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JP2017116712A - 静電潜像現像用トナー及びその製造方法 - Google Patents

静電潜像現像用トナー及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱保存性及び低温定着性に優れる静電潜像現像用トナー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】静電潜像現像用トナーが、トナーコア11と、トナーコア11の表面を覆うシェル層12とを備えるトナー粒子を、複数含む。トナーコア11の表面には複数の第1凹部(例えば、凹部H1〜H3)が形成されている。シェル層12は、トナーコア11の表面領域における、第1凹部の内側領域と第1凹部の外側領域との両方に存在する。トナー粒子の表面には、第1凹部に対応する第2凹部が形成されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、静電潜像現像用トナー及びその製造方法に関する。
コアと、コアの表面を覆うシェル層(カプセル層)とを備えるトナー粒子を、複数含むカプセルトナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。トナー粒子のコアをシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性を向上させることができる。
特開2004−294469号公報
しかしながら、トナー粒子のコアをシェル層で覆うと、トナーの低温定着性は悪くなる傾向がある。また、シェル層の材料又は厚さの調整だけでトナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることには限界がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐熱保存性及び低温定着性に優れる静電潜像現像用トナー及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む。前記コアの表面には複数の第1凹部が形成されている。前記シェル層は、前記コアの表面領域における、前記第1凹部の内側領域と前記第1凹部の外側領域との両方に存在する。前記トナー粒子の表面には、前記第1凹部に対応する第2凹部が形成されている。
本発明に係る静電潜像現像用トナーの製造方法は、準備工程、昇温工程、及び保温工程を含む。前記準備工程では、コアとシェル材料とを含むpH6以下の水性媒体を準備する。前記昇温工程では、前記準備された水性媒体の温度を所定の目標温度まで昇温させる。前記保温工程では、前記昇温終了後、前記水性媒体を前記目標温度に保つ。前記コアは、前記目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂と、前記目標温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。本発明に係る静電潜像現像用トナーの製造方法は、前記昇温中、又は前記水性媒体の温度が前記目標温度に到達した直後に、前記水性媒体のpHを8以上に変えることをさらに含む。
本発明によれば、耐熱保存性及び低温定着性に優れる静電潜像現像用トナー及びその製造方法を提供することが可能になる。
本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の断面構造の一例を示す図である。 図1に示されるトナー母粒子の表面領域の一部領域を示す平面図である。 図2中のIII−III断面図である。
本発明の実施形態について説明する。なお、粉体(より具体的には、トナーコア、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。
粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。また、酸価及び水酸基価の各々の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従って測定した値である。また、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。また、ガラス転移点(Tg)及び融点(Mp)はそれぞれ、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定した値である。また、軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(より具体的には、ボールミル等)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。高画質の画像を形成するためには、キャリアとしてフェライトキャリアを使用することが好ましい。また、長期にわたって高画質の画像を形成するためには、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを備える磁性キャリア粒子を使用することが好ましい。キャリア粒子に磁性を付与するためには、磁性材料でキャリア粒子を形成してもよいし、磁性粒子を分散させた樹脂でキャリア粒子を形成してもよい。また、キャリアコアを被覆する樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。なお、2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面を覆うシェル層(カプセル層)とを備える。シェル層は、実質的に樹脂から構成される。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散していてもよい。シェル層の表面(又は、シェル層で覆われていないトナーコアの表面領域)に外添剤が付着していてもよい。また、トナーコアの表面に複数のシェル層が積層されてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、画像データに基づいて感光体(例えば、感光体ドラムの表層部)に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像する。現像工程では、感光体の近傍に配置された現像スリーブ(例えば、現像器内の現像ローラーの表層部)上のトナー(例えば、キャリア又はブレードとの摩擦により帯電したトナー)を静電潜像に付着させて、感光体にトナー像を形成する。そして、続く転写工程では、そのトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する静電潜像現像用トナーである。
(トナーの基本構成)
トナーコアの表面に凹部(以下、下地凹部と記載する)が複数形成されている。シェル層は、トナーコアの表面領域における、下地凹部の内側領域と下地凹部の外側領域との両方に存在する。トナー粒子の表面には、下地凹部に対応する凹部(以下、表面凹部と記載する)が形成されている。なお、本実施形態では、意図せずとも自然に形成されるトナーコアの表面の微小な凹凸とは区別するため、深さ100nm以上の穴を「凹部」と称する。
