは10mm×10mmとした。
次いで、裏面研削装置(ディスコ社製、装置名「DGP8761」)を用いて、厚さ30μmになるまで研削(ドライポリッシュを含む)を行い、ウエハを複数のチップに個片化した。研削工程後にエネルギー線(紫外線)照射を行い、ワーク加工用保護シートの貼付面の反対面にダイシングテープ(リンテック社製、Adwill D-175D)を貼付後、半導体加工用粘着テープを剥離した。その後、個片化されたチップをデジタル顕微鏡で観察し、クラックの発生したチップを数え、クラックのサイズ毎に以下の基準で分類した。なお、クラックのサイズ(μm)は、チップの縦方向に沿ったクラックの長さ(μm)と、チップの横方向に沿ったクラックの長さ(μm)とを対比し、その数値の大きい方とした。
(基準)
大クラック:クラックのサイズが20μm超
中クラック:クラックのサイズが10μm以上20μm以下
小クラック:クラックのサイズが10μm未満
また、以下の式に基づき、クラック発生率(%)を算出した。
クラック発生率(%)=クラックが発生したチップ数/全チップ数×100
クラック発生率が2.0%以下であり、大クラックの個数が0個、中クラックの個数が10個以下、小クラックの個数が20個以下の場合を「良好」、それ以外の場合を「不良」と評価した。
以下の実施例及び比較例の質量部は全て固形分換算である。
(粘着剤層用組成物の調製・粘着剤層付き剥離シートの作製)
n-ブチルアクリレート(BA)50質量部、メチルメタクリレート(MMA)20質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)30質量部を共重合して得たアクリル系重合体に、アクリル系重合体の全水酸基(100当量)のうち80当量の水酸基に付加するように、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(Mw:50万)を得た。
このエネルギー線硬化性のアクリル系共重合体100質量部に、多官能ウレタンアクリレート系紫外線硬化性化合物(三菱ケミカル社製、製品名「UT-4332」)を10質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学製、製品名「タケネートD-101E」)を0.375質量部、光重合開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(IGM Resins社製,製品名「Omnirad 819」)を1質量部配合し、メチルエチルケトンで希釈し、固形分濃度34質量%の粘着剤層用組成物の塗工液を調製した。剥離シート(リンテック社製、製品名:SP-PET381031)の剥離処理面に、上記で得た粘着剤組成物の塗工液を乾燥後の厚さが20μmとなるように塗工し、加熱乾燥させて、剥離シート上に粘着剤層を形成し粘着剤層付き剥離シートを得た。
[実施例1]
(緩衝層形成用組成物の調製)
紫外線硬化性化合物として、ウレタンアクリレート系オリゴマー(サートマー社製、製品名「CN8881」)を50部、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレートを50部配合し、さらに光重合開始剤として、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(IGM Resins社製、製品名「Omnirad 1173」)を2.0質量部配合し、緩衝層形成用組成物を調製した。
(粘着シートの作製)
剥離シート(リンテック社製、製品名「SP-PET381031」シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ:38μm)の剥離処理がされた面上に、上記の緩衝層形成用組成物を塗布し塗布膜を形成した。そして、当該塗布膜に対して、紫外線を照射して、当該塗布膜を半硬化させ、厚さ28μmの緩衝層形成膜を形成した。
なお、上記の紫外線照射は、ベルトコンベア式紫外線照射装置(製品名「ECS-401GX」アイグラフィクス社製)及び高圧水銀ランプ(製品名「H04-L41」アイグラフィクス社製)を使用し、ランプ高さ260mm、出力80W/cm、照度70mW/cm2、照射量30mW/cm2の照射条件下にて行った。そして、形成した緩衝層形成膜の表面と、両面易接着層付きPETフィルム(厚み:50μm、23℃におけるヤング率:4300MPa)の第1の易接着層とを貼り合わせ、緩衝層形成膜上の剥離シート側から再度紫外線を照射して、当該緩衝層形成膜を完全に硬化させ、厚さ28μmの緩衝層を形成した。
