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JP2010227757A - 複合分離膜 - Google Patents

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JP2010227757A JP2009075878A JP2009075878A JP2010227757A JP 2010227757 A JP2010227757 A JP 2010227757A JP 2009075878 A JP2009075878 A JP 2009075878A JP 2009075878 A JP2009075878 A JP 2009075878A JP 2010227757 A JP2010227757 A JP 2010227757A
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研司 小森
Shinichi Minegishi
進一 峯岸
Atsushi Kobayashi
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Abstract

【課題】本発明は、分離特性、透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐ファウリング性に優れるとともに、従来の精密ろ過膜や限外ろ過膜で分離困難であった低分子化合物やイオンを分離することが可能な、海水からのホウ素除去等に有効な複合分離膜およびそれを用いた水処理装置およびその運転方法を提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)から形成される、表面の平均孔径が0.01μm以上1μm以下の三次元網目状構造の層と、熱可塑性樹脂(B)から形成される、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層とを含むことを特徴とする複合分離膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、飲料水製造、浄水処理、排水処理や海水淡水化前処理などの水処理分野に用いられる精密ろ過膜や限外ろ過膜および、それらを用いた水処理方法に関する。
近年、分離膜は、浄水処理、排水処理などの水処理分野、血液浄化などの医療用途、食品工業分野、電池用セパレーター、荷電膜、燃料電池用電解質膜等様々な方面で利用されている。
とりわけ飲料水製造分野、すなわち浄水処理用途や排水処理用途、海水淡水化用途などの水処理分野においては、従来の砂濾過、凝集沈殿、蒸発法の代替や、処理水質向上のために、分離膜が用いられるようになっている。これらの分野では処理水量が大きいため、分離膜の透水性能が優れていれば、膜面積を減らすことが可能となり、装置がコンパクトになるため設備費が節約でき、膜交換費や設置面積の点からも有利になってくる。
水処理用分離膜は被処理水に含まれる分離対象物質の大きさに応じて精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)が用いられる。
とりわけ海水淡水化用途において、海水中に微量に含まれるホウ素などの様な極めて小さい物質は、これらの膜で完全に除去することは難しく、逆浸透膜を用いた場合でもWHO水質ガイドラインで定められているホウ素濃度の暫定値(0.5mg/L)以下にすることは容易なことではない。除去率を高めるために膜の構造を緻密にすると、透水性能が低下し、濾過する為に大きな圧力が必要となり、処理コストが大きくなるという課題がある。
そこで、海水を第1の逆浸透膜モジュールに供給し、その透過水をpH5.7以上に調整した後、第2の逆浸透膜モジュールに供給する水処理方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、逆浸透膜モジュールを多段で使用することにより、設備費および電力費が増えるばかりでなく、pHを調整するための薬品費も増えるため、経済的ではない。
一方、ホウ素の除去方法としては、逆浸透膜法以外にも強塩基性陰イオン交換樹脂による吸着除去やスチレン−ジビニルベンゼン共重合体にN−メチルグルカミンを結合させた樹脂による吸着除去、セリウム化合物などの無機吸着剤により吸着除去する方法(特許文献2)が知られており、逆浸透膜モジュールの透過水をイオン交換樹脂層に通水して、ホウ素を除去する水処理方法が開示されている(特許文献3)。
しかしながら、吸着塔などの設備費、樹脂の初期投資、および、樹脂の再生費が高く、経済性の点から問題がある。
活性炭によるホウ素の吸着除去では、約40時間活性炭含有溶液を撹拌することにより、溶液中からホウ素が90%程度除去されることが報告されている(例えば、非特許文献1)。
しかし、実際の水処理プラントでは、このような長時間の吸着処理は効率が悪く、経済性の点から問題があった。
また、海水を逆浸透膜モジュールに供給するための前処理用としてMF膜やUF膜などが用いられるが、これらの膜の中に吸着剤を含有させることで、前処理の段階でホウ素濃度を低減させる方法が考えられる。例えば、高分子材料にセリウム水和酸化物を配合した中空糸状の濾過材が提案されている(特許文献4)。
しかしながら、特許文献4に記載されている中空糸膜の主な用途は、血液中からのリン除去であり、「飲料用水の濾過」という記載はわずかに見られるものの、水処理用途に用いられる中空糸膜については本文中に詳細な記述もなく、実施例もない。一般に人工透析に使用される中空糸膜モジュールは使い捨てであり、耐久性や耐汚れ性は、数時間の処理に耐えればよいが、水処理用中空糸膜モジュールは、5〜10年程度使用されるようになってきており、水処理用膜として要求される分離特性、耐薬品性、透過性能、そして特に物理強度と耐ファウリング性を達成するためには高度な技術と種々の工夫が必要であるが、それらに関する示唆や記載は一切ない。
また、特許文献4にて開示されている濾過材は、ほとんどがセリウム水酸化物を担持させた単層の中空糸膜のものであり、中空糸膜の表面を被覆する技術についても記述されているものの、セリウム水酸化物が人体に取り込まれたりしないように濾液側を被覆することで多層構造とした中空糸膜についてである。そのため、高い分離特性や耐薬品性、透過性能、物理強度、耐ファウリング性などが要求される水処理用途に適用することは非現実的であった。
