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JP2019014074A - 液体吐出装置 - Google Patents

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JP2019014074A JP2017131276A JP2017131276A JP2019014074A JP 2019014074 A JP2019014074 A JP 2019014074A JP 2017131276 A JP2017131276 A JP 2017131276A JP 2017131276 A JP2017131276 A JP 2017131276A JP 2019014074 A JP2019014074 A JP 2019014074A
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真吾 奥島
良助 廣川
Ryosuke Hirokawa
良助 廣川
大西 徹
Toru Onishi
徹 大西
高田 陽一
Yoichi Takada
陽一 高田
光敏 野口
Mitsutoshi Noguchi
光敏 野口
拓人 森口
Takuto Moriguchi
拓人 森口
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Abstract

【課題】液体吐出ヘッドから吐出を行う被吐出媒体が熱を帯び、その熱の影響により液体吐出ヘッドが比較的高温下で吐出を行う場合にも、熱の影響を抑制した液体の吐出が可能な液体吐出装置を提供する。【解決手段】液体吐出装置1000は、液体を吐出するための吐出口に連通し、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を内部に備えた圧力室を有する液体吐出ヘッド104と、液体吐出ヘッド104から液体が吐出されて画像が形成される転写体101と、転写体101に記録媒体108を押圧して転写体101に形成された画像を記録媒体108に転写する押圧手段106と、を有し、転写体101を、液体吐出ヘッド104から液体が吐出されてから押圧手段106により記録媒体108が押圧されるまでに間に加熱する加熱手段110をさらに有し、液体吐出ヘッド104の圧力室内の液体は圧力室の外部との間で循環される。【選択図】図1

Description

本発明は、液体吐出装置に関する。
画像記録方式の1つとして、液体吐出ヘッド(インクジェット記録ヘッド)を用いて中間転写体上に色材を含む液体組成物(インク)を付与して画像を形成し、それを紙等の記録媒体上に転写することで画像を形成する方式が知られている。
このような方式では、一般に中間転写体を加熱して転写を行う。特許文献1には、中間転写体から記録媒体に画像を転写する転写部をインク中の樹脂エマルションの最低造膜温度(MFT)以上に加熱することで、転写時の加熱による樹脂の融着速度を向上させる方法が記載されている。
特許第5085893号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、転写部を加熱することにより、その影響で液体吐出ヘッドの吐出に影響を及ぼすことがある。すなわち、比較的高温の環境下では、吐出口からインク中の水分等の蒸発が促進されるため、その影響で吐出口近傍のインクの増粘や色材濃度の変化が発生し、結果としてインクの吐出不良や画像の濃度ムラが生じることがある。このように、転写体や記録媒体等、液体吐出ヘッドから吐出を行う被吐出媒体が加熱されるような装置においては、その媒体からの熱の影響により液体吐出ヘッドが比較的高温の環境下で吐出を行うことになり、液体吐出ヘッドから吐出に影響を及ぼす。
そこで、本発明の目的は、中間転写体や記録媒体等、液体吐出ヘッドから吐出を行う被吐出媒体が熱を帯び、その熱の影響により液体吐出ヘッドが比較的高温下で吐出を行う場合にも、熱の影響を抑制した液体の吐出が可能な液体吐出装置を提供することである。
上述した目的を達成するために、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口に連通し、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を内部に備えた圧力室を有する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドから液体が吐出されて画像が形成される転写体と、転写体に記録媒体を押圧して転写体に形成された画像を記録媒体に転写する押圧手段と、を有する液体吐出装置において、転写体を、液体吐出ヘッドから液体が吐出されてから押圧手段により記録媒体が押圧されるまでに間に加熱する加熱手段を有し、液体吐出ヘッドの圧力室内の液体は圧力室の外部との間で循環されることを特徴とする。
このような液体吐出装置では、転写体上の画像が記録媒体に転写される際に転写体が加熱されることで、画像の転写性を向上させることができる。また、転写体の加熱により吐出口から水分等が蒸発して液体が増粘したり色材濃度が変化したりした場合にも、そのような液体を排出し、新たな液体を補給することができる。その結果、吐出不良や画像ムラを抑制することができる。
以上、本発明によれば、中間転写体や記録媒体等、液体吐出ヘッドから吐出を行う被吐出媒体が熱を帯び、その熱の影響により液体吐出ヘッドが比較的高温下で吐出を行う場合にも、熱の影響を抑制した液体の吐出が可能な液体吐出装置を提供することができる。
転写型インクジェット記録装置の一構成例を示す概略図である。 転写型インクジェット記録装置の他の構成例を示す概略図である。 液吸収前後でのインク像の組成変化を示すグラフである。 転写型インクジェット記録装置の制御系を示すブロック図である。 本実施形態におけるインクの循環経路を示す模式図である。 本実施形態の液体吐出ヘッドの斜視図である。 本実施形態の液体吐出ヘッドの分解斜視図である。 本実施形態の第1および第2の流路部材の平面図である。 本実施形態の流路部材の一部を拡大して示す透視図である。 図9のF−F線における断面図である。 本実施形態の吐出モジュールの斜視図および分解斜視図である。 本実施形態の記録素子基板の平面図である。 本実施形態の記録素子基板の拡大平面図である。 本実施形態の記録素子基板の隣接部の部分拡大平面図である。 液体吐出ヘッドの要部を示す平面図、断面図、および斜視図である。 液体吐出ヘッドの吐出口近傍の拡大断面図である。 液体吐出ヘッドの吐出口近傍の拡大断面図である。 吐出口部内のインクの色材濃度の状態を示す図である。 被吐出媒体上のインクの色材濃度を比較した結果を示すグラフである。 ヘッド寸法と流れモードとの関係を説明するためのグラフである。 吐出口部内のインク流の様子の例を示す図である。 ヘッド寸法と流れモードとの関係を確認した結果を示すグラフである。 休止後の吐出発数に対する吐出速度をプロットしたグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の液体吐出装置の一実施形態としてのインクジェット記録装置について説明する。
図1および図2は、本実施形態の転写型インクジェット記録装置に代表される液体吐出装置の構成例を示す概略図である。図1は、ドラム状の転写体101を介して記録媒体108にインク等の液体による像を転写することで記録媒体108に像を形成する枚葉式のインクジェット記録装置1000を示している。一方、図2に示す液体吐出装置であるインクジェット記録装置2000では、図1のドラム状の転写体101の代わりに、ドラム状の転写体101よりも熱容量が少なく、温度制御が容易である点で好適な無端ベルト状の転写体201が設けられている。これに伴い、図2のインクジェット記録装置2000では、転写体201を押圧部材206に押し当てる対向ローラ240が設けられている。なお、転写体201から記録媒体208へのインク像の転写位置は、図2に示す位置に限定されず、例えば、加熱手段110と対向する側の支持部材202を対向ローラとして機能させることもできる。また、この支持部材202を、転写体201を加熱する加熱手段として機能させることもできる。この他、図2に示すインクジェット記録装置2000の支持部材202、反応液付与装置203、インク付与装置204(液体吐出ヘッド)、液吸収装置205、および押圧部材206は、図1に示したものと同様の構成を有している。また、記録媒体搬送装置207および記録媒体208も、図1に示したものと同様の構成を有している。そこで、以下では、図1に示すインクジェット記録装置1000の構成のみ説明する。
なお、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置は、印刷装置、プリンタ、複写機、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。例えば、3Dプリンタ、バイオチップ作製、電子回路印刷、および半導体基板作製などの用途としても用いることができる。
図1に示すように、インクジェット記録装置に代表される液体吐出装置1000は、転写体101と、反応液付与装置103と、インク付与装置104と、液吸収装置105と、加熱手段110と、押圧部材106とを有している。インク付与装置104から液体が吐出(付与)される媒体である転写体101は、支持部材102によって支持され、回転軸102aを中心として回転する回転体である。反応液付与装置103は、カラーインクと反応する反応液を転写体101に付与し、インク付与装置104は、液体吐出ヘッドを備え、反応液が付与された転写体101にカラーインクを付与し、転写体上にインクによる画像であるインク像を形成する。液吸収装置105は、転写体101上のインク像から液体成分を吸収し、加熱手段110は、転写体101上のインク像をインクに含まれる造膜成分の最低造膜温度(MFT)以上に加熱する。押圧部材106は、液体成分が除去されMFT以上に加熱された転写体上のインク像を紙などの記録媒体108上に転写するために、記録媒体108を転写体101に押圧する。また、インクジェット記録装置1000は、必要に応じて、インク像を転写した後の転写体101の表面をクリーニングする転写体クリーニング部材109を有していてもよい。当然のことながら、転写体101、反応液付与装置103、インク付与装置104の液体ヘッド、液吸収装置105、及び転写体クリーニング部材109はそれぞれ、記録媒体108の幅(搬送方向と直交する方向の長さ)に対応するだけの長さを有している。
支持部材102が回転軸102aを中心として図1の矢印Aの方向に回転することより、転写体101が移動する。移動する転写体101に、反応液付与装置103により反応液とインク付与装置104によりインクとが順次付与され、転写体101上にインク像が形成される。転写体101に形成されたインク像は、転写体101の移動により、液吸収装置105の液吸収部材105aと接触する位置まで移動される。
液吸収装置105の液吸収部材105aは、転写体101の回転に同期して移動する。転写体101に形成されたインク像は、この移動する液吸収部材105aと接触した状態となり、その間に液吸収部材105aが、転写体上のインク像から液体成分を除去する。この接触した状態では、液吸収部材105aが所定の押圧力をもって転写体101に押圧されることが、液吸収部材105aを効果的に機能させる点で特に好ましい。
なお、液体成分が除去されることを異なる視点で説明すれば、転写体101に形成された画像を構成するインクが濃縮されるとも表現することができる。インクが濃縮されるとは、インクに含まれる液体成分が減少することによって、インクに含まれる色材や樹脂といった固形分の液体成分に対する含有割合が増加することを意味する。
その後、転写体101に形成されたインク像は、転写体101の移動により、加熱手段110に対向する位置まで移動され、インクに含まれる造膜成分のMFT以上に加熱される。そして、液体成分が除去されMFT以上に加熱されたインク像は、液除去前のインク像と比べてインクが濃縮され、固形分が軟化された状態となる。さらに、転写体101上のインク像は、転写体101の移動により、記録媒体搬送装置107によって搬送される記録媒体108と接触する押圧部材106に移動される。液除去後および固形分軟化後のインク像が記録媒体108と接触している間に、押圧部材106が転写体101に記録媒体108を押圧することで、転写体101上のインク像が記録媒体108に転写される。記録媒体108に転写されたインク像は、液除去前および液除去後のインク像の反転画像である。
本実施形態では、転写体101に反応液が付与されてからインクが付与されて画像が形成されるため、転写体101のインクによる画像が形成されない非画像領域には、反応液がインクと反応することなく残っている。これに対し、液吸収部材105aは、画像の液体成分のみならず、未反応の反応液とも接触し、反応液の液体成分も併せて除去することができる。したがって、以上の説明では、画像から液体成分を除去すると表現しているが、これは、画像のみから液体成分を除去するという限定的な意味合いではなく、少なくとも転写体上の画像から液体成分を除去していればよいという意味合いである。
