JP2009144225A - 成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.8〜2.5%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.1%、N:0.0005〜0.01%、Nb:0.005〜0.05%、Cr:0.1〜2.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、面積率で、50%以上のフェライト相と10%以上のマルテンサイト相を含み、前記フェライト相に占める粒径が15μm以下で、かつアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の面積率が70%以上であり、前記マルテンサイト相の平均粒径が10μm以下であるミクロ組織を有する成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【選択図】なし
Description
C:0.03〜0.15%
Cは、鋼を強化するにあたり重要な元素であり、高い固溶強化能を有するとともに、マルテンサイト相による組織強化を利用する際に、その面積率や硬度を調整するために不可欠な元素である。C量が0.03%未満では、必要な面積率のマルテンサイト相を得るのが困難になるとともに、マルテンサイト相が硬質化しないため、十分な強度が得られない。一方、C量が0.15%を超えると、溶接性が劣化するともに、偏析層の形成により成形性の低下を招く。したがって、C量は0.03〜0.15%とする。
Siは、本発明において極めて重要な元素であり、焼鈍時に、フェライト変態を促進するとともに、フェライト相からオーステナイト相へ固溶Cを排出してフェライト相を清浄化し、延性を向上させると同時に、オーステナイト相を安定化するため急冷が困難な溶融亜鉛めっきラインでもマルテンサイト相を生成し、複合組織化を容易にする。また、フェライト相に固溶したSiは、加工硬化を促進して延性を高めるとともに、歪が集中する部位での歪伝搬性を改善して曲げ性を向上させる。さらに、Siは、フェライト相を固溶強化してフェライト相とマルテンサイト相の硬度差を低減し、その界面での亀裂の発生を抑制して局部変形能を改善して穴拡げ性の向上に寄与する。こうした効果を得るには、Si量を0.8%以上にする必要がある。一方、Si量が2.5%を超えると、変態点の上昇が著しく、生産安定性が阻害されるのみならず、異常組織が発達し、成形性が低下する。したがって、Si量は0.8〜2.5%とする。
Mnは、鋼の熱間脆化の防止ならびに強度確保のために有効であるとともに、焼入れ性を向上させて複合組織化を容易にする。こうした効果を得るには、Mn量を1.0%以上にする必要がある。一方、Mn量が3.0%を超えると、成形性の劣化を招く。したがって、Mn量は1.0〜3.0%とする。
Pは、所望の強度に応じて添加できる元素であり、また、フェライト変態を促進するために複合組織化にも有効な元素である。こうした効果を得るには、P量を0.001%以上にする必要がある。一方、P量が0.05%を超えると、溶接性の劣化を招くとともに、亜鉛めっきを合金化処理する場合には、合金化速度を低下させ、亜鉛めっきの品質を損なう。したがって、P量は0.001〜0.05%とする。
Sは、粒界に偏析して熱間加工時に鋼を脆化させるとともに、硫化物として存在して局部変形能を低下させるため、その量は0.01%以下、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.001%以下とする必要がある。しかし、生産技術上の制約から、S量は0.0001%以上にする必要がある。したがって、S量は0.0001〜0.01%、好ましくは0.0001〜0.003%、より好ましくは0.0001〜0.001%とする。
Alは、フェライトを生成させ、強度-延性バランスを向上させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Al量を0.001%以上にする必要がある。一方、Al量が0.1%を超えると、表面性状の劣化を招く。したがって、Al量は0.001〜0.1%とする。
Nは、室温時効により材質を劣化させる元素である。特に、N量が0.01%を超えると、その程度が顕著となる。その量は少ないほど好ましいが、生産技術上の制約から、N量は0.0005%以上にする必要がある。したがって、N量は0.0005〜0.01%とする。
Nbは、Si同様、本発明において極めて重要な元素であり、焼鈍の加熱時に再結晶を抑制するため、未再結晶状態でのオーステナト変態が促進され、続く均熱時にオーステナイト相が極めて微細に分散し、その後の冷却時にフェライト相とマルテンサイト相が均一、微細に分散した複合組織が形成される。この均一、微細な複合組織は、塑性変形時に生じた亀裂の伝播を抑制して局部変形能を高め、穴拡げ性を向上させると同時に、歪の伝播性を高めて曲げ性を向上させる。こうした効果を得るには、Nb量を0.005%以上にする必要がある。一方、Nb量が0.05%を超えると、フェライト相を析出強化する作用が大きくなり、延性の低下を招く。したがって、Nb量は0.005〜0.05%とする。