以上のようにホウ素などに代表される低分子化合物・イオンなどの低減と、濁質や微生物の除去を同時に達成する精密濾過膜や限外濾過膜はなかった。
特開平9−10766号公報 特開2007−160271号公報 特開平10−15356号公報 特開2004−305915号公報
「エンバイロメンタル サイエンス アンド テクノロジー」、Vol.13、No.2、1979年、p.189−196
本発明は、上記従来技術の持つ課題に鑑み、分離特性、透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐ファウリング性に優れるとともに、従来の精密ろ過膜や限外ろ過膜で分離困難であった低分子化合物やイオンを分離または低減可能な、海水からのホウ素除去等に有効な複合膜およびそれを用いた水処理装置およびその運転方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、実質的に塩などの分離機能を有する三次元網目構造の層ではなく、主に物理的強度を与える多孔質構造の層に吸着剤を含有させることを想到し、孔径サイズの制御された三次元網目状構造を有する層と、吸着剤を含有する多孔質構造の層とを有する複合分離膜が、上記の課題を解決するために極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の特徴により構成される。
(1)熱可塑性樹脂(A)から形成される、表面の平均孔径が0.01μm以上1μm以下の三次元網目状構造の層と、熱可塑性樹脂(B)から形成され、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層とを含むことを特徴とする複合分離膜。
(2)吸着剤がセリウム水酸化物、セリウム含水酸化物から選ばれる1種以上の無機化合物を含有することを特徴とする(1)に記載の複合分離膜。
(3)熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)がポリフッ化ビニリデンを含有し、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層が、球状構造を形成しており、孔内に吸着剤が保持されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の複合分離膜。
本発明により、分離特性、透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐ファウリング性に優れるとともに、低分子化合物やイオンを分離することが可能な、海水からのホウ素除去等に有効な複合分離膜およびそれを用いた水処理装置およびその運転方法を提供することができる。
本発明の複合分離膜は、表面の平均孔径が0.01μm以上1μm以下の三次元網目状構造の層と多孔質構造からなる層との両方を有することが特徴である。ここで、三次元網目状構造とは、固形分が三次元的に網目状に広がっている構造のことをいう。三次元網目状構造には、網を形成する固形分に仕切られた細孔を有する。本発明では三次元網目状構造を有する層が主に分離機能を担うことになる。高い阻止性能と透水性能、耐ファウリング性能を両立するためには、三次元網目状構造の表面の平均孔径は0.01μm以上1μm以下が必要であり、好ましくは0.01μm以上0.5μm以下とすることにより、阻止性能と透水性能、耐ファウリング性能がより高い次元で両立出来るため、好ましい。三次元網目状構造の表面の平均孔径とは、三次元網目状構造の層を供給側から見た表面に存在する細孔の平均孔径のことである。細孔の平均孔径は、多孔質膜の表面を細孔が明瞭に確認できる倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて写真を撮り、10個以上、好ましくは20個以上の任意の細孔の直径を測定し、数平均することにより求めることができる。画像処理装置等を用いて、細孔の直径の平均値を求め、等価円直径の平均を平均孔径とすることも好ましく採用できる。等価円直径の平均は、楕円形状のものの場合、短径をa、長径をbとすると、(a×b)0.5で求めることができる。
三次元網目状構造は、透過性能の高い膜を得るなどのために平均孔径50μmを越えるマクロボイドを有するように構成しても良い。
また、本発明の多孔質構造とは、内部に無数の微小な空孔を有する構造のことをいう。多孔質構造には三次元網目状構造、球状構造、セル構造、ハニカム構造、フィンガー構造などが挙げられ、形状について特に限定されないが、とりわけ球状構造であることが強度、透過性能のバランスに優れ、かつ吸着剤が空孔内に保持されつつ樹脂に埋もれること無く適度に露出されるため、好ましい。
球状構造とは、多数の球状もしくは略球状の固形分が、直接もしくは筋状の固形分を介して連結している構造のことをいう。球状構造は、もっぱら球晶からなると推定される。球晶とは、熱可塑性樹脂溶液が相分離して多孔構造を形成する際に、熱可塑性樹脂が球形に析出、固化した結晶のことである。球状構造を有する膜は、透過性能を保ったまま強度の高い膜を得ることができる。球状構造の平均直径を0.5μm以上5μm以下、より好ましくは1.0μm以上3μm以下とすることにより、強度、透過性能をより高いレベルでバランスさせることができる。
また、本発明の複合分離膜は多孔質構造からなる層に吸着剤を含有することが特徴である。本発明の吸着剤とは、2つの相が接する界面での相互作用により、いずれかの相の物質の密度、またはその相中に溶解している溶質の濃度がバルク相よりも高くなる現象(吸着現象)を利用した物質の分離・除去プロセスにおいて用いられる物質のことをいう。本発明で使用可能な吸着剤としては例えば木炭、竹炭、活性炭、炭素繊維、分子ふるいカーボン、カーボンナノチューブ、メソポーラス炭素などの炭素系吸着剤、シリカゲル、マクロポーラスシリカ、活性アルミナ、ゼオライト、スメクタイト、ハイドロキシアパタイト、金属水酸化物、金属含水酸化物などの無機系吸着剤、イオン交換樹脂、キレート樹脂、有機金属錯体、キトサン、セルロースなどの有機系吸着剤、無機メソポーラス体、有機無機ハイブリッドメソポーラス物質、カーボンゲルなどが挙げられ、これらを1種またはそれ以上用いることが出来る。これらの吸着剤の中で、分離特性、透水性能、耐薬品性、物理的強度、複合膜内の分散性の観点から、特にゼオライト、金属水酸化物、金属含水酸化物が好ましい。とりわけ低分子有機化合物やイオン除去性能の観点からゼオライト、金属水酸化物、金属含水酸化物が好ましく用いられる。
