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JP2008243828A - 負極および二次電池の製造方法 - Google Patents

負極および二次電池の製造方法 Download PDF

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JP2008243828A
JP2008243828A JP2008144963A JP2008144963A JP2008243828A JP 2008243828 A JP2008243828 A JP 2008243828A JP 2008144963 A JP2008144963 A JP 2008144963A JP 2008144963 A JP2008144963 A JP 2008144963A JP 2008243828 A JP2008243828 A JP 2008243828A
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Isamu Konishiike
勇 小西池
Tomoo Takada
智雄 高田
Kenichi Kawase
賢一 川瀬
Yukio Miyaki
幸夫 宮木
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Abstract

【課題】サイクル特性などの電池特性を向上させることができる二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】負極集電体12Aに、気相法により、ケイ素などの単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む負極活物質層12Bを形成する。この際、負極活物質層12Bが負極集電体12Aと合金化するようにする。さらに、気相法により負極活物質層12Bの表面に金属リチウムを堆積させるなどして、負極活物質層12Bに、負極容量の5%以上40%以下のリチウムを吸蔵させる。これにより、負極活物質層12Bには少なくとも初期の充放電サイクルにおいて、放電後にも電気化学的に活性なリチウムが残存することとなる。そのため、電解質との反応などによりLiが消費されても、Liを補充することができると共に、放電末期における負極12の電位上昇を抑制することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、負極集電体上に負極活物質層を有する負極の製造方法、およびその負極を備えた二次電池の製造方法に関する。
近年、モバイル機器の高性能化および多機能化に伴い、それらの電源である二次電池の高容量化が切望されている。この要求に応える二次電池としてリチウム二次電池がある。しかし、現在におけるリチウム二次電池の代表的な形態である、正極にコバルト酸リチウム、負極に黒鉛を用いた場合の電池容量は飽和状態にあり、大幅な高容量化は極めて困難な状況である。そこで、古くから負極に金属リチウム(Li)を用いることが検討されているが、この負極を実用化するには、リチウムの析出溶解効率の向上およびデンドライト状の析出形態の制御などを図る必要がある。
その一方で、最近、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、あるいはスズ(Sn)などを用いた高容量の負極を用いた二次電池の検討が盛んに行われている。しかし、これらの高容量負極は充放電を繰り返すと、活物質の激しい膨張および収縮により粉砕して微細化し、集電性が低下したり、表面積の増大に起因して電解液の分解反応が促進され、サイクル特性は極めて劣悪であった。そこで、気相法、液相法あるいは焼結法などにより集電体に活物質層を形成した負極を用いれば、粒子状の活物質およびバインダーなどを含むスラリーを塗布した従来の塗布型負極に比べて微細化を抑制することができると共に、集電体と活物質層とを一体化することができるので負極における電子伝導性が極めて良好となり、容量的にもサイクル寿命的にも高性能化が期待されている。また、従来は負極中に存在した導電材、バインダーおよび空隙などを低減または排除することもできるので、本質的に負極を薄膜化することが可能となる。
ところが、この負極でも、充放電に伴う活物質の非可逆的反応によりサイクル特性が十分とは言えない。また、従来の高容量負極と同様に、電解質との反応性は依然として高く、充放電に伴う電解質との反応によって、特にサイクル初期において容量が大きく劣化してしまう。さらに、これら高容量負極では、特に放電末期においてリチウムの脱離に伴い負極電位が著しく上昇してしまい、これが特性劣化を引き起こす要因の一つとなっている。