トナーコアの表面に凹部を形成した後、そのトナーコアの表面にシェル層を形成する場合、上記基本構成を有するトナーを得ることは難しい。こうした方法では、例えば、トナーコアの表面に形成された凹部の内側領域にシェル層が付きにくい。また、凹部の内側領域とシェル層との間に十分な接着強度を確保すべくシェル層を厚くすると、シェル層形成後にトナー粒子の表面に凹部(表面凹部)が残りにくくなる。
発明者は、トナーコア及びシェル材料(シェル層の材料)を液に入れて、液の温度及びpHを調整しながら、トナーコアに対する下地凹部の形成とシェル層の形成とを略同時に進行させることで、上記基本構成を有するトナーが得られることを見出した。上記基本構成を有するトナーでは、下地凹部によりトナー粒子の機械的強度を適度に低下させることができる。トナーに圧力を加えることで、容易にトナーを定着させることが可能になる。また、シェル層が下地凹部の内側領域と下地凹部の外側領域との両方に存在することで、十分なトナーの耐熱保存性を確保し易くなる。
上記基本構成では、トナーコアの表面に存在する下地凹部の深さが100nm以上である。下地凹部の深さに対して十分薄い厚さを有するシェル層でトナーコアの表面を覆う場合には、トナーコアがシェル層で覆われた後のトナー粒子(詳しくは、トナー母粒子)の表面に存在する表面凹部の深さは、下地凹部の深さと概ね同じになると考えられる。下地凹部の十分な形成容易性(ひいては、トナーコアの加工容易性)を確保するためには、下地凹部の深さは3μm以下であることが好ましい。下地凹部の平面形状(例えば、図2参照)は任意である。下地凹部の平面形状は、真円状であっても、楕円状であっても、多角形状であっても、異形であってもよい。
以下、図1〜図3を参照して、上記基本構成を有するトナーに含まれるトナー粒子の構成の一例について説明する。図1は、上記基本構成を有するトナーについて、トナー母粒子の断面構造の一例を示す図である。図2は、図1に示されるトナー母粒子10の表面領域の一部領域を示す平面図である。図3は、図2中のIII−III断面図である。
図1に示されるトナー母粒子10は、トナーコア11と、トナーコア11の表面を覆うシェル層12とを備える。シェル層12は、トナーコア11の表面を部分的に覆っている。
図2及び図3に示すように、トナー母粒子10の表面には、下地凹部(それぞれトナーコア11の表面に形成された凹部)H1〜H4の各々に対応する凹部(それぞれ表面凹部)が形成されている。図2に示されるように、下地凹部H1及びH4の各々の内側領域にはシェル層12が存在しない。また、下地凹部H2及びH3の各々の内側領域にはシェル層12が存在する。図3に示す例では、樹脂粒子が2次元的に連なった形態をシェル層12が有する。図3には、説明の便宜上、樹脂粒子が球形状のまま残っている例を示しているが、実際には、樹脂粒子同士がつながって、より一体的な形態となり、膜化していることが多い。膜化の過程で、樹脂粒子が扁平状になることも多い。これらの形態も、樹脂粒子が2次元的に連なって出来る形態に含まれる。
なお、図3においては、内側領域にシェル層12が存在しない下地凹部H1に関して、範囲R1が、下地凹部H1の内側領域の範囲を示し、深さD1が、下地凹部H1に対応する表面凹部の深さ(=下地凹部H1の深さ)を示す。また、内側領域にシェル層12が存在する下地凹部H3に関して、範囲R2が、下地凹部H3の内側領域の範囲を示し、深さD2が、下地凹部H3に対応する表面凹部の深さを示す。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナーコアの表面領域のうち、シェル層が覆うトナーコアの面積の割合(以下、全体シェル被覆率と記載する)が30%以上80%以下であることが好ましい。なお、全体シェル被覆率(単位:%)は、式「全体シェル被覆率=100×シェル層が覆うトナーコアの表面領域の面積/トナーコアの表面全域の面積」で表される。全体シェル被覆率が100%であることは、トナーコアの表面全域がシェル層で覆われていることを意味する。全体シェル被覆率の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、下地凹部の内側領域のうち、シェル層が覆う内側領域の面積の割合(以下、凹部シェル被覆率と記載する)が30%以上80%以下であることが好ましい。なお、凹部シェル被覆率(単位:%)は、式「凹部シェル被覆率=100×シェル層が覆う下地凹部の内側領域の面積/下地凹部の内側領域全体の面積」で表される。凹部シェル被覆率が100%であることは、下地凹部の内側領域全域がシェル層で覆われていることを意味する。凹部シェル被覆率の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
長期にわたってトナーの優れた特性を維持するためには、凹部シェル被覆率から全体シェル被覆率を引いた面積差が−10%以上+10%以下であることが好ましく、−1.0%以上+1.0%以下であることがより好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナー粒子の表面に、開口面積0.5μm2以上10μm2以下の表面凹部が形成されていることが好ましい。表面凹部が適当な開口面積を有することで、トナー粒子の機械的強度が適切な大きさになり易くなる。凹部の開口面積の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、表面凹部の数が、トナー粒子の表面領域の面積1μm2あたりに0.1個以上0.5個以下であることが好ましい。表面凹部の数が少な過ぎると、トナーの低温定着性が悪くなる傾向がある。表面凹部の数が多過ぎると、トナーの耐熱保存性が悪くなる傾向がある。トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの凹部の数の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
なお、上記シェル被覆率(全体シェル被覆率及び凹部シェル被覆率)と、上記表面凹部の開口面積と、上記トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの表面凹部の数とはそれぞれ、外添処理後に測定してもよい。外添剤を避けて測定を行ってもよいし、トナー母粒子に付着した外添剤を除去してから測定を行ってもよい。溶剤(例えば、アルカリ溶液)を用いて外添剤を溶解させて除去してもよいし、超音波洗浄機を用いてトナー粒子から外添剤を取り除いてもよい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、シェル層の厚さが1nm以上50nm以下であることが好ましい。また、下地凹部の深さに対して十分薄い厚さを有するシェル層でトナーコアの表面を覆うことで、シェル層形成後のトナー粒子(詳しくは、トナー母粒子)の表面に、下地凹部に由来する凹部(表面凹部)が形成され易くなる。シェル層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM撮影像を解析することによって計測できる。なお、1つのトナー粒子においてシェル層の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がシェル層と交差する4箇所)の各々でシェル層の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子の評価値(シェル層の厚さ)とする。