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JP2011057018A - 鞍乗型車両 - Google Patents

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JP2011057018A
JP2011057018A JP2009206910A JP2009206910A JP2011057018A JP 2011057018 A JP2011057018 A JP 2011057018A JP 2009206910 A JP2009206910 A JP 2009206910A JP 2009206910 A JP2009206910 A JP 2009206910A JP 2011057018 A JP2011057018 A JP 2011057018A
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JP2009206910A
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Eiichiro Tsujii
栄一郎 辻井
Kazuhiro Nishida
和洋 西田
Masayuki Hirano
雅之 平野
Toshio Takeuchi
稔雄 竹内
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Yamaha Motor Co Ltd
Original Assignee
Yamaha Motor Co Ltd
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Abstract

【課題】車体の傾斜を制限した状態で好適に駐車、保管することができる鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】鞍乗型車両は、一対の後輪を車体に対して上下動可能に支持するスタビライザー53と、一対の後輪の上下動が許容された可動状態と、一対の車輪の上下動が制限された固定状態とに切り替える切替機構71を備える。切替機構71は、スタビライザー53と結合することによって車体に対してスタビライザー53が回転軸P回りの回転することを規制して固定状態にする結合ピン部材75と、車体に固定的に設けられ、前記結合ピン部材75を駆動して、結合ピン部材75とスタビライザー53を結合させるソレノイド73と、を備えている。そして、切替機構71が固定状態を切り替えることで、車体を自立させた状態で好適に駐車することができ、また、好適に保管することができる。
【選択図】図9

Description

この発明は、車体の前部または後部の少なくともいずれかに一対の車輪を有する自動三輪車両または自動四輪車両であって、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両に関する。
従来から、車体を挟む一対の車輪を車体の前部または/および後部に設けているとともに、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両が提案されている。さらに、車体の傾斜を制限する機構を備え、車体を自立可能に構成した鞍乗型車両も提案されている(例えば、特許文献1、2)。
特許文献1に記載の技術
特許文献1は、1個の前輪と2個の後輪を備える自動三輪車両を開示する。自動三輪車両の車体は、前輪を支持する前車体と、一対の後輪を支持する後車体に分割されており、両者は車両の前後方向の1軸回りに相対回転可能に連結されている。この自動三輪車両は、ブレーキ操作時の油圧ディスクブレーキ機構の動力を利用して、前車体と後車体の相対回転を制限する揺動固定機構を備えている。この揺動固定機構により、ブレーキ操作を行っているときは、所定のタイミングで前車体と後車体の相対回転が制限され、車体は自立する。また、ブレーキ操作を行っていないときは、前車体と後車体の相対回転が許容され、車体は傾斜可能である。
特許文献2に記載の技術
特許文献2は、1個の前輪と2個の後輪を備える自動三輪車両を開示する。自動三輪車両の車体は、前輪を支持する前車体と、一対の後輪を支持する後車体に分割されており、前車体と後車体は車両の前後方向の1軸回りに相対回転可能に連結されている。また、この自動三輪車両は、電磁力によって前車体と後車体の相対回転を制限するロック機構を備えている。ロック機構は、前車体と一体に設けられた電磁石と、後車体と一体に設けられた電磁プレートと、電磁石に通電させるスイッチとを備えている。そして、スイッチ操作によって電磁石に通電しているときは、電磁石が電磁プレートと吸引接触し、前車体と後車体の相対回転が制限され、車体は自立する。また、スイッチ操作によって電磁石に通電していないときは、前車体と後車体の相対回転が許容され、車体は傾斜可能である。
特開2003−341577号公報 特開2004−131027号公報
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
たとえば、特許文献1に記載の車両は、ライダーによってブレーキ操作が行われていないときは、前車体と後車体の相対回転は制限されない。よって、特許文献1に記載の車両によれば、車体を自立させた状態で駐車したり、保管することが困難である。
また、特許文献2に記載の車両は、電磁石と電磁プレートとの摩擦力は時間の経過とともに低下し易いので、ロック機構が比較的長期間にわたって前車体と後車体の相対回転を制限し続けることは困難である。よって、特許文献2に記載の車両も、車体を自立させた状態で駐車したり、保管することが困難である。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車体の傾斜を制限した状態で好適に駐車、保管することができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、車体を挟んで設けられた少なくとも一対の車輪を、車体に対して上下動可能に支持する支持機構と、前記一対の車輪の上下動が許容された可動状態と、前記一対の車輪の上下動が制限された固定状態とに切り替える切替機構と、前記切替機構を制御する制御部と、を備え、前記切替機構は、前記支持機構と結合することによって車体に対する前記支持機構の移動を規制して固定状態にし、かつ、前記支持機構から離脱することによって車体に対する前記支持機構の移動を許容して可動状態にする結合ピン部材と、車体に固定的に設けられ、前記結合ピン部材を駆動して、前記結合ピン部材と前記支持機構を結合、離脱させるソレノイドと、を備えている鞍乗型車両である。
[作用・効果]本発明に係る鞍乗型車両によれば、一対の車輪を車体に対して上下動可能に支持する支持機構を備えているので、切替機構が可動状態に切り替えているときは、一対の車輪が路面と接した状態で車体は傾斜可能である。また、切替機構が固定状態に切り替えているときは、車体は自立する。
また、切替機構は、結合ピン部材とソレノイドとを備え、結合ピン部材が支持機構と結合することで固定状態にするので、固定状態を好適に維持することができる。よって、車体を自立させた状態で好適に駐車することができ、また、好適に保管することができる。
ここで、「鞍乗型車両」は、ライダーが鞍にまたがった状態で乗車可能な車両のほかに、足をそろえて乗車可能なスクーター型の車両も含む。また、「車体」はメインフレームおよび当該メインフレームと一体に固定されているものをいう。
上述した発明において、ライダーがシートに座っていることを検出する着座検出部と、ライダーから固定状態及び可動状態を指定する命令を受け付ける状態操作部と、を備え、前記制御部は、前記着座検出部の検出結果に基づいてライダーがシートに座っていないときは、前記状態操作部から可動状態を指定する命令が入力されても、前記切替機構に対して可動状態に切り替える制御を行わないことが好ましい。状態操作部を備えているので、ライダーの操作によって固定状態と可動状態を切り替えることができる。また、ライダーが着座していないときは、可動状態を指定する命令を状態操作部が受け付け、状態操作部がその命令を制御部に与えても、制御部は可動状態に切り替える制御を行わない。これにより、着座する前のライダーに車体を支持する負担をかけないようにすることができる。
上述した発明において、前記着座検出部の検出結果に基づいてライダーがシートに座っていないときは、前記状態操作部から入力される命令に関わらず、前記切替機構を制御して一対の車輪の上下動を制限する、すなわち、一対の車輪を固定状態にさせることが好ましい。ライダーが着座していないときは、車体を自立させた状態にすることができる。
上述した発明において、固定状態及び可動状態のいずれであるかを検出する状態検出部と、変速機のシフト位置がドライブレンジにあるか否かを検出するシフト検出部と、を備え、前記制御部は、前記状態検出部、及び、前記シフト検出部の各検出結果に基づいて、固定状態であり、かつ、前記シフト位置がドライブレンジにある場合はエンジンを停止させる停止制御を行うことが好ましい。固定状態のままで鞍乗型車両が、前進または発進することを好適に防止することができる。
上述した発明において、前記停止制御は、エンジンの点火電気系統を遮断させることであることが好ましい。制御部は好適にエンジンを停止させることができる。
上述した発明において、前記状態検出部の結果に基づいて固定状態であることを表示する表示部を備えることが好ましい。固定状態であることを好適に報知することができる。
上述した発明において、車速を検出する車速検出部を備え、前記制御部は、前記車速検出部の検出結果に基づいて、車速が所定速度以上のときは前記切替機構を制御して、一対の車輪の上下動を許容する、すわなち、一対の車輪を可動状態にさせることが好ましい。車速が所定速度以上の場合、車体を傾斜させて旋回することができる。