なお、液体成分は、一定の形を持たず、流動性を有し、ほぼ一定の体積を有するものであれば、特に限定されるものではない。そのような液体成分としては、例えば、インクや反応液に含まれる水や有機溶媒等が挙げられる。
以下、本実施形態の転写型インクジェット記録装置の各構成の詳細について説明する。
<転写体>
転写体101は、画像形成面を含む表面層を有している。表面層の材料としては、樹脂やセラミック等、各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料が好ましい。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。反応液の濡れ性、転写性等を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
また、転写体101は、圧力変動を吸収する機能を有する圧縮層を有することが好ましい。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速画像記録時においても良好な転写性を維持することができる。圧縮層の部材としては、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。また、圧縮層は、上記ゴム材料の成形時に、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子或いは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し多孔質としたものが好ましい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがあるが、いずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
さらに、転写体101は、表面層と圧縮層との間に弾性層を有することが好ましい。弾性層の材料としては、樹脂やセラミック等、各種材料を適宜用いることができる。加工特性等の点で、各種エラストマー材料、ゴム材料が好ましく用いられる。具体的には、例えばフルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴムが挙げられる。さらに、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンの共重合体、ニトリルブタジエンゴム等も挙げられる。特に、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴムは、圧縮永久ひずみが小さいため、寸法安定性、耐久性の面で好ましく、また、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも好ましい。
転写体101を構成する各層(表面層、弾性層、圧縮層)の間に、これらを固定・保持するために各種接着剤や両面テープを用いてもよい。また、装置に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を設けてもよい。また、補強層として織布を用いてもよい。転写体101は、前記材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。転写体101の大きさは、目的の画像サイズに合わせて自由に選択することができる。
なお、転写体の形状としては、特に制限はないが、図示したドラム状の他、シート状、ローラ状、ベルト状、無端ウェブ状等を用いることができる。
<支持部材>
支持部材102が転写体101を支持する支持方法としては、各種接着剤や両面テープを用いることができる。または、転写体101に金属、セラミック、樹脂等を材質とした設置用部材を取り付け、この設置用部材を用いて、転写体101を支持部材102に支持してもよい。
支持部材102は、その搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。支持部材102の材質には、金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、以下の材質が好ましく用いられる。すなわち、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。また、これらを組み合わせて用いることも好ましい。
<反応液付与装置>
本実施形態の反応液付与装置103は、反応液を収容する反応液収容部103aと、反応液収容部103a内の反応液を転写体101に付与する反応液付与部材103b,103cとを有するグラビアオフセットローラである。
反応液付与装置としては、反応液を被吐出媒体上に付与できるいかなる装置であってもよく、従来から知られている各種装置を適宜用いることができる。具体的には、グラビアオフセットローラ、インクジェットヘッド、ダイコーティング装置(ダイコータ)、ブレードコーティング装置(ブレードコータ)などが挙げられる。反応液付与装置による反応液の付与は、被吐出媒体上でインクと混合(反応)することができれば、インクの付与前に行っても、インクの付与後に行ってもよいが、好ましくは、インクの付与前に反応液を付与する。反応液をインクの付与前に付与することによって、インクジェット方式による画像記録時に、隣接して付与されたインク同士が混ざり合うブリーディングや、先に着弾したインクが後に着弾したインクに引き寄せられてしまうビーディングを抑制することもできる。
<反応液>
反応液は、インクと接触することによりインク中のアニオン性基を有する成分(樹脂、自己分散顔料など)を凝集させるものであり、反応剤を含有する。反応剤としては、例えば、多価金属イオン、カチオン性樹脂などのカチオン性成分や、有機酸など挙げることができる。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、及びZn2+等の二価の金属イオンや、Fe3+、Cr3+、Y3+、及びAl3+等の三価の金属イオンが挙げられる。反応液に多価金属イオンを含有させるためには、多価金属イオンとアニオンとが結合して構成される多価金属塩(水和物であってもよい)を用いることができる。そのアニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、NO 、NO 、SO 2−、CO 2−、HCO 、PO 3−、HPO 2−、及びHPO 等の無機アニオンが挙げられる。さらに、HCOO、(COO、COOH(COO)、CHCOO、C(COO、CCOO、C(COO、及びCHSO 等の有機アニオンも挙げられる。反応剤として多価金属イオンを用いる場合、反応液中の多価金属塩換算の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.00質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。
カチオン性樹脂としては、例えば、1〜3級アミンの構造を有する樹脂、4級アンモニウム塩の構造を有する樹脂などが挙げられる。具体的には、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチレンイミン、グアニジンなどの構造を有する樹脂などが挙げられる。反応液における溶解性を高めるために、カチオン性樹脂と酸性化合物とを併用したり、カチオン性樹脂の4級化処理を施したりすることもできる。反応剤としてカチオン性樹脂を用いる場合、反応液中のカチオン性樹脂の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.00質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。
有機酸を含有する反応液は、酸性領域(pH7.0未満、好ましくはpH2.0〜5.0)に緩衝能を有することによって、インク中に存在する成分のアニオン性基を酸型にして凝集させるものである。有機酸としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。すなわち、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピコリン酸、ニコチン酸、チオフェンカルボン酸、レブリン酸、クマリン酸などのモノカルボン酸、及びその塩が挙げられる。さらに、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、セバシン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、などのジカルボン酸、及びその塩や水素塩も挙げられる。さらに、クエン酸、トリメリット酸などのトリカルボン酸及びその塩や水素塩も挙げられ、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸及びその塩や水素塩等も挙げられる。
反応液中の反応剤以外の成分としては、インクに用いることができるものとして後述する、水、水溶性有機溶剤、その他の添加剤などと同様のものを用いることができる。
<インク付与装置>
本実施形態では、転写体101にインクを付与するインク付与装置104として、液体吐出ヘッドが用いられる。液体吐出ヘッドとしては、例えば電気−熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する形態、電気−機械変換体によってインクを吐出する形態、静電気を利用してインクを吐出する形態等が挙げられる。中でも特に、高速で高密度の画像記録の観点からは電気−熱変換体を利用したものが好適に用いられる。液体吐出ヘッドによる描画は、画像信号を受け、各位置に必要なインク量を付与することで行われる。なお、液体吐出ヘッドの詳細については後述する。
本実施形態では、液体吐出ヘッドは、記録媒体108の幅方向に延びるページワイド型液体吐出ヘッドであり、使用可能な最大サイズの記録媒体108の画像記録領域の幅分をカバーする範囲に吐出口が配列されている。液体吐出ヘッドは、その下側(転写体101に対向する側)に吐出口が開口したインク吐出面を有しており、インク吐出面は微小な隙間(数ミリ程度)を空けて転写体101の表面と対向している。
インク付与量は、画像濃度(Duty)やインク厚みで表現することができるが、本実施形態では、各インクドットの質量に付与個数を掛け、それを印字面積で割った平均値(g/m)として定義される。なお、画像領域における最大インク付与量とは、インク中の液体成分を除去する観点から、被吐出媒体の情報として用いられる領域内において、少なくとも5mm以上の面積において付与されているインク付与量を示す。
インク付与装置104は、被吐出媒体上に各色のカラーインクを付与するために、複数の液体吐出ヘッドを有していてもよい。例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクを用いてそれぞれの色画像を形成する場合、インク付与装置104は、上記4種類のインクを被吐出媒体上にそれぞれ吐出する4つの液体吐出ヘッドを有することになる。その場合、これらは転写体101の移動方向に沿って並ぶように配置される。この構成に限らず、1つの液体吐出ヘッドで複数の種類のインクを吐出するようなカラー一体型のページワイド型の液体吐出ヘッドであっても良い。
また、インク付与装置104は、色材を含有しない、あるいは含有したとしてもその割合が非常に低く、実質的に透明なクリアインクを吐出する液体吐出ヘッドを含んでいてもよい。そしてこのクリアインクを、反応液、カラーインクとともにインク像を形成するために利用することができ、それにより、例えば、画像の光沢性を向上させることができる。転写後の画像が光沢感を醸すように、配合する樹脂成分を適宜調整し、さらには、クリアインクの吐出位置を制御するとよい。このクリアインクは、最終記録物ではカラーインクよりも表層側にあることが望ましく、したがって、カラーインクよりも先に転写体101上に付与することが好ましい。そのために、クリアインク用の液体吐出ヘッドは、転写体101の移動方向においてカラーインク用の液体吐出ヘッドより上流側に配置されることが好ましい。
また、光沢用とは別に、転写体101から記録媒体108への画像の転写性を向上させるために、クリアインクを利用することができる。例えば、カラーインクよりも粘着性を発現する成分をクリアインクに多く含ませ、これをカラーインクに付与することで、転写体101に付与する転写性向上液としてクリアインクを利用することができる。例えば、転写性向上用のクリアインクのための液体吐出ヘッドは、転写体101の移動方向においてカラーインク用の液体吐出ヘッドより下流側に配置される。そしてカラーインクを転写体101に付与した後、その転写体101上にクリアインクを付与することで、インク像の最表面にはクリアインクが存在することになる。転写体101から記録媒体108へのインク像の転写において、インク像の表面のクリアインクはある程度の粘着力で記録媒体108に粘着し、これによって、液除去後のインク像が記録媒体108へ移動しやすくなる。
<インク>
以下、本実施形態に適用されるインクの各成分について説明する。
(色材)
