JP2012228786A - ガスバリア性フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】より高いガスバリア性を有し、かつ耐食性にも優れたガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】基材2と、基材2上に設けられたガスバリア層3とを有し、前記ガスバリア層3が、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化物及び無機酸化窒化炭化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含むことを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】基材2と、基材2上に設けられたガスバリア層3とを有し、前記ガスバリア層3が、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化物及び無機酸化窒化炭化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含むことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガスバリア性フィルム及びその製造方法に関する。
酸素や水蒸気等に対するバリア性を備えたガスバリア性フィルムとして、基材上に酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物膜をガスバリア層として設けたものが提案されている。こうしたガスバリア性フィルムは透明性に優れ、食品や医薬品等の包装材料として、また電子部品や表示素子の保護材料として、また太陽電池バックカバーシート材料として、その需要が大いに期待されている。
従来のガスバリア性フィルムとして、(特許文献1)には、基材フィルム上に、少なくとも二層の無機ガスバリア層と、少なくとも一層の抵抗が1012Ω以下である導電性層とを有する水蒸気バリアフィルムが開示されている。この無機ガスバリア層は、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce又はTaから選ばれる一種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物を含有する。
また、(特許文献2)には、平均粒径が5μm以下の窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素100重量部に対し、平均粒径が5μm以下の導電性材料を5重量部以上100重量部以下含有する原料粉末を焼結又は造粒してなるイオンプレーティング用蒸発源材料を用いて、基材上にガスバリア膜をイオンプレーティング成膜する工程を有する、ガスバリア性シートの製造方法が開示されている。この導電性材料として、アルミニウム、ケイ素、銅、銀、ニッケル、クロム、金、白金、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム及びこれら金属の合金が挙げられている。
上記従来の技術は、なお改良の余地があり、より高いガスバリア性能を有するガスバリア性フィルムの開発が望まれていた。
また、ガスバリア性フィルムは、電子部材、表示素子、太陽電池等の製造の際、エッチングやパターニング工程等で酸・アルカリに接触する機会があるため、こうした工程で劣化しないようにする必要がある。また、電子部材等のデバイスを製造した後においても酸・アルカリ環境下にさらされることがあり、このような酸・アルカリに対する耐久性も要求される。さらに、ガスバリア性フィルムは、食品等の包装材料として用いられる場合には、酢等に接触することも想定されるので、酢等に対する耐食性も有する必要がある。
そこで本発明は、より高いガスバリア性を有し、かつ耐食性にも優れたガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、ガスバリア性を有するとともに、酸等に対する耐食性を有するガスバリア性フィルムについて鋭意検討を行った。その結果、基材上に設けるガスバリア層に、モリブデンと、それ以外の耐食性金属とを混合して存在させることで、ガスバリア性及び耐食性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題を解決するための本発明に係るガスバリア性フィルムは、基材と、基材上に設けられたガスバリア層とを有し、前記ガスバリア層が、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化物及び無機酸化窒化炭化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含むことを特徴とする。
この発明によれば、ガスバリア層内に、必須材料としてモリブデンと、それ以外の耐食性金属が存在するので、ガスバリア性が向上するとともに、耐食性にも優れたガスバリア性フィルムが提供される。
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいては、モリブデン以外の耐食性金属が、Cr、Co、Ni、W、V、Cu、Nb、Ta、Al、Ti、Zr及びMnから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この発明によれば、これらの所定の元素を含有させることにより、モリブデンと相まって、より高いガスバリア性及び耐食性が付与される。
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいては、ガスバリア層中の無機化合物が、ケイ素化合物であることが好ましい。この発明によれば、無機化合物としてケイ素を含む化合物を採用することにより、ガスバリア層の透明性が向上し、また高いガスバリア性能が得られる。
また、上記課題を解決するための本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、物理蒸着法により、基材上に、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化物及び無機酸化窒化炭化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含むガスバリア層を形成する工程を有することを特徴とする。
この発明によれば、蒸着源として、モリブデンとそれ以外の耐食性金属とを用いることにより、蒸着源の材料のイオン化が促進され、被覆性の良いガスバリア層が得られる。その結果、ガスバリア性が高く、耐食性にも優れたガスバリア性フィルムが提供される。
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法においては、モリブデン以外の耐食性金属が、Cr、Co、Ni、W、V、Cu、Nb、Ta、Al、Ti、Zr及びMnから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この発明によれば、これらの所定の元素を物理蒸着によって形成するガスバリア層中に含有させることにより、モリブデンと相まって、より高いガスバリア性及び耐食性が付与される。
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法においては、ガスバリア層中の無機化合物が、ケイ素化合物であることが好ましい。この発明によれば、無機化合物としてケイ素を含む化合物を採用することにより、物理蒸着によって形成するガスバリア層の透明性が向上し、また高いガスバリア性能が得られる。
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法においては、物理蒸着法が、イオンプレーティングであることが好ましい。この発明によれば、基材への密着性に優れた緻密なガスバリア層が効率的に形成される。その結果、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性能及び耐食性が向上する。