上述した発明において、前記状態検出部は、前記結合ピン部材が前記支持機構から離脱した離脱位置にあるか否かを検出し、前記制御部は、前記車速検出部、及び、前記状態検出部の各検出結果に基づいて、車速が所定速度以上の場合において前記結合ピン部材が離脱位置から離れたときは、前記結合ピン部材を離脱位置に戻させることが好ましい。車速が所定速度以上の場合に、結合ピン部材が誤作動で支持部材と結合し、固定状態になることを好適に防止することができる。
上述した発明において、前記制御部は、前記車速検出部の検出結果に基づいて、車速が所定速度以上のときは、前記状態操作部から固定状態を指定する命令が入力されても、前記切替機構に対して固定状態に切り替える制御を行わないことが好ましい。車速が所定速度以上の場合には、固定状態を指定する命令を状態操作部が受け付けても、制御部は固定状態に切り替える制御を行わない。これにより、車速が所定速度以上の場合に、固定状態になることを好適に防止することができる。
上述した発明において、ブレーキ操作を検出するブレーキ検出部を備え、前記制御部は、前記着座検出部、前記車速検出部、及び、前記ブレーキ検出部の各検出結果に基づいて、ライダーがシートに座っており、車速が所定速度未満であり、かつ、ブレーキ操作が行われている場合に、前記状態操作部から入力される命令どおりに前記切替機構を制御することが好ましい。ライダーが着座しているときは、ライダーは路面に足を着いて車体を支持することができる。また、車速が所定速度未満であり、かつ、ブレーキが操作されているときは、鞍乗型車両は停車した状態であるか、ほとんど停車した状態である。そして、これらの条件が揃い、停車、または、ほとんど停車した状態の鞍乗型車両にライダーが搭乗しているときは、状態操作部の操作が有効になる。すなわち、状態操作部から入力された命令に基づいて制御部は切替機構を制御する。これにより、ライダーは発進前、停車前、または、駐車前の各準備を好適に行うことができる。
上述した発明において、車速を検出する車速検出部を備え、ブレーキ操作を検出するブレーキ検出部を備え、前記制御部は、前記車速検出部、及び、前記ブレーキ検出部の各検出結果に基づいて車速が所定速度未満であり、かつ、ブレーキ操作が行われていることを条件に前記停止制御を行うことが好ましい。停止制御は、鞍乗型車両が停車した状態であるか、ほとんど停車した状態であるときに限られる。よって、停止制御を好適に行うことができる。
上述した発明において、車速を検出する車速検出部を備え、前記制御部は、前記車速検出部の検出結果に基づいて、車速が実質的に零であることを条件に前記停止制御を行うことが好ましい。停止制御は、鞍乗型車両が停車した状態であるか、ほとんど停車した状態であるときに限られる。よって、停止制御を好適に行うことができる。
上述した発明において、車速を検出する車速検出部を備え、前記制御部は、前記車速検出部の検出結果に基づいて、車速が所定速度以上のときは前記切替機構を制御して可動状態にさせることが好ましい。車速が所定速度以上の場合に、車体を傾斜させて旋回することができる。
上述した発明において、ライダーがシートに座っていることを検出する着座検出部と、車速を検出する車速検出部と、ブレーキ操作を検出するブレーキ検出部と、ライダーから固定状態及び可動状態を指定する命令を受け付ける状態操作部と、を備え、前記制御部は、前記着座検出部、前記車速検出部、及び、前記ブレーキ検出部の各検出結果に基づいて、ライダーがシートに座っており、車速が所定速度未満であり、かつ、ブレーキ操作が行われている場合に、前記状態操作部から入力される命令どおりに前記切替機構を制御することが好ましい。停車、または、ほとんど停車した状態の鞍乗型車両にライダーが搭乗しているときは、状態操作部の操作が有効になる。すなわち、状態操作部から入力された命令に基づいて制御部は切替機構を制御する。これにより、ライダーは発進前、停車前、または、駐車前の各準備を好適に行うことができる。
上述した発明において、ライダーがシートに座っていることを検出する着座検出部と、車速を検出する車速検出部と、ライダーから固定状態及び可動状態を指定する命令を受け付ける状態操作部と、を備え、前記制御部は、前記着座検出部、及び、前記車速検出部の各検出結果に基づいて、ライダーがシートに座っており、かつ、車速が実質的に零である場合に、前記状態操作部から入力される命令どおりに前記切替機構を制御することが好ましい。停車、または、ほとんど停車した状態の鞍乗型車両にライダーが搭乗しているときは、状態操作部の操作が有効になる。すなわち、状態操作部から入力された命令に基づいて制御部は切替機構を制御する。これにより、ライダーは発進前、停車前、または、駐車前の各準備を好適に行うことができる。
なお、本明細書は、次のような鞍乗型車両に係る発明も開示している。
(1)上述した発明に係る鞍乗型車両において、前記固定状態では車体が自立する鞍乗型車両。
前記(1)に記載の発明によれば、鞍乗型車両を固定状態で駐車、保管することができる。
(2)上述した発明に係る鞍乗型車両において、前記固定状態では車体の上下方向が路面に対して略直角となる鞍乗型車両。
前記(2)に記載の発明によれば、鞍乗型車両を好適に自立させることができる。
(3)上述した発明に係る鞍乗型車両において、制御部は、エンジンストップスイッチが作動させる回路を制御することによって、エンジンの点火電気系統を遮断させる鞍乗型車両。
前記(3)に記載の発明によれば、エンジンストップスイッチによって作動する回路が、制御部によってエンジンの点火電気系統を遮断する回路を兼ねるので、構成を簡略化することができる。
(4)上述した発明に係る鞍乗型車両において、前記停止制御は、エンジンへの燃料供給を停止させることである鞍乗型車両。
前記(4)に記載の発明によれば、制御部は好適にエンジンを停止させることができる。
(5)上述した発明に係る鞍乗型車両において、車速を検出する車速検出部を備え、前記制御部は、前記状態検出部、前記シフト検出部、及び、前記車速検出部の各検出結果に基づいて、固定状態であり、かつ、前記シフト位置がドライブレンジにある場合において、車速が所定速度以上のときは、前記停止制御に先立って、前記切替機構を制御して可動状態にさせる状態変更制御を行う鞍乗型車両。
前記(5)に記載の発明によれば、固定状態であり、かつ、前記シフト位置がドライブレンジにある場合であっても車速が所定速度以上のときは、停止制御の前にまず、状態変更制御を行う。これにより、エンジンを停止させることなく、可動状態に切り替えて鞍乗型車両の走行を継続することができる。
(6)前記(5)に記載の鞍乗型車両において、前記制御部は、前記状態検出部の検出結果に基づいて、状態変更制御を行っても可動状態に切り替わらないときに前記停止制御を行う鞍乗型車両。
前記(6)に記載の発明によれば、固定状態での走行を確実に回避することができる。
(7)上述した発明に係る鞍乗型車両において、前記表示部は、ライダーに対して表示する鞍乗型車両。
前記(7)に記載の発明によれば、ライダーに固定状態であることを好適に報知することができる。
(8)上述した発明に係る鞍乗型車両において、前記ソレノイドは、前記結合ピン部材を前記支持機構に対して進退移動させる鞍乗型車両。
前記(8)に記載の発明によれば、支持機構に対して結合ピン部材を好適に結合・離脱させることができる。
(9)上述した発明に係る鞍乗型車両において、前記状態検出部は、前記ソレノイドの可動鉄心の後端部の位置を検出する鞍乗型車両。
前記(9)に記載の発明によれば、結合ピン部材が支持機構から離脱位置にあるか否かを好適に検出することができる。
(10)上述した発明に係る鞍乗型車両において、前記状態検出部は、前記ソレノイドの後端側に設けられている鞍乗型車両。
前記(10)に記載の発明によれば、結合ピン部材が支持機構から離脱位置にあるか否かを好適に検出することができる。
(11)上述した発明に係る鞍乗型車両において、前記表示部は、さらに前記状態検出部の検出結果に基づいて前記可動状態であることを表示する鞍乗型車両。
前記(11)に記載の発明によれば、可動状態であることを好適に報知することができる。
この発明に係る鞍乗型車両によれば、一対の車輪を車体に対して上下動可能に支持する支持機構を備えているので、切替機構が可動状態に切り替えているときは、一対の車輪が路面と接した状態で車体は傾斜可能である。また、切替機構が固定状態に切り替えているときは、車体は自立する。また、切替機構は、結合ピン部材とソレノイドとを備え、結合ピン部材が支持機構と結合することで固定状態にするので、固定状態を好適に維持することができる。よって、車体を自立させた状態で駐車または/および保管することができる。
実施例1に係る鞍乗型車両の概略構成を示す斜視図である。 実施例1に係る鞍乗型車両の外観を示す側面図である。 実施例に係る鞍乗型車両の正面図である。 傾斜した状態の鞍乗型車両の正面図である。 実施例に係る鞍乗型車両の背面図である。 傾斜した状態の鞍乗型車両の背面図である。 支持機構及び切替機構の要部を斜め後方から見た斜視図である。 支持機構及び切替機構の要部を側面から見た斜視図である。 固定状態のときの支持機構及び切替機構の要部の断面図である。 可動状態のときの支持機構及び切替機構の要部の断面図である。 エンジンストップスイッチとエンジンの点火電気系統の回路図である。 制御系の概略構成を示すブロック図である。 実施例1に係る鞍乗型車両の動作順序を示すフローチャートである。 実施例2に係る鞍乗型車両の動作順序を示すフローチャートである。 実施例3に係る鞍乗型車両の動作順序を示すフローチャートである。 実施例4に係る鞍乗型車両の動作順序を示すフローチャートである。 実施例5に係る鞍乗型車両の動作順序を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の鞍乗型車両について説明する。
図1は、実施例1に係る鞍乗型車両の概略構成を示す斜視図であり、図2は、実施例1に係る鞍乗型車両の外観を示す側面図である。図2においては図面の左側が鞍乗型車両の前側であり、図面の右側が鞍乗型車両の後側である。図3は、実施例に係る鞍乗型車両の正面図であり、図4は鞍乗型車両が傾斜した状態を正面から見た図である。図3と図4では、図1および図2に記載されているハンドルやメインフレーム等が省略されている。また、図5は実施例に係る鞍乗型車両の背面図であり、図6は鞍乗型車両が傾斜した状態を背面から見た図である。
