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JP2009138847A - 流体封入式防振装置 - Google Patents

流体封入式防振装置 Download PDF

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JP2009138847A
JP2009138847A JP2007315660A JP2007315660A JP2009138847A JP 2009138847 A JP2009138847 A JP 2009138847A JP 2007315660 A JP2007315660 A JP 2007315660A JP 2007315660 A JP2007315660 A JP 2007315660A JP 2009138847 A JP2009138847 A JP 2009138847A
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Koichi Hasegawa
浩一 長谷川
Atsushi Muramatsu
篤 村松
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Sumitomo Riko Co Ltd
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Sumitomo Riko Co Ltd
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Abstract

【課題】過大な振動入力時における異音や振動の発生防止が、高い信頼性をもって実現され得る、新規な構造の液圧吸収機構を備えた流体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】強磁性材からなる板状の装着板部50を仕切部材32に設けて、装着板部50に短絡孔52を貫通形成すると共に、短絡孔52に挿通された挿通軸部56の軸方向両側にそれぞれフランジ状の当接部58,60を備えた可動弁体54を設けて、可動弁体54における受圧室42側の当接部58を弾性磁石で構成し、当接部58の装着板部50への磁力吸着により短絡孔52が遮断状態とされる一方、受圧室42と平衡室44の圧力差で当接部58の装着板部50への磁力吸着が解除されるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、内部の流体室に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づき防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、特に、流体室のキャビテーションを防止する短絡機構を備えた流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等の防振装置の一種として、流体封入式防振装置が知られている。流体封入式防振装置の構造においては、例えば、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されて、第二の取付部材の内側に仕切部材が配設されている。更に、仕切部材を挟んだ両側に、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、壁部の一部が変形容易な可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室が形成されており、それら両室がオリフィス通路を通じて相互に連通せしめられている。このような構造によれば、振動入力に伴い受圧室と平衡室の間に相対的な圧力変動が生じて、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づき防振効果が得られる。かくの如き流体封入式防振装置では、例えば、自動車用のエンジンマウントやボデーマウント、デフマウントの他、サスペンションメンバマウント等への適用が検討されている。
ところで、上述の流体封入式防振装置において、第一の取付部材と第二の取付部材の間に過大な振動が入力されると、衝撃的な異音や振動が発せられることがある。この発生原因は、主として、受圧室にキャビテーション気泡が生ぜしめられることによるものと考えられる。即ち、第一及び第二の取付部材の間の大振幅振動の入力に伴い受圧室が過大な負圧状態になると、受圧室の流体中に溶存していた空気が液相分離をし、キャビテーション気泡を形成する。そして、気泡の崩壊に伴う水撃圧が第一の取付部材や第二の取付部材に伝播して、自動車ボデー等の振動伝達系を構成する部材に伝達されることによって、前述の如き問題となる異音や振動が生ぜしめられるものと考えられる。
そこで、このような問題に対処するために、例えば特許文献1(特公平07−107416号公報)には、仕切部材に設けた可動ゴム膜に切れ込み等を入れておき、受圧室の負圧状態で、可動ゴム膜の変形による切れ込み部分の開口に基づきスリットを発現せしめて、このスリットを通じて受圧室と平衡室を短絡せしめる構造が開示されている。これにより、受圧室の過負圧状態が解消されて、キャビテーション気泡の発生が抑えられることから、問題となる異音や振動の防止が図られる。
ところが、特許文献1に係る流体封入式防振装置においては、可動ゴム膜に切れ込みが設けられていることで、切れ込み部を開口せしめる必要がない過大な正圧等が受圧室に生じた際にも、可動ゴム膜が弾性変形して、切れ込み部が開口せしめられる可能性があった。そのため、防振すべきオリフィス通路のチューニング周波数域の振動入力時にも、受圧室と平衡室が短絡して、オリフィス通路を通じての流体流動量が充分に確保され難くなり、目的とするオリフィス効果が安定して得られ難い問題を内在していた。しかも、可動ゴム膜が繰り返し弾性変形することで、切れ込み部の端部の亀裂が伸長して、可動ゴム膜の耐久性が問題となり易い可能性があった。
これらの問題を解決するべく、本出願人は、先の出願である特許文献2(特開2003−148548号公報)において、オリフィス通路を短絡させる短絡通路を形成すると共に、弁部材をゴム弾性体で構成して、短絡通路の受圧側の開口部分に重ね合わせて短絡通路を遮断せしめる一方、受圧室と平衡室の圧力差で弁部材を弾性変形させて、遮断解除された短絡通路を通じて受圧室と平衡室を短絡せしめる構造を開示した。
