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JP2012036243A - 重金属類の溶出抑制材及び溶出抑制方法 - Google Patents

重金属類の溶出抑制材及び溶出抑制方法 Download PDF

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JP2012036243A JP2010175154A JP2010175154A JP2012036243A JP 2012036243 A JP2012036243 A JP 2012036243A JP 2010175154 A JP2010175154 A JP 2010175154A JP 2010175154 A JP2010175154 A JP 2010175154A JP 2012036243 A JP2012036243 A JP 2012036243A
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Abstract

【課題】重金属類による汚染の程度の高い土壌等の処理対象物に対しても、少ない添加量で、重金属類の溶出を十分に抑制することができる重金属類の溶出抑制材を提供する。
【解決手段】軽焼マグネシアを部分的に水和してなる軽焼マグネシア部分水和物(A)と、アロフェン定量試験による、粘土からのシリカ(SiO)及びアルミナ(Al)の合計の抽出率が20質量%以上である粘土(B)を、(A)/(B)=0.2〜20(質量比)の範囲で含有する重金属類の溶出抑制材。
【選択図】なし

Description

本発明は、重金属類を含む汚染土壌等の処理対象物を固化して、重金属類の溶出を抑制することができる溶出抑制材に関する。
工場、事業所又は産業廃棄物処理場の跡地等の土壌が、鉛、6価クロム又はヒ素等の重金属やフッ素等により汚染されているという事例が、近年、多数報告されている。
重金属等により土壌が汚染されると、重金属等の汚染域が地下水にまで拡散し、汚染された地下水を経由して最終的には人体や穀物に重金属等が蓄積され、健康に悪影響を及ぼす事態が懸念される。
また、土壌中の重金属等の濃度が環境基準値を超えると、跡地をそのまま利用できなくなり、土地の有効利用の観点からも問題である。
かかる問題に対処するために、汚染土壌中の重金属を不溶化して、重金属が土壌から溶出するのを抑制もしくは防止する技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、酸化マグネシウムを含む重金属溶出抑制固化材が提案されている。
特許文献2には、MgO及び/又はMgO含有材からなる有害物質汚染土壌用の固化不溶化剤が提案されている。
特許文献3には、700〜1,000℃で焼成され、粉末度4,000cm/g以上に調整した酸化マグネシウムを、汚染土壌等に添加・混合することにより、該汚染土壌等を固化して、汚染物質の不溶化を行う汚染土壌等の固化・不溶化方法が提案されている。
特許文献4には、固化可能なバインダー中に物質を取り込む方法であって、当該方法が、スラリーとして、又は次のスラリーの形成のために、物質をバインダーと混合する工程を含み、該バインダーが苛性酸化マグネシウム源を含んでおり、及び、スラリーに、バインダーの固化を促進する固化剤を加える工程を含む方法が提案されている。
特許文献5には、酸化マグネシウム(好ましくは、軽焼マグネシウム)と、石膏等の硫酸塩とを主成分とする土壌固化材が提案されている。
特許文献6には、特定の酸化マグネシウムと、マグネシウム等の硫酸塩と、炭酸カルシウムとを特定の質量割合で含む土壌固化材が提案されている。
特開2003−117532号公報 特開2003−225640号公報 特開2003−334526号公報 特表2005−523990号公報 特開2003−193050号公報 特開2007−161839号公報
不溶化材として酸化マグネシウムを用いる特許文献1〜6に記載の技術は、汚染の程度の低い土壌に適用した場合に重金属の溶出を抑制することができる。しかし、酸化マグネシウムや硫酸塩を通常の使用量で添加しても、汚染の程度の高い土壌に対し未だ重金属の溶出抑制効果は不十分である。一方、重金属の溶出量を所定の値(例えば、環境基準値)以下にしようとすると、不溶化材の使用量が過度に増大する。この場合、(a)高コストになる、(b)不溶化材を添加した後の処理土のpHが高くなる、(c)不溶化材を添加した後の処理土の容積が過度に増大し、その後処理に手間とコストがかかる、などの問題がある。