図1乃至図6において、x方向は車体の前後方向であり、y方向は車体の車幅方向であり、z方向は車体の上下方向である。車体の前後方向、車幅方向、及び、上下方向は互いに直交している。また、車体が直立している状態では車体の前後方向、及び、車幅方向はそれぞれ水平となり、車体の上下方向は鉛直となる。なお、以下の説明において単に「右側」、「左側」と記載するときは、鞍乗型車両1に乗車した搭乗者から見た場合を基準とする。
図1、図2を参照する。本実施例にかかる鞍乗型車両1は、車体の前側及び後側にそれぞれ一対の車輪を備えた自動四輪車両である。鞍乗型車両1は、車体の中央付近にメインフレーム3を備えている。メインフレーム3の前側には、支持フレーム5を介してヘッドパイプ7が取り付けられている。このヘッドパイプ7にはハンドル11が取り付けられている。メインフレーム3の上部前側には燃料タンク13が取り付けられている。メインフレーム3の上部後側であって、燃料タンク13の後方に当たる位置にはシート15が取り付けられている。燃料タンク13の下方にあたるメインフレーム3の下部には、エンジン17が取り付けられている。
以下の説明では、このメインフレーム3およびメインフレーム3と一体に固定されるもの(たとえば、シート15など)を「車体」と適宜に記載する。
1.前輪に関連する構成
1.1.支持機構
メインフレーム3の前端下部には、車体の前部へ延びる右側ロアアーム21Rと左側ロアアーム21Lとが車幅方向yに並んで設けられている。右側ロアアーム21Rと左側ロアアーム21Lの一端は、車幅方向yと略平行なピボット軸22回りに回転可能である。メインフレーム3の前端上部には、車体の前部へ延びる右側アッパーアーム23Rと左側アッパーアーム23Lとが車幅方向yに並んで設けられている。右側アッパーアーム23Rと左側アッパーアーム23Lの一端は、車幅方向yと略平行なピボット軸24回りに回転可能である。
右側ロアアーム21Rの他端は、連結点26Rで右側ナックルアーム25Rと連結している。右側ナックルアーム25Rは斜め上方に延びている。右側ナックルアーム25Rの上端よりやや下側の連結点27Rには、右側アッパーアーム23Rの他端が連結されている。右側ナックルアーム25Rの下部には、右側車輪28Rが回転可能に支持されている。側面視において、ピボット軸22、24および連結点26R、27Rの各位置は、略平行四辺形の各頂点に対応するように配置されている。
同様に、左側ロアアーム21Lおよび左側アッパーアーム23Lには、左側ナックルアーム25Lが連動連結されており、左側ナックルアーム25Lは左側車輪28Lと支持している。ここで、左側ロアアーム21Lと左側ナックルアーム25Lとは、連結点26Lで連結している。また、左側アッパーアーム23Lと左側ナックルアーム25Lとは、連結点27Lで連結している。左側車輪28Lは車体を挟んで右側車輪28Rと対向している。
そして、右側ロアアーム21Rおよび右側アッパーアーム23Rがそれぞれピボット軸22およびピボット軸24回りに正逆方向に回転することで、右側ナックルアーム25Rは車体の略上下方向zに昇降する。これにより、右側車輪28Rは車体に対して上下動する。同様に、左側ロアアーム21L、左側アッパーアーム23L、および、左側ナックルアーム25Lが連動的に動くことで、左側車輪28Lは車体に対して上下動する。
以下では、右側車輪28Rおよび左側車輪28Lを、適宜に「左右輪28」と記載する。左右輪28は、この発明における「一対の前輪」および「一対の車輪」に相当する。
右側ロアアーム21Rは、連結点30Rで右側ショックアブソーバ31Rと連動連結している(図1参照)。左側ロアアーム21Lは、連結点30Lで左側ショックアブソーバ31Lが連動連結している(図2参照)。各ショックアブソーバ31R、31Lの他端は、それぞれバランスビーム33の両端に連動連結されている(図3、図4参照)。バランスビーム33は、その中心部の1軸回りに回転可能にメインフレーム3に支持されている。
そして、たとえば、右側ロアアーム21Rがピボット軸22回りに回転して右側車輪28Rを下降させる。この際、右側ロアアーム21Rは右側ショックアブソーバ31Rを介してバランスビーム33の一端を引き下げる。これにより、バランスビーム33は回転し、他端に連結されている左側ショックアブソーバ31Lを介して、左側ロアアーム21Lを引き上げる。これにより、左側車輪28Lは、右側車輪28Rが下降した分だけ上昇する。このように、右側車輪28Rと左側車輪28Lは、車体の略上下逆向きに等量ずつ昇降する。
右側ロアアーム21R、左側ロアアーム21L、と右側アッパーアーム23R、左側アッパーアーム23L、右側ナックルアーム25R、左側ナックルアーム25L、右側ショックアブソーバ31R、左側ショックアブソーバ31L、及び、バランスビーム33は、この発明における支持機構(特に左右輪28に対応する支持機構)に相当する。
1.2.ステアリング機構
図1、図2を参照する。上述したハンドル11の下部には、操舵リンク機構35が連動連結されている。操舵リンク機構35には、右側ステアリングロッド37Rと左側ステアリングロッド37Lとが連結されている。右側ステアリングロッド37Rの他端は、右側ナックルアーム25Rの上部に連動連結されている。左側ステアリングロッド37Lの他端は、左側ナックルアーム25Lに連動連結されている。そして、ハンドル11の操作に応じて、右側ナックルアーム25Rおよび左側ナックルアーム25Lがそれぞれその縦軸心回りに回転し、左右輪28に舵角を与える。
2.後輪に関連する構成
2.1.支持機構
図1、図2を参照する。メインフレーム3の後端下部には、車体の後部へ延びる右側リアアーム41Rと左側リアアーム41Lとが車幅方向yに並んで設けられている。右側リアアーム41R、および、左側リアアーム41Lは、それぞれ揺動軸42回りに回転可能である。なお、揺動軸42は車幅方向yと略平行である。右側リアアーム41Rの後端部には右側リアギヤケース44Rを介して右側車輪43Rが回転可能に支持されている。左側リアアーム41Lの後端部には左側リアギヤケース44Lを介して左側車輪43Lが回転可能に支持されている。右側車輪43Rと左側車輪43Lとは車体を挟む位置関係となる。
そして、右側車輪43Rは車体に対して上下動すると、右側リアアーム41Rが揺動軸42回りに正逆方向に回転する。左側車輪43Lと左側リアアーム41Lとの関係も同様である。
以下では、右側車輪43Rおよび左側車輪43Lを、適宜に「左右輪43」と記載する。左右輪43は、この発明における一対の車輪(特には、車体の後部に設けられる一対の車輪である)に相当する。
図1を参照する。メインフレーム3の後端下部であって、右側リアアーム41R、および、左側リアアーム41Lの間に当たる位置には、車体の後部に延びるキャリアビーム51が設けられている。キャリアビーム51の前端部は、メインフレーム3に固定的に連結されている。キャリアビーム51の後端部は、ショックアブソーバ55を介してメインフレーム3に連結されている。ショックアブソーバ55は路面の衝撃を吸収する。キャリアビーム51は、スタビライザー53を回転可能に保持している。
図7、図8を参照する。図7は、実施例1に係る鞍乗型車両の支持機構及び切替機構の要部を斜め後方から見た斜視図であり、図8は、同要部を側面から見た斜視図である。キャリアビーム51は、スタビライザー53を回転可能に保持している。スタビライザー53の両端には、それぞれ右側ロッド57Rと左側ロッド57Lとが連動連結されている。右側ロッド57Rの他端は、右側リアアーム41Rに連動連結されている。左側ロッド57Lの他端は、左側リアアーム41Lに連動連結されている。
そして、たとえば、右側車輪43Rの下降に伴って右側リアアーム41Rが揺動軸42回りに回転する際、右側リアアーム41Rは右側ロッド57Rを介してスタビライザー53の一端を引き下げる。これにより、スタビライザー53は回転し、他端に連結されている左側ロッド57Lを介して、左側リアアーム41Lを引き上げる。これにより、左側車輪43Lは、右側車輪43Rが下降した分だけ上昇する。このように、右側車輪43Rと左側車輪43Lは、それぞれ車体の略上下方向逆向きに昇降する。
右側リアアーム41R、左側リアアーム41L、キャリアビーム51、スタビライザー53、ショックアブソーバ55、右側ロッド57R、および、左側ロッド57Lとは、この発明における支持機構(特に左右輪43に対応する支持機構)に相当する。
2.2.駆動機構
図1、図2を参照する。エンジン17はクランクケース60を備えている。クランクケース60内には、クランクシャフトとともに、変速機が設けられている(いずれも図示省略)。エンジン17で発生した動力は、車幅方向yと略平行な変速機の出力軸に出力される(図示省略)。
この出力軸は、ベベルギヤ(図示省略)を介して左右1対のドライブシャフト61R、61Lに連結されており、出力軸からドライブシャフト61R、61Lに動力が伝達される。ドライブシャフト61Rの中間にはダブルカルダンジョイント63Rが設けられている。ダブルカルダンジョイント63Rは、その中心が上述の揺動軸42の延長上に位置するように配置されている。これにより、ドライブシャフト61Rは、その回転軸心が屈曲可能である。ドライブシャフト61Rのダブルカルダンジョイント63Rより後方の部位は、図示省略の軸受け部(図示省略)によって右側リアアーム41Rに回転可能に保持されている。これにより、ドライブシャフト61Rは右側リアアーム41Rと一体に揺動軸42回りに回転可能である。ドライブシャフト61Rの後端は右側リアギヤケース44R内に設けられるベベルギヤ(図示省略)を介して右側車輪43Rに連動連結されている。
そして、エンジン17で発生した動力は、ドライブシャフト61Rを介して右側車輪43Rに伝達され、右側車輪43Rを回転させる。ドライブシャフト61Lは、ドライブシャフト61Rと同様に構成されている。