Crは、SiやNb同様、本発明において極めて重要な元素であり、焼鈍の均熱時にフェライト相からオーステナイト相へのCの分配を促進し、オーステナイト相の安定化を図り、フェライト相とマルテンサイト相からなる複合組織化を容易にするとともに、その後の冷却時にパーライト相やベイナイト相の生成を著しく遅延させる。また、Crは、冷却後のめっき処理やその合金化処理でマルテンサイト相を軟質化させ、フェライト相とマルテンサイト相の硬度差を低減し、その界面での亀裂の発生を抑制して局部変形能を改善し、穴拡げ性の向上に寄与する。特に、上記したNb添加によって形成された均一、微細な複合組織による亀裂伝播の抑制効果と重畳させることにより、穴拡げ性の著しい改善を図れる。こうした効果を得るには、Cr量を0.1%以上にする必要がある。一方、Cr量が2.0%を超えると、Cr炭化物が過剰に生成し、延性の低下を招く。したがって、Cr量は0.1〜2.0%とする。
Mo、Niは、固溶強化元素としての役割のみならず、焼鈍時の冷却過程において、オーステナイト相を安定化し、複合組織化を容易にする。こうした効果を得るには、Mo量、Ni量は、それぞれ0.01%以上にする必要がある。一方、Mo量が1.0%、Ni量が2.0%を超えると、めっき性、成形性、スポット溶接性が劣化する。したがって、Mo量は0.01〜1.0%、Ni量は0.01〜2.0%とする。
TiとVは、C、S、Nと析出物を形成して強度および靭性の向上に有効に寄与する。こうした効果を得るには、Ti量、V量をそれぞれ0.005%以上にする必要がある。一方、Ti量、V量がそれぞれ0.1%を超えると、析出強化が過度に働き、延性の低下を招く。したがって、Ti量とV量はそれぞれ0.005〜0.1%とする。
Bは、オーステナイト粒界からフェライトの生成を抑制して焼入れ性を向上させる元素であり、複合組織化を促進にする。こうした効果を得るには、B量を0.0003%以上にする必要がある。一方、B量が0.003%を超えると、延性の低下を招く。したがって、B量は0.0003〜0.003%とする。
フェライト相の面積率:50%以上
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、延性に富む軟質なフェライト相中に、主として硬質なマルテンサイト相を均一、微細に分散させた複合組織からなるが、十分な延性を確保するには、面積率で50%以上のフェライト相が必要である。
上記のフェライト相の面積率を確保しても、上記したように、フェライト相とマルテンサイト相が均一、微細に分散していないと、亀裂の伝播を抑制したり、歪の伝播性を高めてその局所集中を抑制することにより穴拡げ性や曲げ性を向上させる効果が低減される。そのため、フェライト相の結晶粒を微細にする必要がある。また、結晶粒が展伸すると、亀裂の伝播が助長され、穴拡げ性が低下するため、そのアスペクト比を小さくする必要がある。優れた穴拡げ性や曲げ性を得るには、フェライト相に占める粒径が15μm以下、アスペクト比が2.0以下のフェライト粒の面積率を70%以上にする必要がある。
780MPa以上のTSを確保するには、マルテンサイト相の面積率を10%以上にする必要がある。また、上記したように、マルテンサイト相がフェライト相中に均一、微細に分散すると、マルテンサイト相とフェライト相の界面で発生する亀裂のサイズが微小になり、その発生頻度も抑制されるとともに、マルテンサイト相自体が亀裂の伝播に対する障害となり、穴拡げ性などの延性が向上する。さらに、均一、微細に分散したマルテンサイト相は、転位の発生源となり、歪の伝播性を高めて曲げ性の向上にも寄与する。このような効果を得るには、マルテンサイト相の平均粒径を10μm以下にする必要がある。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、例えば、上記の成分組成を有する鋼板を、5℃/s以上の平均加熱速度でAc1変態点以上の温度域に加熱し、(Ac1変態点+50)〜(Ac3変態点+25)℃の温度域で10〜500s均熱し、3〜30℃/sの平均冷却速度で550℃以下の温度域まで冷却する条件で焼鈍後、溶融亜鉛めっきを施す方法によって製造できる。
5℃/s以上の平均加熱速度でAc1変態点以上の温度域に加熱することにより、未再結晶のフェライト相をオーステナイト相に変態させ、その後の均熱、冷却過程において、均一、微細なフェライト相とマルテンサイト相の複合組織が得られるため、穴拡げ性や曲げ性が向上する。平均加熱速度が5℃/s未満、加熱温度がAc1変態点未満では、再結晶時に粗大な圧延方向に層状に伸展したアスペクト比の低いフェライト相が生成し、その後の均熱、冷却過程において、均一、微細な複合組織が得られない。