本発明のゼオライトとは、国際ゼオライト学会で定義される「開かれた3次元ネットワークを形成する組成AB(n≒2)の化合物で、Aが4本、Bが2本の結合を持ち、骨格密度が20.5以下の物質」であり、一般的には結晶性のアルミノ珪酸塩である。
本発明におけるゼオライトの種類は上記定義が満たされているものであれば特に限定されないが、例えばX型、Y型などのフォージャサイト型ゼオライト、ZSM−5などのペンタシル型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、L型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、A型ゼオライト等が好ましく用いられる。とりわけ、水との親和性の高いA型ゼオライトが好ましい。
また本発明においては、金属水酸化物、金属含水酸化物として希土類元素水酸化物、希土類元素含水酸化物を用いることが好ましい。ここで希土類元素とは、元素の周期表による原子番号21番のスカンジウムScと39番のイットリウムY、57番から71番のランタノイド元素、すなわちランタンLa、セリウムCe、プラセオジウムPr、ネオジウムNd、プロメチウムPm、サマリウムSm、ユウロピウムEu、カドリニウムGd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYb、ルテチウムLuが該当する。なかでもイオン除去性能の観点から好ましい元素はセリウムであり、4価のセリウムが好ましい。これら希土類元素水酸化物及び/又は含水酸化物の混合体も有用である。
本発明の複合分離膜は、強度、透過性能および阻止性能を高いレベルで両立させるために、三次元網目状構造の層と、多孔質構造からなる層とが積層された構造を有することが必要である。また本発明の複合分離膜は、三次元網目状構造からなる層を分離対象物質の供給側に、多孔質構造からなる層を透過側に配置することで、水処理膜に要求される分離特性、透過性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐ファウリング性といった特性を損なうことなく、従来の水処理膜で分離・除去することが困難であった低分子有機化合物やイオン除去性能を大幅に向上出来ることを見いだした。
本発明に用いる吸着剤のサイズについては特に限定されないが、平均粒径0.01〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmである。なお、多孔質構造内の空孔サイズと吸着剤のサイズはなるべく近い方が好ましい。吸着剤のサイズはSEM等を用いて吸着剤の一次粒子の写真を撮り、10個以上、好ましくは20個以上の任意の直径を測定し、数平均して求める。形状が円以外の場合には、その形状に内接する円の直径をa、外接する円の直径をbとすると、(a×b)0.5を等価円直径として求める。
本発明で使用する吸着剤は、市販のものを入手して用いることが出来る。例えば試薬会社から購入したり、「15308の化学商品」(化学工業日報社)等に記載されている製造会社から直接入手したりすることも可能である。
本発明の多孔質構造からなる層における、熱可塑性樹脂(B)/吸着剤の重量比については、99/1〜1/99重量部、物理的強度、分離特性の点から95/5〜50/50が好ましく、さらに好ましくは90/10〜70/30である。
本発明の複合分離膜は、50kPa、25℃における透水性能が0.1m/m/hr以上5m/m/hr以下、0.309μm径粒子の阻止率が90%以上、破断強度が2MPa以上、破断伸度が5%以上であることが好ましい。透水性能は、より好ましくは0.15m/m/hr以上3m/m/hr以下である。0.309μm径粒子の阻止率は、より好ましくは95%以上である。破断強度は、より好ましくは3MPa以上である。破断伸度は、より好ましくは10%以上である。以上の条件を満たすことで、水処理、電池用セパレーター、荷電膜、燃料電池用電解質膜、血液浄化用膜に等の用途に十分な強度、透過性能および阻止性能を有する複合膜を得ることができる。
本発明の複合分離膜は、中空糸膜形状、平膜形状いずれの形態でも好ましく用いることができる。
透水性能と阻止性能の測定方法は、中空糸膜では、中空糸膜4本からなる長さ200mmのミニチュアモジュールを作製して測定することができる。温度25℃、ろ過差圧16kPaの条件下に、逆浸透膜濾過水の外圧全ろ過を30分間行い、透過量(m)を求めた。その透過量(m)を単位時間(h)および有効膜面積(m)あたりの値に換算し、さらに(50/16)倍することにより、圧力50kPaにおける値に換算することで透水性能を求めることができる。また、温度25℃、ろ過差圧16kPaの条件下に、平均粒径0.309μmのポリスチレンラテックス粒子を分散させた濾過水の外圧全ろ過を30分間行った。原水中および透過水中のラテックス粒子の濃度を波長240nmの紫外吸収係数を測定して求め、その濃度比から阻止性能を求めることができる。平膜では、膜を直径50mmの円形に切り出し、円筒型のろ過ホルダーにセットし、その他は中空糸膜と同様の操作をすることで求めることができる。透水性能は、ポンプ等で加圧や吸引して得た値を換算して求めても良い。水温についても、評価液体の粘性で換算しても良い。透水性能が0.1m/m/hr未満の場合には、透水性能が低すぎ、複合分離膜として好ましくない。また逆に透水性能が5m/m/hrを越える場合には、複合分離膜の孔径が大きすぎ、不純物の阻止性能が低くなり好ましくない。0.309μm径粒子の阻止率が90%に満たない場合にも、やはり複合分離膜の孔径が大きすぎ、不純物の阻止性能が低くなり好ましくない。
破断強度と破断伸度の測定方法は特に限定されるものではないが、例えば、引張り試験機を用い、測定長さ50mmの試料を引張り速度50mm/分で引張り試験を、試料を変えて5回以上行い、破断強度の平均値と、破断伸度の平均値を求めることで算出することができる。破断強度が2MPa未満、または破断伸度が5%未満の場合には、複合分離膜を扱う際のハンドリング性が悪くなり、かつ、ろ過時における膜の破断や圧壊が起こりやすくなって好ましくない。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)とは、鎖状高分子物質からできており、加熱すると外力によって変形・流動する性質が表れる樹脂のことをいう。熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変成ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロース誘導体およびこれらの混合物や共重合体が挙げられる。これらと混和可能な他の樹脂を混和しても良い。