3.切替機構に関連する構成
図9および図10を参照する。図9、図10は支持機構及び切替機構の要部の断面図である。図9は固定状態を示し、図10は可動状態を示す。切替機構71は、ソレノイド73と結合ピン部材75を備えている。
ソレノイド73はキャリアビーム51と一体に設けられている。ソレノイド73はコイルの励磁により移動する可動鉄心73aを有している。可動鉄心73aはコイルに流す電流の向きを変えることにより一軸上を双方向に移動する。本実施例1ではソレノイド73は自己保持型である。すなわち、可動鉄心73aを移動させた後は、コイルに流す電流を遮断しても可動鉄心73aの位置は保たれる。結合ピン部材75は可動鉄心73aの一端に取り付けられている。
スタビライザー53には、結合ピン部材75と凹凸結合する凹部53aが形成されている。凹部53aは、切替機構71と近接して対向する位置に配置されている。凹部53aは結合ピン部材75より若干大きく開口されている。なお、図7及び図8に示すように、凹部53aはスタビライザー53の回転軸Pから偏心した位置に形成されている。
そして、ソレノイド73が結合ピン部材75をスタビライザー53に対して前進移動させると、結合ピン部材75の先端が凹部53aに挿入され、結合ピン部材75はスタビライザー53と結合する。ここで、ソレノイド73はキャリアビーム51に一体に設けられ、キャリアビーム51はメインフレーム3に一体に設けられているので、スタビライザー53は車体(キャリアビーム51)に対して回転軸P回りに回転することが規制される。これにより、右側リアアーム41R、及び、左側リアアーム41Lは揺動軸42回りに回転することが制限され、右側車輪43Rと左側車輪43Lが車体に対して上下動することが制限される。
本明細書では、このように、右側車輪43R及び左側車輪43Lが車体に対して上下動することが制限された状態を固定状態という。但し、本実施例の構造の場合、右側リアアーム41R、及び、左側リアアーム41Lが揺動軸42回りに回転することが制限された状態、スタビライザー53が車体(キャリアビーム51)に対して回転軸P回りに回転することが規制された状態、または、結合ピン部材75がスタビライザー53と結合した状態を固定状態と呼んでも差し支え無い。あるいは、これら複数の状態をまとめた鞍乗型車両1の状態を固定状態と呼んでも差し支え無い。固定状態では、右側車輪43R、及び、左側車輪43Lを路面に接触させた状態で車体は傾斜不能となり、自立する。
この固定状態では、車体の上下方向zが略鉛直であることが好ましい。換言すれば、右側車輪43Rと左側車輪43Lが車体に対して略同じ高さ位置のときに、結合ピン部材75と凹部53aが凹凸結合するように、結合ピン部材75と凹部53aの各位置を選択設計することが好ましい。
また、ソレノイド73が結合ピン部材75を後退させると、結合ピン部材75は凹部53aから引き抜かれ、スタビライザー53から離脱する。これにより、スタビライザー53は車体(キャリアビーム51)に対して回転軸P回りに回転することが許容される。この結果、右側車輪43Rと左側車輪43Lは車体に対して上下動することが許容される。
本明細書では、このように、右側車輪43R及び左側車輪43Lが車体に対して上下動することが許容された状態を可動状態という。但し、本実施例の構造の場合、右側リアアーム41R、及び、左側リアアーム41Lの状態、スタビライザー53の状態、または、結合ピン部材75の状態、或いは、これら複数の状態をまとめた鞍乗型車両1の状態を可動状態と呼んでも差し支え無い。可動状態では、右側車輪43R、及び、左側車輪43Lを路面に接触させた状態で車体は傾斜可能である。
以下では、図7に示すように、スタビライザー53から離脱している結合ピン部材75の位置を離脱位置と呼ぶ。また、図8に示すように、スタビライザー53と連結している結合ピン部材75の位置を結合位置と呼ぶ。
4.検出部
鞍乗型車両1には、着座センサ81と、車速センサ83と、ニュートラルスイッチ85と、状態センサ87と、ブレーキセンサ89とを備えている。
図1、図2に示すように、着座センサ81は、シート15内に設けられ、ライダーがシート15に座っているか否かを検出する。着座センサ81は、たとえば、圧電素子などの圧力センサによって構成されている。着座センサ81は、この発明における着座検出部に相当する。
図2に示すように、車速センサ83は車速を検出する。車速センサ83は、この発明における車速検出部に相当する。
ニュートラルスイッチ85は、変速機のシフト位置がニュートラルレンジにあるか否かを検出する。本明細書では、ニュートラルレンジは、ニュートラルのほか、パーキングなど鞍乗型車両1が移動できない(左右輪43に動力を伝達できない)シフト位置をいう。また、ニュートラルレンジ以外は、1速、2速など鞍乗型車両1が移動可能な(左右輪43に動力を伝達可能な)シフト位置であるドライブレンジとなる。したがって、ニュートラルスイッチ85は、変速機のシフト位置がドライブレンジにあるか否かを検出しているとも言うことができる。ニュートラルスイッチ85は、クランクケース60内に設けられている。ニュートラルスイッチ85は、たとえば、マイクロスイッチなどによって構成されている。ニュートラルスイッチ85は、この発明におけるシフト検出部に相当する。
図9、図10に示すように、状態センサ87は、ソレノイド73の後端側、すなわち、結合ピン部材75が設けられている一方側とは反対側に設けられている。状態センサ87は、板部材87aとレバー87bとマイクロスイッチ87cとを備えている。板部材87aは可動鉄心73aの後端部に固定されており、レバー87bを押し下げ可能な形状を有している。そして、図7に示すように、結合ピン部材75が離脱位置にあるとき、板部材87aはレバー87bを押し下げる。また、結合ピン部材75が離脱位置から離れると、板部材87aはレバー87bから離れる。マイクロスイッチ87cは、レバー87bからの入力の有無を検知する。このように構成される状態センサ87は、結合ピン部材75が離脱位置から離れると、結合ピン部材75が結合位置に到達する前に、結合ピン部材75が離脱位置にないことを検出する。
ブレーキセンサ89は、ライダーによるブレーキ操作が行われているか否かを検出する。ブレーキセンサ89は、この発明におけるブレーキ検出部に相当する。
5.操作部
図5、図6に示すように、鞍乗型車両1のハンドル11には、状態操作部91とエンジンストップスイッチ93とが設けられている。状態操作部91は、ライダーから固定状態及び可動状態を指定する命令を受け付ける。そして、状態操作部91は受け付けた命令を後述する制御部101に与える。
エンジンストップスイッチ93は、ライダーの操作を受け付けて、エンジン17を停止させる。図11は、エンジンストップスイッチ93とエンジン17の点火電気系統の回路図である。図示するように、エンジン17の点火電気系統は、点火用発電コイル94、点火時期制御用発電コイル95、CDI(Capacitor Discharge Ignition)点火ユニット96、及び、イグニッションコイル97、点火プラグ98を含んで構成されている。また、CDI点火ユニット96は、点火停止回路96a、及び、点火時期制御回路96bを含んで構成されている。点火停止回路96aは、エンジンストップスイッチ93に接続されており、エンジンストップスイッチ93の操作によって点火プラグ98への給電を絶つように構成されている。これにより、エンジン17が停止する。
6.表示部
ハンドル11の直ぐ後方には、表示部99が設けられている。表示部99は、各種の情報を表示する。
7.制御部
図12は、鞍乗型車両1が備える制御系の概略構成を示すブロック図である。制御部101には、着座センサ81と、車速センサ83と、ニュートラルスイッチ85と、状態センサ87と、ブレーキセンサ89との各検出結果が入力される。また、制御部101には、状態操作部91が受け付けた命令が入力される。
制御部101は、ソレノイド73を制御して結合ピン部材75を出退移動させる。また、制御部101は、CDI点火ユニット96の点火停止回路96aを制御してエンジン17を停止させる。さらに、制御部101は、表示部99に各種情報を表示させる。制御部101は、各種処理を実行する中央演算処理装置(CPU)や記憶媒体、あるいは、マイクロコンピュータとによって実現されている。記憶媒体には、各検出部の検出結果に基づいて各種判定をするための閾値や、車速センサ83の検出結果と比較するための所定速度vの値などが予め記憶されている。所定速度vとしては、10[km/h]が例示される。ただし、これに限定されず、所定速度vとして、3[km/h]、5[km/h]、または、15[km/h]など適宜な値が選択、設定される。
8.動作説明
次に、実施例に係る鞍乗型車両1を動作例について、駐車/保管時と乗車時とに分けて説明する。
8.1 駐車/保管時
ライダーは、メインキーをOFFにした後、状態操作部91を操作して固定状態を指定する。これにより、状態操作部91は受け付けた命令を制御部101に与える。制御部101は、切替機構71を制御して左右輪43を固定状態にさせる。具体的には、ソレノイド73に電流を供給し、可動鉄心73aによって結合ピン部材75を結合位置に位置させる。なお、結合ピン部材75を結合位置に位置させた後は、ソレノイド73への電流供給を停止する。これにより、スタビライザー53が車体(キャリアビーム51)に対して回転することが制限され、左右輪43が車体に対して上下動することが制限されて、固定状態となる。車体は、左右輪28及び左右輪43によって支持されて、路面に自立する。
8.2 乗車時
図13を参照して、乗車時の動作例について、特に制御部101による制御を中心に説明する。図13は、鞍乗型車両1の動作順序を示すフローチャートである。以下では、ドライバーによりメインキーが既にONにされているものとして説明する。なお、メインキーをONにした時点では、固定状態、可動状態のいずれの場合もあり得る。
<ステップS1> ライダーが着座しているか?