本実施形態に適用されるインクに含有される色材として、顔料や染料を用いることができる。インク中の色材の含有量は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
色材として用いることができる顔料の種類は特に限定されない。顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン、イソインドリノン系、イミダゾロン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系などの有機顔料を挙げることができる。これらの顔料は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。顔料の分散方式も特に限定されない。例えば、樹脂分散剤により分散させた樹脂分散顔料、顔料の粒子表面にアニオン性基などの親水性基を直接又は他の原子団を介して結合させた自己分散顔料などを用いることもできる。もちろん、分散方式の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。
顔料を分散させるための樹脂分散剤としては、インクジェット用の水性インクに用いられる公知の樹脂分散剤を使用することができる。中でも本実施形態の態様においては分子鎖中に親水性ユニットと疎水性ユニットとを併せ持つアクリル系の水溶性の樹脂分散剤を用いることが好ましい。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。
インク中の樹脂分散剤は、液媒体に溶解した状態であってもよく、液媒体中に樹脂粒子として分散した状態であってもよい。ここで樹脂が水溶性であるとは、その樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しないものであることを意味する。
親水性ユニット(アニオン性基などの親水性基を有するユニット)は、例えば、親水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸などのアニオン性基を有する酸性モノマー、これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーなどを挙げることができる。酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。
疎水性ユニット(アニオン性基などの親水性を有しないユニット)は、例えば、疎水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。疎水性基を有するモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有するモノマーを挙げることができる。さらに、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有するモノマー(すなわち、(メタ)アクリルエステル系モノマー)などを挙げることもできる。
樹脂分散剤の酸価は、50mgKOH/g以上550mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、樹脂分散剤の重量平均分子量は、1,000以上50,000以下であることが好ましい。顔料の含有量(質量%)は、樹脂分散剤の含有量に対する質量比率で(顔料/樹脂分散剤)、0.3倍以上10.0倍以下であることが好ましい。
自己分散顔料としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が、直接又は他の原子団(−R−)を介して顔料の粒子表面に結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合のカウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン;アンモニウム;有機アンモニウム;などを挙げることができる。また、他の原子団(−R−)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基としてもよい。
色材として用いることができる染料の種類は特に限定されないが、アニオン性基を有する染料を用いることが好ましい。染料の具体例としては、アゾ系、トリフェニルメタン系、(アザ)フタロシアニン系、キサンテン系、アントラピリドン系などが挙げられる。これらの染料は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
また、分散剤を用いず、顔料自体を表面改質して分散可能としたいわゆる自己分散顔料を用いることも本実施形態において好適である。
(樹脂粒子)
本実施形態に適用されるインクは、樹脂粒子を含有することができる。樹脂粒子は色材を含むものである必要はない。樹脂粒子は、画像品位や定着性の向上に効果がある場合があり好適である。
本実施形態に用いることができる樹脂粒子の材質としては、特に限定されず、公知の樹脂を適宜用いることができる。具体的には、オレフィン系、ポリスチレン系、ウレタン系、アクリル系などの各種の材料で構成される樹脂粒子が挙げられる。樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上2,000,000以下の範囲が好適である。樹脂粒子の動的光散乱法により測定される体積平均粒子径は、10nm以上1,000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。インク中の樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下が好ましく、より好ましくは2.0質量%以上40.0質量%以下である。
特に、本実施形態に適用されるインクは、最低造膜温度(MFT)が100℃以上となる造膜成分を含むことが好ましい。そのための造膜成分として、上記の樹脂粒子に加えて、ワックス粒子を含むことが好ましい。ワックス粒子を含むことで、インク像が加熱され、その温度がMFTを超えたときに、急峻に膜化が進行し、転写性が向上することが期待される。
ワックス粒子の成分としては、例えば、天然ワックス又は合成ワックスを挙げることができる。天然ワックスとしては、例えば、石油系ワックス、植物系ワックス、又は動植物系ワックス等が挙げられる。石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、又はペトロラタム等が挙げられる。また、植物系ワックスとしては、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ等が挙げられる。また、動物植物系ワックスとしては、例えば、ラノリン、又はみつろう等が挙げられる。合成ワックスとしては、例えば、合成炭化水素系ワックス、又は変性ワックス系等が挙げられる。合成炭化水素系ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、又はフィッシャー・トロブシュワックス等が挙げられる。また、変性ワックス系としては、例えば、パラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、又はマイクロクリスタリンワックス誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ワックス粒子は、そのワックス粒子が液中に分散したワックス粒子分散体の形態でインクに添加されることが好ましい。ワックス粒子は、ワックス成分が分散剤により分散されて形成されることが好ましい。その分散剤としては、特に制限はなく、例えば、公知の分散剤を用いることができるが、インク中における分散状態の安定性を考慮して分散剤を選択することが好ましい。
また、ワックス粒子の平均粒子径(個数基準90%粒子径)は、インクジェット方式を用いたインクの吐出性を考慮し、1μm以下であることが好ましい。
(水性媒体)
本実施形態に用いることができるインクには、水を含有させたり、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させたりすることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用インクに使用可能なものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上を含有させることができる。
(その他添加剤)
本実施形態に用いることができるインクには、上記成分以外にも必要に応じて、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂など種々の添加剤が含有されていてもよい。
<液吸収装置>
本実施形態の液吸収装置105は、液吸収部材105aと、液吸収部材105aを転写体101上のインク像に押し当てる液吸収用の押圧部材105bとを有している。なお、液吸収部材105aおよび押圧部材105bの形状については特に制限がない。例えば、図1に示すように、押圧部材105bが円柱状、液吸収部材105aがベルト状であり、円柱状の押圧部材105bでベルト状の液吸収部材105aを転写体101に押し当てる構成であってもよい。また、押圧部材105bが円柱状、液吸収部材105aが円柱状の押圧部材105bの周面上に形成された円筒状であり、円柱状の押圧部材105bで円筒状の液吸収部材105aを転写体に押し当てる構成であってもよい。本実施形態では、インクジェット記録装置1000内でのスペース等を考慮すると、液吸収部材105aは、図示したようにベルト形状であることが好ましい。
また、このようなベルト状の液吸収部材105aを有する液吸収装置105は、液吸収部材105aを張架する張架部材を有していてもよい。図1には、張架部材としての張架ローラ105c〜105eが示されている。図1において、押圧部材105bも張架ローラ105c〜105eと同様に回転するローラ部材として示されているが、これに限定されるものではない。
液吸収装置105は、多孔質体を有する液吸収部材105aを押圧部材105bによってインク像に押し当てて接触させることで、インク像に含まれる液体成分を液吸収部材105aに吸収させて減少させる。インク像中の液体成分を減少させる方法として、液吸収部材105aを接触させる方式に加え、その他従来から用いられている各種手法、例えば、加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法等を組み合わせて用いてもよい。また、液体成分を減少させた液除去後のインク像にこれらの方法を適用してさらに液体成分を減少させてもよい。
<液吸収部材>
本実施形態では、液除去前のインク像に含まれる液体成分の少なくとも一部を、多孔質体を有する液吸収部材105aと接触させて吸収することで除去し、インク像中の液体成分の含有量を減少させる。液吸収部材105aのインク像との接触面を第1の面とすると、第1の面に多孔質体が配置される。
このような多孔質体を有する液吸収部材は、被吐出媒体の移動に連動して移動し、インク像と接触した後、所定の周期で別の液除去前のインク像に再接触するように、循環して液吸収が可能な形状を有していることが好ましい。そのような形状として、例えば、無端ベルト状やドラム状などの形状が挙げられる。
(多孔質体)
本実施形態の液吸収部材105aの多孔質体としては、第1の面側の平均孔径が、第1の面と対向する第2の面側の平均孔径よりも小さいものを使用することが好ましい。インク中の色材が多孔質体へ付着することを抑制するために、その孔径は小さいことが好ましく、少なくともインク像と接触する第1の面側の多孔質体の平均孔径は、10μm以下であることが好ましい。なお、ここでいう平均孔径とは、第1の面または第2の面の表面での細孔の平均直径のことを意味し、公知の手段、例えば、水銀圧入法、窒素吸着法、SEM画像観察等で測定可能である。
また、均一な高い通気性を実現するために、多孔質体の厚みは薄いことが好ましい。通気性は、JIS P8117で規定されるガーレ値で示すことができ、本実施形態では、ガーレ値は10秒以下であることが好ましい。ただし、多孔質体を薄くすると、液体成分を吸収するために必要な容量を十分に確保できない場合があるため、多孔質体を多層構造とすることもできる。また、液吸収部材105aは、インク像と接触する層が多孔質材料から形成されていればよく、インク像と接触しない層は多孔質材料から形成されていなくてもよい。
ここで、多孔質体を多層構造とする場合の各層の構成と多孔質体の製造方法について説明する。以下の説明では、インク像に接触する側の層を第1の層とし、第1の層のインク像との接触面と反対の面に積層される層を第2の層とする。
[第1の層]
本実施形態では、第1の層の材料は特に限定されず、水に対する接触角が90°未満の親水性材料と、接触角が90°以上の撥水性材料のいずれも使用することができる。
親水性材料を用いる場合には、セルロースやポリアクリルアミドなどの単一素材、またはこれらの複合材料などから好ましく選択される。また、下記の撥水性材料の表面を親水化処理したものを用いることもできる。親水化処理としては、スパッタエッチング法、放射線やH2Oイオン照射、エキシマ(紫外線)レーザー光照射などの方法が挙げられる。親水性材料を用いる場合、水に対する接触角が60°以下であるものを用いることがより好ましい。親水性材料の使用には、毛管力により、液体、特に水を吸い上げる効果がある。