しかしながら、本発明者が更なる検討を加えたところ、特許文献2に係る流体封入式防振装置では、ゴム弾性体からなる弁部材が繰り返し変形や経時変化することで、弁部材の特性が比較的に変化し易いことから、弁部材における初期形状から目的とする形状への変形量や初期形状に復元する変形量が十分に確保され難くなる場合があった。その結果、目的とする弁部材の開閉作動が安定して実現され難くなって、問題となる異音や振動の抑制効果が得られ難くなる可能性があったのである。
特公平07−107416号公報 特開2003−148548号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、過大な振動入力時における異音や振動の発生防止が、高い信頼性をもって実現され得る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、第二の取付部材で仕切部材を支持せしめて、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を、仕切部材を挟んだ両側に形成すると共に、それら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路を形成した流体封入式防振装置において、強磁性材からなる板状の装着板部を仕切部材に設けて、装着板部の一方の面を受圧室に晒すと共に他方の面を平衡室に晒し、装着板部を貫通して受圧室と平衡室を短絡させる短絡孔を形成すると共に、短絡孔に挿通された挿通軸部の軸方向両側にそれぞれフランジ状の当接部を備えた可動弁体を設けて、可動弁体における受圧室側の当接部を弾性磁石で構成し、弾性磁石からなる当接部の装着板部への磁力吸着により短絡孔が遮断状態とされる一方、受圧室と平衡室の圧力差で当接部の装着板部への磁力吸着が解除されることにより短絡孔と挿通軸部との隙間を通じての流体流動が許容されるようにした流体封入式防振装置にある。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、当接部の装着板部への磁力吸着により短絡孔が可動弁体で閉塞保持されるが故に、オリフィス通路のチューニング周波数域の振動入力時に、短絡孔からの受圧室の圧力漏れが抑えられて、オリフィス通路を通じての流体流動量が十分に確保されることから、流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果であるオリフィス効果が有効に発揮され得る。一方、衝撃荷重等の振動入力時には、過大な負圧が受圧室に生じた際の受圧室と平衡室の圧力差に基づいて、可動弁体の受圧室側の当接部が装着板部から離隔することで、受圧室と平衡室を短絡させる。このことから、受圧室の過大負圧が回避されることとなり、キャビテーションによる異音や振動の発生が防止される。
特に、可動弁体の受圧室側の当接部に弾性磁石が採用されていることによって、フェライトやアルニコ等の金属材だけからなる磁石に比して、可動弁体の軽量化および装着板部に対する当接打音の軽減効果が図られ得る。なお、本発明における弾性磁石は、弾性および磁性を備えた部材であり、例えば、ゴム材料や合成樹脂材料に強磁性材料を混合することにより、弾性および強磁性を備えたゴムマグネットやプラスチックマグネット等で構成される。
しかも、可動弁体における挿通軸部の平衡室側の端部にもフランジ状の当接部が設けられていることから、可動弁体が受圧室側に向かって変位する際に、平衡室側の当接部が装着板部の短絡孔の周りに係止せしめられる。それによって、可動弁体の短絡孔からの抜け出しが防止されて、可動弁体の開閉作動が安定する。
また、可動弁体の受圧室側の当接部が装着板部から離隔して、短絡孔と挿通軸部との隙間を通じて受圧室と平衡室を短絡せしめて、受圧室の過負圧状態が解消された後には、装着板部と当接部の磁界の作用で、当接部が装着板部に速やかに当接せしめられて短絡孔が遮断状態とされ、しかも、当接状態が安定して維持せしめられることに基づき、短絡孔の遮断状態が確実となる。
それ故、本構造の流体封入式防振装置に従えば、目的とする弁体の開閉作動が安定して実現されて、問題となる異音や振動が、高い信頼性をもって防止され得るのである。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、可動弁体における平衡室側の当接部と装着板部の当接部に当接する部分との少なくとも一方に凹溝を形成して、当接部と装着板部の当接状態で短絡孔と挿通軸部との隙間が凹溝を通じて平衡室に連通されるようにした構造が、採用されても良い。このような構造によれば、平衡室側の当接部が装着板部に当接した状態でも、受圧室と平衡室の連通状態が隙間と凹溝を通じて確保されることから、所期のキャビテーション防止効果が安定して得られる。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、可動弁体における受圧室側の当接部を装着板部に当接させる方向の付勢力を可動弁体に及ぼす付勢手段を設けた構造が、採用されても良い。このような構造によれば、受圧室側の当接部の磁力調節と付勢手段による付勢力の調節とが協働して、目的とする弁作動のチューニング性能が向上され得る。具体的に、例えば、可動弁体における受圧室側の当接部を、付勢力を利用して、一層大きな力で装着板部に当接させることも出来、それによって、短絡孔の遮断状態を一層安定にしたり、或いは受圧室側の当接部が装着板部から離隔する変位量を付勢力で小さくしたり、受圧室側の当接部が装着板部から離隔した状態から再び装着板部に当接した状態に返戻する速度を大きくしたりすることも可能である。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、可動弁体の挿通軸部と各当接部が弾性材料で一体形成されていると共に、可動弁体の受圧室側の当接部にだけ着磁されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、製造コストの削減が図られ得る。また、可動弁体の全体が弾性材料で構成されていることによって、例えば、当接部や挿通軸部等の各部を変形せしめつつ、装着板部の何れか一方の面から挿通軸部および一方の当接部を短絡孔に挿通して、装着板部の短絡孔を挟んだ軸方向両側にそれぞれ当接部を位置せしめてなる装着が実現可能となる。それ故、可動弁体の装着板部への装着作業が飛躍的に容易になる。