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナーの体積中位径(D50)が、1μm以上10μm未満であることが好ましく、5μm以上8μm以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るトナーは、前述の基本構成で規定されるトナー粒子(以下、本実施形態のトナー粒子と記載する)を複数含む。本実施形態のトナー粒子を複数含むトナーは、耐熱保存性及び低温定着性に優れると考えられる(後述する表1及び表2を参照)。なお、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナーが、80個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことが好ましく、90個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがより好ましく、100個数%の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがさらに好ましい。本実施形態のトナー粒子に混じって、シェル層を備えないトナー粒子がトナーに含まれていてもよい。
次に、トナーコアを形成するための材料(以下、トナーコア材料と記載する)と、シェル層を形成するための材料(以下、シェル材料と記載する)とについて説明する。トナーコア及びシェル層を形成するために適した樹脂は、以下のとおりである。
<好適な熱可塑性樹脂>
トナー粒子(特に、トナーコア及びシェル層)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂を好適に使用できる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)も、トナー粒子を構成する熱可塑性樹脂として好適に使用できる。
熱可塑性樹脂は、1種以上の熱可塑性モノマーを、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性モノマーは、単独重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(より具体的には、アクリル酸系モノマー又はスチレン系モノマー等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になるアルコール及びカルボン酸)である。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためには、例えば以下に示すような、スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。アクリル酸系モノマーを用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、水酸基を有するモノマー(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)を用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂に水酸基を導入できる。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、アルキルスチレン(より具体的には、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレン等)、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
ポリエステル樹脂は、1種以上のアルコールと1種以上のカルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類又はビスフェノール類等)又は3価以上のアルコールを好適に使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジ1,2−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリ1,2−プロパンジオール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
<好適な熱硬化性樹脂>
トナー粒子(特に、シェル層)を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、スルホンアミド系樹脂、グリオキザール系樹脂、グアナミン系樹脂、アニリン系樹脂、ポリイミド樹脂(より具体的には、マレイミド重合体又はビスマレイミド重合体等)、又はキシレン系樹脂を好適に使用できる。
熱硬化性樹脂は、1種以上の熱硬化性モノマーを架橋反応(重合)させることで得られる。また、架橋剤を用いることで、熱可塑性モノマーにより熱硬化性樹脂を合成することもできる。なお、熱硬化性モノマーは、架橋性を有するモノマーである。例えば、同種のモノマー同士が「−CH2−」を介して3次元的につながって熱硬化性樹脂になる場合、そのモノマーは「熱硬化性モノマー」に相当する。
熱硬化性モノマーの好適な例としては、メチロールメラミン、メラミン、メチロール化尿素(より具体的には、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等)、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、又はスピログアナミンが挙げられる。
以下、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、内添剤)を割愛してもよい。
[トナーコア]
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価及び酸価の少なくとも一方が10mgKOH/g以上であることが好ましい。
高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂のガラス転移点(Tg)が20℃以上55℃以下であることが好ましい。高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂の軟化点(Tm)が100℃以下であることが好ましい。
トナーの低温定着性を向上させるためには、トナーコアが、結着樹脂として熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の好適な熱可塑性樹脂等)を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。トナーコア中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂としてスチレン−アクリル酸系樹脂又はポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
トナーが上記基本構成を有するためには、トナーコアが、軟化点80℃以下の非結晶性ポリエステル樹脂(以下、低Tmポリエステル樹脂と記載する)を含有することが好ましい。低Tmポリエステル樹脂は加水分解し易い。このため、低Tmポリエステル樹脂をトナーコアに含有させることで、トナーコアの表面に凹部を形成し易くなる。