一方、色材の付着の抑制とクリーニング性の向上のためには、第1の層の材料に、表面自由エネルギーの低い撥水性材料、特にフッ素樹脂を用いることが好ましい。フッ素樹脂としては、具体的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)が挙げられる。さらに、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等も挙げられる。これらの樹脂は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができ、第1の層が、複数の膜からなる積層構造であってもよい。撥水性材料を用いる場合、毛管力により液体を吸い上げる効果はほとんどなく、初めてインク像と接触する際に液体の吸い上げに時間を要することがある。このため、第1の層に第1の層との接触角が90°未満である液体を染み込ませておくことが好ましい。この液体は、液吸収部材105aの第1の面の側から第1の層に塗布することで、第1の層に染み込ませることができる。この液体は、水に界面活性剤や第1の層との接触角の低い液体を混合して調製することが好ましい。
本実施形態では、第1の層の膜厚は、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。膜厚は、例えば、直進式のマイクロメータ(例えば、株式会社ミツトヨ製、OMV−25)で任意の10点の膜厚を測定し、その平均値から算出される。
第1の層は、公知の薄膜多孔質膜の製造方法により製造することができ、例えば、樹脂材料を押出成形などの方法でシート状物を得た後、所定の厚みに延伸することで製造することができる。また、押出成形時の材料にパラフィン等の可塑剤を添加し、延伸時に加熱などにより可塑剤を除去することで多孔質膜として得ることができる。孔径は、添加する可塑剤の添加量、延伸倍率などを適宜調整することで調節することができる。
[第2の層]
本実施形態では、第2の層は、通気性を有する層であることが好ましい。このような層としては、樹脂繊維の不織布でもよいし、織布でもよい。第2の層の材料は、特に限定されないが、吸収した液体が第1の層の側へ逆流しないように、第1の層に対して液体との接触角が同等かそれよりも低い材料であることが好ましい。具体的には、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン、ナイロンなどのポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタラートなど)、ポリスルフォンなどの単一素材、またはこれらの複合材料などから好ましく選択される。また、第2の層は、第1の層よりも孔径の大きい層であることが好ましい。
[第3の層]
本実施形態では、多層構造の多孔質体の層数は特に限定されず、3層以上であってもよい。3層目(第3の層ともいう)以降の層は、剛性の観点から不織布が好ましく、その材料には第2の層と同様のものが用いられる。
[その他の材料]
液吸収部材105aは、上記の多孔質体以外に、液吸収部材105aの側面を補強する補強部材を有していてもよい。また、長尺のシート形状の多孔質体の長手方向端部を接続してベルト状の部材に形成する際に用いられる接合部材を有していてもよい。そのような接合部材は、材料として非孔質のテープ材などを用いることができ、インク像と接触しない位置あるいは周期に配置すればよい。
[多孔質体の製造方法]
第1の層と第2の層を積層して多孔質体を形成する方法は、特に限定されず、それらを重ね合わせるだけでもよいし、接着剤ラミネートまたは熱ラミネートなどの方法を用いて互いに接着してもよい。本実施形態では、通気性の観点から、熱ラミネートを用いることが好ましい。また、例えば、加熱により第1の層または第2の層の一部を溶融させ、それらを互いに接着してもよい。また、第1の層と第2の層との間にホットメルトパウダーのような融着材を介在させ、加熱により、それらを互いに接着してもよい。多孔質体を3層以上の構成にする場合は、それらを一度に積層させても順次積層させてもよく、積層順に関しては、適宜選択可能である。
加熱工程では、加熱されたローラで多孔質体を挟み込んで加圧しながら、多孔質体を加熱するラミネート法が好ましい。
<液吸収装置における各種条件と構成>
本実施形態では、多孔質体を有する液吸収部材105aをインク像に接触させる前に、液吸収部材105aに処理液を付与する前処理手段(図示せず)によって、液吸収部材105aに前処理を施すことが好ましい。本実施形態で用いられる処理液は、水及び水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、エタノールやイソプロピルアルコール等の公知の有機溶剤をいずれも用いることができる。本実施形態で行われる液吸収部材105aの前処理において、処理液の付与方法は特に限定されないが、浸漬や液滴滴下による方法が好ましい。
転写体101上のインク像に接触するときの液吸収部材105aの圧力は、2.9N/cm(0.3kgf/cm)以上であることが好ましく、この場合、インク像中の液体成分をより短時間に固液分離して除去することができる。なお、ここでいう液吸収部材の圧力とは、被吐出媒体と液吸収部材との間のニップ圧を意味し、面圧分布測定器(例えば、新田株式会社製、I−SCAN)を用いて面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割ることで算出したものである。
液吸収部材105aをインク像に接触させる作用時間は、インク像中の色材が液吸収部材105aへ付着することをより抑制するために、50ms以内であることが好ましい。な、ここでの作用時間とは、上述した面圧測定における、被吐出媒体の移動方向における圧力感知幅を、被吐出媒体の移動速度で割ることで算出される。
<押圧部材と加熱手段>
液吸収装置105により液体成分が減少した転写体101上のインク像は、転写部として機能する押圧部材106により、記録媒体搬送装置107によって搬送される記録媒体108に接触して転写される。本実施形態では、記録媒体108へのインク像の転写が、インク像に含まれる液体成分を除去した後に行われることで、カールや、コックリング等を抑制した記録画像を得ることができる。
押圧部材106には、記録媒体108の搬送精度や耐久性の観点から、ある程度の構造強度が求められる。押圧部材106の材質としては、金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、以下の材質が好ましく用いられる。すなわち、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。また、これらを組み合わせて用いてもよい。押圧部材106の形状については、特に制限はないが、例えばローラ状が挙げられる。
転写体101上のインク像を記録媒体108に転写するために押圧部材106が転写体101を押圧する押圧時間については、特に制限はない。ただし、転写が良好に行われ、かつ転写体101の耐久性を損なわないようにするために、押圧時間は5ms以上100ms以下であることが好ましい。なお、ここでいう押圧時間とは、記録媒体108と転写体101とが接触している時間を示しており、面圧分布測定器(例えば、新田株式会社製、I−SCAN)を用いて面圧測定を行い、加圧領域の搬送方向長さを搬送速度で割ることで算出したものである。
また、押圧部材106が転写体101を押圧する圧力についても、特に制限はないが、転写が良好に行われ、かつ転写体101の耐久性を損なわないようにすることが求められる。このために、圧力は9.8N/cm(1kg/cm)以上294.2N/cm(30kg/cm)以下であることが好ましい。なお、ここでいう圧力とは、記録媒体108と転写体101との間のニップ圧を意味し、面圧分布測定器を用いて面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割ることで算出したものである。
本実施形態では、転写体101上の液除去後のインク像は、加熱手段110により、インクに含まれる樹脂粒子などの造膜成分の最低造膜温度(MFT)以上に加熱されて、記録媒体108に転写される。このとき、MFT以上に加熱されることで、インク像中の樹脂粒子などが転写体101上で溶融し、温度の低い記録媒体108に接触して融着して密着力が向上することで、転写が良好に行われることが期待される。インク像中の造膜成分のMFTは、堅牢性に優れた画像を得るためには、100℃以上であることが重要である。本実施形態では、インク像の加熱温度は、画像の転写性及び堅牢性の観点から、このMFTよりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましい。加熱手段110としては、例えば、赤外線等の各種ランプの照射による加熱や温風ファンによる加熱など、公知の方法を用いることができる。中でも、加熱効率が高いことから、赤外線ヒータを用いることが好ましい。加熱手段110は、図示したように、転写体101の回転方向においてインク付与装置104の下流側であって押圧部材106の上流側に配置されていることが好ましい。
なお、最低造膜温度(MFT)は、一般的に知られている手法、例えば、JIS K6828−2:2003や、ISO2115:1996に準拠した各装置で測定することができる。本実施形態では、各インクを常温で乾燥させた後、前述した装置を用いてMFTが評価される。
<冷却手段>
本実施形態では、インク付与、液吸収、転写を繰り返し行うため、インク像を転写した後の転写体101を冷却することが好ましい。転写体101を高速冷却することによって、次に再びインク付与装置104でインクが付与されてから液吸収装置105で液体吸収が行われるまでの間に、転写体101上のインク像から液体成分が蒸発することを抑制することが可能となる。このような冷却は、液吸収が行われるタイミングにおいて、インクの主溶剤である水の沸点未満になるように行われることが好ましく、インクが付与されるタイミングにおいて水の沸点未満になるように行われることがより好ましい。
図3は、転写体101の温度に対して、液吸収前後でのインク像の組成変化を示したグラフである。このグラフによれば、初期値として、固形分が約13%、高沸点溶剤分が約15%、残りが水で構成されたインク像を形成した後、液吸収が行われるまでの水分の乾燥量が、転写体101の温度によって異なることが分かる。特に、転写体101の温度が水の沸点である100℃以上では、他の温度に比べて、液吸収前の水分の乾燥量が多くなっていることが分かる。多孔質体を用いた液吸収では、転写体101の温度にかかわらず、インク像には一定の量の液体が残る。つまり、液吸収工程により液体成分は一様に吸収されるため、液吸収後のインク像中の液体成分の組成比は、液吸収前の水分の蒸発によって決定されることになる。インク像中の水分は転写工程中にも蒸発するが、高沸点溶剤は蒸発せずに転写画像中に残ることになるため、画像の堅牢性が低下することになる。このような理由から、インク像を転写した後の転写体101の冷却は、上述したように、インクの主溶剤である水の沸点未満になるように行われることが好ましい。
一方で、画像の転写性は転写温度に依存する。水性インクを用いるインクジェット記録方式において、MFTが低いインクを用いた場合、高い温度で転写を行う必要性がないため、転写工程において、乾燥を併用した十分な液体除去ができないことがある。また、MFTが低いインクでは、高い温度で転写を行ったとしても、画像そのものの堅牢性が、MFTが高いインクを用いた場合と比較して低くなる。このような観点から、MFTが高いインクを用いて高い温度で転写することが有利となる。
なお、冷却方法としては、冷風を吹き付ける方法、冷却したローラを接触させる方法、冷却された液体を付与する方法、気化熱を利用した方法等、公知の方法を用いることができる。特に高速に冷却するために、固体または液体を転写体101に接触させる方法を用いることが好ましく、これに加えて、送風等を組み合わせることも好ましい。液体を接触させる方法としては、液体を直接付与してもよいし、多孔質体に液体を含ませて接触させてもよい。
また、液吸収部材105aを冷却することで、液吸収工程においても、より確実にインク像中の液体成分の蒸発を抑制して、吸収不良を抑制することが可能となる。
<クリーニング部材>
本実施形態では、インク像を転写した後の転写体101に残ったインクや、記録媒体108から逆に転写された紙粉などをクリーニングするクリーニング部材109が設けられていてもよい。クリーニングの方法としては、多孔質部材を接触させる方法、ブラシで擦る方法、ブレードで掻き取る方法など、公知の方法を適宜用いることができる。また、クリーニング部材の形状も、図示したローラ形状の他、ウェブ形状などの公知の形状であってもよい。
本実施形態では、クリーニング部材109を冷却することによって、前述した冷却手段として機能させることも好ましい。
<記録媒体および記録媒体搬送装置>