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、可動弁体の挿通軸部に対して各当接部の少なくとも一方が別体形成されており、短絡孔に挿通された挿通軸部に対して別体形成された当接部が固定されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、挿通軸部と当接部を、要求される形状や大きさ、構造等に応じて、それぞれ独立して設計変更することが出来る。その結果、可動弁体の目的とする開閉作動や低コスト化等の更なる向上も図られ得る。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、可動弁体における受圧室側の当接部が、合成樹脂材料で形成された芯材の表面にゴムマグネットが固着されることによって構成されている構造が、採用されても良い。このような構造によれば、合成樹脂材料が芯材とされていることで十分な強度が確保されつつ、ゴムマグネットを芯材の表面に固着したことで必要な磁力確保と当接打音の軽減効果が達成され得る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1には、本発明の流体封入式防振装置に係る第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。自動車用エンジンマウント10では、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。第一の取付金具12がパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具14が車両ボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーに対して防振支持されるようになっている。
なお、図1では、自動車に装着する前の自動車用エンジンマウント10の単体での状態が示されているが、本実施形態では、装着状態において、パワーユニットの分担支持荷重がマウント軸方向(図1中、上下)に入力される。従って、マウント装着状態下では、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づき第一の取付金具12と第二の取付金具14が軸方向で互いに接近する方向に変位する。また、かかる装着状態下、防振すべき主たる振動は、略マウント軸方向に入力されることとなる。以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向は、マウント軸方向となる図1中の上下方向をいう。
より詳細には、第一の取付金具12が、略円柱形状乃至は円錐台形状を呈していると共に、その中央部分には上端面に開口する螺子穴18が設けられている。第一の取付金具12は、螺子穴18を介して図示しないパワーユニット側の取付部材に螺着固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具14が、大径の略円筒形状を有しており、その軸方向一方の開口部側(図1中、上)には、かかる開口部から軸方向内方に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ状部20が形成されている。また、第二の取付金具14の軸方向他方の開口端部には、内フランジ状の係止部22が形成されている。更に、第二の取付金具14の外周側には、大径円筒形状のブラケット金具24がかしめ固定されており、ブラケット金具24が図示しない車両ボデーにボルトや溶接等で固定されることによって、第二の取付金具14が車両ボデーに固定されるようになっている。
このような第二の取付金具14のテーパ状部22を備えた開口部側に第一の取付金具12が離隔配置されて、両金具12,14の中心軸が略同一線上に位置せしめられている。これら第一の取付金具12と第二の取付金具14の間には、本体ゴム弾性体16が配されている。
本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状を有しており、その大径側端面には、下方に開口する逆すり鉢形状乃至は半球形状の大径凹所26が設けられている。本体ゴム弾性体16の小径側端面には、第一の取付金具12の軸方向中間部分から下端部にかけての略全体が埋設された状態で加硫接着されている。本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、第二の取付金具14のテーパ状部20の内周面が加硫接着されている。
また、本体ゴム弾性体16と一体形成された薄肉のシールゴム層28が、第二の取付金具14のテーパ状部20の小径側端部から係止部22にかけての内周面の略全体に亘って被着形成されている。更にまた、第二の取付金具14の軸方向中間部分に位置する本体ゴム弾性体16とシールゴム層28の境界部分、換言すると本体ゴム弾性体16の大径凹所26の開口周縁部には、シールゴム層28よりも軸直角方向内方に延び出して周方向に延びる段部30が、本体ゴム弾性体16により構成されている。
すなわち、本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた一体加硫成形品として形成されており、それによって、第一の取付金具12と第二の取付金具14が、本体ゴム弾性体16で相互に弾性的に連結されていると共に、第二の取付金具14の一方の開口部が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。
また、第二の取付金具14には、仕切部材32と可撓性膜としてのダイヤフラム34が、他方の開口部側から内挿された形態で配設されている。仕切部材32は、略円形ブロック状を呈していると共に、硬質で、望ましくは軽量で且つ成形が容易な材料を用いて形成されており、例えば、ポリプロピレンやアルミニウム軽合金等が好適に用いられる。また、仕切部材32の径方向中間部分から外周部分にかけて、径方向外方に開口する凹状断面で周方向に所定の長さ(本実施形態では一周弱)で延びる周溝36が形成されている。周溝36の周方向一方の端部が、仕切部材32の上部に貫通形成された図示しない連通窓を通じて仕切部材32の上端面に開口していると共に、周溝36の周方向他方の端部が、仕切部材32の下部に貫通形成された連通窓38を通じて仕切部材32の下端面に開口している。