トナーが上記基本構成を有するためには、トナーコアに含有される結着樹脂のうち、低Tmポリエステル樹脂が占める割合が50質量%以上80質量%以下であることが好ましい。また、十分なトナーの耐熱保存性を確保するためには、トナーコアが、軟化点100℃以上の非結晶性ポリエステル樹脂(以下、高Tmポリエステル樹脂と記載する)をさらに含有することが好ましい。十分なトナーの耐熱保存性を確保するためには、トナーコアに含有される結着樹脂のうち、高Tmポリエステル樹脂が占める割合が10質量%以上であることが好ましい。
トナーコアは、非結晶性ポリエステル樹脂に加えて、結晶性ポリエステル樹脂を含有していてもよい。結晶性ポリエステル樹脂は非結晶性ポリエステル樹脂よりも加水分解し易い。ポリエステル樹脂の加水分解を促進するためには、トナーコアが、結晶性指数0.98以上1.20以下の結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。結晶性指数は、融点(Mp)に対する軟化点(Tm)の比率(=Tm/Mp)に相当する。ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂を合成するための材料(例えば、アルコール及び/又はカルボン酸)の種類又は量を変更することで、調整できる。非結晶性ポリエステル樹脂については、明確なMpを測定できないことが多い。
トナーコアの結着樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂を使用する場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、非結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。非結晶性ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、又はニッケル等)もしくはその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された材料を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するためには、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制することができると考えられる。
[シェル層]
シェル層は、粒状感のない膜であってもよいし、粒状感のある膜であってもよい。シェル層を形成するための材料として樹脂粒子を使用した場合、材料(樹脂粒子)が完全に溶けて膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、粒状感のない膜が形成されると考えられる。他方、材料(樹脂粒子)が完全に溶けずに膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、樹脂粒子が2次元的に連なった形態を有する膜(粒状感のある膜)が形成されると考えられる。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、シェル層が、熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の好適な熱可塑性樹脂等)を含有することが好ましい。また、トナーの耐熱保存性を向上させるために、熱可塑性樹脂に加えて、熱硬化性樹脂(より具体的には、前述の好適な熱硬化性樹脂等)を、シェル層に含有させてもよい。
トナーの帯電安定性を向上させるためには、シェル層が、1種以上のスチレン系モノマー(例えば、スチレン)と1種以上のアクリル酸系モノマー(例えば、アクリル酸エステル)との共重合体を含有することが特に好ましい。また、シェル層の膜質を向上させるために、シェル層に含有される樹脂に、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、又はメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルに由来する1種以上のアルコール性水酸基を導入してもよい。
トナーの帯電安定性を向上させるためには、シェル層に電荷制御剤を含有させることが好ましい。シェル層に電荷制御剤を含有させるためには、シェル層を構成する樹脂中に電荷制御剤(例えば、4級アンモニウム塩)に由来する繰返し単位を組み込んでもよいし、シェル層を構成する樹脂中に帯電粒子を分散させてもよい。トナー粒子を正帯電させるためには、シェル層が、正帯電性を有する樹脂粒子を含むことが好ましい。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。例えば、トナー母粒子と外添剤とを一緒に攪拌することで、物理的な力でトナー母粒子の表面に外添剤が付着(物理的結合)する。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の量が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤としては、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子を好適に使用できる。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
[トナーの製造方法]
本実施形態に係るトナーの製造方法は、次に示す工程(準備工程、昇温工程、及び保温工程)を含む。準備工程では、トナーコアとシェル材料とを含むpH6以下の水性媒体を準備する。昇温工程では、準備された水性媒体の温度を所定の目標温度まで昇温させる。昇温終了後(水性媒体の温度が目標温度に到達した後)の保温工程では、水性媒体を目標温度に保つ。トナーコアは、目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂と、目標温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。また、本実施形態に係るトナーの製造方法では、昇温工程において、昇温中、又は水性媒体の温度が目標温度に到達した直後に、水性媒体のpHを8以上に変える。なお、水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
本実施形態に係るトナーの製造方法によれば、前述の基本構成を有するトナーを容易かつ適切に製造することが可能になる。トナーコアに対する下地凹部の形成(詳しくは、ポリエステル樹脂の加水分解)とシェル層の形成とが略同時に進行し、下地凹部の外側領域だけでなく、下地凹部の内側領域にもシェル層が形成される。
以下、より具体的な例に基づいて、本実施形態に係るトナーの製造方法についてさらに説明する。
(トナーコアの準備)
好適なトナーコアを容易に得るためには、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましい。
以下、粉砕法の一例について説明する。まず、結着樹脂と、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)とを混合する。続けて、得られた混合物を溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