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロース誘導体から選ばれたものが耐薬品性、物理的強度の面から好ましく用いることが出来、中でもポリフッ化ビニリデン系樹脂が最も好ましい。
本発明に用いる熱可塑性樹脂(B)としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロース誘導体から選ばれたものが耐薬品性、物理的強度、吸着剤との親和性の面から好ましく用いることが出来る。中でもポリフッ化ビニリデン系樹脂は、上記特性のバランスに最も優れているので好ましく用いられる。
本発明におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーおよび/またはフッ化ビニリデン共重合体を含有する樹脂のことである。複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有しても構わない。フッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれた1種類以上とフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。またポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、要求される多孔質膜の強度と透水性能によって適宜選択すれば良く、5万以上100万以下が好ましい。多孔質膜への加工性を考慮した場合は10万以上70万以下が好ましく、さらに15万以上60万以下が好ましい。
また、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)は、混和可能な他の樹脂を50重量%以下含んでいてもよい。例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の場合は、アクリル樹脂を50重量%以下の範囲で含むことも好ましい。ここで、アクリル樹脂とは、主としてアクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体、たとえばアクリルアミド、アクリロニトリルなどの重合体を包含する高分子化合物をいう。特にアクリル酸エステル樹脂やメタクリル酸エステル樹脂が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂との混和性が高いことから、好ましく用いられる。このように複数の樹脂を混和したポリマーブレンドで構成することによって、強度、透水性能、阻止性能などを調整することができる。
また、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)は、同一の樹脂で構成しても良いが、異なる樹脂で構成してもかまわない。同一の樹脂で構成した場合は、両者の親和性が高くなるので好ましい。一方、両者を異なる樹脂で構成した場合は、強度、透水性能、阻止性能などをより広い範囲で調整することができる。
本発明の、三次元網目状構造からなる層と吸着剤を含有する多孔質構造からなる層との両方を有する複合分離膜は、種々の方法により製造することができる。たとえば、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層の少なくとも一方の側に、三次元網目状構造を有する層を後から形成する方法、二種類以上の樹脂溶液を口金から、同時に吐出し、三次元網目状構造からなる層と吸着剤を含有する多孔質構造からなる層との両方を同時に形成する方法などが挙げられる。
まず、本発明の三次元網目状構造と吸着剤を含有する多孔質構造との両方を有する複合分離膜の製造方法として、吸着剤を含有する多孔質膜の少なくとも一方の側に、三次元網目状構造を有する層を後から形成する方法を説明する。
この製造方法においては、まず吸着剤を含有する多孔質構造からなる層を製造する。吸着剤を含有する多孔質構造からなる層の製造方法は、特に限定されないが、以下の方法により好ましく製造することができる。例えば熱可塑性樹脂を10重量%以上60重量%以下程度の比較的高濃度で、該樹脂の貧溶媒または良溶媒に比較的高温で溶解し、該溶液に吸着剤を添加して吸着剤を均一分散させ、該分散液を冷却固化せしめることにより、多孔質構造からなる層を形成する。ここで貧溶媒とは、樹脂を60℃以下の低温では5重量%以上溶解させることができないが、60℃以上かつ樹脂の融点以下(例えば樹脂が、フッ化ビニリデンホモポリマー単独で構成される場合は178℃程度)の高温領域で5重量%以上溶解させることができる溶媒のことである。貧溶媒に対し、60℃以下の低温でも樹脂を5重量%以上溶解させることが可能な溶媒を良溶媒、樹脂の融点または液体の沸点まで、樹脂を溶解も膨潤もさせない溶媒を非溶媒と定義する。
ここでポリフッ化ビニリデン系樹脂の場合、貧溶媒としては、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、メチルイソアミルケトン、フタル酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジアセトンアルコール、グリセロールトリアセテート等の中鎖長のアルキルケトン、エステル、グリコールエステルおよび有機カーボネート等およびその混合溶媒が挙げられる。非溶媒と貧溶媒の混合溶媒であっても、上記貧溶媒の定義を満たす溶媒は、貧溶媒であると定義する。また良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等およびその混合溶媒が挙げられる。さらに非溶媒としては、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o−ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール、塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体およびその混合溶媒等が挙げられる。