ダイヤフラム34は、変形容易な薄肉のゴム膜からなり、軸方向に弛んだ略円板形状を有している。ダイヤフラム34の外周縁部には、大径の略円筒形状を有する嵌着金具40の内周面が加硫接着されている。即ち、ダイヤフラム34は、嵌着金具40を備えた一体加硫成形品とされている。
これら仕切部材32と嵌着金具40が、第二の取付金具14の係止部22を備えた開口部側から軸方向内方に向かって順次に内挿されて、仕切部材32の外周側の上端部が本体ゴム弾性体16の段部30と軸方向で重ね合わされていると共に、仕切部材32の外周側の下端部と嵌着金具40の上端部が軸方向で相互に重ね合わされた形態で、係止部22よりも軸方向内方に位置せしめられている。
そして、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されていることにより、第二の取付金具14に固着されたシールゴム層28が、仕切部材32および嵌着金具40と第二の取付金具14の間で径方向に圧縮変形せしめられており、仕切部材32と嵌着金具40は、かかるシールゴム層28を介して第二の取付金具14に径方向で重ね合わされている。また、第二の取付金具14の係止部22の縮径変位に伴い、係止部22の内周面に被着されたシールゴム層28と本体ゴム弾性体16の段部30の間で、仕切部材32と嵌着金具40が軸方向に挟圧固定されている。
これにより、仕切部材32とダイヤフラム34の嵌着金具40が第二の取付金具14に嵌着固定されていると共に、第二の取付金具14の他方の開口部がダイヤフラム34で流体密に覆蓋されている。また、第二の取付金具14の内側における本体ゴム弾性体16とダイヤフラム34の軸方向対向面間が外部に対して流体密に仕切られていると共に、この軸方向対向面間の中間部分に仕切部材32が支持されて、該対向面間を二分している。
第二の取付金具14の内側における本体ゴム弾性体16とダイヤフラム34の軸方向対向面間において、仕切部材32を挟んだ一方(図1中、上)の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づき圧力変動が生ぜしめられる受圧室42が形成されている。また、仕切部材32を挟んだ他方(図1中、下)の側には、壁部の一部がダイヤフラム34で構成されて、ダイヤフラム34の弾性変形に基づき容積変化が容易に許容される平衡室44が形成されている。これら受圧室42や平衡室44には、非圧縮性流体が封入されている。封入流体としては、例えば水やアルキレングリコール, ポリアルキレングリコール, シリコーン油等が採用されるが、特に流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。受圧室42や平衡室44への非圧縮性流体の封入は、例えば、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材32やダイヤフラム34の一体加硫成形品の組み付けを非圧縮性流体中で行うことによって、好適に実現される。
また、仕切部材32の周溝36が第二の取付金具14で流体密に覆蓋されることにより、仕切部材32の外周部分を周方向に所定の長さで延びるオリフィス通路46が形成されている。オリフィス通路46の一方の端部が、仕切部材32の上部に貫設された図示しない連通窓を通じて受圧室42に接続されていると共に、オリフィス通路46の他方の端部が、仕切部材32の下部に貫設された連通窓38を通じて平衡室44に接続されている。これにより、受圧室42と平衡室44がオリフィス通路46を通じて相互に連通せしめられて、それら両室42,44間でオリフィス通路46を通じての流体流動が許容されるようになっている。オリフィス通路46を通じて流動せしめられる流体の共振周波数は、問題となる振動に対して有効な防振効果が発揮されるようにチューニングされている。具体的に、例えば、受圧室42や平衡室44の各壁ばね剛性、即ちそれら各室42,44を単位容積だけ変化させるのに必要な圧力変化量に対応する本体ゴム弾性体16やダイヤフラム34等の各弾性変形量に基づく特性値を考慮しつつ、オリフィス通路46の通路長さと通路断面積を調節することによって、オリフィス通路46をチューニングすることが可能である。
そこにおいて、仕切部材32におけるオリフィス通路46の形成部位よりも内側の中央部分には、通孔48が形成されている。通孔48は、軸方向に略一定の円形断面で延びて仕切部材32の両端面に開口している。
また、仕切部材32には、装着板部50が設けられている。装着板部50は、仕切部材32と略同じ外径寸法の薄肉円板形状を有していると共に、鉄やニッケル、コバルト等の金属材からなる硬質の強磁性材を用いて形成されている。装着板部50は、仕切部材32における受圧室42側の端面に対して軸方向で同心状に重ね合わされており、装着板部50の外周部分が本体ゴム弾性体16の段部30と仕切部材32の間で軸方向に挟圧配置されていることにより、仕切部材32に固定的に重ね合わされている。また、装着板部50において、仕切部材32のオリフィス通路46の受圧室42側端部に形成される図示しない連通窓と軸方向で重ね合わされた部分には、図示しない連通窓が形成されており、それら仕切部材32の連通窓と装着板部50の連通窓を通じて、オリフィス通路46が受圧室42に接続されている。
さらに、装着板部50において仕切部材32の通孔48と軸方向で重ね合わされた径方向中央部分には、通孔48よりも小径の円形断面で軸方向に貫通する短絡孔52が形成されている。これにより、短絡孔52を備えた装着板部50の径方向中央部分が、仕切部材32の通孔48の受圧室42側の開口端部から全周に亘って内フランジ状に延び出した形態を有している。装着板部50の仕切部材32への組み付け状態下、装着板部50の一方の面の略全体が受圧室42に晒されていると共に、装着板部50の他方の面の径方向中央部分が、通孔48を介して平衡室44に晒されている。
更にまた、装着板部50には、可動弁体54が設けられている。可動弁体54は、挿通軸部56と一対の当接部としての受圧室側突部58および平衡室側突部60を含んで構成されている。
挿通軸部56は、略一定の円形断面でマウント軸方向(図1中、上下)に延びる円柱形状を呈しており、その外径寸法が、装着板部50の短絡孔52の内径寸法に比して所定量だけ小さくされている。また、挿通軸部56の軸方向寸法が、仕切部材32の透孔48の軸方向長さに比して十分に小さくされていると共に、装着板部50の短絡孔52の軸方向長さに比して大きくされている。