本実施形態では、記録媒体108は特に限定されず、公知の記録媒体をいずれも用いることができる。記録媒体としては、ロール状に巻回された長尺物、あるいは所定の寸法に裁断された枚葉のものが挙げられる。材質としては、紙、プラスチックフィルム、木板、段ボール、金属フィルムなどが挙げられる。
また、図1において、記録媒体108を搬送するための記録媒体搬送装置107は、記録媒体繰り出しローラ107aおよび記録媒体巻き取りローラ107bによって構成されているが、記録媒体を搬送できればよく、特にこの構成に限定されるものではない。
<制御システム>
図4は、本実施形態の転写型インクジェット記録装置における制御系を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1000は、外部プリントサーバ等の記録データ生成部301と、操作パネル等の操作制御部302と、記録プロセスを実施するためのプリンタ制御部303と、記録媒体を搬送するための記録媒体搬送制御部304とを有している。
プリンタ制御部303は、CPU401と、ROM402と、RAM403と、特定用途向け集積回路(ASIC)404と、液吸収部材搬送制御部405と、転写体駆動制御部407と、ヘッド制御部409とを有している。CPU401は、装置全体を制御し、ROM402は、CPU401の制御プログラムを格納し、RAM403は、そのプログラムを実行するものである。ASIC404は、ネットワークコントローラ、シリアルIFコントローラ、ヘッドデータ生成用コントローラ、モーターコントローラ等を内蔵するものである。液吸収部材搬送制御部405は、液吸収部材搬送モータ406を駆動するものであり、ASIC404からシリアルIFを介して、コマンド制御される。転写体駆動制御部407は、転写体駆動モータ408を駆動するものであり、同様にASIC404からシリアルIFを介して、コマンド制御される。ヘッド制御部409は、液体吐出ヘッド3の最終吐出データ生成、駆動電圧生成等を行うものである。
<液体吐出ヘッド>
以下、インク付与装置104を構成する本実施形態の液体吐出ヘッドについて説明する。ただし、以下の記載は本発明の範囲を限定するものではない。一例として、本実施形態では発熱素子により気泡を発生させて液体を吐出するサーマル方式が採用されているが、圧電素子を用いたピエゾ方式およびその他の各種液体吐出方式が採用された液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。
本実施形態は、インク等の液体をタンクと液体吐出ヘッドとの間で循環させる形態であるが、その他の形態であってもよい。例えばインクを循環させずに、液体吐出ヘッドの上流側と下流側に2つのタンクを設け、一方のタンクから他方のタンクへインクを流すことで、圧力室内のインクを流動させる形態であってもよい。
(基本構成)
本実施形態の液体吐出ヘッドでは、1色あたりに使用できる吐出口列数は20列となっている(図9(a)参照)。このため、記録データを複数の吐出口列に適宜振り分けて記録を行うことで、非常に高速な記録が可能となる。さらに、不吐になる吐出口があったとしても、その吐出口に対して被吐出媒体の搬送方向に対応する位置にある、他列の吐出口から補間的に吐出を行うことで信頼性が向上し、商業印刷などに好適である。
(循環経路の説明)
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置に適用される循環経路を示す模式図である。負圧制御ユニット230を構成する2つの圧力調整機構が共に、負圧制御ユニット230よりも上流側の圧力を、所望の設定圧を中心として一定範囲内の変動で制御する機構(いわゆる「背圧レギュレーター」と同作用の機構部品)である。第2循環ポンプ1004は、負圧制御ユニット230の下流側を減圧する負圧源として作用し、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002は、液体吐出ヘッド上流側に配置されている。負圧制御ユニット230は、液体吐出ヘッド下流側に配置されている。これらのポンプ(1001、1002、1004)および負圧制御ユニット230は後述するように、液体吐出ヘッドの圧力室23内の液体を圧力室23の外部との間で循環する循環手段として機能する。
負圧制御ユニット230は、次のように作動する。液体吐出ヘッド3により記録を行う際の記録Dutyの変化により生じる流量の変動があっても、負圧制御ユニット230より上流側(すなわち液体吐出ユニット300側)の圧力変動を、予め設定された圧力を中心として一定範囲内に安定にするように作動する。図5に示すように、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の下流側を加圧することが好ましい。このようにすると液体吐出ヘッド3に対するバッファタンク1003の水頭圧の影響を抑制できるので、インクジェット記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの選択幅を広げることができる。第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対して所定の水頭差をもって配置された水頭タンクであっても適用可能である。
図5に示すように、負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの圧力調整機構を備えている。2つの負圧調整機構の内、高圧設定側(図5でHと記載)、低圧側(図5でLと記載)はそれぞれ、液体供給ユニット220内を経由して、液体吐出ユニット300内の共通供給流路211、および共通回収流路212に接続されている。2つの負圧調整機構により共通供給流路211の圧力を共通回収流路212の圧力より相対的に高くする。このことで、共通供給流路211から個別流路213及び各記録素子基板10の圧力室23(図15)の内部を介して共通回収流路212へと流れるインク流れが発生する(図5の矢印)。
(液体吐出ヘッド構成の説明)
本実施形態の液体吐出ヘッド3の構成について説明する。図6は、本実施形態の液体吐出ヘッド3の斜視図であり、図7は、その分解斜視図である。液体吐出ヘッド3は液体吐出ヘッド3の長手方向に直線状に配列される複数の記録素子基板10を備え、1色の液体で記録を行うページワイド型の液体吐出ヘッドである。液体吐出ヘッド3は、液体接続部111と、信号入力端子91と、電力供給端子92と、ヘッドの長手側面を保護するシールド板132とを備えている。信号出力端子91と電力供給端子92は、液体吐出ヘッド3の両側に配置されている。これは記録素子基板10に設けられる配線部で生じる電圧低下や信号伝送遅れを低減するためである。
図7には、液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットがその機能毎に分割されて表示されている。本実施形態の液体吐出ヘッド3では、液体吐出ユニット300に含まれる第2流路部材60によって液体吐出ヘッドの剛性を担保している。本実施形態における液体吐出ユニット支持部81は第2流路部材60の両端部に接続されており、この液体吐出ユニット300はインクジェット記録装置1000のキャリッジと機械的に結合されて、液体吐出ヘッド3の位置決めを行う。負圧制御ユニット230を備える液体供給ユニット220と、電気配線基板支持部82に結合された電気配線基板90は、液体吐出ユニット支持部81に結合される。2つの液体供給ユニット220内にはそれぞれフィルタ(図示せず)が内蔵されている。2つの負圧制御ユニット230は、それぞれ異なる、相対的に高低の負圧で圧力を制御するように設定されている。また、この図のように液体吐出ヘッド3の両端部にそれぞれ、高圧側と低圧側の負圧制御ユニット230を設置した場合、液体吐出ヘッド3の長手方向に延在する共通供給流路211と共通回収流路212における液体の流れが互いに対向する。このようにすると、共通供給流路211と共通回収流路212の間で熱交換が促進されて、2つの共通流路内における温度差が低減される。そのため、共通流路に沿って複数設けられる各記録素子基板10における温度差が付きにくく、温度差による記録ムラが生じにくくなるという利点がある。
次に、液体吐出ユニット300の流路部材210の詳細について説明する。図7に示すように流路部材210は、第1流路部材50、第2流路部材60を積層したものであり、液体供給ユニット220から供給された液体を各吐出モジュール200へと分配する。また流路部材210は、吐出モジュール200から環流する液体を液体供給ユニット220へと戻すための流路部材として機能する。流路部材210の第2流路部材60は、内部に共通供給流路211及び共通回収流路212が形成された流路部材であるとともに、液体吐出ヘッド3の剛性を主に担うという機能を有している。このため、第2流路部材60の材質としては、液体に対する十分な耐食性と高い機械強度を有するものが好ましい。具体的には、SUSやTi、アルミナなどを好ましく用いることができる。
図8(a)は、第1流路部材50の、吐出モジュール200がマウントされる側の面を示し、図8(b)は、その裏面である、第2流路部材60と当接される側の面を示した図である。第1流路部材50は、各吐出モジュール200に対応した複数の部材を隣接して配列したものである。このように分割した構造を採り、複数のモジュールを配列させることで、液体吐出ヘッドの長さに対応することができるため、例えばB2サイズおよびそれ以上の長さに対応した比較的ロングスケールの液体吐出ヘッドに特に好適に適用できる。図8(a)に示すように、第1流路部材50の連通口51は吐出モジュール200と流体的に連通し、図8(b)に示すように、第1流路部材50の個別連通口53は第2流路部材60の連通口61と流体的に連通する。図8(c)は、第2流路部材60の、第1流路部材50と当接される側の面を示し、図8(d)は、第2流路部材60の厚み方向における中央部の断面を示し、図8(e)は、第2流路部材60の、液体供給ユニット220と当接する側の面を示す図である。第2流路部材60の共通流路溝71は、その一方が図9に示す共通供給流路211であり、他方が共通回収流路212であり、夫々、液体吐出ヘッド3長手方向に沿って、一端側から他端側に液体が供給される。共通供給流路211と共通回収流路212の液体の長手方向は互いに反対方向である。
図9は、記録素子基板10と流路部材210との液体の接続関係を示した透視図である。図9に示すように、流路部材210内には、液体吐出ヘッド3の長手方向に伸びる一組の共通供給流路211及び共通回収流路212が設けられている。第2流路部材60の連通口61は、各々の第1流路部材50の個別連通口53と位置を合わせて接続されており、第2流路部材60の連通口72から共通供給流路211を介して第1流路部材50の連通口51へと連通する液体供給経路が形成されている。同様に、第2流路部材60の連通口72から共通回収流路212を介して第1流路部材50の連通口51へと連通する液体供給経路も形成されている。
図10は、図9のF−F線における断面を示した図である。この図に示すように、共通供給流路は、連通口61、個別連通口53、連通口51を介して、吐出モジュール200へ接続されている。別の断面においては、個別回収流路が同様の経路で吐出モジュール200へ接続されていることは、図9を参照すれば明らかである。各吐出モジュール200及び記録素子基板10には、各吐出口13に連通する流路が形成されており、供給した液体の一部または全部が、吐出動作を休止している吐出口13(圧力室23)を通過して、環流できるようになっている。また、共通供給流路211は負圧制御ユニット230(高圧側)と、共通回収流路212は負圧制御ユニット230(低圧側)と液体供給ユニット220を介してそれぞれ接続されている。そのため、その差圧によって、共通供給流路211から記録素子基板10の吐出口13(圧力室23)を通過して共通回収流路212へと流れる流れが発生する。
(吐出モジュールの説明)
図11(a)に、1つの吐出モジュール200の斜視図を、図11(b)にその分解図を示す。記録素子基板10の複数の吐出口列方向に沿った両辺部(記録素子基板10の各長辺部)に複数の端子16がそれぞれ配置され、それに電気接続されるフレキシブル配線基板40も、1つの記録素子基板10に対して2枚配置されている。これは、記録素子基板10に設けられる吐出口列数が20列あり、それに伴って配線数が多くなっているためである。すなわち、端子16から、吐出口列に対応して設けられるエネルギー発生素子15までの最大距離を短く抑制して、記録素子基板10内の配線部で生じる電圧低下や信号伝送遅れを低減することを目的としている。また支持部材30の液体連通口31は記録素子基板10に設けられ、全吐出口列を跨るように開口している。
(記録素子基板の構造の説明)
図12(a)は、記録素子基板10の吐出口13が配される側の面の模式図、図12(c)は、図12(a)の面の裏面を示す模式図である。記録素子基板10の吐出口形成部材12には、複数の吐出口列が形成されている。なお、以後、複数の吐出口13が配列される吐出口列が延びる方向を「吐出口列方向」と呼称する。