なお、2回目の紫外線照射は、上述の紫外線照射装置及び高圧水銀ランプを使用し、ランプ高さ210mm、出力120W/cm、照度155mW/cm2、照射量600mW/cm2の照射条件下にて行った。次いで、上記両面易接着層付きPETフィルムの第2の易接着層上に、上記粘着剤層付き剥離シートの粘着剤層を貼り合わせワーク加工用保護シートを作製した。熱変形量およびクラック評価の結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1の緩衝層形成用組成物において、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレートに代えて、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレートを用いた以外は実施例1と同様にして、ワーク加工用保護シートを作製した。熱変形量およびクラック評価の結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1の緩衝層形成用組成物において、ウレタンアクリレート系オリゴマー(サートマー社製、製品名「CN8881」)の配合量を40部とし、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレートに代えて、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレートを10部、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレートを50部配合した以外は実施例1と同様にして、ワーク加工用保護シートを作製した。熱変形量およびクラック評価の結果を表1に示す。
[実施例4]
基材として、PETフィルム(厚み:50μm、23℃におけるヤング率:4300MPa)を準備した。
準備したPETフィルムの両面に、厚さ2.5μmの易接着層を設け、両方の易接着層に、緩衝層として、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:「ノバテックLD,LF581X」)25μmをドライラミネーション法により貼り合わせて、基材の両面にPO系緩衝層が積層された積層体を得た。次いで、上記一方のPO系緩衝層上に、上記粘着剤層付き剥離シートの粘着剤層を貼り合わせワーク加工用保護シートを作製した。熱変形量およびクラック評価の結果を表1に示す。
[実施例5]
基材として、PETフィルム(厚み:50μm、23℃におけるヤング率:4300MPa)を準備した。準備したPETフィルムの一方の面に、厚さ2.5μmの易接着層を設け、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:「ノバテックLD,LF581X」)30μmを緩衝層として形成した。次いで、上記PETフィルムの他方の面に、上記粘着剤層付き剥離シートの粘着剤層を貼り合わせワーク加工用保護シートを作製した。熱変形量およびクラック評価の結果を表1に示す。
[比較例1]
低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:「ノバテックLD,LF607K」)を、小型Tダイ押出機によって押出成形し、厚さ80μmのフィルムを得た。これを基材として用い、易接着層、緩衝層を設けなかった以外は実施例1と同様にして、ワーク加工用保護シートを作製した。熱変形量およびクラック評価の結果を表1に示す。
[比較例2]
エチレン-酢酸ビニルフィルム(グンゼ社製、製品名「ファンクレアLEB」、厚さ120μm)を準備した。これを基材として用いた以外は比較例1と同様にして、ワーク加工用保護シートを作製した。熱変形量およびクラック評価の結果を表1に示す。
[比較例3]
ポリエステルジオールと、イソホロンジイソシアネートを反応させて得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて、質量平均分子量(Mw)5000の2官能のウレタンアクリレート系オリゴマー(UA-1)を作成した。このオリゴマーとイソボルニルアクリレート(IBXA)、フェニルヒドロキシプロピルアクリレート(HPPA)を配合し、さらに光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resins社製、製品名「Omnirad184」)を2.0質量部、フタロシアニン系顔料を0.2質量部配合して基材形成用組成物の塗工液を調製した。剥離シート(リンテック社製、製品名:SP-PET381031)の剥離処理面に、上記で得た基材形成用組成物の塗工液を塗工し、紫外線を照射して、当該塗布膜を硬化させ、剥離シート上に厚さ28μm、ヤング率が200MPである基材を作成した。なお、上記の紫外線照射は、ベルトコンベア式紫外線照射装置(製品名「ECS-401GX」アイグラフィクス社製)及び高圧水銀ランプ(製品名「H04-L41」アイグラフィクス社製)を使用し、ランプ高さ260mm、出力80W/cm、照度70mW/cm2、照射量30mW/cm2の照射条件下にて行った。
