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JP2012223806A - 耐摩耗鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

耐摩耗鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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浩 淡路谷
Yasuhiro Murota
康宏 室田
Koichi Tsutsumi
康一 堤
Takuya Suga
卓也 須賀
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Abstract

【課題】Tiを含有する耐摩耗鋼の気泡欠陥を防止して高品質な鋳片を得ることができる連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】C:0.05〜0.35質量%,Si:0.05〜1.0質量%,Mn:0.1〜2.0質量%,B:0.0003〜0.0030質量%,Ti:0.1〜1.0質量%,Al:0.002〜0.1質量%, Cr:0.1〜1.0質量%,Mo:0.05〜1.0質量%,W:0.05〜1.0質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋳片の幅を1300〜1900mm、鋳造速度を0.50〜1.00m/分とし、さらに浸漬ノズルに吹き込むArガスの流量MARとN2ガスの流量MN2をそれぞれMAR:2.0〜14.4NL/分、MN2:0.5〜10.8NL/分とするとともに、Arガスの流量MARとN2ガスの流量MN2が2.6≦MAR+1.2×MN2≦15.0を満足する範囲で連続鋳造を行なう。
【選択図】なし

Description

本発明は、建設,土木,鉱山等の分野で使用される産業機械や輸送機器等に使用される耐摩耗鋼の連続鋳造方法に関するものである。
建設,土木,鉱山等の分野で使用されるパワーショベル,ブルドーザー,ホッパー,パケット等の産業機械や輸送機器等の摩擦を受ける部材には、その寿命を延長するために耐摩耗性に優れる鋼材(いわゆる耐摩耗鋼)が使用される。鋼材の硬さを高めると耐摩耗性が向上することは知られており、Cr,Mo等の合金元素を多量に添加した鋼材に、焼入れ等の熱処理を施して硬さを高めた耐摩耗鋼が開発されている。
たとえば特許文献1には、Cを0.10〜0.19質量%含有し、さらにSi,Mnを所定量含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、かつCeqを0.35〜0.44とした鋼材に熱間圧延を施した後、直接焼入れまたは900〜950℃に再加熱して焼入れを行ない、引き続き焼戻しを行なって表面硬さ300HV(ビッカース硬さ)以上の耐摩耗鋼を得る技術が開示されている。
特許文献2には、Cを0.10〜0.20質量%含有し、さらにSi,Mn,P,S,N,Al,Oを所定量含有し、あるいはさらにCu,Ni,Cr,Mo,Bのうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である鋼材に熱間圧延を施した後、直接焼入れまたは放冷した後に再加熱して焼入れを行なって、表面硬さ340HB(ブリネル硬さ)以上の耐摩耗鋼を得る技術が開示されている。
特許文献3には、Cを0.07〜0.17質量%含有し、さらにSi,Mn,V,B,Alを所定量含有し、あるいはさらにCu,Ni,Cr,Moのうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である鋼材に熱間圧延を施した後、直接焼入れまたは空冷した後に再加熱して焼入れを行なって、表面硬さ321HB(ブリネル硬さ)以上で、曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼を得る技術が開示されている。