さらに、本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法においては、ガスバリア層を形成する工程に先立ち、基材表面のリアクティブイオンエッチング(RIE)処理を行う工程を有することが好ましい。この発明によれば、蒸着粒のグレインサイズが小さくなり、その結果グレイン間の欠陥サイズが小さくなる。したがって、よりガスバリア性能に優れたガスバリア性フィルムが得られる。
本発明によれば、耐食性に優れ、ガスバリア性にも優れるガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することができる。また、物理蒸着法によりガスバリア層を形成する際に、蒸着速度が向上することも確認された。
次に、本発明に係るガスバリア性フィルム及びその製造方法について詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(ガスバリア性フィルム)
図1は、本発明に係るガスバリア性フィルムの一例を示す模式的な断面図であり、図2は、本発明に係るガスバリア性フィルムの他の例を示す模式的な断面図である。
図1は、本発明に係るガスバリア性フィルムの一例を示す模式的な断面図であり、図2は、本発明に係るガスバリア性フィルムの他の例を示す模式的な断面図である。
ガスバリア性フィルム1は、基材2と、基材2上に設けられたガスバリア層3とを少なくとも有している。そして、ガスバリア層3が、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化物及び無機酸化窒化炭化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含むことを特徴とする。これにより、酸・アルカリ等に対する耐食性に優れ、ガスバリア性にも優れるガスバリア性フィルム1を提供することができる。なお、「基材上に設けられたガスバリア層」とは、ガスバリア層が基材の上部に位置すれば良く、必ずしもガスバリア層が基材に接した状態で設けられる必要はない。
(基材)
基材2は、ガスバリア層3を形成することができる樹脂シート又は樹脂フィルムであれば特に制限はない。基材2の構成材料としては、例えば、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン(APO)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、シクロポリオレフィン(CPO)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)等を挙げることができる。
基材2は、ガスバリア層3を形成することができる樹脂シート又は樹脂フィルムであれば特に制限はない。基材2の構成材料としては、例えば、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン(APO)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、シクロポリオレフィン(CPO)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)等を挙げることができる。
また、上記の樹脂材料以外にも、ラジカル反応性の不飽和化合物を有するアクリレート化合物よりなる樹脂組成物、上記アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、メタクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解した樹脂組成物等からなる光硬化性樹脂、及びこれらの混合物等を用いることができる。さらに、これらの樹脂の1種又は2種以上をラミネート、コーティング等の手段により積層させたものを基材2として用いることもできる。また、樹脂シート又は樹脂フィルムに代えて、ガラスやシリコンウエハを基材2として用いることもできる。
基材2の厚さは、通常3μm以上500μm以下、好ましくは12μm以上300μm以下である。厚さがこの範囲内である基材2は、フレキシブルであるとともに、ロール状に巻き取ることもできる点で好ましい。
基材2は、長尺材であっても良いし枚葉材であっても良いが、長尺の基材を好ましく用いることができる。長尺の基材2の長手方向の長さは特に限定されないが、例えば10m以上の長尺フィルムが好ましく用いられる。なお、長さの上限は限定されず、例えば10km程度のものであっても良い。
基材2には、種々の性能確保のために添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、従来公知のものを適宜用いることができ、例えば、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、塩素捕獲剤等を挙げることができる。なお、基材2を、透明性が必要とされるOLED等の発光素子の基板として用いる場合には、基材2は無色透明であることが好ましい。より具体的には、例えば400nm〜700nmの範囲内での基材2の平均光透過度が80%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。こうした光透過度は、基材2の材質と厚さに影響されるので両者を考慮して構成される。
(平坦化膜)
図2に示すように、基材2とガスバリア層3との間に、必要に応じて平坦化膜4を設けることができる。これにより、基材2の表面が有する凹凸や突起がなくなり、平坦面にすることができるので、ガスバリア層3の欠陥を低減でき、ガスバリア性をより高めることが可能となる。
図2に示すように、基材2とガスバリア層3との間に、必要に応じて平坦化膜4を設けることができる。これにより、基材2の表面が有する凹凸や突起がなくなり、平坦面にすることができるので、ガスバリア層3の欠陥を低減でき、ガスバリア性をより高めることが可能となる。
平坦化膜4としては、従来公知のものを適宜用いることができ、その材料としては、例えば、ゾル・ゲル材料、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、及びフォトレジスト材料等を挙げることができる。こうした有機材料で形成した平坦化膜4は、応力緩和機能も兼ね備えているため好ましい。具体的な材料としては、アクリレートを含む高分子化合物が汎用的なものとして挙げられる。その他、スチレン、フェノール、エポキシ、ニトリル、アクリル、アミン、エチレンイミン、エステル、シリコーン、カルドポリマー、アルキルチタネート化合物、イオン高分子錯体等、光硬化又は熱硬化性のもの、高分子化合物と金属アルコキシドの加水分解生成物との混合物等を含む、各種の高分子化合物を適宜用いることができる。
特に、ガスバリア性能を保持しつつガスバリア層3の形成を容易にする観点から、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。より具体的には、アクリレート基やエポキシ基を有する反応性のプレポリマー、オリゴマー及び/又は単量体を適宜混合した電離放射線硬化型樹脂;その電離放射線硬化型樹脂に、必要に応じてウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、ブチラール系、ビニル系等の熱可塑性樹脂を混合して液状とした液状組成物のような、分子中に重合性不飽和結合を有し、紫外線(UV)や電子線(EB)を照射することによって架橋重合反応を起こし3次元の高分子構造に変化する樹脂;等を好ましく用いることができる。
平坦化膜4は、上記のような樹脂を、例えば、ロールコート法、ミヤバーコート法及びグラビアコート法等の従来公知の塗布方法によって基材2上に塗布・乾燥・硬化させることによって形成することができる。また、平坦化膜4とガスバリア層3との良好な密着性を確保する観点から、平坦化膜4の材料として、ガスバリア層3と同じ材料系であるゾル・ゲル法を用いたゾル・ゲル材料を用いることも好ましい。ゾル・ゲル法とは、有機官能基及び加水分解基を有するシランカップリング剤と、このシランカップリング剤の有機官能基と反応するような有機官能基を有する架橋性化合物とを原料として含む塗料組成物を用いる塗工方法をいう。有機官能基及び加水分解基を有するシランカップリング剤としては、従来公知のものを適宜用いることができる。また、平坦化膜4の材料として、耐熱性の観点から、従来公知のカルドポリマーを用いることも好ましい。なお、平坦化膜4の厚さは、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上であり、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下である。