そこで、本発明は、重金属類による汚染の程度の高い土壌等の処理対象物に対しても、少ない添加量で、重金属類の溶出を十分に抑制することができる重金属類の溶出抑制材及び溶出抑制方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、軽焼マグネシア部分水和物と特定の粘土を特定の質量比で含有する組成物によれば、前記本発明の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供する。
[1]軽焼マグネシアを部分的に水和してなる軽焼マグネシア部分水和物(A)と、アロフェン定量試験における粘土からのSiO(シリカ)及びAl(アルミナ)の合計の抽出率が20質量%以上である粘土(B)を、(A)/(B)=0.2〜20(質量比)の範囲で含有することを特徴とする重金属類の溶出抑制材。
[2]前記軽焼マグネシア部分水和物が、酸化マグネシウム65〜96.5質量%、及び、水酸化マグネシウム3.5〜30質量%を含有する前記[1]に記載の重金属類の溶出抑制材。
[3]前記軽焼マグネシア部分水和物100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物20〜70質量部、及び/又は、石膏含有物1〜23質量部を含有する前記[1]又は[2]に記載の重金属類の溶出抑制材。
[4]前記軽焼マグネシア部分水和物100質量部に対し、酸性剤0.2〜300質量部を含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の重金属類の溶出抑制材。
[5]処理対象物100質量部に対し、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の重金属類の溶出抑制材を、2〜40質量部添加し混合する重金属類の溶出抑制方法。
本発明の重金属類の溶出抑制材は、軽焼マグネシア部分水和物(A)と特定の粘土(B)を特定の質量比で含有するため、汚染の程度の高い土壌等の処理対象物に対しても、少ない添加量で重金属類の溶出を十分に抑制することができる。また、このように添加量が少なくて済むため、低コストであり、処理対象物のpHの上昇幅が小さく、処理対象物の容積の過度の増大を避けることができる。
本発明の重金属類の溶出抑制材は、軽焼マグネシアを部分的に水和してなる軽焼マグネシア部分水和物(A)と、アロフェン定量試験による、粘土からのSiO(シリカ)及びAl(アルミナ)の合計の抽出率が20質量%以上である粘土(B)を、(A)/(B)=0.2〜20(質量比)の範囲で含有するものである。
本発明で溶出抑制の対象となる重金属類とは、カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素、総水銀、アルキル水銀、セレン、フッ素、ホウ素及びシアンの第二種特定有害物質、並びに、要監視項目として注意が必要な、ニッケル、モリブデン、アンチモン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素等をいう。
軽焼マグネシア部分水和物(A)と粘土(B)の質量比((A)/(B))は、0.2〜20、好ましくは0.3〜10、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3である。該質量比が0.2〜20の範囲から外れると、重金属類の溶出抑制効果が十分でない場合がある。
次に、本発明の第1の必須構成物質である軽焼マグネシア部分水和物について説明する。
軽焼マグネシア部分水和物(A)は、例えば、炭酸マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムを含む固形物を、650〜1,300℃で焼成することによって得ることができる。
前記固形物中の炭酸マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムの含有率は80質量%以上であり、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。該含有率が80質量%未満では、軽焼マグネシアに含まれる酸化マグネシウム成分が少なく、重金属類の溶出抑制効果が低下する傾向がある。