これら特許文献1〜3に開示された技術は、鋼材に合金元素を多量に添加して、固溶硬化,変態硬化,析出硬化等を活用することによって硬さを向上し、その結果、鋼材の耐摩耗性を向上させるものである。しかし合金元素を多量に添加した鋼材は、溶接性および加工性が著しく低下するので、産業機械や輸送機器等の様々な形状を有する部材の製作が困難になる。
これに対して特許文献4には、Cを0.10〜0.45質量%,Tiを0.10〜1.0質量%含有し、さらにSi,Mn,P,S,N,Alを所定量含有し、あるいはさらにCu,Ni,Cr,Mo,Bのうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である溶鋼に、連続鋳造を施して、粒径0.5μm以上のTiCを主体とする析出物を単位面積1mm2あたり400個以上析出させた耐摩耗鋼を得る技術が開示されている。この技術では、連続鋳造の凝固時に硬質のTiCを析出させて耐摩耗性を向上させるので、鋼材のマトリックスの硬さを過度に高める必要はなく、溶接性や加工性の低下を抑制できる。
ところが高濃度のTiを含有する耐摩耗鋼の連続鋳造では、後述するような理由で、炭素鋼に比べて表面欠陥(たとえば気泡に起因するフクレ等)が生じ易いという問題がある。
一方で、耐摩耗鋼を対象とした技術ではないが、気泡に起因する欠陥(たとえばフクレ等)を防止する技術が検討されている。
たとえば特許文献5には、浸漬ノズルの内面にて溶鋼トンあたり4NL以下に制限したArガスと残余N2ガスとの混合ガスを吹き込んでふくれ欠陥を防止する技術が開示されている。この技術では、ふくれ欠陥の防止のみならず浸漬ノズルの閉塞も防止できる。
ここではリットルをLと記す。
特許文献6には、Arガスと溶鋼に可溶なガス(たとえばN2ガス)との混合ガスを浸漬ノズル内の溶鋼に吹き込む際に、鋳型の断面積によってArガス流量を決定し、溶鋼の通過質量によって全体のガス流量を決定することによって、気泡欠陥の防止と浸漬ノズルの閉塞防止を達成する技術が開示されている。
これら特許文献5,6に開示された技術は、いずれも耐摩耗鋼を対象としたものではないので、耐摩耗鋼中に含有される高濃度のTiが表面欠陥(たとえば気泡に起因するフクレ等)の生成に及ぼす影響について考慮されていない。そのため、特許文献5,6に開示された技術を耐摩耗鋼の連続鋳造に適用すると、鋳片に表面欠陥が発生するのは避けられない。
特開昭62-142726号公報 特開昭63-169359号公報 特開平1-142023号公報 特許第3089882号公報 特開昭62-38747号公報 特開2005-305489号公報
以上に説明したように、Tiを高濃度に添加してTiCを析出させることによって、耐摩耗性を向上し、かつ溶接性や加工性の良好な耐摩耗鋼を得ることができる。
しかしながら高濃度のTiを含有する溶鋼の連続鋳造では、溶鋼中のTiがモールドパウダー中のSiO2を還元してTiO2を生成する。その結果、モールドパウダー中のSiO2が減少して、モールドパウダーが溶融した後の粘度が上昇する。
一般に溶鋼中に存在する気泡は、その浮力によって浮上して、溶鋼浴面上で溶融したモールドパウダー(以下、溶融パウダーという)内へ移動する。その後、溶融パウダーが鋳型と凝固シェルの間に流入して消費,更新されることによって、溶鋼内の気泡が低減される。
ところがモールドパウダー中のSiO2が減少すれば、溶融した後の粘度が上昇して、溶鋼中の気泡が溶融パウダーへ移動するのが妨げられる。また、溶融パウダーの粘度が上昇すると、鋳型と凝固シェルとの間に流入し難くなるので、モールドパウダーの消費,更新が遅れる。このような現象は、高濃度のTiを含有する溶鋼に特有の現象であり、鋳型と凝固シェルとの間に流入した溶融パウダーの消費,更新を促進すれば、溶鋼から気泡を除去することが可能となる。しかし、そのための有効な技術は未だ確立されていない。