(ガスバリア層)
ガスバリア層3には、無機酸化物(MOx)、無機窒化物(MNy)、無機炭化物(MCz)、無機酸化炭化物(MOxCz)、無機窒化炭化物(MNyCz)、無機酸化窒化物(MOxNy)及び無機酸化窒化炭化物(MOxNyCz)から選ばれるいずれかの無機化合物が含まれる。これらは、いずれかを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。Mとしては、ケイ素、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、カルシウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バリウム等の金属元素やホウ素等を挙げることができる。Mは、いずれかの単体の元素でも良いし2種以上の元素であっても良い。適用可能な無機化合物の具体例として、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物;炭化ケイ素等の炭化物、及びこれらの無機化合物から選ばれた2種以上の複合体(酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物)を挙げることができる。また、SiOZnやSiOSnのように、金属元素を2種以上含む複合体は、透明で高いガスバリア性を発揮するため好ましく用いられる。
ガスバリア層3には、無機酸化物(MOx)、無機窒化物(MNy)、無機炭化物(MCz)、無機酸化炭化物(MOxCz)、無機窒化炭化物(MNyCz)、無機酸化窒化物(MOxNy)及び無機酸化窒化炭化物(MOxNyCz)から選ばれるいずれかの無機化合物が含まれる。これらは、いずれかを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。Mとしては、ケイ素、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、カルシウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バリウム等の金属元素やホウ素等を挙げることができる。Mは、いずれかの単体の元素でも良いし2種以上の元素であっても良い。適用可能な無機化合物の具体例として、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物;炭化ケイ素等の炭化物、及びこれらの無機化合物から選ばれた2種以上の複合体(酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物)を挙げることができる。また、SiOZnやSiOSnのように、金属元素を2種以上含む複合体は、透明で高いガスバリア性を発揮するため好ましく用いられる。
その中でも、Mとしてケイ素、アルミニウム、チタン等の金属元素を含むものは好ましく用いられる。特に、Mとしてケイ素を含む化合物、例えば酸化ケイ素を含むガスバリア層3は、透明で高いガスバリア性を発揮し、また、窒化ケイ素からなるガスバリア層3はさらに高いガスバリア性を発揮する。さらには、酸化ケイ素と窒化ケイ素の複合体(無機酸化窒化物(MOxNy))を用いる場合、酸化ケイ素の含有量を多くすることで透明性を向上させ、窒化ケイ素の含有量を多くすることでガスバリア性を向上させることができる。
ガスバリア層3における無機化合物の含有量は、ガスバリア性、透明性等の性能のバランスを考慮して適宜設定することができる。具体的には、無機化合物の合計量が、ガスバリア層3の構成材料の40.0〜99.7重量%、特に80.0〜99.0重量%であることが好ましいがこれに限定されるものではない。
また、本発明では、ガスバリア層3に、上記無機化合物に加えて、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含む。ここで耐食性金属とは、酸・アルカリ等に対してガスバリア性フィルム1に耐食性を付与する金属及び合金をいう。このような耐食性金属としては、特に限定されるものではないが、Cr、Co、Ni、W、V、Cu、Nb、Ta、Al、Ti、Zr、Mn等が適用可能であり、その中でも特に、Ni、Cr、Wが好ましく用いられる。これらの耐食性金属は、いずれかを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。あるいは、2種以上を含む合金として用いることができる。
また、耐食性金属として、市販の耐食性合金を用いることができる。このような耐食性合金の具体例を製造会社ごとに以下に列挙する。なお、表中、各成分の含有量の単位は重量%である。
上記の耐食性合金の中でも、得られるガスバリア性フィルムの耐食性や工業生産性を考慮して、大同特殊鋼株式会社製のDAP NMC700、DAP R625、DAP RC276、大同スペシャルメタル株式会社製のINCONEL 686、及びMMCスーパーアロイ株式会社製のMAT21が特に好ましく用いられる。
また、ガスバリア層3には、モリブデン及びそれ以外の耐食性金属以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の金属、及び不可避的な不純物(元素)が含有されていても良い。
ガスバリア層3におけるモリブデン及びそれ以外の耐食性金属の含有量は、モリブデン及びそれ以外の耐食性金属の合計量が少なすぎる場合には十分なガスバリア性及び耐食性が得られず、逆に多すぎるとガスバリア材料の蒸着粒子間の凝集が阻害され、十分なガスバリア性が得られず、また透明性が損なわれるという傾向がある。また、モリブデンに対して、それ以外の耐食性金属の量が少なすぎる場合には蒸着速度の低下やイオン化度の低下が生じるという傾向があり、多すぎる場合には応力のバランスがくずれ、また透明性が劣化するという傾向があるので、これらのバランスを考慮して適宜設定される。具体的には、ガスバリア層3中、モリブデンが0.1〜10重量%、それ以外の耐食性金属が0.2〜50重量%、モリブデンとそれ以外の耐食性金属との重量比は、5:95〜30:70とすることが好ましいがこれに限定されるものではない。
ガスバリア層3の厚さは、通常10nm以上、500nm以下である。この範囲内であれば、ガスバリア性及びフィルムのフレキシビリティを確保しつつ、色味の調整もし易く、生産性にも優れるという利点がある。
(その他の膜)
本発明に係るガスバリア性フィルム1には、上記の平坦化膜4の他にも、必要に応じて各種の膜を設けることができる。例えば、透明導電膜、ハードコート膜、保護膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ等を挙げることができる。
本発明に係るガスバリア性フィルム1には、上記の平坦化膜4の他にも、必要に応じて各種の膜を設けることができる。例えば、透明導電膜、ハードコート膜、保護膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ等を挙げることができる。
また、上記の平坦化膜4と同様の平坦化膜をガスバリア層3上に形成しても良い。ガスバリア層3上に平坦化膜を形成することにより、ガスバリア層3の表面が有する凹凸や突起が無くなり平坦面にすることができるので、特に有機EL素子や電子ペーパー素子等のディスプレイ用途に適用した場合に、表示面のムラやぎらつき等を防止できるという利点がある。ガスバリア膜3上に形成する平坦化膜については、上記の平坦化膜4の構成(材料、成膜方法、厚さ等)と同じであるのでその説明は省略する。
透明導電膜は、本発明に係るガスバリア性フィルム1を、特に有機EL素子や電子ペーパー素子等の表示素子用途に用いる場合に、ガスバリア層3の上に設ける電極として利用することができる。透明導電膜の構成材料としては、特に限定されるものではないが、インジウム−スズ系酸化物(ITO)、インジウム−スズ−亜鉛系酸化物(ITZO)、ZnO2系、CdO系及びSnO2系等を挙げることができ、特にITO膜が好ましく用いられる。これらは、抵抗加熱蒸着法、誘導加熱蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、及びプラズマCVD法等の真空成膜法によって形成することができる。また、透明導電膜を、金属アルコキシド等の加水分解物や、導電性粒子と金属アルコキシド等の加水分解物とを塗布して形成される無機酸化物を主成分とするコーティング膜として形成しても良い。