図13は、記録素子基板10の裏面側に設けられている蓋部材20を除去した場合の記録素子基板10の面を示す模式図である。図13に示すように、各吐出口13に対応した位置には、液体を熱エネルギーにより発泡させるための発熱素子であるエネルギー発生素子15が配置されている。隔壁22により、エネルギー発生素子15を内部に備える圧力室23が区画され、その内部にエネルギー発生素子15が位置している。エネルギー発生素子15は、記録素子基板10に設けられた電気配線(図示せず)によって、図12(a)の端子16と電気的に接続されている。エネルギー発生素子15は、インクジェット記録装置1000の制御回路から電気配線基板90(図7)及びフレキシブル配線基板40(図11)を介して入力されるパルス信号に基づいて発熱して、液体を沸騰させる。この沸騰による発泡の力で液体が吐出口13から吐出される。記録素子基板10の裏面には、吐出口列方向に沿って、液体供給路18と液体回収路19とが交互に設けられている。液体供給路18及び液体回収路19は、記録素子基板10に設けられた吐出口列方向に伸びた流路であり、それぞれ供給口17a、回収口17bを介して吐出口13と連通している。さらに、蓋部材20には、支持部材30の液体連通口31と連通する開口21が設けられている。
(記録素子基板間の位置関係の説明)
図14は、隣り合う2つの吐出モジュールにおける、記録素子基板の隣接部を部分的に拡大して示す平面図である。図12に示すように、本実施形態では略平行四辺形の記録素子基板を用いている。図14に示すように、各記録素子基板10における吐出口13が配列される各吐出口列(14a〜14d)は、被吐出媒体の移動方向に対し一定角度傾くように配置されている。それによって記録素子基板10同士の隣接部における吐出列は、少なくとも1つの吐出口が被吐出媒体の移動方向にオーバーラップするようになっている。図14では、D線上の2つの吐出口が互いにオーバーラップ関係にある。このような配置によって、仮に記録素子基板10の位置が所定位置から多少ずれた場合でも、オーバーラップする吐出口の駆動制御によって、記録画像の黒スジや白抜けを目立たなくするようにすることができる。複数の記録素子基板10を千鳥配置ではなく直線状(インライン)に配置した場合にも、図14の構成により液体吐出ヘッド10の被吐出媒体の移動方向の長さの増大を抑えつつ、記録素子基板10同士のつなぎ部における黒スジや白抜け対策を行うことができる。なお、本実施形態では記録素子基板の主平面は平行四辺形であるが、本発明はこれに限るものではなく、例えば長方形、台形、その他形状の記録素子基板を用いた場合でも、本発明の構成を好ましく適用することができる。
(吐出口近傍の構成)
次に、上述した本実施形態の液体吐出ヘッドにおける、吐出口およびその近傍の構成にについて説明する。
図15(a)から図15(c)は、本実施形態の液体吐出ヘッドにおける吐出口近傍の構成を詳細に説明するための模式図である。図15(a)は、インクが吐出される側から見た平面図、図15(b)は、図15(a)におけるA−A線における断面図、図15(c)は、図15(a)のA−A線における断面を示す斜視図である。
これらの図に示すように、図5に関連して説明したインクの循環によって、エネルギー発生素子15が設けられた圧力室23とその両側の流路24には、インクの流れ17が生じている。すなわち、インクの循環を生じさせる差圧によって、基板11内に設けられた液体供給路(流入流路)18内の液体が、供給口17a、(供給)流路24、圧力室23、(回収)流路24、回収口17bを介して液体回収路(流出流路)19へと流れる。本実施形態では、流路24及び圧力室23内のインク流17の速度は、例えば0.1〜100mm/s程度であり、これは、圧力室内のインクが流れた状態で吐出動作を行っても、着弾精度等に与える影響が比較的小さい速度である。
また、インクの非吐出時には、エネルギー発生素子15と、それに対向する吐出口13との間の空間がインクで満たされる。そのため、上述のインクの流れ17とともに、吐出口13の液体が吐出される方向側の端部近傍には、インクのメニスカス(インク界面13a)が形成される。なお、図15(b)では、簡単のために、このインク界面13aが直線(平面)で示されているが、その形状は、吐出口13の壁を形成ずる部材とインクの表面張力に応じて定まり、通常は、凹形状または凸形状の曲線(曲面)となる。このメニスカスが形成された状態で、エネルギー発生素子15である発熱素子(ヒータ)を駆動することにより、その発生する熱を利用してインク中に気泡を発生させ、吐出口13からインクを吐出することができる。なお、吐出口13は、図15(b)に示すように、吐出口形成部材12に形成された、筒状の吐出口部13bの吐出方向側の端部に位置する開口部であって、吐出口部13bは吐出口13と圧力室23とを連通する。吐出口13から液体が吐出される方向(図15(b)の上下方向)を「吐出方向」と称し、流路24及び圧力室23内の液体の流れ方向(図15(b)の左右方向)を単に「流れ方向」と称する。
このように、本実施形態では、液体吐出ヘッドの吐出口13とエネルギー発生素子15との間の流路24及び圧力室23にインクを流通させながらインクの吐出動作が行われる。これにより、吐出動作に伴って生じる熱や、記録素子基板10の温度制御による熱、吐出口13近傍の外部環境からの熱により水分等が蒸発して増粘したり色材濃度が変化したりしたインクを排出し、新たなインクを補給することができる。その結果、インクの増粘による吐出不良や色材濃度の変化による画像の色ムラを抑制することが可能となる。
(吐出口近傍の寸法の関係について)
ここで、圧力室23および吐出口部13bの寸法を以下のように定義する。すなわち、図15(b)に示すように、圧力室23の、吐出口部13bとの連通部分に対して流れ方向の上流側での高さをHと定義し、吐出口部13bの吐出方向における長さをP、流れ方向における長さをWとそれぞれ定義する。これらの寸法は、一例として、Hが3〜30μm、Pが3〜30μm、Wが6〜30μmである。また、以下の説明で、インクは、不揮発性溶媒濃度が30%、色材濃度が3%、粘度が0.002〜0.003Pa・sに調整されたものである。
本実施形態では、吐出口13からのインクの蒸発によるインクの増粘などを抑制するために、上述した圧力室23および吐出口部25の寸法H、P、Wが、以下のように定められている。
図16は、圧力室23内のインク流17(図22参照)が定常状態にあるときの吐出口13、吐出口部13b、及び圧力室23におけるインク流17の流れの様子を示す図である。具体的には、上述のHが14μm、Pが10μm、Wが17μmである液体吐出ヘッドに対し、流量が1.26×10−4ml/minのインクが液体供給路18から圧力室23に流入した際の流れの様子を示している。なお、この図において、矢印の長さはインク流の速度の大きさを示すものではない。
上述した寸法の液体吐出ヘッドでは、圧力室23の流れ方向の上流側での高さH、吐出口部25の吐出方向における長さP、流れ方向における長さWが、以下の関係を満たしている。
−0.34×P−0.66×W>1.5 (1)
この条件を満たすことで、図16に示すように、圧力室23内を流れるインクは、吐出口部13b内に流れ込み、吐出方向において吐出口部13bの少なくとも半分の位置まで達した後、再び圧力室23に戻るように流れる。そして、圧力室23に戻ったインクは、液体回収路19を介して、上述した共通回収流路212へ流れる。つまり、インク流17の少なくとも一部が、圧力室23から吐出方向における吐出口部13bの1/2以上の位置まで達した後、圧力室23に戻る。この流れにより、吐出口部13b内の多くの領域でのインクの増粘を抑制することができる。液体吐出ヘッド内でこのようなインクの流れが生成されることで、吐出口部13bの内部のインクについても、圧力室23へと流れ出ることが可能となり、インク増粘やインク色材濃度の増加を抑制することが可能になる。
さらに、本実施形態は、吐出口13からのインクの蒸発によるインクの増粘などの影響をより軽減するために、上述した圧力室23および吐出口部25の寸法H、P、Wが、以下のように定められていることが好ましい。
図17は、図16と同様に、圧力室23内のインク流17が定常状態にあるときの吐出口13、吐出口部13b、及び圧力室23におけるインク流17の流れの様子を示す図である。具体的には、Hが14μm、Pが5μm、Wが12.4μmである液体吐出ヘッドに対し、流量が1.26×10−4ml/minのインクが、液体供給路18から圧力室23に流入した際の流れを示している。なお、この図においても、矢印の長さは、速度の大きさを示すものではなく、速度の大きさにかかわらず一定の長さで表している。
上述した寸法の液体吐出ヘッドでは、圧力室23の流れ方向の上流側での高さH、吐出口部25の吐出方向における長さP、流れ方向における長さWが、後述する式(2)の関係を満たしている。これにより、図16に示す場合よりもさらに、吐出口13からの水分等の蒸発により色材濃度が変化したり増粘したりしたインクが、吐出口部13bのインク界面13aの近傍に滞留することを抑制することができる。すなわち、図17に示すように、圧力室23内を流れるインクは、吐出口部13b内に流れ込み、インク界面13aの近傍(メニスカス位置)まで達した後、再び吐出口部13b内を通って圧力室23に戻るように流れる。そして、圧力室23に戻ったインクは、液体回収路19を介して、上述した共通回収流路212へ流れる。この流れにより、蒸発の影響を受けやすい吐出口部13bだけでなく、蒸発の影響が特に顕著なインク界面13a近傍のインクまでもが、吐出口部13bの内部に滞ることなく圧力室23へと流れ出ることが可能となる。その結果、吐出口13近傍の、特に水分等の蒸発の影響を受けやすい部位のインクを滞留させることなく流出させることができ、インクの増粘や色材濃度増加を抑制することができる。図16に示す例では、インク界面13aの少なくとも一部の粘度増加を抑制することができるため、インク界面13aの全体が粘度増加した際と比較して、吐出速度変化等の吐出への影響をより低減することが可能となる。
上述したインク流17は、インク界面13a近傍における少なくとも中央部(吐出口の中心部)近傍において、流れ方向(図15(b)の左から右の方向)の速度成分(以下、「正の速度成分」という)を有している。なお、以下では、インク界面13a近傍の少なくとも中央部近傍においてインク流17が正の速度成分を持つ流れのモードを「流れモードA」と呼ぶ。また、後述するように、インク界面13aの中央部近傍で正の速度成分とは逆の、負の速度成分(図15(b)の右から左の方向)を持つ流れのモードを「流れモードB」と呼ぶ。
図18(a)および図18(b)は、それぞれ流れモードAおよび流れモードBの液体吐出ヘッドにおける吐出口部13b内でのインクの色材濃度の分布を等高線で示す図である。具体的には、図18(a)および図18(b)は、それぞれ、流れモードAおよび流れモードBの液体吐出ヘッドにおいて流量が1.26×10−4ml/minのインクが圧力室23に流入した際の、インクの色材濃度を等高線で表している。これらの流れモードA,Bは、寸法H、P、Wに応じて決定される。図18(a)は、Hが14μm、Pが5μm、Wが12.4μmの液体吐出ヘッドに対応し、流れモードAの状態を示している。一方、図18(b)は、Hが14μm、Pが11μm、Wが12.4μmの液体吐出ヘッドに対応し、流れモードBの状態を示している。
図18(b)に示す流れモードBでは、図18(a)に示す流れモードAに比べて、吐出口部13bの内部のインクの色材濃度が高くなっている。すなわち、図18(a)に示す流れモードAでは、正の速度成分を持つインク流17がインク界面13aの近傍まで達することで、吐出口部13b内のインクを圧力室23まで移動(流出)させることができる。これにより、流れモードAでは、吐出口部13bの内部のインクの滞留を抑制することができ、その結果、色材濃度や粘度の上昇を抑制することが可能となる。
図19は、流れモードAの液体吐出ヘッド(ヘッドA)と、流れモードBの液体吐出ヘッド(ヘッドB)のそれぞれから吐出したインクの色材濃度を比較した結果を示すグラフである。具体的には、各ヘッドA,Bにおいて、圧力室23にインク流17を発生させた状態とインク流17を発生させずにインクの流れがない状態でそれぞれインク吐出を行った場合の、被吐出媒体上でのインクの色材濃度を比較した実験結果が示されている。横軸は、吐出口からインクを吐出した後の経過時間を示し、縦軸は、吐出したインクが被吐出媒体に形成したドットの色材濃度比、具体的には、吐出周波数100Hzで吐出したインクによって形成されたドットの濃度を1としたときの比を示している。
図19に示すように、インク流17が発生させない場合、ヘッドA,B共に、経過時間が1秒以上で濃度比は1.3以上となり、インク吐出後の比較的早い時間でインクの色材濃度が高くなる。また、インク流17を発生させた場合、ヘッドBでは、濃度比が約1.3までの範囲であり、インク流を発生させない場合よりも色材濃度の増加を抑制することができる。この場合、吐出口部13bには、濃度比が1.3までの色材濃度が高くなったインクが若干量、滞留している。これに対し、ヘッドAでインク流を発生させた場合には、色材濃度比の範囲が1.1以下に抑えることができ、より好ましい。また、本発明者らの検討により、色材濃度変化が1.2程度以下であれば色ムラの視認が困難であることが分かっている。つまり、ヘッドAは、経過時間が1.5秒程度あっても色ムラを視認できるほどの色材濃度の変化を抑制することができる点でも、ヘッドBよりも好ましい。なお、図19は、蒸発に伴い色材濃度が高くなった場合を示しているが、蒸発に伴い色材濃度が低くなる場合も同様である。このように圧力室23内のインクを流動させることで、吐出口13および吐出口部13bにおけるインクの増粘を抑制することができる。