制御部101は、着座センサ81の検出結果を読み込む。そして、ライダーがシート15に座っているか否かを判断する。その結果、ライダーが着座していると判断したときはステップS3に進む。それ以外の場合、すなわち、ライダーが着座していないと判断したときは、ステップS2に進む。
なお、このステップS1、及び、後続のステップS2乃至ステップS13の一連の処理を実行する周期としては、任意の時間が選択される。たとえば、100[msec]間隔で一連の処理を行うようにしてもよい。
<ステップS2> 可動状態を指定する命令を無視
制御部101は、状態操作部91から可動状態を指定する命令が入力されても、可動状態に変更する制御、すなわち、結合ピン部材75を結合位置に突出させる制御を行わない。換言すれば、制御部101は、状態操作部91から入力される可動状態を指定する命令を無視する(受け付けない)。そして、ステップS1に戻る。
<ステップS3> ブレーキ操作が行われているか?
制御部101は、ブレーキセンサ89の検出結果を読み込む。そして、ブレーキ操作が行われているか否かを判断する。その結果、ブレーキ操作が行われていると判断したときはステップS6に進む。それ以外の場合はステップS4に進む。
<ステップS4> 固定状態を指定する命令を無視
制御部101は、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、固定状態に変更する制御、すなわち、結合ピン部材75を離脱位置に後退させる制御を行わない。換言すれば、制御部101は、状態操作部91から入力される固定状態を指定する命令を無視する(受け付けない)。そして、ステップS5に進む。
<ステップS5> 所定速度v以上か?
制御部101は、車速センサ83の検出結果を読み込む。そして、車速が所定速度v以上であるか、所定速度v以上であるかを判断する。その結果、車速が所定速度v以上であると判断したときは、ステップS7に進む。それ以外の場合はステップS1に戻る。
<ステップS6> 所定速度v以上か?
制御部101は、ステップS5と同様に、車速センサ83の検出結果を読み込み、車速と所定速度vとを比較する。その結果、車速が所定速度v以上であると判断したときは、ステップS7に進む。それ以外の場合はステップS9に進む。
<ステップS7> 可動状態にさせる
制御部101は、切替機構71を制御して左右輪43を可動状態にさせる。具体的には、ソレノイド73に電流を供給し、可動鉄心73aによって結合ピン部材75を離脱位置に位置させる。結合ピン部材75を離脱位置に位置させた後は、ソレノイド73への電流供給を停止する。ソレノイド73は自己保持型であるので、電流供給が停止された後も結合ピン部材75は離脱位置に維持される。
これにより、スタビライザー53は車体(キャリアビーム51)に対して回転軸P回りに回転することが許容され、右側リアアーム41Rと左側リアアーム41Lは揺動軸42回りに回転することが許容され、右側車輪43Rと左側車輪43Lは車体に対して上下動することが許容される。すなわち、右側車輪43R及び左側車輪43Lは可動状態となり、右側車輪43Rおよび左側車輪43Lを路面に接触させた状態で車体は傾斜可能となる。
なお、本ステップS7の処理は、結合ピン部材75が既に離脱位置に位置し、可動状態である場合であっても実行される。そして、ステップS8に進む。
<ステップS8> 固定状態を指定する命令を無視
制御部101は、ステップS4と略同じ処理を行う。すなわち、制御部101は、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、固定状態に変更する制御を行わない。そして、ステップS1に戻る。
<ステップS9> 状態操作部の命令通りに制御
制御部101は、状態操作部91から命令が入力されると、その命令通りに切替機構71を制御する。具体的には固定状態を指定する命令が入力されたときは、結合ピン部材75を結合位置に前進させ、右側車輪43R及び左側車輪43Lを固定状態にさせる。また、可動状態を指定する命令が入力されたときは、結合ピン部材75を離脱位置に後退させ、右側車輪43R及び左側車輪43Lを可動状態にさせる。そして、ステップS10に進む。
<ステップS10> 固定状態か?
制御部101は、状態センサ87の検出結果を読み込む。そして、結合ピン部材75が離脱位置にあるか否かを判断する。具体的には、結合ピン部材75が離脱位置にない場合は、左右輪43が固定状態であると判定する。また、結合ピン部材75が離脱位置にある場合は左右輪43が固定状態でないと判定する。ここで、状態センサ87の構成上、結合ピン部材75が離脱位置にない場合であっても左右輪43が可動状態である可能性があるが、本ステップS10の判定では、結合ピン部材75が離脱位置になければ固定状態とみなす。
その結果、固定状態であると判定したときは、制御部101は表示部99に固定状態であること表示させ、ライダーに固定状態であることを報知する。そして、ステップS12に進む。それ以外の場合は、ステップS11に進む。
<ステップS11> 所定速度v以上か?
制御部101は、新たに車速センサ83の検出結果を読み込んで、改めて車速が所定速度v以上であるか判断する。その結果、車速が所定速度v以上であると判断したときは、ステップS7に進む。それ以外の場合はステップS1に戻る。
<ステップS12> ドライブレンジか?
制御部101は、状態センサ87の検出結果を読み込む。そして、変速機のシフト位置がニュートラルレンジにない場合は「ドライブレンジである」と判定し、ニュートラルレンジにある場合は、「ドライブレンジでない」と判定する。その結果、ドライブレンジであると判定したときはステップS13に進む。それ以外は、ステップS1に戻る。
<ステップS13> エンジンを停止させる
制御部101は、エンジン17を停止させる。本明細書では、エンジン17を停止させる制御を、適宜に「停止制御」と記載する。停止制御は、具体的には、CDI点火ユニット96の点火停止回路96aを制御してエンジン17を停止させる。これにより、左右輪43を回転駆動するための動力が、エンジン17で発生されなくなる。そして、ステップS1に戻る。
このように、実施例1に係る鞍乗型車両1によれば、可動状態と固定状態とに切り替える切替機構71を備えているので、車体が傾斜可能な状態と、車体が自立可能な状態に切り替えることができる。また、切替機構71は、スタビライザー53に連結(凹凸結合)して固定状態にする結合ピン部材75と、この結合ピン部材75を駆動するソレノイド73とを備えているので、極めて安定的に固定状態を維持することができる。よって、固定状態に切り替えることで鞍乗型車両1を好適に駐車、保管することができる。
また、ソレノイド73は自己保持型であるので、一旦結合ピン部材75を結合位置に駆動した後は、電流供給を遮断しても結合ピン部材75を結合位置に維持することができる。よって、駐車、保管時の電力消費を抑制することができる。
また、鞍乗型車両1は状態操作部91を備えているので、ライダーは固定状態と可動状態を選択することができる。
さらに、ライダーが着座していないときは、可動状態を指定する命令を状態操作部91が受け付けても、制御部101はこの命令を無視する(ステップS1、S2)。これにより、着座する前のライダーに車体を支持する負担をかけないようにすることができる。
また、鞍乗型車両1は、状態センサ87とニュートラルスイッチ85とを備え、制御部101は、固定状態であり、かつ、シフト位置がドライブレンジにある場合は停止制御を行う(ステップS10、S12、S13)。これにより、右側車輪43R及び左側車輪43Lが固定状態のままで、鞍乗型車両1が前進または発進することを好適に防止できる。また、ステップS13の停止制御では、エンジン17の点火電気系統を遮断させるので、制御部101はエンジン17を速やかに停止させることができる。また、制御部101は、エンジンストップスイッチ93によって作動される点火停止回路96aを制御してエンジン17の点火電気系統を遮断するので、専ら停止制御を行うために新たな回路を設けることを要せず、構成が複雑化することを防止できる。
また、停止制御は、ブレーキ操作が行われており、かつ、車速が所定速度v未満であることを条件に行われる(ステップS3、S6)。すなわち、停止制御は、鞍乗型車両1は停車しているか、極めてゆっくりと動いているときに行われるので、停止制御によって鞍乗型車両1の車速が大きく減速するおそれがない。さらに、停止制御は、ライダーが着座していることを条件に行われるので(ステップS1)、円滑に停止制御を行うことができる。
また、鞍乗型車両1は表示部99を備え、制御部101は状態センサ87の検出結果に基づき左右輪43が固定状態であると判定したとき、表示部99に左右輪43が固定状態であることを表示させる(ステップS10)。よって、ライダーは左右輪43が固定状態であることを的確に把握することができる。
また、鞍乗型車両1は車速センサ83を備え、制御部101は、車速が所定速度v以上である場合は切替機構71を制御して左右輪43を可動状態にさせる(ステップS5、S6、S11、S7)。これにより、車速が所定速度v以上のときは、車体は傾斜可能となり、鞍乗型車両1は車体を傾斜させて旋回することができる。よって、ライダーは快適に走行することができる。また、ステップS1乃至ステップS13の一連の処理中に、車速が所定以上であるか否かの判断を複数回、別個独立して行う(ステップS5、S6、S11)。このため、一連の処理を実行する周期に比べてきめ細かく車速の変化を検出でき、車速に応じて処理内容を速やかに変更することができる。