上記のような均一、微細な複合組織を得るには、焼鈍時に、再結晶フェライト相を十分に生成させるとともに、Cをオーステナイト相に濃化させて、オーステナイト相を安定化させる必要がある。均熱温度が(Ac1変態点+50)℃未満の場合や、均熱時間が10s未満の場合は、フェライト相に加工組織が残存して回復することによりアスペクト比が低下するとともに、固溶Cの分配が遅延するため、延性に富む軟質なフェライト相が得られず、穴拡げ性や曲げ性が低下する。さらに、オーステナイト相の安定化が不十分となり、マルテンサイト変態が抑制されて高強度化を図れない。一方、均熱温度が(Ac3変態点+25)℃を超えたり、均熱時間が500sを超えると、オーステナイト相が粗大化し、その後の冷却過程において、均一、微細な複合組織が得られず、穴拡げ性や曲げ性が低下する。
均熱後は、均熱温度から3〜30℃/sの平均冷却速度で550℃以下の温度域(冷却停止温度)まで冷却する必要があるが、これは、平均冷却速度が3℃/s未満だと、パーライト相やベイナイト相が多量に生成してマルテンサイト相の生成を抑制するため、十分な強度や穴拡げ性が得られず、平均冷却速度が30℃/sを超えると、十分な量のフェライト相の生成が抑制されたり、フェライト相とマルテンサイト相の硬度差が著しく大きくなり、穴拡げ性の低下を招くためである。なお、パーライト相やベイナイト相の生成領域を回避して必要なマルテンサイト相の量を確保するため、こうした平均冷却速度で550℃以下の停止温度まで冷却する必要がある。
焼鈍後に、350〜550℃の温度域で20〜150sの熱処理を行うと、マルテンサイト相が軟質化するため、フェライト相との硬度差がより小さくなり、穴拡げ性や曲げ性をより向上できる。熱処理温度が350℃未満の場合や、熱処理時間が20s未満の場合は、こうした効果が小さい。一方、熱処理温度が550℃を超える場合や、熱処理時間が150sを超える場合は、マルテンサイト相の硬度低下が著しく、780MPa以上のTSが得られない。
Claims (8)
- 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.8〜2.5%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.1%、N:0.0005〜0.01%、Nb:0.005〜0.05%、Cr:0.1〜2.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、面積率で、50%以上のフェライト相と10%以上のマルテンサイト相を含み、前記フェライト相に占める粒径が15μm以下で、かつアスペクト比が2.0以下のフェライト粒の面積率が70%以上であり、前記マルテンサイト相の平均粒径が10μm以下であるミクロ組織を有する成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、Mo:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜2.0%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する請求項1に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、Ti:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.1%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する請求項1または2に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、B:0.0003〜0.003%を含有する請求項1から3のいずれかに記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 亜鉛めっきが合金化亜鉛めっきである請求項1から4のいずれかに記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1から4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼板を、5℃/s以上の平均加熱速度でAc1変態点以上の温度域に加熱し、(Ac1変態点+50)〜(Ac3変態点+25)℃の温度域で10〜500s均熱し、3〜30℃/sの平均冷却速度で550℃以下の温度域まで冷却する条件で焼鈍後、溶融亜鉛めっきを施す成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 焼鈍時の冷却後、350〜550℃の温度域で20〜150sの熱処理を施した後に溶融亜鉛めっきを施す請求項6に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 溶融亜鉛めっきを施した後、450〜550℃の温度域で亜鉛めっきの合金化処理を施す請求項6または7に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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