本発明者らの検討により、液体吐出ヘッドにおいて流れモードAが発生するのか(あるいは流れモードBが発生するのか)は、上述したように、圧力室23および吐出口部25の寸法H、P、Wに応じて決定されることが分かっている。すなわち、ヘッドAでは、圧力室23の流れ方向の上流側での高さH、吐出口部25の吐出方向における長さP、流れ方向における長さWが、以下の関係を満たしている。
−0.34×P−0.66×W>1.7 (2)
したがって、式(2)の関係を満たす液体吐出ヘッドは、図17に示すようなヘッドAとなり、式(2)の関係を満たさない液体吐出ヘッドは、ヘッドBとなる。なお、以下では、式(2)の左辺の値を判定値Jと呼ぶ。
図20は、液体吐出ヘッドの各寸法と流れモードとの関係を説明するためのグラフである。横軸はPとHの比(P/H)、縦軸はWとPの比(W/P)を示している。図中の太線Tはしきい線であり、以下の式(3)の関係を満たす線である。
(W/P)=1.7×(P/H)−0.34 (3)
図20において、HとPとWの関係がしきい線Tの上側の斜線を付した領域となる液体吐出ヘッドはヘッドAとなり、しきい線Tの下側の領域となる液体吐出ヘッドはヘッドBとなる。すなわち、以下の式(4)の関係を満たす液体吐出ヘッドはヘッドAとなる。
(W/P)>1.7×(P/H)−0.34 (4)
式(4)を整理すると式(1)が得られることから、HとPとWの関係が式(1)を満たす液体吐出ヘッド(判定値Jが1.7以上の液体吐出ヘッド)では流れモードAが実現される。
上記関係式について、図21および図22を参照してさらに説明する。図21(a)から図21(d)は、図20に示すしきい線Tの上側と下側のそれぞれの領域となる液体吐出ヘッドにおける、吐出口部13b内のインク流17の様子を示す図である。図22は、様々な形状の液体吐出ヘッドについて、吐出口部13b内の流れが流れモードAと流れモードBのいずれになるのかを確認した結果を示すグラフである。図22において、黒丸印は流れモードAになる液体吐出ヘッドを示し、バツ印は流れモードBになる液体吐出ヘッドを示している。
図21(a)は、Hが3μm、Pが9μm、Wが12μmであり、判定値Jが1.93となり1.7より大きい液体吐出ヘッドにおけるインク流れを示している。すなわち、図21(a)に示す例は、ヘッドAに対応し、図22では点Aに対応する。
図21(b)は、Hが8μm、Pが9μm、Wが12μmであり、判定値Jが1.39となり1.7より小さい液体吐出ヘッドにおけるインク流れを示している。すなわち、図21(b)に示す例は、ヘッドBに対応し、図22では点Bに対応する。
図21(c)は、Hが6μm、Pが6μm、Wが12μmであり、判定値Jgが2.0となり1.7より大きい液体吐出ヘッドにおけるインク流れを示している。すなわち、図21(c)示す例は、ヘッドAに対応し、図22では点Cに対応する。
図21(d)は、Hが6μm、Pが6μm、Wが6μmであり、判定値Jが1.0となり1.7より小さい液体吐出ヘッドにおけるインク流れを示している。すなわち、図21(d)に示す例は、ヘッドBに対応し、図22では点Dに対応する。
以上のように、図20のしきい線Tを境界として、ヘッドAとヘッドBとを区別することができる。つまり、式(2)の判定値Jが1.7より大きい液体吐出ヘッドは、ヘッドAとなり、インク界面13aの少なくとも中央部近傍でインク流17が正の速度成分を持つ。
次に、ヘッドAとヘッドBのそれぞれから吐出されるインク滴の吐出速度の比較した結果について説明する。図23(a)および図23(b)は、各ヘッドA,Bからインクが吐出された後、休止時間をいくつか変化させ、そのときの休止後の吐出発数に対する吐出速度をプロットしたグラフである。図23(a)は、ヘッドBを用いて、吐出時の温度でインク粘度が4cP(0.004Pa・s)程度となる固形分を20重量%以上含む顔料インクを吐出したときの、休止後の吐出発数と吐出速度の関係を示している。一方、図23(b)は、ヘッドAを用いて、図23(a)の場合と同じ顔料インクを吐出したときの、休止後の吐出発数と吐出速度の関係を示している。
図に示すように、ヘッドBでは、インク流17が存在する場合でも、休止時間によっては20発目程度まで吐出速度の低下が生じているのに対し、ヘッドAでは、休止時間によらず吐出速度の低下はほとんど生じていない。なお、図23には、固形分が20重量%以上含むインクを使用した場合の実験結果を示しているが、この濃度が本発明の範囲を限定するものではない。インク中の固形分の分散のしやすさにもよるが、概ね固形分量が8重量%以上(8wt%以上)のインクを吐出する場合に、モードAの効果が明らかに表れることが確認されている。
このように、ヘッドBでも圧力室23内のインクを流動させることで吐出口部13b内のインクの増粘の抑制に効果はあるが、ヘッドAはより増粘の抑制に対して効果がある。ヘッドAでは、吐出口からの水分等の蒸発によるインクの増粘によって吐出速度が低下しやすいインクにおいても、吐出動作休止後のインク滴の吐出速度の低下を抑制することができる。
なお、吐出口部13b内のインク流17が流れモードAになるのか流れモードBになるのかについては、通常環境下であれば、上述した寸法H、P、Wの関係が支配的な影響を及ぼす。これらの以外の条件、例えば、インク流17の流速、インクの粘度、吐出口13の幅(流れ方向と直交する方向の長さ)といった条件については、H、P、Wの条件に比べて影響が極めて小さい。したがって、インクの流速や粘度については、要求される液体吐出ヘッド(インクジェット記録装置)の仕様や使用される環境条件に合わせて適宜設定すればよい。例えば、圧力室23におけるインク流17の流速が0.1〜100mm/s、インクの粘度が吐出時の温度において30cP(0.03Pa・s)以下のインクを使用することができる。また、流れモードAの液体吐出ヘッドにおいて、使用時の環境変化等により吐出口からのインクの蒸発量が大きく増加する場合には、インク流17の流量を適宜多くすることで、流れモードAを維持することができる。一方で、流れモードBの液体吐出ヘッドについては、インク流の流量をいくら多くしても流れモードAにはならない。つまり、流れモードAになるのか流れモードBになるのかは、インクの流速や粘度の条件ではなく、上述した寸法H、P、Wの条件が支配的となる。また、流れモードAになる液体吐出ヘッドの中でも、より高精細な記録が可能となる点で、特にHが20μm以下、Pが20μm以下、Wが30μm以下となる液体吐出ヘッドがより好ましい。
以上のように、流れモードAの液体吐出ヘッドでは、正の速度成分を持つインク流17がインク界面13a近傍まで達することで、吐出口部13b内のインク、特にインク界面13a近傍のインクを圧力室23まで移動させることができる。これにより、吐出口部13bの内部のインクの滞留を抑制することができ、吐出口13からのインクの蒸発に対しても、吐出口部13b内のインクの色材濃度の上昇などをより低減することが可能となる。また、上述したように、インクの吐出動作は、圧力室23内でインクが流れている状態、すなわち、圧力室23から吐出口部13bの内部に入り、インク界面13aまで到達した後、再び圧力室23に戻るようなインクの流れがある状態で行われる。その結果、流れモードAおよびBの双方において、吐出動作を休止している状態でも、常に吐出口部13bの内部の色材濃度の上昇が軽減された状態となるので、休止後1発目の吐出を良好行うことができ、色ムラなどの発生も軽減することができる。
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。
<本発明の特徴的な構成の説明>
最後に、改めて、上述した本発明の特徴的な構成について、図1に示すインクジェット記録装置を中心に説明する。
(加熱転写と循環ヘッド)
本発明では、転写体上のインク像をMFT以上にするために、図1に示すように、転写体101は、液体吐出ヘッド(インク付与装置104)から液体が吐出されてから押圧手段(押圧部材106)により記録媒体108が押圧されるまでに間に加熱されている。すなわち、液体吐出ヘッドから液体が吐出されてから押圧手段により記録媒体が押圧されるまでに間に転写体101を加熱する加熱手段110が設けられている。これにより、転写部としての押圧手段において、インク像がMFT以上に加熱されていることで、画像の転写性を向上させることができる。
なお、転写体101が、支持部材102から加熱されていたり、または転写部に到達する前に加熱されていたりする場合のどちらにおいても、転写体の温度が比較的高い状態となる場合がある。そのため、液体吐出ヘッドの吐出口も高温になり、吐出口からの水分等の蒸発が促進されてしまうおそれがある。これは、上述したように転写体101を冷却する冷却手段を備えている場合においても同様である。つまり、加熱手段110等により転写体101が加熱された後、冷却手段により転写体101を冷却した場合でも、十分に転写体101を冷却することは困難である。特に転写体101が回転体であり、高速の記録を行う場合には転写体101の回転速度も速くなるので、十分な冷却は困難となる。このような場合、転写体101自体が熱を帯び、その状態で、インク付与装置である液体吐出ヘッド104の領域に移動する。液体吐出ヘッド104の吐出口13の数ミリ下にある転写体101が熱を帯びていると、その熱の影響が吐出口13(吐出口部13b)内のインクにおよび、吐出口からの液体の蒸発が促進されてしまう。
これに対して本発明では、上述したように液体吐出ヘッド104の圧力室23内のインク(液体)が圧力室の外部との間で循環されるようになっている。すなわち、液体吐出ヘッドの吐出口とエネルギー発生素子との間の流路(圧力室23)にインクを流通させながらインクの吐出動作を行うことができる。このように吐出口13および吐出口部13bの近傍の圧力室23内の液体を流動(循環)させることで、その流れが吐出口部13bの内部にも流動する。熱を帯びた転写体の影響により、吐出口から水分等が蒸発してインクが増粘したり色材濃度が変化したりした場合にも、そのようなインクを圧力室23の下流側に流動させ、増粘の影響のない新たなインクを圧力室23の上流側から補給することができる。その結果、インクの増粘による吐出口の目詰まり等の吐出不良や色材濃度の変化による画像ムラを抑制することができる。
このように、本発明では、転写体を加熱して転写を行うとともに、液体吐出ヘッドの吐出口とエネルギー発生素子との間の流路に液体を流れるようにすることで、転写体への高い転写性と高画質な画像形成を両立することができる。また、液体吐出ヘッドから吐出を行う転写体が熱を帯び、その熱の影響により液体吐出ヘッドが比較的高温下で吐出を行う場合においても、熱の影響を抑制した液体の吐出が可能となる。
また、エネルギー発生素子が発熱素子(ヒータ)である液体吐出ヘッドでは、一般に、圧力室と吐出口部の流路サイズが小さいため、蒸発によるインクの増粘により、インクの供給不足が生じやすい。つまり、本発明は、エネルギー発生素子が発熱素子である液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置に好ましく適用することができる。
(冷却機構)
本発明では、図1に示すように、転写体の加熱手段は、転写体の回転方向において液体吐出ヘッド(インク付与装置104)の下流側であって押圧手段(押圧部材106)の上流側に配置されていることが好ましい。これに加えて、転写体の回転方向において押圧手段の下流側であって液体吐出ヘッドの上流側に、転写体を冷却する冷却手段が設けられていることが好ましい。
図15に示すように、液体吐出ヘッドの吐出口13とエネルギー発生素子15との間の流路(圧力室13)に液体を流すことにより、記録素子基板10は冷却されやすくなる。したがって、記録素子基板10の表面が結露して吐出不良を起こしたり、結露した水分が転写体に落ちて画像不良を起こしたりすることがある。これに対して、転写体101の加熱を液体吐出ヘッド104と押圧手段(転写部)との間で行い、押圧手段(転写部)での転写体を比較的高温状態とした状態で記録媒体108への転写を行う。そして、転写後に押圧手段と液体吐出ヘッド104との間で転写体101を冷却する。これにより、液体吐出ヘッドでの転写体の温度をより低くすることができる。これにより、液体吐出ヘッドでの結露発生を低減することができる。
さらに、液体吐出ヘッドのエネルギー発生素子15は、常温よりも高温に温度制御されていることが好ましい。そのために、エネルギー発生素子15の支持部材には、樹脂部材など熱伝導率の低い部材が少なくとも1つは含まれていることが好ましい。
このように、液体吐出ヘッド104の下流側であって押圧手段の上流側に加熱手段110が配置され、押圧手段の下流側であって液体吐出ヘッド104の上流側に冷却手段が配置されていることで、液体吐出ヘッドでの結露発生を低減することができる。これにより、結露による印字不良やボタ落ちにより画像不良を抑制することができる。