透明導電膜の厚さは、通常10nm以上、好ましくは60nm以上、より好ましくは100nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは450nm以下、より好ましくは200nm以下とする。
なお、上記の平坦化膜、透明導電膜以外の機能性膜であるハードコート膜、保護膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ等についての説明は省略するが、それらの膜については、従来公知の技術を適用できる。また、ガスバリア性フィルム1を太陽電池等のバックカバーシートとして用いる場合においては、耐加水分解膜やシーラント膜等をさらに設けても良い。それらの膜についても従来公知の技術を適用できるため、説明は省略する。
(ガスバリア性フィルムの製造方法)
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、物理蒸着法により、基材上に、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化物及び無機酸化窒化炭化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含むガスバリア層を形成する工程を有する。蒸着源としてモリブデンとそれ以外の耐食性金属とを併用することにより、蒸着源の材料のイオン化が促進され、被覆性の良いガスバリア層を得ることができる。その結果、ガスバリア性が高く、耐食性にも優れたガスバリア性フィルムを製造することができる。また、モリブデン及びそれ以外の耐食性金属を用いることにより、予想外に蒸着速度が向上することが明らかとなった。この理由は定かではないが、モリブデンに加えて耐食性金属を混合することにより電離が起こり易くなった可能性が考えられる。したがって、ガスバリア性及び耐食性に優れたフィルムをより効率的に製造することが可能となる。以下、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法の具体例の一つを説明する。
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、物理蒸着法により、基材上に、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化物及び無機酸化窒化炭化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含むガスバリア層を形成する工程を有する。蒸着源としてモリブデンとそれ以外の耐食性金属とを併用することにより、蒸着源の材料のイオン化が促進され、被覆性の良いガスバリア層を得ることができる。その結果、ガスバリア性が高く、耐食性にも優れたガスバリア性フィルムを製造することができる。また、モリブデン及びそれ以外の耐食性金属を用いることにより、予想外に蒸着速度が向上することが明らかとなった。この理由は定かではないが、モリブデンに加えて耐食性金属を混合することにより電離が起こり易くなった可能性が考えられる。したがって、ガスバリア性及び耐食性に優れたフィルムをより効率的に製造することが可能となる。以下、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法の具体例の一つを説明する。
最初に、基材を準備する。基材は上記の各種の基材を任意に選択して用いることができる。
次に、必要に応じて、基材の表面に平坦化膜等を成膜する。これらの膜の形成工程は従来公知の技術に従って行うことができる。
続いて、基材もしくは平坦化膜の上に、上述の無機酸化物等の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを蒸着源として、物理蒸着法によりガスバリア層を形成する。
物理蒸着法には、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着等の蒸着や、イオンプレーティング法、スパッタリング法が含まれる。一般的には、プラズマ環境下でガスバリア層を形成することが好ましい。プラズマ環境下での成膜方法としては、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、高電力パルススパッタリング法等のようなプラズマ環境下で行うスパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。これらの成膜方法は、ガスバリア層の構成材料や、製造効率等を考慮して最適な方法を適宜選択すれば良い。特に、イオンプレーティングは、基材とガスバリア層の密着性に優れ、また緻密なガスバリア層を効率的に形成できるため好ましく採用される。なお、上記イオンプレーティング等の各種物理蒸着を行う際の条件は、ガスバリア層の材料(蒸着源の組成)やガスバリア層の厚さ等に応じて適宜設定することができる。
また、必要に応じて、ガスバリア層を形成する工程に先立ち、基材表面のリアクティブイオンエッチング(RIE)処理を行うことができる。RIE処理とは、エッチングガスを電磁波等によりプラズマ化し、同時に基材を配置する陰極に高周波電圧を印加することによって、プラズマ中のイオン種を基材に向かって加速・衝突させ、基材表面の異方性エッチングを行う方法である。このRIE処理によって、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズが小さくなり、その結果グレイン間の欠陥サイズが小さくなる。したがって、基材とガスバリア層との密着性が強化され、クラックの発生が防止されるとともにガスバリア性能をより高めることができる。なお、ここでいうグレインサイズとは、原子間力顕微鏡(AFM)等により測定される蒸着粒の直径のうち、一番長い方向に沿った直径を指し、複数の蒸着粒についての平均値で表される。ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズは、小さいほどグレイン間の欠陥サイズも小さくなり、その結果、良好なガスバリア性が得られるため好ましい。特に、蒸着粒のグレインサイズを200nm以下に制御することによって、ガスの透過性が急激に低下し、より高いガスバリア性を達成することができる。
RIEによる前処理を行うためのガス種としては、アルゴン、酸素、窒素、水素等を使用することができる。これらのガスはいずれかを単独で用いても、2種以上のガスを混合して用いてもよい。また、複数の処理器を用いて、連続してRIE処理を行ってもよい。
RIE処理を行う際の条件は、基材の種類やガスバリア性フィルムの用途等を考慮して適宜設定することができる。例えば、処理強度は10W/5000cm2以上2000W/5000cm2以下、処理時間は0.01〜3000sec、ガスの圧力は0.001〜500Pa、プラズマの自己バイアス値は10V以上1000V以下、Eb=単位面積当たりの自己バイアス値×処理時間で定義されるEb値は10V・s/m2以上100000V・s/m2以下とすることが好ましいがこれに限定されるものではない。
(ガスバリア性フィルムの製造装置)
次に、ガスバリア層を形成するための装置について説明する。図3は、本発明に係るガスバリア性フィルムにおいてガスバリア層の形成に用いるイオンプレーティング装置の一例を示す構成図である。この装置は、ホローカソード型イオンプレーティング装置の構成図である。図3に示すホローカソード型イオンプレーティング装置101は、真空チャンバー102と、この真空チャンバー102内に配設された供給ロール103aと、巻き取りロール103bと、コーティングドラム104と、バルブを介して真空チャンバー102に接続された真空排気ポンプ105と、仕切り板109と、その仕切り板109によって真空チャンバー102と仕切られた成膜チャンバー106と、この成膜チャンバー106内の下部に配設された坩堝107と、アノード磁石108と、成膜チャンバー106の所定位置(図3では成膜チャンバー106の右側壁)に配設された圧力勾配型プラズマガン110と、収束用コイル111と、シート化磁石112と、圧力勾配型プラズマガン110へのアルゴンガスの供給量を調整するためのバルブ113と、成膜チャンバー106にバルブを介して接続された真空排気ポンプ114と、酸素ガス等の供給量を調整するためのバルブ116とを備えている。なお、図3に示すように、供給ロール103a及び巻き取りロール103bにはリバース機構が装備されており、両方向の巻き出し、巻き取りが可能となっている。