そこで、これらの問題を解決するために、電池反応に関与するリチウムを予め負極に吸蔵させておく方法が考えられる。なお、負極に炭素を用いた従来のリチウムイオン二次電池においても、負極に予め所定量のリチウムを吸蔵させておく技術が多数報告されている。例えば、金属リチウム層と炭素層を交互に積層した構造を有する粒子を用いた負極(特許文献1参照。)、遷移金属カルコゲン化合物または炭素材料の薄層にアルカリ金属を電気化学的に担持させた負極(特許文献2参照。)、金属リチウム箔を貼り付けて炭素材料中にリチウム拡散させ保持させた負極(特許文献3参照。)、電解液を注入して金属リチウムと炭素材料を短絡させることによりリチウムを導入した負極(特許文献4参照。)、炭素材料に金属リチウムを短絡させた負極に金属リチウムと錯体を形成する芳香族炭化水素を添加したリチウム二次電池(特許文献5参照。)、電池容器内に負極に対して電気的に接触させずに設けた金属リチウム製の補給部材を有するリチウム二次電池(特許文献6参照。)の報告がなされている。
しかし、このような炭素系負極においては、リチウムを予め吸蔵させておくことにより炭素材料の不可逆容量分を改善することはできるが、一般に炭素系負極は上述した高容量負極と異なり充放電効率が高く、さらにリチウム吸蔵量が少ないので、予めリチウムを吸蔵させることは負極容量の大きな低下につながり、実際のエネルギー密度的な観点におけるメリットは少ない。
また、炭素以外の負極においても、例えば、ケイ素あるいはゲルマニウムよりなる負極材料にイオン注入装置を用いて予めリチウム注入処理が施されている負極(特許文献7参照。)、正極および負極共にアルカリ金属イオンを挿入しうる状態で作製し、アルカリ金属イオンと溶媒和または錯体形成しうる化合物を含む有機溶媒中にアルカリ金属を分散させた分散液に接触させてアルカリ金属を挿入した電池(特許文献8参照。)が報告されている。
特開平7- 326345号公報 特許第3255670号公報 特許第3063320号公報 特開平10- 270090号公報 特開平11- 185809号公報 特開2001- 297797号公報 特開2002- 93411号公報 特開平11- 219724号公報
しかしながら、特許文献7に記載の技術では、予め注入するリチウムイオン濃度が1×1016イオン/cm〜1×1018イオン/cm3 程度と微量であるので、サイクル劣化を補うためのリザーバーとしての役割は果たせず、その効果も小さい。さらに、特許文献7に図示されているような、プラズマを用いたごく微量のドープを行うイオン注入装置は、装置構成も複雑化する上、効果を得られる量のリチウムを簡便にドープすることが難しい。また、特許文献8は、正極および負極を共に活物質がアルカリ金属を挿入しうる状態で作製するもの、すなわち放電開始型の正極を用いるものであり、電池反応に関与するリチウム量に比べて過剰なリチウムを負極内に予め吸蔵させることにより特性の向上を図るものではない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、過剰なリチウムを負極に含ませることにより、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる電池を提供することにある。
本発明の負極の製造方法は、負極集電体に、気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により、ケイ素またはゲルマニウムの単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む負極活物質層を形成する工程と、その負極活物質層に、負極容量の5%以上40%以下のリチウムを吸蔵させる工程とを含むようにしたものである。
本発明の二次電池の製造方法は、負極集電体に、気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により、ケイ素またはゲルマニウムの単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む負極活物質層を形成する工程と、その負極活物質層に、負極容量の5%以上40%以下のリチウムを吸蔵させることで負極を作製する工程と、正極集電体に、正極活物質を形成することにより正極を作製する工程と、負極および正極を、電解質と共に外装部材に挿入する工程とを含むようにしたものである。
本発明の負極および二次電池の製造方法によれば、負極集電体に形成した負極活物質層に、放電後に負極に電気化学的に活性なリチウムが残存するようにしたので、電解液との反応などによりリチウムが消費されたとしても、リチウムを補充することができ、劣化を抑制することができる。また、放電末期における負極の電位上昇を抑制することができ、負極の電位上昇に伴う劣化を抑制することができる。よって、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、いわゆるコイン型といわれるものであり、外装カップ11に収容された負極12と、外装缶13に収容された正極14とが、電解液を含浸させたセパレータ15を介して積層されている。外装カップ11および外装缶13の周縁部は絶縁性のガスケット16を介してかしめることにより密閉されている。外装カップ11および外装缶13は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウムなどの金属によりそれぞれ構成されている。