以下、凝集法の一例について説明する。まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を含む水性媒体中で、これらの粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含む凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアの分散液が得られる。その後、トナーコアの分散液から、不要な物質(界面活性剤等)を除去することで、トナーコアが得られる。
(シェル層の形成)
まず、水性媒体(例えば、イオン交換水)を準備する。シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。
続けて、酸性物質(例えば、塩酸)を用いて水性媒体のpHを所定のpH(例えば、3以上6以下から選ばれるpH)に調整する。続けて、pHが調整された水性媒体(酸性の水性媒体)に、トナーコアと、シェル材料(例えば、非水溶性熱可塑性樹脂のサスペンション)とを添加する。シェル材料の添加量を多くするほど、形成されるシェル層の厚さが厚くなる傾向がある。
トナーコア及びシェル材料を水性媒体に添加すると、水性媒体中で、トナーコアの表面にシェル材料の粒子(サスペンションに含まれる非水溶性熱可塑性樹脂の粒子)が付着すると考えられる。トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料を含む液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に界面活性剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて液を攪拌してもよい。トナーコアがアニオン性を有する場合には、同一極性を有するアニオン界面活性剤を使用することで、トナーコアの凝集を抑制できる。界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、又は石鹸を使用できる。
続けて、上記トナーコア及びシェル材料を含む液を攪拌しながら液の温度を所定の速度(例えば、0.1℃/分以上3.0℃/分以下から選ばれる速度)で昇温させる。昇温開始時の液の温度は、例えば20℃以上35℃以下から選ばれる温度である。昇温開始時の液のpHは、例えば3以上6以下から選ばれるpHである。昇温の目標温度(最終到達温度:昇温を止める温度)は、例えば60℃以上100℃以下から選ばれる温度である。
上記昇温中に、又は液の温度が目標温度になった直後に、塩基性物質(例えば、水酸化ナトリウム)を用いて、液のpHを短時間(例えば、10秒以内)で酸性の値(例えば、3以上6以下)からアルカリ性の値(例えば、pH8以上14以下)に変える。pH変更時もpH変更後も上記昇温は止めずに、目標温度まで昇温を続ける。液の温度をある程度上昇させてから液のpHを酸性の値からアルカリ性の値に変えることで、下地凹部を形成しつつ、下地凹部の内側領域にシェル層を形成することが可能になる。
本実施形態に係るトナーの製造方法では、トナーコアが、目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂(例えば、低Tmポリエステル樹脂)を含有する。液の温度がポリエステル樹脂の軟化点に近づくと、ポリエステル樹脂が軟らかくなり、加水分解し易くなると考えられる。液の温度をある程度上昇させてから液のpHを酸性の値からアルカリ性の値に変えることで、ポリエステル樹脂の加水分解が進行する。ポリエステル樹脂の加水分解が進行することで、トナーコアに下地凹部が形成される。下地凹部の形成(詳しくは、ポリエステル樹脂の加水分解)を促進するためには、トナーコアに含有される樹脂のうち、20質量%以上の樹脂が、目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。また、下地凹部の形成(詳しくは、ポリエステル樹脂の加水分解)を促進するために、トナーコアに結晶性ポリエステル樹脂を含有させてもよい。
トナーコア全体が、目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂のみで構成される場合には、液の温度が目標温度に近づくことで、トナーコア全体が軟らかくなり、トナーコア同士の凝集が生じ易くなる。本実施形態に係るトナーの製造方法では、トナーコアが、目標温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂(例えば、高Tmポリエステル樹脂)をさらに含有することで、トナーコア同士の凝集が抑制される。トナーコア同士の凝集を抑制するためには、トナーコアに含有される樹脂のうち、5質量%以上の樹脂が、目標温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
下地凹部の形成が終わってからシェル層の形成を開始したり、シェル層の形成が終わってから下地凹部の形成を開始したりする場合には、下地凹部の内側領域にシェル層を形成することは困難である。トナーコアの表面に下地凹部を形成しつつ下地凹部の内側領域にシェル層を適切に形成するためには、トナーコアに対する下地凹部の形成(詳しくは、ポリエステル樹脂の加水分解)とシェル層の形成とを略同時に進行させることが好ましい。例えば、シェル材料としてスチレン−アクリル酸系樹脂のサスペンションを使用し、昇温工程における昇温開始温度を30℃、昇温速度を1℃/分とした場合、水性媒体の温度が40℃になる頃にはトナーコアの表面領域がシェル材料で十分に覆われて、水性媒体の温度が60℃になる頃にはシェル材料がトナーコアの表面に固定化され始めると考えられる。昇温速度が0.5℃/分以上2.0℃/分以下であり、目標温度が60℃以上100℃以下である場合、トナーコアの表面に下地凹部を形成しつつ下地凹部の内側領域にシェル層を適切に形成するためには、pHを変える時の液(水性媒体)の温度が30℃以上70℃以下であることが好ましい。
上記昇温により液の温度が目標温度に到達したら、液を攪拌しながら液の温度を目標温度に所定の時間(例えば、30分間以上4時間以下から選ばれる時間)保つ。液の温度を高温に保っている間に、トナーコアの表面にシェル材料が付着し、トナーコアとシェル材料との間で反応(シェル層の固定化)が進行すると考えられる。シェル材料がトナーコアと結合することで、シェル層が形成される。トナーコアの表面でシェル材料の粒子が2次元的に連なって、粒状感のある膜(シェル層)が形成されると考えられる。液中でトナーコアの表面にシェル層が形成されることで、トナー母粒子の分散液が得られる。
続けて、得られたトナー母粒子の分散液に冷水を入れて、フラスコ内容物を常温(約25℃)まで冷却する。続けて、例えばブフナー漏斗を用いて、トナー母粒子の分散液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)され、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られる。続けて、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥する。その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いてトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、乾燥工程でスプレードライヤーを用いる場合には、外添剤(例えば、シリカ粒子)の分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程と外添工程とを同時に行うことができる。こうして、トナー粒子を多数含むトナーが得られる。