挿通軸部56の軸方向両端部分は、装着板部50の短絡孔52を挟んだ軸方向両側に位置せしめられており、受圧室42内に位置せしめられた端部には、受圧室側突部58が一体形成されていると共に、平衡室44内に位置せしめられた端部には、平衡室側突部60が一体形成されている。受圧室側突部58と平衡室側突部60は、それぞれ挿通軸部56の軸方向両端部分から外フランジ状に広がって、周方向に連続に延びている。即ち、本実施形態に係る受圧室側および平衡室側突部58,60は、円環板形状乃至は円板形状を呈している。これら受圧室側および平衡室側突部58,60の外径寸法は、互いに略同じとされていると共に、短絡孔52の外径寸法に比して大きくされている。それによって、可動弁体54が装着板部50の短絡孔52に対して軸方向に可動とされていることに加え、受圧室側突部58または平衡室側突部60が装着板部50における短絡孔52の周りに重ね合わされることによって、可動弁体54におけるの装着板部50からの軸方向の脱落が防止されるようになっている。
また、平衡室側突部60の上端面には、上方に向かって凹状の断面で径方向中間部分の外周縁部の間を径方向に延びる、凹溝としての径方向溝62が形成されている。径方向溝62の径方向内方端部が、挿通軸部56の外周面に位置せしめられていると共に、径方向溝62の外方端部が、平衡室側突部60の外周面に開口している。径方向溝62は、一つだけ設けられていても良いが、本実施形態では周方向で等間隔に複数設けられている。
特に本実施形態では、これら挿通軸部56や受圧室側突部58、平衡室側突部60を備えた可動弁体54が、ゴム材料と強磁性材からなる磁性粉とを混合した成形材料を用いて、互いに一体形成されている。その結果、可動弁体54は弾性を有しており、可動弁体54を装着板部50に装着するに際して、受圧室側突部58または平衡室側突部60の一方と挿通軸部56を装着板部50の一方または他方の面から短絡孔52に挿通させることが可能な程に、可動弁体54における挿通軸部56や受圧室側および平衡室側突部58,60の各部が弾性変形するようになっている。また、受圧室側突部58または平衡室側突部60の一方と挿通軸部56を短絡孔52に挿通させた後に、可動弁体54の弾性変形を解除することによって、装着板部50の短絡孔52を挟んだ受圧室42側と平衡室44側に受圧室側突部58と平衡室側突部60を位置せしめてなる装着が実現される。
なお、可動弁体54の装着板部50への装着は、例えば、装着板部50が仕切部材32と本体ゴム弾性体16の段部30の間で挟圧配置された状態で、可動弁体54を仕切部材32の通孔48から軸方向内方に挿し入れると共に弾性変形させて、受圧室側突部58と挿通軸部56を短絡孔52に挿通させることも可能である。しかし、望ましくは、装着板部50が仕切部材32と本体ゴム弾性体16の段部30の間に組み付けられる前に、受圧室側突部58または平衡室側突部60の一方と挿通軸部56を装着板部50の一方または他方の面から短絡孔52に挿通させることによって、装着作業のスペースが十分に確保される結果、装着作業が容易になる。
ここで、可動弁体54の受圧室側突部58にだけ図示しない電極を介して着磁されていることによって、受圧室側突部58が、ゴムマグネットからなる弾性磁石として構成されている。なお、弾性磁石には、かくの如きゴムマグネットの他、例えば、適当な弾性を有する合成樹脂材料と強磁性材からなる磁性粉とを混合形成したものに着磁してなるプラスチックマグネットが採用されても良い。また、本実施形態に係る弾性磁石では、ゴムマグネットとプラスチックマグネットを組み合わせて採用することも可能である。
これにより、受圧室側突部58が、磁界の作用で、強磁性材からなる装着板部50と磁力吸着されるようになっており、受圧室側突部58において装着板部50の短絡孔52の周りと軸方向で対向位置せしめられた環状の当接面64が該短絡孔52の周りに対して全周に亘って重ね合わされると、短絡孔52が受圧室側突部58で覆蓋せしめられることとなり、しかも受圧室側突部58と装着板部50の磁力吸着作用に基づいて、短絡孔52が遮断状態に維持されている(図1参照。)。特に本実施形態では、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に通常の大きさの振動乃至は荷重が入力された状態下、可動弁体54における受圧室側突部58の当接面64が装着板部50の短絡孔52の周りに全周に亘って密着状に当接されて、短絡孔52の遮断状態が維持されるように、受圧室側突部58の磁力が設定されている。即ち、オリフィス通路46のチューニング周波数域の振動入力時において、短絡孔52の遮断状態が維持されるようになっており、それによって、短絡孔52と挿通軸部56の間の隙間66を通じての受圧室の圧力漏れが抑えられることから、オリフィス通路を通じての流体の流動量が十分に確保されて、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づく所期の防振効果が安定して得られる。
一方、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に過大な振動乃至は荷重が入力されて、問題となる大きな負圧が受圧室42に発生する状態では、挿通軸部56や受圧室側および平衡室側突部58,60を備えた可動弁体54に負圧作用が及ぼされて、受圧室側突部58と装着板部50の磁力吸着作用に抗して可動弁体54が受圧室42側に向かって変位をし、受圧室側突部58の当接面64が装着板部50から離隔せしめられるように、受圧室側突部58の磁力が設定されている。受圧室側突部58が装着板部50から離隔せしめられて、短絡孔52の遮断状態が解除されると、受圧室42と平衡室44が短絡孔52と挿通軸部56の間の隙間66を通じて連通せしめられた状態となり、かかる隙間66を通じての流体流動が許容されることとなる。
さらに、本実施形態では、平衡室側突部60において装着板部50の短絡孔52の周りと軸方向で対向位置せしめられた面に径方向溝62が形成されており、図3にも示されているように、可動弁体54の受圧室42側の変位に伴い、平衡室側突部60が装着板部50の短絡孔52の周りに重ね合わされることとなっても、受圧室42と平衡室44における短絡孔52と挿通軸部56の間の隙間66を通じての流体流動が、径方向溝62を通じて許容されるようになっている。