次に、ガスバリア層を形成するための装置について説明する。図3は、本発明に係るガスバリア性フィルムにおいてガスバリア層の形成に用いるイオンプレーティング装置の一例を示す構成図である。この装置は、ホローカソード型イオンプレーティング装置の構成図である。図3に示すホローカソード型イオンプレーティング装置101は、真空チャンバー102と、この真空チャンバー102内に配設された供給ロール103aと、巻き取りロール103bと、コーティングドラム104と、バルブを介して真空チャンバー102に接続された真空排気ポンプ105と、仕切り板109と、その仕切り板109によって真空チャンバー102と仕切られた成膜チャンバー106と、この成膜チャンバー106内の下部に配設された坩堝107と、アノード磁石108と、成膜チャンバー106の所定位置(図3では成膜チャンバー106の右側壁)に配設された圧力勾配型プラズマガン110と、収束用コイル111と、シート化磁石112と、圧力勾配型プラズマガン110へのアルゴンガスの供給量を調整するためのバルブ113と、成膜チャンバー106にバルブを介して接続された真空排気ポンプ114と、酸素ガス等の供給量を調整するためのバルブ116とを備えている。なお、図3に示すように、供給ロール103a及び巻き取りロール103bにはリバース機構が装備されており、両方向の巻き出し、巻き取りが可能となっている。
このようなイオンプレーティング装置101を用いたガスバリア層3の形成は以下のように行われる。まず、真空チャンバー102、成膜チャンバー106内を、真空排気ポンプ105、114により所定の真空度まで減圧し、次いで、必要に応じて成膜チャンバー106内に酸素ガス等を所定流量導入し、真空排気ポンプ114と成膜チャンバー106との間にあるバルブの開閉度を制御することにより、成膜チャンバー106内を所定圧力に保ち、基材のフィルムを走行させ、アルゴンガスを所定流量導入した圧力勾配型プラズマガン110にプラズマ生成のための電力を投入し、アノード磁石108上の坩堝107にプラズマ流を収束させて照射することによって蒸着源材料を蒸発させ、高密度プラズマにより蒸発分子をイオン化させて、基材面に所定の組成を有するガスバリア層を形成し、目的のガスバリア性フィルムを得ることができる。
なお、好ましいイオンプレーティング装置は、ハースに照射された電流が、プラズマガンに安定的に帰還できるように、帰還電極を備えたものである。こうした装置としては、特開平11−269636号公報に記載されるように、プラズマガンのプラズマビームの照射出口部に、プラズマビームの周囲を取り囲み、電気的に浮遊状態として突出させた絶縁管と、この絶縁管の外周側を取り巻くとともに、出口部よりも高い電位状態とした電子帰還電極とを設けたイオンプレーティング装置が挙げられる。
なお、ここでは、ガスバリア層を形成するための装置として、ホローカソード型イオンプレーティング装置を例示したが、他の装置であっても良いことはいうまでもない。また、図3の例は、長尺の基材上にガスバリア層を連続形成できるロール・ツー・ロール法を可能にする装置であるが、一般的なバッチ式の装置であっても構わない。
ガスバリア層は、上記したイオンプレーティング装置の他、DCスパッタリング装置、マグネトロンスパッタリング装置等のような、プラズマ環境下での装置を用いて形成しても良い。
以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
蒸着材料として、SiOZn(SiO2とZnOを重量比100:30で混合し、1000℃×1hrで焼結したもの)100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP R625)を15g攪拌混合したものを用いた。一方、被イオンプレーティング用基材として、PETフィルム(東洋紡社製A4300、100μm厚PET)に平坦化膜(インクテック社製OELV30)を5μm厚コートしたものを用いた。この平坦化膜は、UV硬化性のアクリレート系ポリマー材料を主成分とするものである。
蒸着材料として、SiOZn(SiO2とZnOを重量比100:30で混合し、1000℃×1hrで焼結したもの)100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP R625)を15g攪拌混合したものを用いた。一方、被イオンプレーティング用基材として、PETフィルム(東洋紡社製A4300、100μm厚PET)に平坦化膜(インクテック社製OELV30)を5μm厚コートしたものを用いた。この平坦化膜は、UV硬化性のアクリレート系ポリマー材料を主成分とするものである。
真空チャンバー内に被イオンプレーティング用基材を設置し、真空チャンバー内の坩堝に蒸着材料を収納した後、真空引きを行った。真空度が9×10−4Paまで到達した後、昇華ガスとしてアルゴンガスを12sccm導入した。その後、プラズマガンに放電電力を投入し、これによって139Aの放電電流、99Vの放電電圧を発生させ、昇華ガスをプラズマ化した。なお、sccmとはstandard cubic per minuteの略であり、以下の実施例、比較例及び参考例においても同様である。
収束コイルに所定の磁場を発生させることにより、プラズマ化した昇華ガスからなるプラズマ化昇華ガス流を所定方向に曲げ、これによってプラズマ化した昇華ガスを真空チャンバー内の蒸着材料に向けて照射した。プラズマ化した昇華ガスによって、蒸着材料は昇華するとともにイオン化した。イオン化した蒸着材料が被イオンプレーティング用基材上に堆積することにより、膜厚133nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。なお、イオンプレーティングの実施時間は15秒間であった。
形成されたガスバリア性フィルムについて、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は94%、水蒸気透過率は0.05g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後に水蒸気透過率を測定したところ、0.13g/m2dayであった。なお、全光線透過率の測定は、SMカラーコンピューターSM−C(スガ試験機社製)を使用して行った。測定は、JIS K7105に準拠して実施した。また、水蒸気透過率の測定は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製TERMATRAN−W 3/31)を用いて、温度38度、湿度100%RHにて行った。
さらに、ガスバリア層の組成分析をXRFを用いて行った。その結果、SiOZnに対しCr2O3が1.6重量%、MoO3が0.2重量%の割合で含まれていることを確認した。
さらに、ガスバリア層の組成分析をXRFを用いて行った。その結果、SiOZnに対しCr2O3が1.6重量%、MoO3が0.2重量%の割合で含まれていることを確認した。
(実施例2)
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP R625)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は90.6%、水蒸気透過率は0.13g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.16g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しCr2O3が1.8重量%、MoO3が0.4重量%の割合で含まれていることを確認した。