図1における反応液付装置103は、反応液を付与する役割と共に、上述した冷却手段としての機能も果たす。このように2つの役割を備えることで記録装置の省スペース化を実現することができるために好ましい。このような反応液付与手段は、加熱された転写体よりも低い温度の反応液を転写体に付与することで、転写体を冷却することができる。同様に、付与する液体は光沢性を持たせるためのクリアインクであってもよい。反応液やクリアインクからの揮発成分が蒸発することによる成分濃度変化を抑制するために、反応液付与手段は液体吐出ヘッドにより近い位置に配置されていることが好ましい。つまり、反応液やクリアインクのような液体を付与する液体付与装置は、転写体の回転方向において押圧手段よりも液体吐出ヘッドに近い位置に配置されていることが好ましい。
さらに冷却手段の別の形態として、図1のクリーニング部材109を冷却手段として用いることもできる。これにより液体吐出装置のさらなる小型化が可能となり好ましい。このようなクリーニング手段は、加熱された転写体よりも低い温度のクリーニング部材を転写体に接触させることで、転写体を冷却することができる。転写直後にクリーニングすることで残留物の凝集・固着の進行をより低減できるため、クリーニング手段は、転写体の回転方向において液体吐出ヘッドよりも押圧手段に近い位置に配置されていることが好ましい。また冷却手段として、クリーニング部材109と反応液付装置103との双方を用いることも可能である。
このように良好な転写を行うために、転写部の上流側に加熱手段110を設け、転写部の下流側に冷却手段(クリーニング部材109や反応液付装置103)を設けることで液体吐出ヘッドの結露を抑制する。さらに冷却手段により転写体101の温度を下げることで、液体吐出ヘッドの吐出口13からの液体の蒸発を抑制できる。よって冷却手段と、液体吐出ヘッド104の圧力室23の循環構成とを共に用いることで、吐出口13からの液体の蒸発抑制を行うことが可能となる。
(液吸収装置)
本発明では、図1に示すように、転写体の回転方向において液体吐出ヘッド(インク付与装置104)の下流側であって加熱手段110の上流側に、転写体上のインク像から液体成分を吸収する液吸収装置が配置されていることが好ましい。
液体吐出ヘッドから吐出されたインクは、転写体101上において水分が蒸発し、蒸発する際の気化熱により転写体から熱を奪う。特に、転写体が高温に加熱されている場合、蒸発が促進されるため、転写体からより多くの熱を奪う。ここで、転写体101に付与されるインクは、画像によって場所毎に量が異なる(記録Dutyが異なる)。そのため、転写体101の場所により気化熱が異なり、その結果、転写体上に温度ムラが生じることとなる。一度生じた温度ムラは、加熱手段により加熱されてもなくなることがない。このような温度ムラにより、転写部(押圧部材106)では、MFT以下の温度になる箇所や過剰に高温になる箇所が生じたりすることがある。また、液体吐出ヘッドから転写体にインクが吐出される際に、転写体の温度ムラにより、ドットの広がりに違いが生じてしまい、画像ムラが生じたりすることがある。
これに対して、本発明では、液体吐出ヘッドの下流側であって加熱手段の上流側において、液吸収装置の液吸収用の押圧部材により、インク像に含まれる液体成分を減少させることができる。そのため、転写体101の温度により液体が多く蒸発する前に液体成分を取り除くことができ、その結果、気化熱による転写体の温度ムラの発生を低減することができる。したがって、転写体の温度ムラによる、転写部(押圧部材106)での転写不良や、液体吐出ヘッドから吐出されるインクの画像ムラを抑制することができる。
(樹脂粒子と循環ヘッド)
本発明は、液体吐出ヘッドから吐出されるインク(液体)が色材以外の樹脂粒子を含む場合に一層効果を奏する。
固形分が多いと、蒸発により固形分が凝集しやすく、粘度上昇による吐出不良や固形分固着による吐出不良が生じやすい。特に、高温環境下では、水分等の蒸発が促進されて吐出不良がより生じやすい。
これに対して、本発明では、前述したように、液体吐出ヘッドの吐出口とエネルギー発生素子との間の流路に液体を流れるようにすることで、吐出口から水分等が蒸発することによるインクの増粘や固着を抑制し、吐出不良を抑制することができる。そのため、色材以外の樹脂粒子を含んだインクをMFT以上に加熱する転写方法において、転写体への高い転写性と高画質な画像形成とを両立することができる。
(クリアインクと循環ヘッド)
本発明は、液体吐出ヘッドから吐出されるインク(液体)が色材を含有しない透明液体である場合、すなわち、画像光沢性を向上されるため、あるいは画像転写性を向上させるためにクリアインクを用いる場合に一層効果を奏する。
前述したように、固形分が多いと、蒸発により固形分が凝集しやすく、粘度上昇による吐出不良や固形分固着による吐出不良が生じやすい。また、接着性を発現する成分はより増粘しやすいことが多く、その点でも吐出不良が生じやすい。特に、高温環境下では、蒸発が促進されて吐出不良がより生じやすく、そのため、光沢ムラや転写不良がより生じやすい。
これに対して、本発明では、前述したように、液体吐出ヘッドの吐出口とエネルギー発生素子との間の流路に液体を流れるようにすることで、吐出口から水分等が蒸発することによるインクの増粘や固着を抑制し、吐出不良を抑制することができる。そのため、画像光沢性を向上させるため、あるいは画像転写性を向上させるためにクリアインク(色材を含有しない透明液体)を用いる場合において、光沢ムラや転写不良を抑制することができる。
(流れモード)
本発明は、上述した流れモードAおよびBの双方に適用可能であるが、より高画質な画像形成のために、液体吐出ヘッドが、前述した流れモードAとなる液体吐出ヘッドであることがより好ましい。つまり、圧力室の、吐出口部との連通部分に対して液体の流れ方向の上流側での高さHと、吐出口部の、液体の吐出方向における長さPおよび液体の流れ方向における長さWとが、H−0.34×P−0.66×W>1.7の関係を満たすことがより好ましい。
このような液体吐出ヘッドにより、図23に示すように、固形分量が多い場合により一層、蒸発の影響による吐出不良を抑制することができる。したがって、このような吐出ヘッドを用いて、樹脂粒子を含むインクを吐出してインク像を形成し、それをMFT以上に加熱して転写することで、高い転写性と高画質な画像の形成とを両立することができる。
以上、各実施形態において、液体吐出装置として中間転写体を用いた転写型の液体吐出装置について説明したが本発明はこれに限られない。例えば中間転写体を用いず、記録媒体に直接、描画や記録を行ういわゆる直描タイプの液体吐出装置にも適用可能である。この場合、液体吐出ヘッドの吐出口13の下部に搬送される紙等の記録媒体に対して、液体の定着性を向上させるために加熱手段により加熱を行う場合があり、これにより記録媒体が加熱される。比較的高温に加熱された紙等の記録媒体が液体吐出ヘッドの直下に連続的または断続的に搬送される場合、上述した熱を帯びた転写体101の場合と同様、液体吐出ヘッドの吐出口内の液体が熱の影響を受ける。この記録媒体からの熱の影響により、吐出口13および吐出口13b内のインクの蒸発が促進されるが、図15等で説明した構成同様、液体吐出ヘッドの圧力室23内のインク流動(循環)させることにより、液体の増粘を抑制できる。
3 液体吐出ヘッド
23 圧力室
101 転写体
106 押圧部材
1000 液体吐出装置

Claims (16)

  1. 液体を吐出するための吐出口に連通し、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を内部に備えた圧力室を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体が吐出されて画像が形成される転写体と、前記転写体に記録媒体を押圧して前記転写体に形成された画像を前記記録媒体に転写する押圧手段と、を有する液体吐出装置において、
    前記転写体を、前記液体吐出ヘッドから液体が吐出されてから前記押圧手段により前記記録媒体が押圧されるまでの間に加熱する加熱手段を有し、
    前記液体吐出ヘッドの前記圧力室内の液体は該圧力室の外部との間で循環されることを特徴とする液体吐出装置。
  2. 前記転写体が、前記液体吐出ヘッドと前記押圧手段との間で回転する回転体であり、
    前記加熱手段が、前記転写体の回転方向において前記液体吐出ヘッドの下流側であって前記押圧手段の上流側に配置されている、請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記転写体の回転方向において前記押圧手段の下流側であって前記液体吐出ヘッドの上流側に、前記転写体を冷却する冷却手段を有する、請求項2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記冷却手段が、前記転写体に液体を付与する液体付与手段を含む、請求項3に記載の液体吐出装置。
  5. 前記液体付与手段が、前記液体吐出ヘッドから前記転写体に吐出された液体と反応する反応液を付与する、請求項4に記載の液体吐出装置。
  6. 前記液体付与手段が、前記転写体の回転方向において前記押圧手段よりも前記液体吐出ヘッドに近い位置に配置されている、請求項4または5に記載の液体吐出装置。
  7. 前記冷却手段が、前記転写体の表面をクリーニングするクリーニング手段を含む、請求項3から6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  8. 前記クリーニング手段が、前記転写体の回転方向において前記液体吐出ヘッドよりも前記押圧手段に近い位置に配置されている、請求項7に記載の液体吐出装置。
  9. 前記転写体の回転方向において前記液体吐出ヘッドの下流側であって前記加熱手段の上流側に、多孔質体を有する液吸収部材からなり、前記転写体に吐出された液体の像に前記多孔質体を接触させ、液体の像から液体成分の少なくとも一部を吸収することで液体の像を形成する液体を濃縮する液吸収装置を有する、請求項2から8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  10. 前記液体吐出ヘッドから吐出される液体が、色材以外の樹脂粒子を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  11. 前記液体吐出ヘッドから吐出される液体が、色材を含有しない透明液体である、請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  12. 前記液体吐出ヘッドが、前記吐出口と前記圧力室とを連通する吐出口部と、前記圧力室に外部から前記圧力室に液体を流入させるため流入流路と、前記圧力室から外部に液体を流出させるための流出流路と、を有し、
    前記圧力室の、前記吐出口部との連通部分に対して液体の流れ方向の上流側での高さHと、前記吐出口部の液体の吐出方向における長さPと、前記吐出口部の液体の流れ方向における長さWとが、H−0.34×P−0.66×W>1.7の関係を満たす、請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  13. 前記エネルギー発生素子が発熱素子である、請求項1から12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  14. それぞれが前記エネルギー発生素子を備える複数の記録素子基板を有し、前記複数の記録素子基板は直線状に配列されている、請求項1から13のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  15. 液体を吐出するための吐出口に連通し、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を内部に備えた圧力室を有し、被吐出媒体に対して液体を吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置であって、
    前記液体吐出ヘッドに搬送する前記被吐出媒体を加熱する加熱手段と、
    前記圧力室内の液体を該圧力室の外部との間で循環する循環手段と、
    を備えることを特徴とする液体吐出装置。
  16. 液体を吐出するための吐出口に連通し、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を内部に備えた圧力室を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体が吐出されて画像が形成される転写体と、前記転写体に記録媒体を押圧して前記転写体に形成された画像を前記記録媒体に転写する押圧手段と、を有する液体吐出装置において、
    前記転写体を、前記液体吐出ヘッドから液体が吐出されてから前記押圧手段により前記記録媒体が押圧されるまでの間に加熱する加熱手段を有し、
    前記液体吐出ヘッドは、前記圧力室に液体を供給するための供給流路と、前記圧力室から液体を回収するための回収流路と、を備えることを特徴とする液体吐出装置。
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