前記固形物としては、マグネサイト、ドロマイト、ブルーサイト、又は、海水中のマグネシウム成分を消石灰等のアルカリで沈殿させて得た水酸化マグネシウム等の、塊状物又は粉粒状物が挙げられる。
前記固形物の焼成温度は、通常、650〜1,300℃であり、750〜950℃が好ましく、800〜900℃がより好ましい。該焼成温度が650℃未満では、軽焼マグネシアが生成し難く、該焼成温度が1,300℃を超えると、重金属類の溶出抑制効果が低下する虞がある。前記固形物の焼成時間は、固形物の仕込み量や粒度等にもよるが、通常、30分間〜5時間である。
本発明に使用する軽焼マグネシア部分水和物は、酸化マグネシウムを65〜96.5質量%及び水酸化マグネシウムを3.5〜30質量%含有するものが好ましく、酸化マグネシウムを70〜95質量%及び水酸化マグネシウムを5〜20質量%含有するものがより好ましく、酸化マグネシウムを75〜90質量%及び水酸化マグネシウムを7〜17質量%含有するものが特に好ましい。該値を好ましい範囲とすれば、重金属類の溶出抑制効果をより高めることができる。
軽焼マグネシア部分水和物は、前記の成分の他、酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムを含有してもよい。軽焼マグネシア部分水和物中の酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの合計の含有率は、酸化物換算で、3.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。該含有率が3.0質量%を超えると、重金属類による汚染の程度の高い土壌に使用した場合、重金属類の溶出抑制効果が低下することがある。
なお、軽焼マグネシア部分水和物は、前記成分(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム)以外の成分(例えば、シリカ、酸化鉄等の夾雑物)を好ましくは4.0質量%以下で含むことができる。該含有率が4.0質量%を超えると、重金属類による汚染の程度の高い土壌に使用した場合、重金属類の溶出抑制効果が低下することがある。
軽焼マグネシア部分水和物のブレーン比表面積は3,000〜7,000cm/gが好ましく、4,000〜6,800cm/gがより好ましい。該値が3,000〜7,000cm/gの範囲であると、重金属類の溶出抑制効果は増大する。
次に、本発明の第2の必須構成物質である粘土について説明する。
本発明に使用する粘土は、アロフェン定量試験における粘土からのSiO及びAlの合計の抽出率が20質量%以上のものである。該抽出率が20質量%未満では、重金属類の溶出抑制効果が低下する傾向にある。
アロフェン定量試験における粘土からの抽出率は、SiOにおいて5質量%以上、Alにおいて15質量%以上、及びFeにおいて9〜30質量%であることがより好ましい。Feの抽出率が9〜30質量%であると、重金属類の溶出抑制効果が高まる傾向にある。
本発明でいうアロフェン定量試験とは、地盤工学会のアロフェン定量試験(発行:社団法人地盤工学会、地盤材料試験の方法と解説−二分冊の2− pp970に記載)をいう。
アロフェン定量試験によるSiO等の抽出率は、以下の(1)〜(6)の手順により求める。
(1)粘土の乾燥と粉砕
粘土を40℃の乾燥機内に入れ24時間乾燥させた後に粉砕する。次に、この粉砕した粘土を0.42mmの篩にかけて、篩を通過した粘土を回収する。
(2)有機物の分解
前記篩を通過した粘土2gに、10質量%の過酸化水素水50mlを加え撹拌し、次いで、30質量%の過酸化水素水50mlを加え撹拌し、更に、30質量%の過酸化水素水50mlを再度加え撹拌して、粘土に含まれる有機物を酸化分解する。
なお、前記30質量%の過酸化水素水を加える時点、及び、有機物分解処理の終了時点は、いずれも発泡の終了時(酸化分解反応の終了時)を目安とする。
(3)有機物含有量の測定
前記有機物分解後の粘土を濾別し、これに蒸留水50mlを加えて分解有機物等を洗浄する。洗浄後の粘土は105℃の乾燥機内に入れ24時間乾燥させた後、乾燥粘土の質量を測定して粘土中の有機物の含有量を求める。
(4)酸抽出液等の回収
前記有機物分解後の乾燥粘土1gに8mol/LのHCl水溶液50mlを加え、振動数200回/分で30分間振とうして酸抽出した後、濾別して抽出液(a)を回収するとともに、濾別した酸抽出後の粘土に蒸留水50mlを加えて粘土に含まれる酸を洗浄して洗浄液(b)を回収する。