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP R625)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は90.6%、水蒸気透過率は0.13g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.16g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しCr2O3が1.8重量%、MoO3が0.4重量%の割合で含まれていることを確認した。
(実施例3)
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP R625)を80g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は71.7%、水蒸気透過率は0.15g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.16g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しCr2O3が2.5重量%、MoO3が1.0重量%の割合で含まれていることを確認した。
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP R625)を80g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は71.7%、水蒸気透過率は0.15g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.16g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しCr2O3が2.5重量%、MoO3が1.0重量%の割合で含まれていることを確認した。
(実施例4)
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP KMC400)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は0.10g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.12g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しCoOが3.2重量%、MoO3が1.5重量%の割合で含まれていることを確認した。
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP KMC400)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は0.10g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.12g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しCoOが3.2重量%、MoO3が1.5重量%の割合で含まれていることを確認した。
(実施例5)
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP RC276)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は0.08g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.21g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しNiO2が1.4重量%、MoO3が0.5重量%の割合で含まれていることを確認した。
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP RC276)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は0.08g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.21g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しNiO2が1.4重量%、MoO3が0.5重量%の割合で含まれていることを確認した。
(実施例6)
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DSalloyU520)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は0.05g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.13g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しNiO2が2.1重量%、MoO3が0.7重量%の割合で含まれていることを確認した。
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DSalloyU520)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は0.05g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、0.13g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しNiO2が2.1重量%、MoO3が0.7重量%の割合で含まれていることを確認した。
(比較例1)
蒸着材料として、耐食性合金を混合せず、SiOZnのみを用いた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。イオンプレーティング工程において、140Aの放電電流、92Vの放電電圧を発生させ、昇華ガスをプラズマ化した。その結果、膜厚128nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。イオンプレーティングの実施時間は15秒間であった。形成されたガスバリア性フィルムについて全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した結果、全光線透過率は91%、水蒸気透過率は1.0g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、2.3g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しCr2O3は含まれていないことを確認した。
蒸着材料として、耐食性合金を混合せず、SiOZnのみを用いた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。イオンプレーティング工程において、140Aの放電電流、92Vの放電電圧を発生させ、昇華ガスをプラズマ化した。その結果、膜厚128nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。イオンプレーティングの実施時間は15秒間であった。形成されたガスバリア性フィルムについて全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した結果、全光線透過率は91%、水蒸気透過率は1.0g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、2.3g/m2dayであった。
さらに、XRFによりガスバリア層の組成分析を行った結果、SiOZnに対しCr2O3は含まれていないことを確認した。
(比較例2)
SiOZn100gに対し、ニッケルを50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は0.85g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、1.8g/m2dayであった。
SiOZn100gに対し、ニッケルを50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は0.85g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、1.8g/m2dayであった。
(比較例3)