一般に、パワーユニットと車両ボデーの間に介装される自動車用エンジンマウントにおいては、自動車が段差乗り越えをしたり凹凸の大きな路面等を走行して、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に衝撃的な荷重が入力されると、本体ゴム弾性体16が急激に乃至は過大に弾性変形することに伴い、受圧室において問題となる異音の発生要因のキャビテーション気泡を生ぜしめる程に過大な負圧が発生する場合がある。
そこにおいて、本実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント10では、このキャビテーション気泡が発生する前の大きな負圧の段階で、可動弁体54に負圧が及ぼされると、装着板部50の短絡孔52の周りに磁力吸着されている受圧室側突部58の磁力の設定に基づき、受圧室側突部58が装着板部50から離隔して、短絡孔52の遮断状態が解除される。それによって、受圧室42と平衡室44が短絡孔52と挿通軸部56の間の隙間66を通じて相互に連通せしめられる。また、受圧室42の負圧の大きさに応じて、可動弁体54の受圧室42側の変位に伴い平衡室側突部60が装着板部50の短絡孔52の周りに重ね合わされた際には、受圧室42と平衡室44が、短絡孔52と挿通軸部56の間の隙間66と径方向溝62を通じて相互に連通せしめられる。その結果、受圧室42の圧力と平衡室44の圧力が平衡状態に向かい、受圧室42の過負圧状態が解消されることで、キャビテーション気泡の発生が抑えられて、問題となる異音や振動等が防止されるのである。
ここで、本実施形態に係る受圧室42と平衡室44を短絡せしめる短絡機構においては、可動弁体54の一部が弾性磁石からなる受圧室側突部58で構成されて、受圧室側突部58の当接面64が、装着板部50の短絡孔52の周りに全周に亘って密着状に磁力吸着されることにより、短絡孔52が遮断状態に維持される構造を呈している。
従って、受圧室側突部がフェライトやアルニコ等の金属材からなる磁石で形成される場合に比して、可動弁体54の軽量化が図られ得ることに加え、受圧室側突部58と装着板部50の間に特別に緩衝材を配設する必要がないことから、受圧室側突部58と装着板部50における当接打音の軽減効果が、少ない部品点数で得られる。しかも、受圧室側突部58が装着板部50に対して直接に当接されることにより、磁石による吸着力が好適に得られるが故に、短絡孔52の遮断状態が、全周に亘って高い信頼性を確保し得る。
また、可動弁体54はハウジング等で覆われることなく、受圧室42および平衡室44に直接に露呈した構造とされていることから、部品点数の削減や構造の簡単化が図られ得る。加えて、可動弁体54の変位に際してハウジング等に当接することもないことから、可動弁体54の擦接抵抗が抑えられて作動が安定する。
さらに、可動弁体54における挿通軸部56の平衡室44側に短絡孔52よりも大径の平衡室側突部60が形成れていることにより、可動弁体54が受圧室42側に向かって変位する際に、平衡室側突部60が装着板部50の短絡孔52の周りに係止せしめられることで、可動弁体54の短絡孔52からの抜け出しが防止されて、可動弁体54の開閉作動が安定する。
更にまた、可動弁体54の受圧室側突部58が装着板部50から離隔して、短絡孔52と挿通軸部56との隙間66を通じて受圧室42と平衡室44を短絡せしめて、受圧室42の過負圧状態が解消された後には、装着板部50と受圧室側突部58の磁力吸着作用により、受圧室側突部58が装着板部50に速やかに当接せしめられて短絡孔52が遮断状態とされ、しかも、当接状態が安定して維持せしめられることに基づき、短絡孔52の遮断状態が確実となる。
それ故、本実施形態に係る自動車用エンジンマウント10においては、目的とする可動弁体54の開閉作動が安定して実現されて、過大な振動入力時における異音や振動の発生防止が、高い信頼性をもって実現され得るのである。
なお、本発明に係る流体封入式防振装置の一実施形態としての自動車用エンジンマウントは、当然ながら、上述の第一の実施形態にのみ限定されるものでなく、各種の形態が採用される。以下に第一の実施形態と異なる形態の本発明に係る自動車用エンジンマウントについて説明するが、前記実施形態と実質的に同一の構造とされた部材および部位については、前記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
すなわち、本発明の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウントでは、図4,5にも示されているように、装着板部50と平衡室側突部60の軸方向対向面間において付勢手段としてのコイルスプリング68を挿通軸部56に内挿状態で配設することにより、受圧室側突部58を装着板部50に当接させる方向の付勢力を及ぼすようにした可動弁体70が採用されている。これにより、例えば、可動弁体70の受圧室側突部58の当接面64を、付勢力を利用して、一層大きな力で装着板部50の短絡孔52の周りに当接させることも出来、それによって、短絡孔52の遮断状態が一層確実になる。
また、コイルスプリング68が装着板部50と平衡室側突部60の軸方向対向面間に設けられていることから、図5にも示されているように、可動弁体70が受圧室42側に大きく変位しても、平衡室側突部60と装着板部50は互いに当接しないようになっている。それ故、第一の実施形態のような径方向溝62を平衡室側突部60に特別に形成しなくとも、コイルスプリング68の隙間72等を利用して、受圧室42と平衡室44における短絡孔52と挿通軸部56の間の隙間66を通じての流体流動が確保されることから、可動弁体70の金型構造が簡単になる。
また、第一の実施形態や第二の実施形態では、装着板部50の短絡孔52の周りと該短絡孔52の周りに当接される受圧室側突部58の当接面62とが互いに軸直角方向に平坦に広がる形状とされていたが、例えば、図6〜7に示されている本発明の第三の実施形態としての自動車用エンジンマウントに用いられる可動弁体74において、挿通軸部56の受圧室側端部に一体形成された略円形ブロック状の受圧室側突部76の外周面に受圧室42側から平衡室44側に向かって径寸法が次第に小さくなるテーパ状の当接面78を形成する一方、かかる当接面78と軸方向で当接せしめられる装着板部50の短絡孔52の周りにテーパ状部80を設けても良い。これにより、受圧室側突部76の当接面78を装着板部50のテーパ状部80の表面に重ね合わせた際に、テーパ作用によって、可動弁体74の中心軸と装着板部50の中心軸、延いてはマウント中心軸とが同一線上に位置せしめられるセンタリング機能がはたらき、その結果、可動弁体74の開閉作動を一層安定化させることも出来る。また、受圧室側突部76と装着板部50との当接面がテーパ形状とされていることに基づき、当接面積が大きく確保されることから、当接状態の更なる安定化が図られ得る。