また、制御部101は、車速が所定速度v以上のときは、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、固定状態に変更する制御を行わない(ステップS8)。これにより、状態操作部91から制御部101に入力される命令に関わらず、ステップS7で設定された可動状態が維持される。このように、仮にライダーが状態操作部91で固定状態を指定した場合であっても、車速が所定速度v以上のときは固定状態になることを好適に防止できる。
また、鞍乗型車両1はブレーキセンサ89を備え、制御部101はライダーがシート15に座っており、車速が所定速度v未満であり、かつ、ブレーキが操作されている場合に、状態操作部91から入力される命令どおりに切替機構71を制御する(ステップS1、S3、S6、S9)。ライダーが着座しているときは、ライダーは路面に足を着いて車体を支持することができ、また、車速が所定速度v未満であり、かつ、ブレーキが操作されているときは、鞍乗型車両1は停車しているか、極めてゆっくりと動いている状態である。このような場合では、ライダーは、状態操作部91を操作することによって固定状態と可動状態とを選択することができる。たとえば、ライダーは発進する際に固定状態から可動状態に切り替えることができる。また、たとえば、ライダーは停車したり駐車する際に可動状態から固定状態に切り替えることができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。実施例2は、ブレーキ操作の有無に関係なく停止制御を行うこと等の特徴を有する鞍乗型車両1である。この実施例2の鞍乗型車両1の構成は実施例1と略同様であり、また、実施例2の駐車/保管時の動作例も実施例1と略同様である。よって、実施例2に係る鞍乗型車両1の構成等については説明を省略して、実施例2に係る鞍乗型車両1の乗車時の動作例について説明する。なお、実施例1と同様の処理は適宜簡略に説明する。
図14を参照する。図14は、実施例2に係る鞍乗型車両1の動作順序を示すフローチャートである。以下では、ドライバーによりメインキーが既にONにされているものとして説明する。
<ステップS21> ライダーが着座しているか?
制御部101は、着座センサ81の検出結果に基づき、ライダーが着座している否かを判断し、ライダーが着座していると判断したときはステップS23に進む。それ以外の場合は、ステップS22に進む。
<ステップS22> 固定状態にさせる
制御部101は、切替機構71を制御して右側車輪43R及び左側車輪43Lを固定状態にさせる。これにより、車体は自立する。そして、ステップS24に進む。
<ステップS23> 状態操作部からの命令を無視
制御部101は、状態操作部91からの命令を無視する。すなわち、命令の内容が可動状態を指定するものであっても、固定状態を指定するものであっても、状態操作部91から入力される命令を制御部101は受け付けない。そして、ステップS1に戻る。
<ステップS24> 所定速度v以上か?
制御部101は、車速センサ83の検出結果に基づいて車速が所定速以上であるか否かを判断し、車速が所定速度v以上であると判断したときは、ステップS25に進む。それ以外の場合はステップS27に進む。
<ステップS25> 可動状態にさせる
制御部101は、切替機構71を制御して右側車輪43R及び左側車輪43Lを可動状態にさせる。これにより、車体は傾斜可能となり、鞍乗型車両1は車体を傾斜させて旋回可能となる。
<ステップS26> 状態操作部91からの命令を無視
制御部101は状態操作部91から入力される命令を受け付けない。そして、ステップS21に戻る。
<ステップS27> 固定状態か?
制御部101は、状態センサ87の検出結果に基づき、右側車輪43R及び左側車輪43Lが固定状態か否かを判定する。その結果、固定状態であると判定したときは、制御部101は表示部99に固定状態であることを表示させ、ステップS28に進む。それ以外の場合は、表示部99に可動状態であることを表示させ、ステップS30に進む。
<ステップS28> ドライブレンジか?
制御部101は、状態センサ87の検出結果に基づき、変速機のシフト位置がドライブレンジであるか否かを判定する。その結果、ドライブレンジであると判定したときはステップS29に進む。それ以外は、ステップS30に進む。
<ステップS29> エンジンを停止させる
制御部101は、エンジン17を停止させる停止制御を行う。そして、ステップS21に戻る。
<ステップS30> ブレーキ操作が行われているか?
制御部101は、ブレーキセンサ89の検出結果に基づき、ブレーキ操作が行われているか否かを判断する。その結果、ブレーキ操作が行われていると判断したときはステップS32に進む。それ以外の場合はステップS31に進む。
<ステップS31> 状態操作部91からの命令を無視
制御部101は状態操作部91から入力される命令を受け付けない。そして、ステップS21に戻る。
<ステップS32> 状態操作部の命令通りに制御
制御部101は、状態操作部91から入力される命令通りに切替機構71を制御して、固定状態と可動状態とに切り替える。そして、ステップS21に戻る。
このように、実施例2に係る鞍乗型車両1によれば、ライダーがシート15に座っていないときは、切替機構71を制御して固定状態にさせる(ステップS21、S22)。これにより、ライダーが着座していないときは、車体を自立させた状態に維持することができる。この場合、制御部101は状態操作部91からの命令を受け付けないので(ステップS23)、状態操作部91から入力される命令に関わらず、確実に右側車輪43R及び左側車輪43Lを固定状態にすることができる。
また、制御部101は、車速センサ83の検出結果に基づいて、車速が所定速度v未満であることを条件に停止制御を行う(ステップS24、S29)。すなわち、固定状態であり、シフト位置がドライブレンジにあり、かつ、車速が所定速度v未満である場合、ブレーキ操作の有無に関係なく停止制御を行うので、鞍乗型車両1が固定で前進または発進することをより確実に防止できる。
また、制御部101は固定状態であるか否かの判定結果に応じて、表示部99に固定状態及び可動状態をそれぞれ表示させる(ステップS27)。よって、ライダーは固定状態であることに加え、可動状態であることも的確に把握することができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例3を説明する。実施例3は、ブレーキ操作の検出結果を用いずに切替機構71等を制御すること等の特徴を有する鞍乗型車両1である。実施例3の鞍乗型車両1の構成は、制御部101を除いて実施例1と略同様である。
制御部101の記憶媒体には、所定速度vのほかに、所定速度vの値よりも小さい所定微小速度vmの値が予め記憶されている。所定微小速度vmとしては、3[km/h]などの値が例示される。ただし、これに限定されず、所定微小速度vmは、0[km/h]、1[km/h]、5[km/h]、または、10[km/h]など、所定速度vより小さい範囲で適宜に選択、設定される。
次に、実施例3の動作を説明する。ここで、実施例3の駐車/保管時の動作例は、実施例1と略同様であるので省略し、実施例3の乗車時の動作例について説明する。なお、実施例1と同様の処理は適宜簡略に説明する。
図13を参照する。図13、実施例3に係る鞍乗型車両1の動作順序を示すフローチャートである。以下では、ドライバーによりメインキーが既にONにされているものとして説明する。
<ステップS41> ライダーが着座しているか?
制御部101は、着座センサ81の検出結果に基づき、ライダーが着座している否かを判断し、ライダーが着座していると判断したときはステップS43に進む。それ以外の場合は、ステップS42に進む。
<ステップS42> 可動状態を指定する命令を無視
制御部101は、状態操作部91から可動状態を指定する命令が入力されても、可動状態に変更する制御行わない。そして、ステップS1に戻る。
<ステップS43> 所定速度v以上か?
制御部101は、車速センサ83の検出結果に基づき、車速が所定速以上であるかを判断する。その結果、車速が所定速度v以上であると判断したときは、ステップS44に進む。それ以外の場合はステップS47に進む。
<ステップS44> 固定状態か?
制御部101は、状態センサ87の検出結果に基づき、固定状態であると判定する。その結果、固定状態であると判定したときは、ステップS45に進む。それ以外の場合は、ステップS46に進む。
<ステップS45> 可動状態にさせる
制御部101は、切替機構71を制御して可動状態にさせる。そして、ステップS46に進む。
<ステップS46> 固定状態を指定する命令を無視
制御部101は、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、固定状態に変更する制御を行わない。そして、ステップS41に戻る。
<ステップS47> 車速が実質零か?