本発明は、このような高濃度のTiを含有する溶鋼の連続鋳造の問題点に鑑みてなされたものであり、気泡に起因する欠陥(たとえばフクレ等)を防止するとともに、優れた耐摩耗性と加工性を有する高品質な鋳片を得ることができる耐摩耗鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
本発明は、耐摩耗鋼の溶鋼の連続鋳造を行なう連続鋳造方法において、耐摩耗鋼が、C:0.05〜0.35質量%,Si:0.05〜1.0質量%,Mn:0.1〜2.0質量%,B:0.0003〜0.0030質量%,Ti:0.1〜1.0質量%,Al:0.002〜0.1質量%,Cr:0.1〜1.0質量%,Mo:0.05〜1.0質量%,W:0.05〜1.0質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋳片の幅を1300〜1900mm、鋳造速度を0.50〜1.00m/分とし、さらに浸漬ノズルに吹き込むArガスの流量MARとN2ガスの流量MN2をそれぞれMAR:2.0〜14.4NL/分、MN2:0.5〜10.8NL/分とするとともに、Arガスの流量MARとN2ガスの流量MN2が下記の(1)式を満足する耐摩耗鋼の連続鋳造方法である。
2.6≦MAR+1.2×MN2≦15.0 ・・・(1)
本発明の連続鋳造方法においては、耐摩耗鋼が、前記した組成に加えてNb:0.005〜1.0質量%,V:0.005〜1.0質量%のうちから選ばれた1種または2種を含有することが好ましい。
本発明によれば、高濃度のTiを含有する耐摩耗鋼の連続鋳造にて、フクレ等の気泡に起因する欠陥(以下、気泡欠陥という)を防止できる。その結果、耐摩耗性と加工性に優れ、かつ表面品質の良好な鋳片を得ることができるので、鋳片の表面手入れを省略することが可能となり、製造工程の簡略化のみならず、省エネルギーの効果も得られる。
まず、耐摩耗鋼の成分を限定した理由を説明する。
C:0.05〜0.35質量%
Cは、耐摩耗鋼のマトリックスの硬さを高めて耐摩耗性を向上する作用を有するとともに、硬質な第2相としてのTiCを析出させて耐摩耗性のさらなる向上を可能とする元素である。このような効果を得るためには、Cを0.05質量%以上含有する必要がある。一方、0.35質量%を超えると、TiCが粗大になり、曲げ加工を施す際にそのTiCが起点となって割れが発生し易くなる。したがって、C含有量は0.05〜0.35質量%の範囲内とする。好ましくは0.15〜0.30質量%である。
Si:0.05〜1.0質量%
Siは、溶鋼の脱酸を行なうために必要な元素であり、かつ耐摩耗鋼のマトリックスに固溶して硬さを高める(すなわち固溶硬化)ことによって耐摩耗性を向上する作用も有する。Si含有量が0.05質量%未満では、溶鋼の脱酸が十分に進行しない。一方、1.0質量%を超えると、マトリックスの固溶硬化が著しく促進されて延性,靭性が低下するばかりでなく、介在物が増加するので、加工性が損なわれる。したがって、Si含有量は0.05〜1.0質量%の範囲内とする。好ましくは0.05〜0.40質量%である。
Mn:0.1〜2.0質量%
Mnは、耐摩耗鋼のマトリックスに固溶硬化を発現させて耐摩耗鋼の耐摩耗性を向上する作用を有する元素である。その効果を得るためには、Mnを0.1質量%以上含有する必要がある。一方、2.0質量%を超えると、溶接性が劣化する。したがって、Mn含有量は0.1〜2.0質量%の範囲内とする。好ましくは0.1〜1.60質量%である。
B:0.0003〜0.0030質量%
Bは、耐摩耗鋼のマトリックスの粒界に偏析し、粒界を強化して靭性の向上に寄与する元素である。その効果を得るためには、Bを0.0003質量%以上含有する必要がある。一方、0.0030質量%を超えると、溶接性が劣化する。したがって、B含有量は0.0003〜0.0030質量%の範囲内とする。好ましくは0.0003〜0.0015質量%である。
Al:0.002〜0.1質量%