(5)アルカリ抽出液等の回収
前記(4)の洗浄後の粘土に、0.5mol/LのNaOH水溶液50mlを加え、前記振動数で5分間振とうしてアルカリ抽出処理をした後、濾別して抽出液(c)を回収するとともに、濾別したアルカリ抽出処理後の粘土に蒸留水50mlを加えて粘土に含まれるアルカリを洗浄して洗浄液(d)を回収する。
(6)SiO等の抽出率の算定
前記(5)の洗浄後の粘土を前記(4)の処理に戻し、(4)及び(5)の処理を更に続けて4回(合計で5サイクル)繰り返した後、各サイクルにおいて回収した抽出液(a)、(c)及び洗浄液(b)、(d)に含まれる、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)及びFe(酸化鉄)の全濃度を測定して、それぞれの化合物の抽出量を算定する。
そして、粘土からのSiO、Al及びFeの抽出率は、有機物分解処理前の粘土(乾燥状態)1g当たりの、SiO、Al及びFeの抽出量に換算して表示する。
なお、本発明に用いる粘土に含まれる粘土鉱物の好適な例としては、イモゴライト、オパールシリカ、アロフェン、活性アルミ、鉄とアルミの非晶質和水酸化物、ギプサイト、ハロイサイト、バーミキュライト、カオリナイト、加水ハロイサイト、スメクタイト及びクロライトから選ばれる1種又は2種以上の鉱物が挙げられる。
また、粘土中のこれらの粘土鉱物の含有率は、20質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。該含有率が20質量%未満では、処理物のpHの低減能力が低くなったり、あるいは、重金属類の溶出抑制効果が低下することがある。
また、本発明に用いる粘土は、重金属類の溶出抑制効果の観点から、750℃における強熱減量が10%以上であって、SiOの含有率が30質量%以上、Feの含有率が8質量%以上、及びAlの含有率が20質量%以上であるものが好ましい。
なお、前記強熱減量の試験は、日本工業規格「土の強熱減量試験方法」(JIS
A 1226:2009)に従って行う。
更に、本発明に用いる粘土の最大粒径は、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。最大粒径が3mm以下であると、重金属類の溶出抑制効果が増大する傾向にある。
本発明において、軽焼マグネシア部分水和物100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物20〜70質量部、及び/又は、石膏含有物1〜23質量部を含有することができる。
炭酸カルシウム含有物の含有量が20〜70質量部であると、重金属類の溶出抑制効果を高めることができる。また、石膏含有物の含有量が1〜23質量部であると、重金属類の溶出抑制効果を高めることができる。
ここで、前記炭酸カルシウム含有物は、炭酸カルシウムを80質量%以上含むものが好ましく、85質量%以上含むものがより好ましく、90質量%以上含むものが更に好ましい。炭酸カルシウム含有物としては、例えば、工業用炭酸カルシウム粉末、試薬の炭酸カルシウム粉末、石灰石粉末、炭酸カルシウムを主成分とする貝殻の粉砕物又はサンゴの粉砕物等が挙げられる。その中でも、石灰石粉末は低コストであるため好適である。
また、前記石膏含有物は、硫酸カルシウム又は硫酸カルシウム水和物を80質量%以上含むものが好ましく、85質量%以上含むものがより好ましく、90質量%以上含むものが更に好ましい。石膏含有物としては、例えば、無水石膏、半水石膏、リン酸石膏又は二水石膏等が挙げられる。具体的には、無水石膏としては、天然無水石膏、フッ酸の製造時に副生するフッ酸無水石膏が使用でき、二水石膏としては、天然二水石膏、排脱二水石膏等が使用できる。前記石膏のうち、無水石膏は、固化処理土等の固化処理物のpHを低減する効果に優れる。無水石膏の中でも、有害物質の含有量が少ない天然無水石膏が好適である。
炭酸カルシウム含有物又は石膏含有物のブレーン比表面積は、3,000〜7,000cm/gが好ましく、4,000〜6,000cm/gがより好ましい。該値が3,000cm/g未満では、重金属類の溶出抑制効果が低くなることがある。該値が7,000cm/gを超えると、粉砕の手間及び粉砕コストが高くなる。
本発明の溶出抑制剤は、固化処理物のpHの上昇を抑えるために、酸性剤を含有することができる。