なお、上記トナーの製造方法の内容及び順序はそれぞれ、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば、シェル材料は、一度に液に添加されてもよいし、複数回に分けて液に添加されてもよい。外添工程の後で、トナーを篩別してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。トナーコア材料とシェル材料とはそれぞれ、前述の化合物(樹脂を合成するための各種モノマー等)に限られない。例えば、必要に応じて、前述の化合物の誘導体をトナーコア材料又はシェル材料として使用してもよいし、モノマーに代えてプレポリマーを使用してもよい。また、前述の化合物を得るために、原料として、その化合物の塩、エステル、水和物、又は無水物を使用してもよい。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーTA−1〜TA−3、TB−1〜TB−3、TC−1〜TC−3、TD、TE、TF−1〜TF−2、及びTG−1〜TG−2(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。
Figure 2017116712
以下、トナーTA−1〜TG−2の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測定された1次粒子の円相当径の個数平均値である。また、Tg(ガラス転移点)及びTm(軟化点)はそれぞれ、次に示す方法で測定した。
<Tgの測定方法>
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を求めた。続けて、得られた吸熱曲線から試料のTg(ガラス転移点)を読み取った。得られた吸熱曲線中の比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が、試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTm(軟化点)を読み取った。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
[トナーTA−1〜TG−2(トナーTD及びTEを除く)の製造]
(トナーコアの作製)
低粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)66質量部と、中粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=53℃、Tm=84℃)9質量部と、高粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=71℃、Tm=120℃)12質量部と、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)5質量部と、着色剤(DIC株式会社製「KET BLUE 111」、フタロシアニンブルー)8質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて回転速度2400rpmで混合した。
続けて、得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度160rpm、設定温度範囲(シリンダー温度)80℃以上130℃以下の条件で、溶融混練した。続けて、得られた溶融混練物を冷却し、冷却された溶融混練物を粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6μmのトナーコアが得られた。
(シェル材料の調製)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットした。続けて、フラスコ内に、温度30℃のイオン交換水875gと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75gとを入れた。その後、フラスコ内容物を攪拌しながら、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた。続けて、80℃のフラスコ内容物を攪拌しながら、2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけてフラスコ内に滴下した。第1の液は、スチレン17gとアクリル酸ブチル3gとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30gに溶かした溶液であった。
続けて、フラスコ内の温度を80℃に保ちつつ、フラスコ内容物をさらに2時間攪拌して、フラスコ内容物の重合反応を十分に進行させた。その結果、疎水性熱可塑性樹脂粒子のサスペンション(固形分濃度3.6質量%)が得られた。得られたサスペンションに含まれる樹脂粒子に関して、個数平均粒子径は32nmであり、Tgは71℃であった。
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水300gを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内容物のpHを4に調整した。続けて、フラスコ内に、シェル材料(前述の手順で調製した疎水性熱可塑性樹脂粒子のサスペンション)30gを添加して、シェル材料の分散液を得た。
続けて、得られたシェル材料の分散液に、前述の手順で作製したトナーコア300gを添加し、フラスコ内容物を回転速度200rpmで1時間攪拌した。その後、フラスコ内にイオン交換水300gをさらに添加した。続けて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、フラスコ内容物を昇温させた。昇温開始時において、フラスコ内容物の温度は30℃、フラスコ内容物のpHは4であった。また、昇温条件に関して、目標温度は70℃、速度は1℃/分であった。
上記昇温中に、又はフラスコ内容物の温度が目標温度になった直後に、フラスコ内に水酸化ナトリウム水溶液を加えて、フラスコ内容物のpHを調整した。詳しくは、上記昇温によりフラスコ内容物の温度が所定の温度(各トナーに定められた、表1に示されるpH変化点)に到達した時点で、フラスコ内に水酸化ナトリウム水溶液を投入してフラスコ内容物のpHを所定のpH(各トナーに定められた、表1に示される目標値)に変えた。例えば、トナーTA−1の製造では、フラスコ内容物の温度が55℃に到達した時点で、フラスコ内に水酸化ナトリウム水溶液を投入してフラスコ内容物のpHを9に変えた。pH調整時もpH調整後も上記昇温は止めずに、目標温度(70℃)まで昇温を続けた。
上記昇温によりフラスコ内容物の温度が70℃に到達したら、フラスコ内容物の温度をその温度(70℃)に保ち、温度70℃かつ回転速度100rpmの条件で、フラスコ内容物をさらに2時間攪拌した。その後、フラスコ内に冷水を入れて、フラスコ内容物を常温(約25℃)まで急冷した。その結果、トナー母粒子を含む分散液が得られた。
(洗浄)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)した。その結果、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られた。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥)