負極12は、例えば、負極集電体12Aと、負極集電体12Aに設けられた負極活物質層12Bとを有している。負極活物質層12Bは、負極集電体12Aの両面に形成されていてもよく、片面に形成されていてもよい。
負極集電体12Aは、リチウムと金属間化合物を形成しない金属元素の少なくとも1種を含む金属材料により構成されていることが好ましい。リチウムと金属間化合物を形成すると、充放電に伴い膨張および収縮し、構造破壊が起こって、集電性が低下する他、負極活物質層12Bを支える能力が小さくなり負極活物質層12Bが負極集電体12Aから脱落し易いからである。なお、本明細書において金属材料には、金属元素の単体だけでなく、2種以上の金属元素あるいは1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなる合金も含める。リチウムと金属間化合物を形成しない金属元素としては、例えば、銅(Cu),ニッケル(Ni),チタン(Ti),鉄(Fe)あるいはクロム(Cr)が挙げられる。
中でも、負極活物質層12Bと合金化する金属元素が好ましい。後述するように、負極活物質層12Bがリチウムと合金化するケイ素,ゲルマニウムあるいはスズなどの単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む場合には、充放電に伴い負極活物質層12Bが大きく膨張・収縮して負極集電体12Aから脱落しやすいが、負極活物質層12Bと負極集電体12Aとを合金化させて強固に接着させることにより、脱落を抑制することができるからである。リチウムと金属間化合物を形成せず、負極活物質層12Bと合金化する金属元素、例えば、ケイ素,ゲルマニウムあるいはスズの単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種と合金化する金属元素としては、銅,ニッケル,鉄が挙げられる。特に、負極活物質層12Bとの合金化、強度および導電性の観点からは、銅,ニッケルあるいは鉄が好ましい。
なお、負極集電体12Aは、単層により構成してもよいが、複数層により構成してもよい。その場合、負極活物質層12Bと接する層をケイ素,ゲルマニウムあるいはスズなどの単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種と合金化する金属材料により構成し、他の層を他の金属材料により構成するようにしてもよい。また、負極集電体12Aは、負極活物質層12Bとの界面以外は、リチウムと金属間化合物を形成しない金属元素の少なくとも1種よりなる金属材料により構成することが好ましい。
負極活物質層12Bは、例えば、負極活物質として、リチウムと合金を形成可能な元素の単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含んで構成されている。中でも、負極活物質としては、ケイ素,ゲルマニウムあるいはスズの単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、特に、ケイ素の単体,合金あるいは化合物が好ましい。これらはリチウムを吸蔵・離脱する能力が大きく、組み合わせによっては従来の黒鉛と比較して負極12のエネルギー密度を高くすることができるからである。中でも特に、ケイ素の単体,合金あるいは化合物は毒性が低く、かつ安価だからである。
ケイ素の合金あるいは化合物としては、例えば、SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Ni2 Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,NiSi2 ,CaSi2 ,CrSi2 ,Cu5 Si,FeSi2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VSi2 ,WSi2 ,ZnSi2 ,SiC,Si3 4 ,Si2 2 O,SiOv (0<v≦2)あるいはLiSiOが挙げられる。
ゲルマニウムの化合物としては、例えば、Ge3 4 ,GeO,GeO2 ,GeS,GeS2 ,GeF4 あるいはGeBr4 が挙げられる。スズの化合物あるいは合金としては、例えば、スズと、長周期型周期表の4〜11族に含まれる元素との合金が挙げられる。この他にも、Mg2 Sn,SnOw (0<w≦2),SnSiO3 あるいはLiSnOが挙げられる。