酸性剤の配合量は、軽焼マグネシア部分水和物100質量部に対し、通常、0.2〜300質量部であり、好ましくは0.4〜200質量部であり、更に好ましくは2〜150質量部である。該配合量が0.2質量部未満では、固化処理物のpHの低減効果を高めることが困難となる。該配合量が300質量部を超えると、重金属類の溶出抑制効果の更なる向上が得られないばかりか、コスト高になる。
前記酸性剤としては、塩酸、硫酸、硼酸等の無機酸、及び、蓚酸、クエン酸、リンゴ酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸、並びに、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アンモニウム、ミョウバン、塩化アンモニウム、硫酸第1鉄、塩化第2鉄、ベンゼンスルホン酸アンモニウム等の、強酸と弱塩基からなる酸性塩等から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。特に、安価な工業製品である(無水)硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、ミョウバン、硫酸第一鉄又は塩化第二鉄等が、本発明に用いる酸性剤として好ましい。
本発明における酸性剤の使用形態は粉末が好ましい。当該粉末の粒径は、当該粉末が水溶性であることから特に限定されないが、作業性等の観点からは、1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。
本発明の重金属類の溶出抑制材の製造方法は、主として、混合工程、粉砕工程及び部分水和工程からなるものである。以下に、溶出抑制材の実施形態毎に製造方法を説明する。
(i)軽焼マグネシア部分水和物及び粘土を含有し、かつ、炭酸カルシウム含有物、石膏含有物及び酸性剤を含まない溶出抑制材(以下、第一の溶出抑制材ともいう。)の製造方法
製造方法としては、例えば、以下の(a)〜(c)が挙げられる。
(a)軽焼マグネシアと粘土を混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を粉砕して所定の粒度を有する粉砕物を得る粉砕工程と、前記粉砕物中の軽焼マグネシアを一部水和させて軽焼マグネシア部分水和物を得る部分水和工程を含む製造方法。
(b)軽焼マグネシアを粉砕して所定の粒度を有する軽焼マグネシア粉砕物を得る第1の粉砕工程と、粘土を粉砕して所定の粒度を有する粘土粉砕物を得る第2の粉砕工程と(但し、第1の粉砕工程と第2の粉砕工程の順序は問わない。)、前記軽焼マグネシア粉砕物と前記粘土粉砕物を混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物中の軽焼マグネシアを一部水和させて軽焼マグネシア部分水和物を得る部分水和工程を含む製造方法。
(c)軽焼マグネシアを粉砕して所定の粒度を有する軽焼マグネシア粉砕物を得る第1の粉砕工程と、前記軽焼マグネシア粉砕物を一部水和させて軽焼マグネシア部分水和物を得る部分水和工程と、粘土を粉砕して所定の粒度を有する粘土の粉砕物を得る第2の粉砕工程と(但し、第1の粉砕工程と第2の粉砕工程の順序は問わない。)、前記軽焼マグネシア部分水和物の粉砕物と前記粘土粉砕物とを混合する混合工程を含む製造方法。
前記(a)〜(c)における部分水和工程は、前記粉砕物又は混合物に水を添加して撹拌・混合するか、又は、前記粉砕物又は混合物を相対湿度80%以上の雰囲気下に1週間以上保持することにより行なわれる。
前記(a)〜(c)のうち、重金属等の溶出抑制効果及び作業性の観点から、(a)又は(b)の製造方法が好ましく、(a)の製造方法がより好ましい。
(a)の製造方法は、軽焼マグネシア及び粘土を同時に粉砕するため、これらを個別に粉砕する(b)又は(c)の製造方法に比べて、粉砕工程が簡易になるという利点を有する。
(ii)さらに炭酸カルシウム含有物及び/又は石膏含有物を含有する溶出抑制材(以下、第二の溶出抑制材ともいう。)の製造方法
(d)軽焼マグネシアと、粘土と、炭酸カルシウム及び/又は石膏含有物とを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を粉砕して所定の粒度を有する粉砕物を得る粉砕工程と、前記粉砕物中の軽焼マグネシアを一部水和させて軽焼マグネシア部分水和物を得る部分水和工程を含む製造方法。