上記製造方法では、まず熱可塑性樹脂を10重量%以上60重量%以下の比較的高濃度で、該樹脂の貧溶媒もしくは良溶媒に、80〜170℃程度の比較的高温で溶解し、該溶液に吸着剤を添加して吸着剤を均一分散させ、分散液を調整することが好ましい。樹脂濃度は高くなれば高い強伸度特性を有する多孔質構造からなる層が得られるが、高すぎると製造した多孔質構造からなる層の空孔率が小さくなり、透水性能が低下する。また、調整した樹脂溶液の粘度が適正範囲に無ければ、多孔質構造からなる層に成形することはできない。樹脂濃度は、15重量%以上50重量%以下の範囲が、より好ましい。
分散液を固化するにあたっては、口金から分散液を冷却浴中に吐出することにより、
冷却固化することが好ましい。この際、冷却浴に用いる冷却液体として、温度が0〜50℃、好ましくは5〜40℃であり、濃度が60〜100%、好ましくは50〜90%の貧溶媒もしくは良溶媒を含有する液体を用いて固化させることが好ましい。冷却液体には、貧溶媒、良溶媒以外に非溶媒を含有していても良い。
熱可塑性樹脂を比較的高濃度で、該樹脂の貧溶媒もしくは良溶媒に比較的高温で溶解し、該溶液に吸着剤を添加して吸着剤を均一分散させ、急冷して固化することにより、得られる膜の構造を、微細な球状構造、もしくは、マクロボイドを有さない緻密な網目構造とすることができる。特に、球状構造を有する膜は、高い強度と高い透水性能を得ることができる。膜の構造が、球状構造になるか、網目構造になるかは、樹脂溶液の濃度および温度、樹脂を溶解する溶媒の組成、冷却浴を構成する冷却液体の温度および組成の組み合わせにより、制御することができる。
分離膜の形状を中空糸膜とする場合には、分散液を調製した後、該分散液を中空糸膜紡糸用の二重管式口金の外側の管から吐出し、中空部形成液体を二重管式口金の内側の管から吐出しながら冷却浴中で固化し、中空糸膜とする。この際、中空部形成流体には、通常気体もしくは液体を用いることができるが、本発明においては、冷却液体と同様の、濃度が60〜100%の貧溶媒もしくは良溶媒を含有する液体を用いることが好ましく採用できる。なお、ここで、中空部形成液体も冷却して供給しても良いが、冷却浴の冷却力のみで中空糸膜を固化するのに十分な場合は、中空部形成液体は冷却せずに供給しても良い。
また、分離膜の形状を平膜とする場合には、分散液を調製した後、該分散液をスリット口金から吐出し、冷却浴中で固化し平膜とする。
さらに分離膜に、分離膜を支持して分離膜に強度を与える多孔質基材を伴わせることも、分離膜の破断強度が高くなるため、好ましい実施態様である。多孔質基材の材質としては、有機材料、無機材料等、特に限定はされないが、軽量化しやすい点から、有機繊維が好ましい。さらに好ましくは、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維からなる織布や不織布のようなものである。
以上の製造方法で、透水性を発現する高強伸度特性の分離膜を得ることができるが、透水性能が十分でない場合には、該分離膜をさらに1.1倍以上5.0倍以下の延伸倍率で延伸することも、分離膜の透水性能が向上するため、好ましい実施態様である。
次いで、得られた吸着剤を含有する多孔質構造からなる層の少なくとも一方の側に、三次元網目状構造を有する層を形成する。その方法は、特に限定されないが、以下の方法を好ましく用いることができる。すなわち、吸着剤を含有する多孔質膜の少なくとも一方の側に、樹脂溶液を塗布した後、凝固液に浸漬することで三次元網目状構造を有する層を形成する方法である。
ここで用いられる樹脂の例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変成ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、セルロース系樹脂およびこれらの混合物や共重合体が挙げられる。これらと混和可能な他の樹脂や多価アルコールや界面活性剤を50重量%以下含んでいても良い。
これらの中で、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、セルロース系樹脂から選ばれたものは耐薬品性が高いため好ましく、とりわけポリフッ化ビニリデン系樹脂が好ましく用いられる。
また、樹脂を溶解する溶媒としては、樹脂の良溶媒が好ましい。良溶媒としては、前記のようなものを用いることができる。該樹脂溶液の樹脂濃度は、通常5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜25重量%の範囲である。5重量%未満では、三次元網目構造を有する層の物理的耐久性が低くなり、30重量%を超えると流体を透過させる際に高い圧力が必要になる。
樹脂溶液を、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層の少なくとも一方の側に塗布する方法としては、特に限定されないが、多孔質構造からなる層を該溶液に浸漬する方法や、多孔質構造からなる層の少なくとも一方の側に、該溶液を塗布する方法などが、好ましく用いられる。また、多孔質構造からなる層の形状が中空糸膜の場合において、中空糸膜の外表面側に該溶液を塗布する方法としては、中空糸膜を該溶液に浸漬したり、中空糸膜に該溶液を滴下したりする方法などが好ましく用いられ、中空糸膜の内表面側に該溶液を塗布する方法としては、該溶液を中空糸膜内部に注入する方法などが好ましく用いられる。さらに、該溶液の塗布量を制御する方法としては、該溶液の塗布量自体を制御する方法の他に、多孔質構造からなる層を該溶液に浸漬したり、多孔質構造からなる層に該溶液を塗布した後に、該溶液の一部をかき取ったり、エアナイフを用いて吹き飛ばしたりする方法も好ましく用いられる。
また、ここで凝固液は、樹脂の非溶媒を含むことが好ましい。非溶媒としては、前記のようなものを用いることができる。塗布された樹脂溶液を非溶媒に接触させることで、非溶媒誘起相分離が生じ、三次元網目状構造を有する層が形成される。