Alは、溶鋼の脱酸を行なうために必要な元素であるが、Al含有量が0.1質量%を超えると、Al酸化物を析出して溶鋼の清浄性を低下させる。一方、0.002質量%未満では、脱酸が十分に行なえない。したがって、Al含有量は0.002〜0.1質量%の範囲内とする。
Ti:0.1〜1.0質量%
Tiは、硬質な第2相としてのTiCを析出させて耐摩耗性を向上する元素である。このような効果を得るためには、Tiを0.1質量%以上含有する必要がある。一方、1.0質量%を超えると、TiCが粗大になり、曲げ加工を施す際にそのTiCが起点となって割れが発生し易くなる。さらには、高価なTiを多量に添加することによって、耐摩耗鋼の製造コストの上昇を招く。したがって、Ti含有量は0.1〜1.0質量%の範囲内とする。好ましくは0.1〜0.5質量%である。
Cr:0.1〜1.0質量%
Crは、焼入れ性を高める作用を有する元素である。この効果を得るためにはCrを0.1質量%以上含有する必要がある。一方、1.0質量%を超えると、溶接性が低下する。したがって、Cr含有量は0.1〜1.0質量%の範囲内とする。好ましくは0.1〜0.4質量%である。
Mo:0.05〜1.0質量%
Moは、焼入れ性を高めるとともに、硬質な第2相としてのTiCに固溶して硬さを高める(すなわち固溶硬化)ことによって耐摩耗性を向上する作用も有する元素である。これらの効果を得るためにはMoを0.05質量%以上含有する必要がある。一方、1.0質量%を超えると、溶接性が低下する。したがって、Mo含有量は0.05〜1.0質量%の範囲内とする。好ましくは0.05〜0.4質量%である。
W:0.05〜1.0質量%
Wは、耐摩耗鋼のマトリックスに固溶して焼入れ性を高めるとともに、硬質な第2相としてのTiCに固溶して硬さを高める(すなわち固溶硬化)ことによって耐摩耗性を向上する作用も有する元素である。これらの効果を得るためにはWを0.05質量%以上含有する必要がある。一方、1.0質量%を超えると、溶接性が低下する。したがって、W含有量は0.05〜1.0質量%の範囲内とする。好ましくは0.05〜0.40質量%である。
本発明では、上記した組成に加えてNbおよびVから選ばれた1種または2種を含有することが好ましい。
Nb:0.005〜1.0質量%
Nbは、Tiと複合して含有することによってTi,Nbの複合炭化物(すなわち(NbTi)C)を形成して硬質な第2相としてのTiCに分散して、耐摩耗性を向上する作用を有する元素である。この効果を得るためにはNbを0.005質量%以上含有する必要がある。一方、1.0質量%を超えると、TiCが粗大になり、曲げ加工を施す際にそのTiCが起点となって割れが発生し易くなる。したがってNbを含有する場合は、Nb含有量は0.005〜1.0質量%の範囲内が好ましい。より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
V:0.005〜1.0質量%
Vは、Tiと複合して含有することによってTi,Vの複合炭化物(すなわち(VTi)C)を形成して硬質な第2相としてのTiCに分散して、耐摩耗性を向上する作用を有する元素である。この効果を得るためにはVを0.005質量%以上含有する必要がある。一方、1.0質量%を超えると、TiCが粗大になり、曲げ加工を施す際にそのTiCが起点となって割れが発生し易くなる。したがってVを含有する場合は、V含有量は0.005〜1.0質量%の範囲内が好ましい。より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
本発明の耐摩耗鋼の上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
次に、連続鋳造のプロセスについて説明する。