制御部101は、車速センサ83の検出結果を読み込む。そして、車速が所定微小速度vm以下未満であるか否かを判断する。その結果、車速が所定微小速度vm未満であるときは、車速が実質零と判定し、ステップS49に進む。また、それ以外の場合、すなわち、車速が所定微小速度vm以上である場合は、ステップS48に進む。
<ステップS48> 状態操作部の命令通りに制御
制御部101は、状態操作部91から命令が入力されると、その命令通りに切替機構71を制御する。そして、ステップS41に戻る。
<ステップS49> 固定状態か?
制御部101は、状態センサ87の検出結果に基づき、固定状態か否かを判定する。その結果、固定状態であると判定したときは、ステップS50に進む。それ以外の場合は、ステップS51に進む。
<ステップS50> ドライブレンジか?
制御部101は、状態センサ87の検出結果に基づき、変速機のシフト位置がドライブレンジであるか否かを判定する。その結果、ドライブレンジであると判定したときはステップS52に進む。それ以外は、ステップS51に進む。
<ステップS51> 固定状態を指定する命令を無視
制御部101は、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、固定状態に変更する制御を行わない。そして、ステップS41に戻る。
<ステップS52> エンジンを停止させる
制御部101は、エンジン17を停止させる停止制御を行う。そして、ステップS41に戻る。
このように、実施例3に係る鞍乗型車両1によれば、ステップS45において右側車輪43R及び左側車輪43Lを可動状態にさせる前に、ステップS44で右側車輪43R及び左側車輪43Lが固定状態か否かを判定する。この結果、固定状態でない場合はステップS45の処理を省略するので、ソレノイド73に必要以上に電流を供給することを防止することができる。また、結合ピン部材75が離脱位置にないときは、ステップS44において固定状態であると判定され、ステップS45において結合ピン部材75を離脱位置に後退させるので、仮に、振動や誤作動で結合ピン部材75が離脱位置から離れても、迅速かつ確実に結合ピン部材75を離脱位置に戻すことができる。
また、制御部101は車速センサ83の検出結果と、予め設定されている所定微小速度vmとに基づいて、車速が実質零であるか否かを判定する(ステップS47)。この処理を行うことにより、ブレーキセンサ89の検出結果に基づいてブレーキ操作が行われているか否かを判断する処理(例えば、実施例1のステップS3の処理)を行わないように構成してもよい。
また、停止制御は、車速が実質零であることを条件に行われる(ステップS47、S52)。よって、停止制御を行っても、鞍乗型車両1の車速をほとんど変化しないので、極めて円滑に停止制御を行うことができる。
また、制御部101は、車速センサ83の検出結果に基づいて、車速が所定速度v未満であることを条件に停止制御を行う(ステップS24、S27)。すなわち、ブレーキ操作が行われていない場合であっても、固定状態であり、かつ、シフト位置がドライブレンジにある場合は停止制御を行うので、右側車輪43R及び左側車輪43Lが固定状態で鞍乗型車両1が前進または発進することをより確実に防止できる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例4を説明する。実施例4は、シフト位置がドライブレンジにない場合であっても停止制御を行うこと等の特徴を有する鞍乗型車両1である。実施例4の鞍乗型車両1の構成は実施例1と略同様であり、また、実施例4の駐車/保管時の動作例も実施例1と略同様であるが、実施例4の乗車時の動作例が実施例1と異なる。よって、実施例4に係る鞍乗型車両1の構成等については説明を省略して、実施例4に係る鞍乗型車両1の乗車時の動作例について説明する。なお、実施例1と同様の処理は適宜簡略に説明する。
図14を参照する。図14は、実施例4に係る鞍乗型車両1の動作順序を示すフローチャートである。以下では、ドライバーによりメインキーが既にONにされているものとして説明する。
<ステップS61、S62>
制御部101は、着座センサ81の検出結果に基づきライダーが着座していないと判断したときは、状態操作部91から可動状態を指定する命令が入力されても可動状態に変更する制御を行うことなく、再びステップS61に戻る。また、制御部101は、ライダーが着座していると判断したときはステップS63に進む。
<ステップS63〜S66>
制御部101は、状態センサ87、車速センサ83、及び、ニュートラルスイッチ85の各検出結果に基づき、車速が所定速度v以上であり、かつ、固定状態である場合、及び、シフト位置がドライブレンジにあり、かつ、固定状態である場合は、いずれも停止制御を行い、ステップS61に戻る。それらの場合以外では、ステップS67に進む。
<ステップS67〜S69>
制御部101は、車速センサ83の検出結果に基づき車速が所定速度v以上であるときは、切替機構71を制御して側車輪43R及び左側車輪43Lを可動状態にさせるとともに、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、この命令を無視する。そして、ステップS61に戻る。
<ステップS70〜S72>
制御部101は、ブレーキセンサ89の検出結果に基づきブレーキ操作が行われている場合、状態操作部91から命令が入力されると、その命令通りに切替機構71を制御し、ステップS61に戻る。また、制御部101は、ブレーキ操作が行われていない場合、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、固定状態に変更する制御を行うことなく、ステップS61に戻る。
このように、実施例4に係る鞍乗型車両1によれば、停止制御は、右側車輪43R及び左側車輪43Lが固定状態のままシフト位置がドライブレンジに入ると、一律に停止制御を行うので、左右輪43が固定状態で鞍乗型車両1が走行することを確実に防止することができる。また、停止制御は、左右輪43が固定状態のまま車速が所定速度v以上になっても、一律に停止制御を行うので、左右輪43が固定状態のときに鞍乗型車両1が発進、前進することを確実に防止することができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例5を説明する。実施例5は、ニュートラルスイッチ85の検出結果を用いずに切替機構71等を制御すること等の特徴を有する鞍乗型車両1である。実施例5の鞍乗型車両1の構成は実施例1と略同様であり、また、実施例5の駐車/保管時の動作例も実施例1と略同様であるが、実施例5の乗車時の動作例が実施例1と異なる。よって、実施例5に係る鞍乗型車両1の構成等については説明を省略して、実施例5に係る鞍乗型車両1の乗車時の動作例について説明する。なお、実施例1と同様の処理は適宜簡略に説明する。
図15を参照する。図15は、実施例5に係る鞍乗型車両1の動作順序を示すフローチャートである。以下では、ドライバーによりメインキーが既にONにされているものとして説明する。
<ステップS81、S82>
制御部101は、着座センサ81の検出結果に基づきライダーが着座していないと判断したときは、状態操作部91から可動状態を指定する命令が入力されても可動状態に変更する制御を行うことなく、再びステップS61に戻る。また、制御部101は、ライダーが着座していると判断したときはステップS63に進む。
<ステップS83〜S86>
制御部101は、車速センサ83、及び、ブレーキセンサ89の各検出結果に基づき車速が所定速度v未満であり、かつ、ブレーキ操作が行われている場合、状態操作部91から命令が入力されると、その命令通りに切替機構71を制御し、ステップS81に戻る。また、制御部101は、車速が所定速度v未満であり、かつ、ブレーキ操作が行われていない場合、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、この命令を無視して、ステップS81に戻る。さらに、車速が所定速度v以上である場合は、ステップS87に進む。
<ステップS87〜S91>
制御部101は、状態センサ87の検出結果に基づき固定状態でない場合、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、この命令を無視して、ステップS81に戻る(ステップS90)。また、制御部101は、固定状態である場合、可動状態に切り替える制御を行い、その後、新たに状態センサ87の検出結果を取得し、再び固定状態であるか否かを判断する(ステップS88、S89)。
ステップS89において固定状態でないと判断した場合、すなわち、可動状態に切り替わった場合、状態操作部91から固定状態を指定する命令が入力されても、この命令を無視して、ステップS81に戻る(ステップS90)。また、ステップS89において固定状態であると判断した場合、すなわち、ステップS88において可動状態に切り替える制御を実行したにも関わらず可動状態に切り替わっていない場合、停止制御を行い、ステップS81に戻る(ステップS91)。
この実施例5に係る鞍乗型車両1のように、車速が所定速度v以上であり、かつ、固定状態の場合に停止制御(S83、S87、S91、S92)を行うのみであり、固定状態であり、かつ、シフト位置がドライブレンジにある場合に停止制御を行わないように構成してもよい。このため、制御部101は、ニュートラルスイッチ85の検出結果に基づいてシフト位置がドライブレンジにあるか否かを判定する処理を省略することができる。
また、制御部101は、車速センサ83、ニュートラルスイッチ85、及び、状態センサ87の各検出結果に基づいて、車速が所定速度v以上であり、固定状態であり、かつ、前記シフト位置がドライブレンジにある場合、停止制御に先立って、切替機構71を制御して左右輪43を可動状態にさせる(ステップS88)。これにより、エンジン17を停止させることなく、可動状態に切り替えて鞍乗型車両1の走行を継続することができる。以下では、ステップS88の処理を、特に「状態変更制御」という。
また、制御部101は、状態センサ87の検出結果に基づいて状態変更制御を行って可動状態に切り替わったか否かを判定し(ステップS89)、可動状態に切り替わらないときに初めて停止制御を行う(ステップS91)。これにより、左右輪43が固定状態で鞍乗型車両1が走行することを確実に回避することができる。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した各実施例では、ソレノイド73は自己保持型であったが、これに限られない。少なくとも結合ピン部材75を結合位置で維持できれば、自己保持型で無くてもよい。