三次元網目状構造の層の表面の平均孔径を前記の範囲に制御する方法は、樹脂の種類によって異なるが、たとえば以下の方法で行うことができる。樹脂溶液に孔径を制御するための添加剤を入れ、三次元網目状構造の層を形成する際に、または、三次元網目状構造の層の形成後に、該添加剤を溶出させることにより、表面の平均孔径を制御することができる。該添加剤としては、有機化合物および無機化合物を挙げることができる。有機化合物としては、樹脂の溶媒および非溶媒誘起相分離を起こす非溶媒の両方に溶解するものが好ましく使用される。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、デキストランなどの水溶性ポリマー、界面活性剤、グリセリン、糖類などを挙げることができる。無機化合物としては、水溶性化合物が好ましく用いられる。例えば、塩化カルシウム、塩化リチウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。また、添加剤を用いずに、凝固液における非溶媒の種類、濃度および温度によって相分離速度をコントロールすることによって表面の平均孔径を制御することも可能である。一般的には、相分離速度が速いと表面の平均孔径が小さく、遅いと大きくなる。また、樹脂溶液に非溶媒を添加することも、相分離速度制御に有効である。
さらに本発明の三次元網目状構造の層と吸着剤を含有する多孔質構造からなる層との両方を有する複合分離膜の別の製造方法として、以下に二種類以上の樹脂溶液あるいは分散液を口金から同時に吐出し、三次元網目状構造の層と吸着剤を含有する多孔質構造からなる層との両方を同時に形成する方法を説明する。この製造方法において、例えば三次元網目状構造形成用樹脂溶液と吸着剤を含有する多孔質構造形成用分散液とを、口金から同時に吐出した後、固化せしめることにより、製造することができる。この方法によると、三次元網目状構造の層と吸着剤を含有する多孔質構造からなる層とを同時に形成することができ、製造工程を簡素なものにすることができ、好ましい。ここで三次元網目状構造形成用樹脂溶液とは、固化せしめることにより、三次元網目状構造の層を形成可能な樹脂溶液であれば特に限定されないが、例えば、樹脂を溶媒に溶解した溶液であって、凝固浴に接触することで、非溶媒誘起相分離が生じ、三次元網目状構造が形成されるものが挙げられる。また、吸着剤を含有する多孔質構造形成用分散液とは、固化せしめることにより、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層を形成可能な分散液であれば特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂等の熱可塑性樹脂を10重量%以上60重量%以下程度の比較的高濃度で、該樹脂の貧溶媒または良溶媒に比較的高温(80〜170℃程度)で溶解し、該溶液に吸着剤を添加して吸着剤を均一分散させたものが挙げられる。ここで、熱可塑性樹脂、吸着剤、凝固浴、貧溶媒および良溶媒としては、それぞれ前記のものを好ましく用いることができる。
三次元網目状構造形成用樹脂溶液と吸着剤を含有する多孔質構造形成用分散液とを同時に吐出する場合の口金としては、特に限定されないが、分離膜の形状を平膜とする場合には、スリットが2枚並んだ二重スリット形状のものが好ましく用いられる。また、分離膜の形状を中空糸膜とする場合には、三重管式口金が好ましく用いられる。三重管式口金の外側の管と中間の管とから三次元網目状構造形成用樹脂溶液と吸着剤を含有する多孔質構造形成用分散液とを吐出し、中空部形成液体を内側の管から吐出しながら冷却浴中で固化し、中空糸膜とすることができる。このような製造方法で中空糸膜を製造した場合、中空部形成液体の量を、平膜を製造した場合の冷却液体の量よりも少なくすることができ、特に好ましい。三次元網目状構造形成用樹脂溶液を外側の管から、吸着剤を含有する多孔質構造形成用分散液を中間の管から吐出することにより、三次元網目状構造の層を外側に、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層を内側に有する中空糸膜を得ることができ、逆に三次元網目状構造形成用樹脂溶液を中間の管から、吸着剤を含有する多孔質構造形成用分散液を外側の管から吐出することにより、三次元網目状構造の層を内側に、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層を外側に有する中空糸膜を得ることができる。
かくして得られる複合分離膜は、水処理分野であれば浄水処理、上水処理、排水処理、工業用水製造などで利用でき、河川水、湖沼水、地下水、海水、下水、排水などを被処理水とする。なかでも、従来の水処理用分離膜では分離が困難であった低分子化合物やイオンを効率的に除去可能であることから、海水淡水化における前処理用の分離膜として極めて好適に用いることが出来る。
本発明の複合分離膜は、海水淡水化における前処理用の分離膜として用いることにより、海水中に含まれる濁質を除去して、逆浸透膜のファウリングを抑制することが可能である。また、複合分離膜中に配合された吸着剤がホウ素化合物を吸着することで、逆浸透膜に供給する海水中のホウ素濃度を低減することが可能であり、海水淡水化処理後のホウ素濃度を低減することが出来る。
上述の分離膜は、原液流入口や透過液流出口などを備えたケーシングに収容され分離膜モジュールとして使用される。分離膜モジュールは、分離膜が中空糸膜である場合には、中空糸膜を複数本束ねて円筒状の容器に納め、両端または片端をポリウレタンやエポキシ樹脂等で固定し、透過液を回収できるようにしたり、平板状に中空糸膜の両端を固定して透過液を回収できるようにしたりする。分離膜が平膜である場合には、平膜を集液管の周りに封筒状に折り畳みながらスパイラル状に巻き取り、円筒状の容器に納め、透過液をできるようにしたり、集液板の両面に平膜を配置して周囲を水密に固定し、透過液を回収できるようにしたりする。
そして、分離膜モジュールは、少なくとも原液側に加圧手段もしくは透過液側に吸引手段を設け、水などを処理する水処理装置として用いられる。加圧手段としてはポンプを用いてもよいし、また水位差による圧力を利用してもよい。また、吸引手段としては、ポンプやサイフォンを利用すればよい。
上述の分離膜モジュールは空気洗浄、逆流洗浄、薬品強化洗浄など公知の方法で洗浄することが可能であるが、本発明では特に、アルカリ水溶液による薬液強化洗浄を実施することにより、複合分離膜の細孔に堆積したファウリング物質の除去と、吸着剤の再生を同時に行うことが出来るため、経済的に好ましい。