本発明を適用する鋳片の幅(すなわち長辺)は1300〜1900mmの範囲内とする。鋳片の幅が1300mm未満では、後工程の負荷(たとえば幅出し圧延を行なう等)が増大するので好ましくない。鋳片の幅が1900mmを超えると、鋳型の断面積が大きくなるので、溶融したモールドパウダー(すなわち溶融パウダー)の粘度上昇によって、溶融パウダーが鋳型と凝固シェルとの間に均一に流入し難くなるので、溶融パウダーの消費,更新が遅れて気泡欠陥が発生し易くなるばかりでなく、鋳片の縦割れや拘束性ブレークアウトが発生する惧れがある。つまり、幅1300〜1900mmの鋳片に本発明を適用することによって、鋳型と凝固シェルとの間に均一に溶融パウダーを流入させて、消費,更新を促進して気泡欠陥を防止する効果が顕著に現われる。
鋳造速度は0.50〜1.00m/分の範囲内とする。鋳造速度が0.50m/分未満では、連続鋳造の生産性が低下するばかりでなく、凝固シェルとの間に流入した溶融パウダーの消費,更新が遅れるので好ましくない。鋳造速度が1.00m/分を超えると、浸漬ノズルから吐出する溶鋼の流速が増大するので、浸漬ノズル内に吹き込まれたArガスやN2ガスが溶鋼とともに鋳型内へ吐出して溶融パウダーのみならず凝固シェルにも捕捉される。その結果、溶融パウダーが鋳型と凝固シェルとの間に流入して消費,更新されても、凝固シェルに捕捉された気泡に起因する気泡欠陥が発生する惧れがある。つまり、鋳造速度0.50〜1.00m/分の範囲内で連続鋳造を行なうことによって、鋳型と凝固シェルとの間に溶融パウダーを流入させて、消費,更新を促進して気泡欠陥を防止する効果が得られる。
また、浸漬ノズルの吐出口の閉塞を防止するために、Arガスを吹き込む。浸漬ノズル内に吹き込むArガスの流量MAR(NL/分)は2.0〜14.4NL/分の範囲内とする。Arガスの流量MARが2.0NL/分未満では、浸漬ノズルの吐出口に酸化物が付着して、吐出口が閉塞し易くなるので好ましくない。Arガスの流量MARが14.4NL/分を超えると、浸漬ノズルから吐出する気泡が増加して溶融パウダーのみならず凝固シェルにも捕捉される。その結果、溶融パウダーが鋳型と凝固シェルとの間に流入して消費,更新されても、凝固シェルに捕捉された気泡に起因する気泡欠陥が発生する惧れがある。
さらにArガスに加えて、溶鋼中のTiと反応させてTiNを生成するために、溶鋼に可溶なN2ガスを浸漬ノズル内に吹き込む。浸漬ノズル内に吹き込むN2ガスの流量MN2は0.5〜10.8NL/分の範囲内とする。N2ガスの流量MN2が0.5NL/分未満では、TiNの生成量が不足するので、耐摩耗性の向上を期待できない。N2ガスの流量MN2が10.8NL/分を超えると、溶鋼に溶解できない余剰のN2ガスが気泡となるので、Arガスの気泡に加えてN2ガスの気泡も溶融パウダーと凝固シェルに捕捉される。その結果、溶融パウダーが鋳型と凝固シェルとの間に流入して消費,更新されても、凝固シェルに捕捉された気泡に起因する気泡欠陥が発生する惧れがある。
2ガスは、上記した耐摩耗性向上に寄与するTiNを生成する作用の他に、Arガスと同様に浸漬ノズルの吐出口の閉塞を防止する作用も有する。しかも、N2ガスは溶鋼に可溶であるから、可溶な範囲で吹き込めば、N2ガスに起因する気泡は生じない。そこで、ArガスとN2ガスを併用すれば、Arガスの吹き込み量を削減でき、ひいてはArガスに起因する気泡を減少させることができる。このようなArガスとN2ガスの相乗効果を発揮するためには、浸漬ノズル内に吹き込むArガスの流量MAR(NL/分)とN2ガスの流量MN2(NL/分)は下記の(1)式を満足する必要がある。(1)式のMAR+1.2×MN2値が2.6未満では、浸漬ノズルの閉塞を防止する効果は得られず、さらにTiNの生成作用も期待できないために好ましくない。MAR+1.2×MN2値が15.0を超えると、過剰なArガスが溶鋼湯面に浮上する際に湯面の波立ちが大きくなりスラブの表面性状を劣化させるうえ、過剰なN2ガスがスラブの表面に捕捉され残存することが多くなるために好ましくない。
2.6≦MAR+1.2×MN2≦15.0 ・・・(1)
以上に説明したように、本発明によれば、高濃度のTiを含有する耐摩耗鋼の連続鋳造において溶融パウダーの粘度が上昇しても、鋳片寸法,鋳造速度,ガス流速を適正に保持することによって、鋳片の気泡欠陥を防止することが可能となる。しかも耐摩耗鋼の成分を規定することによって、耐摩耗性のみならず加工性,溶接性を確保している。したがって、耐摩耗性,加工性,溶接性に優れ、かつ表面性状の良好な耐摩耗鋼を得ることができる。