これを基材として用いた以外は比較例1と同様にして、ワーク加工用保護シートを作製した。熱変形量およびクラック評価の結果を表1に示す。
[比較例4]
エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA;三井・デュポンポリケミカル社製,N0903HC)を、小型Tダイ押出機によって押出成形し、照射量:110kGy、照射回数:1回で電子線照射を行って、厚さ80μmのフィルムを得た。これを基材として用いた以外は比較例1と同様にして、ワーク加工用保護シートを作製した。熱変形量およびクラック評価の結果を表1に示す。
Figure 2024143342000002
表中、
Df1=100×(S1-S0)/S0
Df2=100×(S2-S0)/S0
以上の結果から、本発明に係るワーク加工用保護シートによれば、ワーク加工用保護シートが多数回の熱履歴を受けてもその変形量が少なく、かつ変形量が一定範囲にある。このため、ワーク加工用保護シートが多数回の熱履歴を受けても、ワーク個片化物の接触が無く、高い収率でワーク個片化物が得られる。
1…ワーク加工用保護シート
10…基材
20…緩衝層
30…粘着剤層
100…半導体ウエハ
100a…半導体ウエハの回路面
100b…半導体ウエハの裏面

Claims (7)

  1. 基材と、当該基材の少なくとも一方の面側に設けられた緩衝層と、当該基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを有するワーク加工用保護シートであって、
    該ワーク加工用保護シートの熱機械分析を下記条件で行った際に、第1回の加熱時の変形割合Df1が0.67%以内であり、第1回の加熱時の変形割合Df1と第2回加熱時の変形割合Df2の差の絶対値が0.067%以内である、ワーク加工用保護シート。
    熱機械分析条件
    サンプルサイズ:長さ20mm、幅4.5mm
    チャック間隔:15mm
    荷重:10g、昇温速度:3℃/分で23℃から50℃まで昇温し、23℃になるまで放冷後、再び荷重:10g、昇温速度:3℃/分で50℃まで昇温する。第1回の50℃到達時の変形割合をDf1(%)、第2回の50℃到達時の変形割合Df2(%)を測定する。
    Df1、Df2は下記式より求める。
    Df1=100×(S1-S0)/S0
    Df2=100×(S2-S0)/S0
    ここでS0は試験前のチャック間隔、S1は第1回の50℃到達時のチャック間隔、S2は第2回の50℃到達時のチャック間隔である。
  2. 第2回の50℃到達時の変形割合Df2(%)が0.67%以下である、請求項1に記載のワーク加工用保護シート。
  3. 前記緩衝層が、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物の硬化物である、請求項1に記載のワーク加工用保護シート。
  4. 表面に溝が形成され、又は内部に改質領域が形成されたワークの裏面を研削することによりワークをワーク個片化物に個片化する工程において、ワークの表面に貼付されて使用される、請求項1に記載のワーク加工用保護シート。
  5. 基材と、当該基材の両方の面に設けられた緩衝層と、一方の緩衝層の表面に設けられた粘着剤層とを有する請求項1に記載のワーク加工用保護シート。
  6. 基材の両方に面に設けられた緩衝層が、いずれもポリオレフィン系の樹脂フィルムである、請求項5に記載のワーク加工用保護シート。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載のワーク加工用保護シートをワークの表面に加熱貼付する工程と、
    前記ワークの表面側から溝を形成し、又は前記ワークの表面若しくは裏面からワーク内部に改質領域を形成する工程と、
    前記保護シートが表面に貼付され、かつ前記溝又は前記改質領域が形成されたワークを、裏面側から研削して、前記溝又は前記改質領域を起点として複数のワーク個片化物に個片化させる工程と、
    個片化後にドライポリッシュを行う工程と、を備えるワーク個片化物の製造方法。
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