(e)軽焼マグネシアを粉砕して所定の粒度を有する軽焼マグネシア粉砕物を得る第1の粉砕工程と、粘土を粉砕して所定の粒度を有する粘土粉砕物を得る第2の粉砕工程と、炭酸カルシウム含有物及び/又は石膏含有物を粉砕して所定の粒度を有する炭酸カルシウム含有物及び/又は石膏含有物の粉砕物を得る第3の粉砕工程と(但し、第1〜3の粉砕工程の順序は問わない。)、前記軽焼マグネシア粉砕物と、前記粘土粉砕物と、前記炭酸カルシウム含有物及び/又は石膏含有物の粉砕物とを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物中の軽焼マグネシアを一部水和させて軽焼マグネシア部分水和物を得る部分水和工程を含む製造方法。
(f)軽焼マグネシアを粉砕して所定の粒度を有する軽焼マグネシア粉砕物を得る第1の粉砕工程と、前記軽焼マグネシア粉砕物を一部水和させて軽焼マグネシア部分水和物を得る部分水和工程と、粘土を粉砕して所定の粒度を有する粘土粉砕物を得る第2の粉砕工程と、炭酸カルシウム含有物及び/又は石膏含有物を粉砕して、所定の粒度を有する炭酸カルシウム含有物及び/又は石膏含有物の粉砕物を得る第3の粉砕工程と(但し、第1〜3の粉砕工程の順序は問わない。)、前記軽焼マグネシア部分水和物の粉砕物と、前記粘土粉砕物と、前記炭酸カルシウム含有物及び/又は石膏含有物の粉砕物を混合する混合工程を含む製造方法。
なお、(d)〜(f)における部分水和工程は、前記(i)で説明した第一の溶出抑制材の部分水和工程と同様に行なうことができる。
(d)〜(f)のうち、重金属類の溶出抑制効果及び作業性の観点から、(d)又は(e)の製造方法が好ましく、(d)の製造方法がより好ましい。
(iii)さらに酸性剤を含む溶出抑制材(以下、第三の溶出抑制材ともいう。)の製造方法
製造方法としては、例えば、前記の(i)、(ii)で説明した第一もしくは第二の溶出抑制材に、更に、酸性剤を添加し混合する方法が挙げられる。
本発明の溶出抑制材のロジン・ラムラー式におけるn値は、0.70〜1.40が好ましく、0.95〜1.15がより好ましい。重金属類の溶出抑制材のn値が0.70〜1.40の範囲であれば、重金属類の溶出抑制効果を高めることができ、重金属類の含有量の多い土壌に対しても有効である。なお、ロジン・ラムラー式は、R=100exp(−bDp n)(式中、Rは積算残分値(%)であり篩残分を表し、Dpは粒径(μm)であり篩の目の寸法を表し、b、nは定数である。)で表される。
ロジン・ラムラー式におけるn値の測定は、例えば、100mlビーカーに、エタノール20mlと試料0.05gを入れ、超音波洗浄機(アズワン社製VS−100、周波数50kHz)を用いて1分間超音波分散を行ない、試料の屈折率を1.72に調整した後に、粒度分布測定装置(日機装社製9320−X10)を用いて行なうことができる。
本発明の溶出抑制材の添加量は、処理対象物の性状や施工条件、重金属類の溶出量や固化処理物の要求性能等にもよるが、処理対象物100質量部に対し、好ましくは2〜40質量部、より好ましくは6〜30質量部である。該添加量が2質量部未満では、溶出抑制材を処理対象物中に均一に混合するのが困難となる。該添加量が40質量部を超えると、コストが増大したり、固化処理物のpHが大きく上昇したり、固化処理物の容積が増大して、その後処理に手間とコストがかかるなどの問題が生じ得る。
重金属類の溶出抑制材の添加方法としては、溶出抑制材を処理対象物に粉体のまま添加し混合するドライ添加方法、又は、溶出抑制材に水を加えてスラリーとした後に、該スラリーを処理対象物に添加し混合するスラリー添加方法を採用することができる。溶出抑制材のスラリーの水/溶出抑制材の質量比は、処理対象物の性状や重金属類の含有量にもよるが、0.5〜1.5が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。
本発明の溶出抑制材の処理対象物としては、重金属類を含有する土壌、焼却灰類、ダスト類等を挙げることができる。また、該処理対象物としては、本発明の効果の一つである固化処理物のpH上昇の抑制効果を十分に得る観点から、処理対象物1mに対し市販の酸化マグネシウム(例えば、関東化学社製特級試薬)を100kg/m添加し混合して得た混合物のpHが、10.3以上となるものが好ましく、10.6以上となるものがより好ましい。なお、当該pHの測定方法は、JGS0211−2009に準拠して行なう。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.溶出抑制材の各構成物質の調製