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、乾燥したトナー母粒子(粉体)が得られた。
(外添)
上記のようにして得たトナー母粒子100質量部と、乾式シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1.0質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーTA−1〜TA−3、TB−1〜TB−3、TC−1〜TC−3、TF−1〜TF−2、及びTG−1〜TG−2)が得られた。
[トナーTDの製造]
トナーTDの製造方法は、次の条件を変更した以外は、トナーTA−3の製造方法と同じであった。トナーコアの作製における各材料の添加量に関して、低粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)の66質量部を32質量部に、中粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=53℃、Tm=84℃)の9質量部を10質量部に、高粘度非結晶性ポリエステル樹脂(Tg=71℃、Tm=120℃)の12質量部を40質量部にそれぞれ変更し、これら非結晶性ポリエステル樹脂と一緒に結晶性ポリエステル樹脂(Tm=80℃)5質量部をさらに添加した。また、シェル層の形成において、シェル材料(疎水性熱可塑性樹脂粒子のサスペンション)の添加量を30gから50gに変更した。
[トナーTEの製造]
シェル層の形成において、昇温中にpH調整を行わなかった以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。すなわち、トナーTEの製造では、フラスコ内容物のpHが酸性の値(約4)である状態で、フラスコ内容物を目標温度70℃まで昇温させて、フラスコ内容物の温度をその温度(70℃)に2時間保った。
上記のようにして得られたトナーTA−1〜TG−2に関して、凹部の最小開口面積と、凹部の最大開口面積と、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの凹部の数とを測定した。測定対象は、各試料(トナーTA−1〜TG−2)のトナー母粒子(外添前のトナー)とした。詳しくは、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いてトナー母粒子の表面全域を観察した。1つの試料につき、20個のトナー母粒子を観察した。そして、凹部の最小開口面積(20個の最小)と、凹部の最大開口面積(20個の最大)と、単位面積あたりの凹部の数(20個の個数平均値)とを求めた。
測定結果は、表1に示している。例えばトナーTA−1では、凹部の最小開口面積の測定値が0.007μm2であり、凹部の最大開口面積の測定値が0.785μm2であり、トナー粒子の表面領域の単位面積あたりの凹部の数が0.275個/μm2であった。また、トナーTE、TF−1〜TF−2、及びTG−1〜TG−2ではそれぞれ、トナー粒子の表面に凹部(表面凹部)が存在しなかった。
また、上記のようにして得られたトナーTA−1〜TG−2に関して、全体シェル被覆率(単位:%)及び凹部シェル被覆率(単位:%)をそれぞれ、下記方法により測定した。全体シェル被覆率の測定値(単位:%)と、凹部シェル被覆率の測定値から全体シェル被覆率の測定値を引いた面積差(単位:%)とを、それぞれ表1に示す。例えばトナーTA−1では、全体シェル被覆率の測定値が40.3%であり、凹部シェル被覆率の測定値が40.8%であり、面積差が+0.5であった。
<シェル被覆率の測定方法>
各試料(トナーTA−1〜TG−2)のトナー母粒子(外添前のトナー)について、全体シェル被覆率を測定した。詳しくは、試料(トナー)のトナー母粒子(粉体)を、常温(25℃)の大気雰囲気下で、濃度0.5質量%RuO4水溶液2mLの蒸気中に5分間暴露することで、トナー母粒子をRu染色した。そして、染色されたトナー母粒子を、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いて倍率50000倍で観察し、トナー母粒子の反射電子像を得た。トナーコアの表面領域のうち、シェル層で被覆されている領域は、ルテニウムに染色され易かった。
得られた反射電子像のうち、最も明るい部分の値を255、最も暗い部分の値を0として、輝度値を256分割した。そして、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、輝度値144を基準とする2値化処理を反射電子像に対して行った。2値化処理後、トナー母粒子の反射電子像全体の面積SA1(反射電子像中の全画素数に相当)と、反射電子像において輝度値が144以上である領域の面積SB1(反射電子像中の輝度値144以上の画素数に相当)とを求め、下記式に従って全体シェル被覆率(単位:%)を算出した。
全体シェル被覆率=100×面積SB1/面積SA1
観察倍率を50000倍から100000倍に変更した以外は、上記全体シェル被覆率の測定と同様にして、凹部シェル被覆率を測定した。下地凹部の内側領域の面積SA2(下地凹部の内側領域中の全画素数に相当)と、下地凹部の内側領域において輝度値が144以上である領域の面積SB2(下地凹部の内側領域中の輝度値144以上の画素数に相当)とを求め、下記式に従って凹部シェル被覆率(単位:%)を算出した。
凹部シェル被覆率=100×面積SB2/面積SA2
下記式に示すように、凹部シェル被覆率の測定値から全体シェル被覆率の測定値を引いて、面積差(単位:%)を算出した。
面積差=凹部シェル被覆率−全体シェル被覆率
[評価方法]
各試料(トナーTA−1〜TG−2)の評価方法は、以下のとおりである。
(耐熱保存性)
試料(トナー)2gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて密閉し、密閉された容器を、60℃に設定された恒温槽内に3時間静置した。その後、恒温槽から取り出したトナーを室温(約25℃)まで冷却して、評価用トナーを得た。
続けて、得られた評価用トナーを、質量既知の100メッシュ(目開き150μm)の篩に載せた。そして、評価用トナーを含む篩の質量を測定し、篩別前のトナーの質量を求めた。続けて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に上記篩をセットし、パウダーテスターのマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5の条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。篩別後、篩を通過しなかったトナー(篩上に残留したトナー)の質量を測定した。そして、篩別前のトナーの質量と、篩別後のトナーの質量(篩を通過しなかったトナーの質量)とに基づいて、次の式に従ってトナー凝集度(単位:質量%)を求めた。
トナー凝集度=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
トナー凝集度が50質量%以下であれば○(良い)と評価し、トナー凝集度が50質量%を超えれば×(良くない)と評価した。
(低温定着性)