また、図8に示される本発明の第四の実施形態としての自動車用エンジンマウントのように、外観がボルト状のボルト本体部分で挿通軸部82を構成すると共に、ボルトヘッド部で平衡室側突部84を構成し、装着板部50の他方(図8中、下)の面から挿通軸部82を短絡孔52に挿通させて、挿通軸部82の先端に形成された螺子部86に外観ナット状の受圧室側突部88を螺着固定した可動弁体90を採用しても良い。即ち、本実施形態では、挿通軸部82と受圧室側突部88が別体形成されている。
さらに、平衡室側突部84において装着板部50の短絡孔52の周りと対向位置せしめられる部分には、平衡室側突部84の当接打音を軽減する緩衝ゴム層92を配設しても良く、特に、緩衝ゴム層92を周方向に離隔して複数設けることによって、平衡室側突部84が緩衝ゴム層92を介して装着板部50に重ね合わされる際に、受圧室42と平衡室44における短絡孔52と挿通軸部82の間の隙間66を通じての流体流動を許容する径方向溝62を、周方向で隣り合う緩衝ゴム層92の間に形成しても良い。
更にまた、第四の実施形態における受圧室側突部88が、合成樹脂材料で形成されたナット状の芯材94を備えていると共に、芯材94の表面にゴムマグネット96を固着した構造とされている。ゴムマグネット96は、芯材94の外周面や装着板部50の短絡孔52の周りと対向位置せしめられる面に亘って略一定の厚さ寸法で被着されている。本実施形態では、ゴムマグネット96が周方向に離隔して複数設けられているが、周方向の全周に亘って連続して延びていても良い。
このような第四の実施形態に係る自動車用エンジンマウントにおいては、挿通軸部64と受圧室側突部88が別体形成されていることから、例示の如く緩衝ゴム層92が固着された平衡室側突部84を備えた挿通軸部82と、合成樹脂製の芯材94にゴムマグネット96を固着した受圧室側突部88とを、それぞれ容易に形成することが出来、しかもそれら挿通軸部82と受圧室側突部88がボルトとナットによる組み付け構造を呈していることにより、可動弁体90の装着板部50への装着が簡単になる。
また、図9〜10に示される本発明の第五の実施形態のように、挿通軸部56において軸方向両端部の間を径方向中間部分から径方向外方に開口する断面で軸方向に延びる軸方向溝98が形成された可動弁体100を採用しても良い。これにより、短絡孔52と挿通軸部82の間の隙間66が実質的に大きくされて、受圧室42と平衡室44の短絡に基づくキャビテーション効果が一層効率良く発揮される。
また、前記第一乃至は第五の実施形態においては、平衡室側突部60,84が、何れも円環形状のフランジ状とされていたが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば本発明の第六の実施形態として図11〜12に示されているように、前記実施形態の平衡室側突部60に代えて、可動弁体102における挿通軸部56の平衡室側端部付近を合成樹脂製の棒状部材が軸方向に貫通配置された形態で挿通軸部56の一軸直角方向に延び出すことにより、周方向で複数分割配置された形態のフランジ状の平衡室側突部104を採用しても良い。それによって、第一乃至第五の実施形態と同様に、可動弁体102が受圧室42側に向かって変位する際に、平衡室側突部104が装着板部50の短絡孔52の周りに係止せしめられることによって、可動弁体102の短絡孔52からの抜け出しが防止されることに加え、平衡室側突部104、延いては可動弁体102の軽量化が図られ得る。
すなわち、本実施形態に係る平衡室側突部60,84,102のフランジ状には、円板形状や円環形状の他、ロッド状や花びら状等の各種態様が採用可能である。蓋し、平衡室側突部60,84,102が装着板部50に重ね合わされる際に、重ね合わせ面間のシール性は要求されないからである。
また、第一の実施形態では、装着板部50が本体ゴム弾性体16の段部30と仕切部材32の間に挟圧配置されることにより、可動弁体54が仕切部材の透孔48の受圧室側開口部に設けられていたが、例えば図13に示される本発明の第七の実施形態のように、装着板部50を仕切部材32とダイヤフラム34の嵌着金具40の間に挟圧配置することにより、可動弁体54を透孔48の平衡室側開口部に設けても良い。これにより、仕切部材32の透孔48内が受圧室42の一部として構成されることから、受圧室42の設計自由度が向上される。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これら実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、可動弁体54,70,74,90,100や装着板部50、短絡孔52、仕切部材32等における形状や大きさ、構造、配置、数等の形態は例示の如きものに限定されない。具体的に、可動弁体や短絡孔を装着板部に複数設けても良い。
また、前記実施形態では、短絡孔52や透孔48が装着板部50や仕切部材32の径方向中央部分に設けられて、マウント10の略中心軸上に設けられていたが、例えばを装着板部や仕切部材をマウントの中心軸に対して偏倚した位置に配設したり、短絡孔や透孔を装着板部や仕切部材の径方向中央部分から外れた位置に形成することによって、短絡孔や透孔をマウント中心軸に対して偏倚した位置に設けることも可能である。
また、前記実施形態では、仕切部材32と装着板部50が別体形成されていたが、例えば仕切部材を強磁性材で形成することによって仕切部材32と装着板部50が一体形成されても良い。
また、前記実施形態に係る自動車用エンジンマウントでは、単一オリフィス通路を設けた構造が採用されていたが、例えばオリフィス通路として、第一のオリフィス通路と、第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路とが設けられている構造が、採用されても良い。これにより、例えば、問題となり易い振動が低周波数域と中乃至は高周波数域に存在する場合に、第一のオリフィス通路や第二のオリフィス通路を通じて流動せしめられる各流体の共振周波数を、それぞれ低周波周域と高周波数域にチューニングすることによって、複数の振動に対して防振効果が有効に発揮され得る。