本発明における薬液強化洗浄とは、薬品を添加した逆流洗浄水による洗浄もしくは薬品を添加した原水、濾過水による浸漬を行う方法である。薬液強化洗浄間隔は数時間〜数日に1回行われる。
薬品強化洗浄において使用される薬品は水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液がファウリング物質の除去と、吸着剤の再生を同時に行う為好ましいが、供給水の水質に応じて、次亜塩素酸などの酸化剤、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、クエン酸、シュウ酸などの有機酸などによる洗浄と組み合わせたりすることも可能である。また、薬液強化洗浄に加えて空気洗浄、逆流洗浄、薬品洗浄を併用して行うことも可能である。
薬品の濃度については洗浄効果により適宜調整可能であるが、水酸化ナトリウム水溶液の場合は0.1〜5g/Lの範囲が好ましい。
具体的な薬液洗浄の方法としては例えば、水酸化ナトリウム水溶液を濾過とは逆の方向から通水させ、その状態で20分程度流れを停止させて膜と薬液を接触させたあと、リンスを行い、再び濾過を行うことが可能である。なお、リンス時には特許文献2に記載の様に、アルカリ土類金属塩やアンモニウム塩を添加することにより、吸着剤の再生後も吸着物質の溶出を抑制することが出来、好ましい。
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
まず、実施例および比較例において用いた測定方法を述べる。
(1)三次元網目状構造の層の表面平均孔径
走査型電子顕微鏡を用いて、中空糸膜の表面を60,000倍で写真撮影し、任意に選んだ20カ所の細孔径の直径を測定し、数平均して求めた。
(2)阻止率
中空糸膜4本からなる有効長さ200mmの小型モジュールを作製し、温度25℃、濾過差圧16kPaの条件下、平均粒径0.309μmのポリスチレンラテックス粒子を分散させた原水を外圧全濾過で30分間行い、原水と透過水中のラテックス粒子の濃度を波長234nmの紫外線吸収係数から算出し、その濃度比から阻止性能を求めた。波長234nmの紫外線吸収係数の測定は、分光光度計(U―3200,日立製作所製)を用いた。
(3)破断強度
引張り試験器(TENSILON(登録商標)/RTM−100)(東洋ボールドウィン製)を用いて、測定長さ50mmの試料を引張り速度50mm/分の条件で試料を変えながら5回行い、破断強度の平均値を求めることで算出した。
(4)透水性能
中空糸膜4本からなる有効長さ200mmの小型モジュールを作製し、温度25℃、濾過差圧16kPaの条件下、純水透水量を測定し、圧力(50kPa)換算した(Q0、単位=m/m/h)。次に、20ppmのフミン酸(試薬、和光純薬工業株式会社製)水溶液を濾過差圧16kPa、温度25℃の条件下に外圧全濾過で2m/mになるように濾過をした。さらに150kPaの逆洗圧力で透過水を1分間供給し、その直後の純水透水量を測定した(Q1)。
(5)耐ファウリング性
耐ファウリング性の指標としてA=Q1/Q0を用いる。Aの値が大きいほど、耐ファウリング性に優れる。
(6)ホウ素除去性能
中空糸膜4本からなる有効長さ200mmの小型モジュールを作製し、温度25℃、濾過差圧16kPaの条件下、愛媛県松山市で採取した海水を外圧全濾過で30分間行い、供給水および透過水中に存在するホウ素濃度を測定した。ホウ素濃度の測定には、ICP発光分析装置(日立製作所製P−4010)を用いた。ホウ素除去性能は以下の式で定義されるホウ素除去率により評価した。
(ホウ素除去率)={1−(透過水中のホウ素濃度)/(供給水中のホウ素濃度)}×100
<実施例1>
水酸化セリウム(和光純薬工業株式会社製、水酸化セリウム(IV))を70℃低温乾燥機で水分率20重量%にしてセリウム含水酸化物の粉末を得た。
重量平均分子量42万のフッ化ビニリデンホモポリマーを18.7重量部、γ−ブチロラクトンを69重量部の割合で混合し、150℃で溶解した。この樹脂溶液に、さらに攪拌しながら上記セリウム含水酸化物を12.3重量部添加し、攪拌混合して均一分散液を得た。この分散液を85%γ−ブチロラクトン水溶液を中空部形成液体として随伴させながら二重環式口金から吐出し、γ−ブチロラクトン85重量%水溶液からなる6℃の浴中で固化した。得られた中空糸膜は、球状構造を有し、細孔内にセリウム含水酸化物を保持している構造であった。
次いで、この中空糸膜の表面に、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを13重量%、重量平均分子量2万のポリエチレングリコールを5重量%、ジメチルホルムアミドを79重量%および水を3重量%の割合で混合、溶解した溶液を均一に塗布した。その中空糸膜をすぐに水97重量%、ジメチルホルムアミド3重量%の混合溶媒に浸漬し、溶液を凝固させた。この中空糸膜は内側にセリウム含水酸化物を保持した球状構造を、外側に三次元網目状構造を有する構造であり、三次元網目状構造の厚さは20μmであった。また、三次元網目状構造の表面平均孔径は0.01μmであった。
本中空糸膜は、阻止率、透水性、膜強度、耐ファウリング性に優れ、ホウ素除去性能を示すことがわかった。とりわけ阻止率、膜強度、耐ファウリング性、ホウ素除去性能に優れることがわかった。
<実施例2>
実施例1と同様にして球状構造を有し、セリウム含水酸化物を含有する中空糸膜を作製した。
次いで、この中空糸膜の表面に、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを13重量%、重量平均分子量2万のポリエチレングリコールを5重量%、ジメチルホルムアミドを79重量%および水を3重量%の割合で混合、溶解した溶液を均一に塗布した。その中空糸膜をすぐに水95重量%、ジメチルホルムアミド5重量%の混合溶媒に浸漬し、溶液を凝固させた。この中空糸膜は内側にセリウム含水酸化物を保持した球状構造を、外側に三次元網目状構造を有する構造であり、三次元網目状構造の厚さは20μmであった。また、三次元網目状構造の表面平均孔径は0.02μmであった。
本中空糸膜は、阻止率、透水性、膜強度、耐ファウリング性に優れ、ホウ素除去性能を示すことがわかった。とりわけ阻止率、透水性、膜強度、ホウ素除去性能に優れることがわかった。
<実施例3>