フェライトキャリア(パウダーテック株式会社製)100質量部と、試料(トナー)8質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価用現像剤(2成分現像剤)を調製した。評価機として、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器(ニップ幅8mm)を備えるプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5200DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した評価用現像剤を評価機の現像器に投入し、試料(補給用トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
上記評価機を用いて、温度23℃かつ湿度60%RHの環境下、線速200mm/秒で坪量90g/m2の紙(A4サイズの普通紙)を搬送し、搬送しながら紙に、トナー載り量0.4mg/cm2の条件で、ソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を評価機の定着器に通した。ニップ通過時間は40m秒であった。また、定着温度の設定範囲は90℃以上200℃以下であった。詳しくは、定着器の定着温度を90℃から徐々に上昇させて、トナー(ソリッド画像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。定着できたか否かは、折擦り試験(折り目のトナー剥がれ長の測定)で確認した。詳しくは、画像が形成された面が内側となるように紙を折り曲げ、布帛で覆った1kgの分銅を用いて、折り目上を5往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナー剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm未満となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。
最低定着温度が135℃以下であれば○(良い)と評価し、最低定着温度が135℃を超えれば×(良くない)と評価した。
[評価結果]
表2に、各試料(トナーTA−1〜TG−2)の評価結果(低温定着性:最低定着温度、耐熱保存性:凝集度)をまとめて示す。
Figure 2017116712
トナーTA−1〜TA−3、TB−1〜TB−3、TC−1〜TC−3、及びTD(実施例1〜10に係るトナー)はそれぞれ、前述の基本構成を有していた。詳しくは、実施例1〜10に係るトナーではそれぞれ、トナーコアの表面に凹部(第1凹部:下地凹部)が複数形成されていた。シェル層は、トナーコアの表面領域における、下地凹部の内側領域と下地凹部の外側領域との両方に存在していた(表1中の「シェル被覆率」参照)。トナー粒子の表面には、下地凹部に対応する凹部(第2凹部:表面凹部)が形成されていた(表1中の「表面凹部」参照)。
表2に示されるように、実施例1〜10に係るトナーはそれぞれ、耐熱保存性及び低温定着性に優れていた。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば、複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
10 トナー母粒子
11 トナーコア
12 シェル層
H1〜H4 下地凹部

Claims (12)

  1. コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記コアの表面には複数の第1凹部が形成され、
    前記シェル層は、前記コアの表面領域における、前記第1凹部の内側領域と前記第1凹部の外側領域との両方に存在し、
    前記トナー粒子の表面には、前記第1凹部に対応する第2凹部が形成されている、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記コアの表面領域のうち、前記シェル層が覆う前記コアの面積の割合は30%以上80%以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記第1凹部の前記内側領域のうち、前記シェル層が覆う前記内側領域の面積の割合は30%以上80%以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記第1凹部の前記内側領域のうち前記シェル層が覆う前記内側領域の面積の割合から、前記コアの表面領域のうち前記シェル層が覆う前記コアの面積の割合を引いた面積差は、−10%以上+10%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記第2凹部の開口面積は0.5μm2以上10μm2以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 前記トナー粒子の表面に存在する前記第2凹部の数は、前記トナー粒子の表面領域の面積1μm2あたり0.1個以上0.5個以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  7. 前記コアは、軟化点80℃以下の非結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
    前記コアに含有される樹脂のうち、前記軟化点80℃以下の非結晶性ポリエステル樹脂が占める割合は、50質量%以上80質量%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  8. 前記コアは、軟化点100℃以上の非結晶性ポリエステル樹脂をさらに含有する、請求項7に記載の静電潜像現像用トナー。
  9. 前記シェル層は熱可塑性樹脂を含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  10. 前記シェル層の厚さは1nm以上50nm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  11. コアとシェル材料とを含むpH6以下の水性媒体を準備することと、
    前記準備された水性媒体の温度を所定の目標温度まで昇温させることと、
    前記昇温終了後、前記水性媒体を前記目標温度に保つことと、
    を含み、
    前記コアは、前記目標温度以下の軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂と、前記目標温度よりも高い軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、
    前記昇温中、又は前記水性媒体の温度が前記目標温度に到達した直後に、前記水性媒体のpHを8以上に変えることをさらに含む、静電潜像現像用トナーの製造方法。
  12. 前記昇温の速度は0.5℃/分以上2.0℃/分以下であり、前記目標温度は60℃以上100℃以下であり、
    前記pHを8以上に変える時の前記水性媒体の温度は、30℃以上70℃以下である、請求項11に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
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