また、例えば、受圧室と平衡室の間に配される仕切部材等において、受圧室と平衡室の相対的な圧力差に基づき変位せしめられることによって圧力変動を調整する種々の可動板が設けられても良い。例えば、特開平01−93638号公報や特開2005−273684号公報等にも示されているように、仕切部材に形成された所定の収容領域に対して可動板を非接着に収容配置して、収容領域内で板厚方向に微小変位可能とすると共に、該収容領域に形成した通孔によって、受圧室の圧力を可動板の一方の面に及ぼすと共に平衡室の圧力を可動板の他方の面に及ぼすことにより、受圧室と平衡室の相対的な圧力差を収容領域内での可動板の微小変位に基づいて吸収させると共に、可動板の変位許容量以上の圧力吸収を阻止するようにした構造が採用され得る。或いは、例えば、特開平10−252807号公報や特開2000−186739号公報等にも示されているように、可動板の少なくとも外周部分を仕切ゴム弾性板で構成し、該仕切ゴム弾性板の外周縁部を仕切部材や第二の取付部材に固着することにより、受圧室と平衡室を流体密に仕切るように構成することで、該仕切ゴム弾性板の各一方の面に及ぼされる受圧室と平衡室の圧力差に基づく該仕切ゴム弾性板の弾性変位乃至は弾性変形に基づいて受圧室と平衡室の相対的な圧力差を吸収させると共に、仕切ゴム弾性板の弾性変形によって大きな圧力吸収を阻止するようにした構造なども、採用可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、自動車用ボデーマウントやデフマウント、サスペンションメンバマウント等の他、自動車以外の各種振動体の防振装置に対して、何れも、適用可能である。
本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウントの縦断面図。 図1のII−II断面図。 図1の自動車用エンジンマウントにおいて図1と異なる作動形態の要部を拡大して示す縦断面図。 本発明の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウントの一作動形態の要部を拡大して示す縦断面図。 図4の自動車用エンジンマウントにおいて図4と異なる作動形態の要部を拡大して示す縦断面図。 本発明の第三の実施形態としての自動車用エンジンマウントの一作動形態の要部を拡大して示す縦断面図。 図6の自動車用エンジンマウントにおいて図6と異なる作動形態の要部を拡大して示す縦断面図。 本発明の第四の実施形態としての自動車用エンジンマウントの一作動形態の要部を拡大して示す縦断面図。 本発明の第五の実施形態としての自動車用エンジンマウントの一作動形態の要部を拡大して示す縦断面図。 図9のX−X断面図。 本発明の第六の実施形態としての自動車用エンジンマウントの一作動形態の要部を拡大して示す縦断面図。 図11のXII−XII断面図。 本発明の第七の実施形態としての自動車用エンジンマウントの縦断面図。
符号の説明
10:自動車用エンジンマウント、12:第一の取付金具、14:第二の取付金具、16:本体ゴム弾性体、32:仕切部材、34:ダイヤフラム、42:受圧室、44:平衡室、46:オリフィス通路、50:装着板部、52:短絡孔、54:可動弁体、56:挿通軸部、58:受圧室側突部、60:平衡室側突部、66:隙間

Claims (6)

  1. 第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該第二の取付部材で仕切部材を支持せしめて、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されて非圧縮性流体が封入された平衡室を、該仕切部材を挟んだ両側に形成すると共に、それら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路を形成した流体封入式防振装置において、
    強磁性材からなる板状の装着板部を前記仕切部材に設けて、該装着板部の一方の面を前記受圧室に晒すと共に他方の面を前記平衡室に晒し、該装着板部を貫通して該受圧室と該平衡室を短絡させる短絡孔を形成すると共に、該短絡孔に挿通された挿通軸部の軸方向両側にそれぞれフランジ状の当接部を備えた可動弁体を設けて、該可動弁体における該受圧室側の該当接部を弾性磁石で構成し、該弾性磁石からなる該当接部の該装着板部への磁力吸着により該短絡孔が遮断状態とされる一方、該受圧室と該平衡室の圧力差で該当接部の該装着板部への磁力吸着が解除されることにより該短絡孔と該挿通軸部との隙間を通じての流体流動が許容されるようにしたことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記可動弁体における前記平衡室側の前記当接部と前記装着板部の該当接部に当接する部分との少なくとも一方に凹溝を形成して、該当接部と該装着板部の当接状態で前記短絡孔と前記挿通軸部との隙間が該凹溝を通じて平衡室に連通されるようにした請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記可動弁体における前記受圧室側の前記当接部を前記装着板部に当接させる方向の付勢力を該可動弁体に及ぼす付勢手段を設けた請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記可動弁体の前記挿通軸部と前記各当接部が弾性材料で一体形成されていると共に、該可動弁体の前記受圧室側の該当接部にだけ着磁されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記可動弁体の前記挿通軸部に対して前記各当接部の少なくとも一方が別体形成されており、前記短絡孔に挿通された該挿通軸部に対して別体形成された該当接部が固定されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記可動弁体における前記受圧室側の前記当接部が、合成樹脂材料で形成された芯材の表面にゴムマグネットが固着されることによって構成されている請求項1,2,3,5の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
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