SiOZn100gに対し、クロムを50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は1.13g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、2.4g/m2dayであった。
SiOZn100gに対し、クロムを50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造し、水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は1.13g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、2.4g/m2dayであった。
(比較例4)
SiOZn100gに対し、モリブデンのみを50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムの製造を試みた。しかし、イオンプレーティングの際の放電が不安定となり、蒸着ができなかった。
SiOZn100gに対し、モリブデンのみを50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムの製造を試みた。しかし、イオンプレーティングの際の放電が不安定となり、蒸着ができなかった。
(比較例5)
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP304)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。なお、用いた耐食性合金粒の組成は、Ni:Cr:Fe=10.5:19.0:70.5(重量比)であり、モリブデンは含まれていない。製造したガスバリア性フィルムについて水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は3.1g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、7.5g/m2dayであった。
以上の実施例1〜6及び比較例1〜5の結果を下表にまとめて示す。
SiOZn100gに対し、耐食性合金粒(大同特殊鋼社製DAP304)を50g攪拌混合したものを蒸着材料とした以外は、上記実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。なお、用いた耐食性合金粒の組成は、Ni:Cr:Fe=10.5:19.0:70.5(重量比)であり、モリブデンは含まれていない。製造したガスバリア性フィルムについて水蒸気透過率を測定した。その結果、水蒸気透過率は3.1g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルムを塩酸(1規定)に5分間浸漬させた後の水蒸気透過率は、7.5g/m2dayであった。
以上の実施例1〜6及び比較例1〜5の結果を下表にまとめて示す。
上記の通り、実施例1〜6のガスバリア性フィルムは、いずれもガスバリア性能に優れ、また、酸に浸漬した後もガスバリア性能の低下が最小限に抑制され、耐食性にも優れることが明らかとなった。また、無機化合物(SiOZn)に対し、モリブデンとそれ以外の耐食性金属の両方を含まない比較例1〜5では、放電が不安定になってガスバリア性フィルムが得られないか、ガスバリア性フィルムが得られたとしても実施例1〜6に比べてガスバリア性能が劣り、さらに、酸に浸漬した後にガスバリア性能が大きく低下することから、耐食性にも劣ることが明らかとなった。
(参考例1)
蒸着材料として、SiOZn粒(高純度化学社製、SiO2とZnOを重量比10:3で混合し、1000℃で焼成したもの)を用いた。一方、被イオンプレーティング用基材として、PETフィルム(東洋紡社製A4100、100μm厚)を用いた。
蒸着材料として、SiOZn粒(高純度化学社製、SiO2とZnOを重量比10:3で混合し、1000℃で焼成したもの)を用いた。一方、被イオンプレーティング用基材として、PETフィルム(東洋紡社製A4100、100μm厚)を用いた。
まず、PETフィルムをRIE処理装置(ヤマト科学社製)に設置し、Arガス、処理強度200W、処理時間60sec、圧力40Paで表面処理を行った。このPETフィルムを真空チャンバー内に設置し、真空チャンバー内の坩堝に蒸着材料を収納した後、真空引きを行った。真空度が9×10−4まで到達した後、昇華ガスとしてArガスを12sccm導入した。その後、プラズマガンに放電電力を投入し、これによって143Aの放電電流、90Vの放電電圧を発生させ、昇華ガスをプラズマ化した。
収束コイルに所定の磁場を発生させることにより、プラズマ化した昇華ガスからなるプラズマ化昇華ガス流を所定方向に曲げ、これによってプラズマ化した昇華ガスを真空チャンバー内の蒸着材料に向けて照射した。プラズマ化した昇華ガスによって、蒸着材料は昇華するとともにイオン化した。イオン化した蒸着材料が被イオンプレーティング用基材上に堆積することにより、膜厚70nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。なお、イオンプレーティングの実施時間は5秒間であった。
形成されたガスバリア性フィルムについて、上記実施例1と同様にして全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は92%、水蒸気透過率は0.04g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルム表面の最大高低差と、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズをAFM(ヤマト科学社製、ナノピクス)で計測したところ、それぞれ19.7nm、189nmであった。
(参考例2)
RIE処理条件を酸素ガス、200W、2sec、30Paとした以外は、上記参考例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。その結果、膜厚74nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。形成されたガスバリア性フィルムについて、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は92%、水蒸気透過率は0.07g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルム表面の最大高低差と、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズは、それぞれ26.1nm、177nmであった。
RIE処理条件を酸素ガス、200W、2sec、30Paとした以外は、上記参考例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。その結果、膜厚74nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。形成されたガスバリア性フィルムについて、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は92%、水蒸気透過率は0.07g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルム表面の最大高低差と、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズは、それぞれ26.1nm、177nmであった。
(参考例3)
RIE処理時間を240secとした以外は、上記参考例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。その結果、膜厚66nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。形成されたガスバリア性フィルムについて、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は91%、水蒸気透過率は2.8g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルム表面の最大高低差と、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズは、それぞれ37.9nm、297nmであった。