(1)軽焼マグネシア粉砕物(M1)及び軽焼マグネシア部分水和物(W1)
炭酸マグネシウムを97質量%含むマグネサイトを、850℃で30分間、電気炉(中外エンジニアリング社製、型式;KSL−2)で焼成して軽焼マグネシアを得た。次に、当該軽焼マグネシアを粉砕してブレーン比表面積6,500cm/gの軽焼マグネシア粉砕物(M1)を得た。更に、当該粉砕物を温度20℃、相対湿度100%の恒温恒湿槽に10日間放置し、軽焼マグネシアの一部を水和させて、ブレーン比表面積6,500cm/gの軽焼マグネシア部分水和物(W1)を得た。
軽焼マグネシア部分水和物(W1)は、酸化マグネシウムを88.0質量%及び水酸化マグネシウムを8.5質量%含有するものであった。
(2)軽焼マグネシア粉砕物(M2)及び軽焼マグネシア部分水和物(W2)
炭酸マグネシウムを95質量%含むマグネサイトを、870℃で30分間、前記電気炉で焼成して軽焼マグネシアを得た。次に、当該軽焼マグネシアを粉砕してブレーン比表面積5,900cm/gの軽焼マグネシア粉砕物(M2)を得た。更に、当該粉砕物を温度20℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽に20日間放置し、軽焼マグネシアの一部を水和させて、ブレーン比表面積5,900cm/gの軽焼マグネシア部分水和物(W2)を得た。
軽焼マグネシア部分水和物(W2)は、酸化マグネシウムを79.5質量%及び水酸化マグネシウムを17.0質量%含有するものであった。
(3)粘土粉砕物
表1に示す成分組成及び抽出率を有する10種類の粘土a〜jの粘土を粉砕し、2mm篩を全通する粘土粉砕物を得た。なお、表1中の強熱減量は、750℃における値である。
なお、使用した粘土は、いずれも、粘土鉱物を70質量%以上含有するものである。
Figure 2012036243
(4)炭酸カルシウム含有物
炭酸カルシウムを92質量%含む粒状の石灰石を粉砕し、ブレーン比表面積が5,500cm/gの炭酸カルシウム含有物を得た。
(5)石膏含有物
硫酸カルシウムを91質量%含む塊状の天然無水石膏を粉砕し、ブレーン比表面積が5,000cm/gの石膏含有物を得た。
2.溶出抑制材の調製
表2、表3及び表4に示す配合に従い、前記の溶出抑制材の各構成物質を、三井三池製作所社製のヘンシェルミキサ(型番:FM20B)を用いて混合し、溶出抑制材A1〜A20、B1〜B22を調製した。
Figure 2012036243
Figure 2012036243
Figure 2012036243
3.ヒ素の溶出試験及びpHの測定
表2に示す溶出抑制材A1〜A10及びB1〜B11に水を加えて、水/溶出抑制材=1(質量比)の溶出抑制材スラリーを調製した。次に、これらの溶出抑制材スラリーをヒ素の汚染土壌(含水比70%)100質量部に対し、表5に示す量(スラリー中の溶出抑制材の量)を添加し混合して、JGS0821−2009「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法」に準拠して供試体を作製した。また、溶出抑制材スラリーを添加しない汚染土壌を対照例(比較例12)とした。
これらの供試体を20℃の恒温室にて湿空養生した後、材齢7日の供試体のpHを地盤工学会基準JGS0211−2009に準拠して測定した。また、当該供試体からのヒ素の溶出量は、環境省告示46号法及びK
0120−2008 61.4「ICP質量分析法」に準拠して測定した。なお、ヒ素の環境基準値は0.01mg/リットルである。
ヒ素の溶出試験及びpH測定の結果を表5に示す。
Figure 2012036243
表5に示すように、実施例1〜10では、ヒ素の溶出量は環境基準値(0.01mg/リットル)未満であるのに対し、比較例1〜12では、いずれも環境基準値を超えている。また、実施例9〜10では、酸性剤を用いているため、pHが低くなっている。これらの結果から、前記(i)で説明した第一の溶出抑制材(A1〜A6)、前記(ii)で説明した第二の溶出抑制材(A7〜A8)、及び、前記(iii)で説明した第三の溶出抑制材(A9〜A10)は、いずれも、ヒ素の溶出抑制効果が極めて高いこと、及び、前記(iii)で説明した第三の溶出抑制材(A9〜A10)は、pHの低減効果が高いことが分かる。
4.フッ素の溶出試験及びpHの測定
表3に示す溶出抑制材A11〜A18及びB12〜B21に水を加えて、水/溶出抑制材=1(質量比)の溶出抑制材スラリーを調製した。