実施例1と同様にして球状構造を有し、セリウム含水酸化物を含有する中空糸膜を作製した。
次いで、この中空糸膜の表面に、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを13重量%、重量平均分子量2万のポリエチレングリコールを10重量%、ジメチルホルムアミドを74重量%および水を3重量%の割合で混合、溶解した溶液を均一に塗布した。その中空糸膜をすぐに水80重量%、ジメチルホルムアミド20重量%の混合溶媒に浸漬し、溶液を凝固させた。この中空糸膜は内側にセリウム含水酸化物を保持した球状構造を、外側に三次元網目状構造を有する構造であり、三次元網目状構造の厚さは20μmであった。また、三次元網目状構造の表面平均孔径は0.8μmであった。
本中空糸膜は、阻止率、透水性、膜強度、耐ファウリング性に優れ、ホウ素除去性能を示すことがわかった。とりわけ阻止率、透水性、膜強度、ホウ素除去性能に優れることがわかった。
<実施例4>
セルローストリアセテートを23.4重量部、2−エチル1,3−ヘキサンジオールを70.1重量部の割合で混合し、180℃で溶解した。この樹脂溶液に、さらに攪拌しながらセリウム含水酸化物を6.5重量部添加し、攪拌混合して均一分散液を得た。この分散液を窒素ガスを中空部形成気体として随伴させながら二重環式口金から吐出し、温度40℃の水浴中で固化した。得られた中空糸膜は、セル状構造を有し、細孔内にセリウム含水酸化物を保持している構造であった。
次いで、この中空糸膜の表面に、実施例2と同様にして三次元網目状構造からなる層を形成させた。この中空糸膜は内側にセリウム含水酸化物を保持したセル状構造を、外側に三次元網目状構造を有する構造であり、三次元網目状構造の厚さは20μmであった。また、三次元網目状構造の表面平均孔径は0.02μmであった。
本中空糸膜は、阻止率、透水性、膜強度、耐ファウリング性に優れ、ホウ素除去性能を示すことがわかった。
<比較例1>
重量平均分子量42万のフッ化ビニリデンホモポリマーを37重量部、γ−ブチロラクトンを63重量部の割合で混合し、150℃で溶解した。この分散液を85%γ−ブチロラクトン水溶液を中空部形成液体として随伴させながら二重環式口金から吐出し、γ−ブチロラクトン85重量%水溶液からなる6℃の浴中で固化した。得られた中空糸膜は、球状構造を有し、細孔内に吸着剤を有しない構造であった。
次いで、この中空糸膜の表面に、実施例2と同様にして三次元網目状構造からなる層を形成させた。この中空糸膜は内側に吸着剤を有しない球状構造を、外側に三次元網目状構造を有する構造であり、三次元網目状構造の厚さは20μmであった。また、三次元網目状構造の表面平均孔径は0.02μmであった。
本中空糸膜は、ホウ素を除去しなかった。
<比較例2>
実施例1と同様にして球状構造を有し、セリウム含水酸化物を含有する中空糸膜を作製した。
次いで、この中空糸膜の表面に、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを15重量%、重量平均分子量2万のポリエチレングリコールを4重量%、ジメチルホルムアミドを79重量%および水を2重量%の割合で混合、溶解した溶液を均一に塗布した。その中空糸膜をすぐに0℃の水中に浸漬し、溶液を凝固させた。この中空糸膜は内側にセリウム含水酸化物を保持した球状構造を、外側に三次元網目状構造を有する構造であり、三次元網目状構造の厚さは20μmであった。また、三次元網目状構造の表面孔径は、走査型電子顕微鏡を用いて60,000倍では観察出来ないほどに小さかった。すなわち、0.01μmよりも小さかった。
本中空糸膜は、透水性能が0.01m/m/hrと著しく低く、分離膜としての性能に劣ることがわかった。
<比較例3>
実施例1と同様にして球状構造を有し、セリウム含水酸化物を含有する中空糸膜を作製した。この中空糸膜はセリウム含水酸化物を保持した球状構造からなる層のみで形成されていた。
次いで、この中空糸膜の表面に、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを20重量%、酸化珪素を18重量%、ジメチルホルムアミドを59重量%および水を3重量%の割合で混合、溶解した溶液を均一に塗布した。その中空糸膜をすぐに水95重量%、ジメチルホルムアミド5重量%の混合溶媒に浸漬し、溶液を凝固させた。次に、中空糸膜を13重量%・80℃の水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬して、中空糸膜中の酸化珪素を抽出除去した。さらに90℃の温水で2時間洗浄した。この中空糸膜は内側にセリウム含水酸化物を保持した球状構造を、外側に三次元網目状構造を有する構造であり、三次元網目状構造の厚さは20μmであった。また、三次元網目状構造の表面平均孔径は1.2μmであった。
本中空糸膜は、耐ファウリング性に劣ることがわかった。
<比較例4>
実施例1と同様にして球状構造を有し、セリウム含水酸化物を含有する中空糸膜を作製した。この中空糸膜はセリウム含水酸化物を保持した球状構造を有する層のみから構成され、外側に三次元網目状構造を有する層を有していない。
本中空糸膜は、耐ファウリング性に著しく劣ることがわかった。
Figure 2010227757
Figure 2010227757

Claims (3)

  1. 熱可塑性樹脂(A)から形成される、表面の平均孔径が0.01μm以上1μm以下の三次元網目状構造の層と、熱可塑性樹脂(B)から形成される、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層とを含むことを特徴とする複合分離膜。
  2. 吸着剤がセリウム水酸化物、セリウム含水酸化物から選ばれる1種以上の無機化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の複合分離膜。
  3. 熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)がポリフッ化ビニリデンを含有し、吸着剤を含有する多孔質構造からなる層が、球状構造を形成しており、孔内に吸着剤が保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の複合分離膜。
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