垂直曲げ型スラブ連続鋳造機(機長26m)を用いて、表1に示す成分の耐摩耗鋼の連続鋳造を行なって、厚み250mm,幅1500〜2100mmのスラブを製造した。連続鋳造の条件は表2に示す通りである。
Figure 2012223806
Figure 2012223806
表2中の発明例1〜6は、耐摩耗鋼の成分,鋳片の幅,鋳造速度,Arガス流量MAR,N2ガス流量MN2,MAR+1.2×MN2値が本発明の範囲を満足する例であり、比較例1はArガス流量MARが本発明の範囲を外れる例、比較例2はArガス流量MARとMAR+1.2×MN2値が本発明の範囲を外れる例、比較例3はN2ガス流量MN2が本発明の範囲を外れる例、比較例4はN2ガス流量MN2とMAR+1.2×MN2値が本発明の範囲を外れる例、比較例5は鋳片の幅が本発明の範囲を外れる例、比較例6は鋳造速度が本発明の範囲を外れる例である。
このようにして連続鋳造を行なった後、得られたスラブの表面手入れを行なわず、長辺面と短辺面の全ての面から面積1.95m2を対象として目視で観察し、直径0.5mm以上の気泡欠陥の個数を測定した。そして、気泡欠陥の密度が200個/m2未満のものを良(○),200個/m2以上のものを不可(×)として評価した。その結果を、鋳片の気泡欠陥評価として表2に示す。ここで気泡欠陥の密度200個/m2を閾値として評価した理由は、200個/m2以上では、熱間圧延した後の表面性状が著しく劣化するからである。
また、得られたスラブの表面手入れを行なわず、熱間圧延を行なって厚鋼板とした。その厚鋼板を目視で観察して深さ0.2mm以上の表面欠陥を調査し、さらにその表面疵の面積を測定した。この表面疵は、熱間圧延によって気泡欠陥が潰れたものである。そして、表面欠陥の合計面積が、厚鋼板の単位面積当たり25cm2/m2未満のものを良(○),25cm2/m2以上のものを不可(×)として評価した。その結果を圧延後の表面性状評価として表2に示す。
表2から明らかなように、発明例では、鋳片の気泡欠陥評価,圧延後の表面性状評価がいずれも良と評価されており、気泡に起因する欠陥を低減した耐摩耗鋼を得ることができた。
本発明によれば、耐摩耗鋼の連続鋳造にて気泡欠陥を防止できるので、鋳片の表面手入れを省略することが可能となり、省エネルギーや製造工程の簡略化等の多大な効果が得られ、産業上格段の効果を奏する。

Claims (2)

  1. 耐摩耗鋼の連続鋳造方法において、前記耐摩耗鋼が、C:0.05〜0.35質量%、Si:0.05〜1.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、B:0.0003〜0.0030質量%、Ti:0.1〜1.0質量%、Al:0.002〜0.1質量%、Cr:0.1〜1.0質量%、Mo:0.05〜1.0質量%、W:0.05〜1.0質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋳片の幅を1300〜1900mm、鋳造速度を0.50〜1.00m/分とし、さらに浸漬ノズルに吹き込むArガスの流量MARとN2ガスの流量MN2をそれぞれMAR:2.0〜14.4NL/分、MN2:0.5〜10.8NL/分とするとともに、該Arガスの流量MARと該N2ガスの流量MN2が下記の(1)式を満足することを特徴とする耐摩耗鋼の連続鋳造方法。
    2.6≦MAR+1.2×MN2≦15.0 ・・・(1)
  2. 前記耐摩耗鋼が、前記した組成に加えてNb:0.005〜1.0質量%、V:0.005〜1.0質量%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗鋼の連続鋳造方法。
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