次に、これらの溶出抑制材スラリーをフッ素の汚染土壌(含水比65%)100質量部に対し、表6に示す量(スラリー中の溶出抑制材の量)を添加し混合して、JGS0821−2009「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法」に準拠して供試体を作製した。また、溶出抑制材スラリーを添加しない汚染土壌を対照例(比較例23)とした。
これらの供試体を20℃の恒温室にて湿空養生した後、材齢7日の供試体のpHを地盤工学会基準JGS0211−2009に準拠し測定した。また、当該供試体からのフッ素の溶出量は、環境省告示46号及び昭和46年12月環境庁告示第59号付表6「イオンクロマトグラフ法」に準拠し測定した。なお、フッ素の環境基準値は0.8mg/リットルである。
フッ素の溶出試験及びpH測定の結果を表6に示す。
Figure 2012036243
表6に示すように、実施例11〜18では、フッ素の溶出量は環境基準値(0.8mg/リットル)未満であるのに対し、比較例13〜23では、いずれも環境基準値を超えている。また、実施例17〜18では、酸性剤を用いているため、pHが低くなっている。これらの結果から、前記(i)で説明した第一の溶出抑制材(A11〜A14)、前記(ii)で説明した第二の溶出抑制材(A15〜A16)、及び、前記(iii)で説明した第三の溶出抑制材(A17〜A18)は、フッ素の溶出抑制効果が極めて高いこと、及び、前記(iii)で説明した第三の溶出抑制材(A17〜A18)は、pHの低減効果が高いことが分かる。
5.鉛の溶出試験及びpHの測定
溶出抑制材A19、A20及びB22に水を加えて、水/溶出抑制材=1(質量比)の溶出抑制材スラリーを調製した。
次に、これらの溶出抑制材スラリーを焼却飛灰(含水比50%)100質量部に対し、表8に示す量(スラリー中の溶出抑制材の量)を添加し混合して、JGS0821−2009「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法」に準拠して供試体を作製した。また、溶出抑制材スラリーを添加しない焼却飛灰を対照例(比較例25)とした。
これらの供試体を20℃の恒温室にて湿空養生した後、材齢7日の供試体のpHを地盤工学会基準JGS0211−2009に準拠し測定した。また、当該供試体からの鉛の溶出量は、環境省告示46号及びJIS K 0120−2008 5.4「ICP質量分析法」に準拠し測定した。なお、鉛の環境基準値は0.01mg/リットルである。
鉛の溶出試験及びpH測定の結果を表7に示す。
Figure 2012036243
表7に示すように、実施例19〜20では、鉛の溶出量は環境基準値(0.01mg/リットル)未満であるのに対し、比較例24〜25では、いずれも環境基準値を超えている。これらの結果から、前記(i)で説明した第一の溶出抑制材(A19)、及び、前記(ii)で説明した第二の溶出抑制材(A20)は、鉛の溶出抑制効果が極めて高いことが分かる。

Claims (5)

  1. 軽焼マグネシアを部分的に水和してなる軽焼マグネシア部分水和物(A)と、アロフェン定量試験による、粘土からのSiO及びAlの合計の抽出率が20質量%以上である粘土(B)を、(A)/(B)=0.2〜20(質量比)の範囲で含有することを特徴とする重金属類の溶出抑制材。
  2. 軽焼マグネシア部分水和物が、酸化マグネシウム65〜96.5質量%、及び、水酸化マグネシウム3.5〜30質量%を含有する請求項1に記載の重金属類の溶出抑制材。
  3. 軽焼マグネシア部分水和物100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物20〜70質量部、及び/又は、石膏含有物1〜23質量部を含有する請求項1又は2に記載の重金属類の溶出抑制材。
  4. 軽焼マグネシア部分水和物100質量部に対し、酸性剤を0.2〜300質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の重金属類の溶出抑制材。
  5. 処理対象物100質量部に対し、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重金属類の溶出抑制材を2〜40質量部添加し混合することを特徴とする重金属類の溶出抑制方法。
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