(2)上述した各実施例では、状態センサ87は結合ピン部材75が離脱位置に位置しているか否かを検出するものであったが、これに限られない。たとえば、結合ピン部材75が結合位置に位置しているか否かを検出するように状態センサ87を変更してもよい。また、離脱位置、及び、結合位置の双方で結合ピン部材75の有無を検出するように状態センサ87を変更してもよい。
(3)上述した各実施例では、制御部101は、左右輪43が固定状態であることや可動状態であることを表示部99に表示させていたが、これに限られない。たとえば、状態センサ87はその検出結果を直接、表示部99に与え、表示部99は状態センサ87から入力された検出結果に基づいて、固定状態であること等を表示するように構成してもよい。
(4)上述した各実施例では、ブレーキセンサ89が検出するブレーキ操作は、ライダーがブレーキレバーを握る操作であってもよいし、ライダーがブレーキペダルを踏む操作であってもよいし、それら両方であってもよい。
(5)上述した各実施例では、車速センサ83が検出する車速は、左右輪28の車輪側であってもよいし、左右輪43の車輪であってもよいし、それら両方であってもよい。
(6)上述した各実施例では、鞍乗型車両1はニュートラルスイッチ85を備えていたが、これに限られない。シフト位置がニュートラル、パーキング、1速、2速等のいずれにあるかを検出するギヤポジションセンサに変更してもよい。ギヤポジションセンサによっても、好適にシフト位置がドライブレンジにあるか否かを検出することができる。
(7)上述した各実施例では、停止制御は、エンジンストップスイッチ93が作動させる点火停止回路96aを制御することによって、エンジン17の点火電気系統を遮断する制御であったが、これに限られない。たとえば、点火停止回路96aとは別個に、専ら制御部101によってエンジン17の点火電気系統を遮断するための回路を備え、この回路を制御して停止制御をおこなってもよい。また、停止制御を、エンジン17への燃料供給を停止させる制御に変更してもよい。
(8)上述した各実施例では、表示部99はライダーに情報を伝達するものであったが、これに限られない。たとえば、鞍乗型車両1の周囲の車両または人に情達する表示部に変更してもよい。
(9)上述した各実施例では、切替機構71はスタビライザー53と結合可能であったが、これに限られない。たとえば、右側リアアーム41R、及び、左側リアアーム41Lの少なくともいずれかと結合・離脱して、固定状態と可動状態とに切り替えるように、切替機構71を変更してもよい。あるいは、左右輪28に対応して設けられる右側ロアアーム21R等の右側支持機構、左側ロアアーム21L等の左側支持機構、バランスビーム33等のバランサ機構の少なくともいずれかと結合・離脱して、固定状態と可動状態とに切り替えるように、切替機構71を変更してもよい。
(10)上述した各実施例において、車体の前部および後部に左右輪28、43を備えた四輪車両であったが、前部または後部のいずれかを一輪とする三輪車両に変更してもよい。
(11)上述した各実施例および上記(1)から(10)で説明した各変形実施例については、さらに各構成を他の変形実施例の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
1 … 鞍乗型車両
3 … メインフレーム
11 … ハンドル
15 … シート
17 … エンジン
28 … 左右輪
43 … 左右輪
60 … クランクケース
71 … 切替機構
73 … ソレノイド
75 … 結合ピン部材
81 … 着座センサ
83 … 車速センサ
85 … ニュートラルスイッチ
87 … 状態センサ
89 … ブレーキセンサ
91 …状態操作部
96a … 点火停止回路
99 … エンジンストップスイッチ
101 … 制御部
v … 所定速度

Claims (15)

  1. 車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、
    車体を挟んで設けられた少なくとも一対の車輪を、車体に対して上下動可能に支持する支持機構と、
    前記一対の車輪の上下動が許容された可動状態と、前記一対の車輪の上下動が制限された固定状態とに切り替える切替機構と、
    前記切替機構を制御する制御部と、
    を備え、
    前記切替機構は、
    前記支持機構と結合することによって車体に対する前記支持機構の移動を規制して固定状態にし、かつ、前記支持機構から離脱することによって車体に対する前記支持機構の移動を許容して可動状態にする結合ピン部材と、
    車体に固定的に設けられ、前記結合ピン部材を駆動して、前記結合ピン部材と前記支持機構を結合、離脱させるソレノイドと、
    を備えている鞍乗型車両。
  2. 請求項1に記載の鞍乗型車両において、
    ライダーがシートに座っていることを検出する着座検出部と、
    ライダーから固定状態及び可動状態を指定する命令を受け付ける状態操作部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記着座検出部の検出結果に基づいてライダーがシートに座っていないときは、前記状態操作部から可動状態を指定する命令が入力されても、前記切替機構に対して可動状態に切り替える制御を行わない鞍乗型車両。
  3. 請求項2に記載の鞍乗型車両において、
    前記着座検出部の検出結果に基づいてライダーがシートに座っていないときは、前記状態操作部から入力される命令に関わらず、前記切替機構を制御して固定状態にさせる鞍乗型車両。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の鞍乗型車両であって、
    固定状態及び可動状態のいずれであるかを検出する状態検出部と、
    変速機のシフト位置がドライブレンジにあるか否かを検出するシフト検出部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記状態検出部、及び、前記シフト検出部の各検出結果に基づいて、固定状態であり、かつ、前記シフト位置がドライブレンジにある場合はエンジンを停止させる停止制御を行う鞍乗型車両。
  5. 請求項4に記載の鞍乗型車両において、
    前記停止制御は、エンジンの点火電気系統を遮断させることである鞍乗型車両。
  6. 請求項4または請求項5に記載の鞍乗型車両において、
    前記状態検出部の結果に基づいて固定状態であることを表示する表示部を備える鞍乗型車両。
  7. 請求項4から請求項6のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
    車速を検出する車速検出部を備え、
    前記制御部は、前記車速検出部の検出結果に基づいて、車速が所定速度以上のときは前記切替機構を制御して可動状態にさせる鞍乗型車両。
  8. 請求項7に記載の鞍乗型車両において、
    前記状態検出部は、前記結合ピン部材が前記支持機構から離脱した離脱位置にあるか否かを検出し、
    前記制御部は、前記車速検出部、及び、前記状態検出部の各検出結果に基づいて、車速が所定速度以上の場合において前記結合ピン部材が離脱位置から離れたときは、前記結合ピン部材を離脱位置に戻させる鞍乗型車両。
  9. 請求項7または請求項8に記載の鞍乗型車両において、
    前記制御部は、前記車速検出部の検出結果に基づいて、車速が所定速度以上のときは、前記状態操作部から固定状態を指定する命令が入力されても、前記切替機構に対して固定状態に切り替える制御を行わない鞍乗型車両。
  10. 請求項7から請求項9のいずれかに記載の鞍乗型車両であって、
    ブレーキ操作を検出するブレーキ検出部を備え、
    前記制御部は、前記着座検出部、前記車速検出部、及び、前記ブレーキ検出部の各検出結果に基づいて、ライダーがシートに座っており、車速が所定速度未満であり、かつ、ブレーキ操作が行われている場合に、前記状態操作部から入力される命令どおりに前記切替機構を制御する鞍乗型車両。
  11. 請求項4から請求項6のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
    車速を検出する車速検出部を備え、
    ブレーキ操作を検出するブレーキ検出部を備え、
    前記制御部は、前記車速検出部、及び、前記ブレーキ検出部の各検出結果に基づいて車速が所定速度未満であり、かつ、ブレーキ操作が行われていることを条件に前記停止制御を行う鞍乗型車両。
  12. 請求項4から請求項6のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
    車速を検出する車速検出部を備え、
    前記制御部は、前記車速検出部の検出結果に基づいて、車速が実質的に零であることを条件に前記停止制御を行う鞍乗型車両。
  13. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の鞍乗型車両であって、
    車速を検出する車速検出部を備え、
    前記制御部は、前記車速検出部の検出結果に基づいて、車速が所定速度以上のときは前記切替機構を制御して可動状態にさせる鞍乗型車両。
  14. 請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
    ライダーがシートに座っていることを検出する着座検出部と、
    車速を検出する車速検出部と、
    ブレーキ操作を検出するブレーキ検出部と、
    ライダーから固定状態及び可動状態を指定する命令を受け付ける状態操作部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記着座検出部、前記車速検出部、及び、前記ブレーキ検出部の各検出結果に基づいて、ライダーがシートに座っており、車速が所定速度未満であり、かつ、ブレーキ操作が行われている場合に、前記状態操作部から入力される命令どおりに前記切替機構を制御する鞍乗型車両。
  15. 請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
    ライダーがシートに座っていることを検出する着座検出部と、
    車速を検出する車速検出部と、
    ライダーから固定状態及び可動状態を指定する命令を受け付ける状態操作部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記着座検出部、及び、前記車速検出部の各検出結果に基づいて、ライダーがシートに座っており、かつ、車速が実質的に零である場合に、前記状態操作部から入力される命令どおりに前記切替機構を制御する鞍乗型車両。
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