RIE処理時間を240secとした以外は、上記参考例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。その結果、膜厚66nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。形成されたガスバリア性フィルムについて、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は91%、水蒸気透過率は2.8g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルム表面の最大高低差と、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズは、それぞれ37.9nm、297nmであった。
(参考例4)
蒸着材料として、SiO粒(高純度化学社製)を用い、RIE処理条件をArガス、200W、2sec、40Paとした以外は、上記参考例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。その結果、膜厚84nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。形成されたガスバリア性フィルムについて、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は65%、水蒸気透過率は1.5g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルム表面の最大高低差と、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズは、それぞれ58.5nm、274nmであった。
蒸着材料として、SiO粒(高純度化学社製)を用い、RIE処理条件をArガス、200W、2sec、40Paとした以外は、上記参考例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。その結果、膜厚84nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。形成されたガスバリア性フィルムについて、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は65%、水蒸気透過率は1.5g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルム表面の最大高低差と、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズは、それぞれ58.5nm、274nmであった。
(参考例5)
RIE処理を行わない以外は、上記参考例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。その結果、膜厚75nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。形成されたガスバリア性フィルムについて、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は92%、水蒸気透過率は0.1g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルム表面の最大高低差と、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズは、それぞれ22.2nm、218nmであった。
以上の参考例1〜5の結果を下表にまとめて示す。
RIE処理を行わない以外は、上記参考例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。その結果、膜厚75nmのガスバリア層が被イオンプレーティング用基材上に形成された。形成されたガスバリア性フィルムについて、全光線透過率及び水蒸気透過率を測定した。その結果、全光線透過率は92%、水蒸気透過率は0.1g/m2dayであった。また、ガスバリア性フィルム表面の最大高低差と、ガスバリア層の蒸着粒のグレインサイズは、それぞれ22.2nm、218nmであった。
以上の参考例1〜5の結果を下表にまとめて示す。
参考例1〜5の結果から、基材のRIE処理を行ってグレインサイズを200nm以下に制御することにより、ガスバリア性がより向上することが明らかとなった。この傾向は、本願発明のように蒸着源としてモリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属を含有する場合にも同様に観察されるものと考えられる。
1 ガスバリア性フィルム
2 基材
3 ガスバリア層
4 平坦化膜
101 ホローカソード型イオンプレーティング装置
102 真空チャンバー
103a 供給ロール
103b 巻き取りロール
104 コーティングドラム
105 真空排気ポンプ
106 成膜チャンバー
107 坩堝
108 アノード磁石
109 仕切り板
110 圧力勾配型プラズマガン
111 収束用コイル
112 シート化磁石
113 バルブ
114 真空排気ポンプ
116 バルブ
2 基材
3 ガスバリア層
4 平坦化膜
101 ホローカソード型イオンプレーティング装置
102 真空チャンバー
103a 供給ロール
103b 巻き取りロール
104 コーティングドラム
105 真空排気ポンプ
106 成膜チャンバー
107 坩堝
108 アノード磁石
109 仕切り板
110 圧力勾配型プラズマガン
111 収束用コイル
112 シート化磁石
113 バルブ
114 真空排気ポンプ
116 バルブ
Claims (8)
- 基材と、該基材上に設けられたガスバリア層とを有し、前記ガスバリア層が、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化物及び無機酸化窒化炭化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含むガスバリア性フィルム。
- モリブデン以外の耐食性金属が、Cr、Co、Ni、W、V、Cu、Nb、Ta、Al、Ti、Zr及びMnから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 無機化合物が、ケイ素化合物である請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
- 物理蒸着法により、基材上に、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化物及び無機酸化窒化炭化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、モリブデンと、モリブデン以外の耐食性金属とを含むガスバリア層を形成する工程を有するガスバリア性フィルムの製造方法。
- モリブデン以外の耐食性金属が、Cr、Co、Ni、W、V、Cu、Nb、Ta、Al、Ti、Zr及びMnから選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 無機化合物が、ケイ素化合物である請求項4又は5に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 物理蒸着法が、イオンプレーティングである請求項4〜6のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- ガスバリア層を形成する工程に先立ち、基材表面のリアクティブイオンエッチング(RIE)処理を行う工程を有する請求項4〜7のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
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2011
- 2011-04-25 JP JP2011097006A patent/JP2012228786A/ja active Pending
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