負極活物質層12Bは、また、気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成されたものであることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層12Bの膨張・収縮による破壊を抑制することができると共に、負極集電体12Aと負極活物質層12Bとを一体化することができ、負極活物質層12Bにおける電子伝導性を向上させることができるからである。また、バインダーおよび空隙などを低減または排除でき、負極12を薄膜化することもできるからである。なお、本明細書でいう「活物質層を焼結法により形成する」とは、活物質を含む粉末とバインダーとを混合し成形した層を、非酸化性雰囲気下等で熱処理することにより、熱処理前よりも体積密度が高く、より緻密な層を形成することを意味する。
負極活物質層12Bは、更に、膨張および収縮により負極集電体12Aから脱落しないように、負極集電体12Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体12Aと合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体12Aの構成元素が負極活物質層12Bに、または負極活物質層12Bの構成元素が負極集電体12Aに、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。この合金化は、負極活物質層12Bを気相法,液相法あるいは焼結法により形成する際に同時に起こることが多いが、更に熱処理が施されることにより起こったものでもよい。なお、本明細書では、上述した元素の拡散も合金化の一形態に含める。
負極活物質層12Bには、少なくとも初期の充放電サイクルにおいて、放電後にも電気化学的に活性なリチウムが残存している。これによりこの二次電池では、電解液との反応などによりリチウムが消費されても、リチウムを補充することができると共に、放電末期における負極12の電位上昇を抑制することができるようになっている。この電気化学的に活性なリチウムは、少なくとも初回の放電後に残存していればよく、3サイクル目までの放電後に残存していればより好ましい。負極12では3サイクル程度の初期における容量劣化が著しいからである。もちろん、それ以降のサイクルにおける放電後にも電気化学的に活性なリチウムが残存していてもよい。
負極12に電気化学的に活性なリチウムが残存しているか否かは、例えば、放電後の二次電池を解体して負極12を取り出し、金属リチウムが析出可能な金属箔などを対極とした半電池を作製し、負極12からのリチウムの脱離、対極への金属リチウムの析出が可能であるか否かにより確認される。すなわち、負極12からのリチウムの脱離が認められれば負極12に電気化学的に活性なリチウムが残存しており、負極12からのリチウムの脱離が認められなければ負極12に電気化学的に活性なリチウムが残存していないと判断される。その際、用いる電解液および半電池の形状は通電を確認することができればどのようなものでもよく、対極に用いる金属箔としてはリチウム箔,銅箔あるいはニッケル箔などが挙げられる。負極12は電池から取り出した後、リチウムとの反応性の低い有機溶媒などにより洗浄し乾燥させるようにしてもよい。
このように負極活物質層12Bに放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存するようにするには、例えば、組み立て時、すなわち初回充電前(初回充放電前)に、負極活物質層12Bに予めリチウムを吸蔵させておくことが好ましい。予めリチウムを吸蔵させておけば、充放電前にリチウムと電解液との反応により負極12に被膜を形成することができ、サイクル初期におけるリチウムの消費を抑制することができると共に、充放電に伴う膨張収縮により負極集電体12Aにかかる応力を緩和することができるからである。また、負極活物質層12Aがケイ素またはゲルマニウムの単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む場合には、負極活物質層12Aに存在するダングリングボンドや、または水素あるいは酸素などの不純物を低減させることもできるからである。
負極活物質層12Bに予め吸蔵させるリチウムの量は、負極容量の5%以上40%以下であることが好ましい。5%未満では負極12に放電後にも電気化学的に活性なリチウムを残存させることが難しく、40%を超えると容量が低下してしまうだけでなく、負極活物質とリチウムとの合金化に伴う応力により負極12が湾曲してしまい、取り扱い性および製造性が低下してしまうからである。なお、負極活物質層12Bに予め吸蔵させるリチウムの量が負極容量の5%未満であっても、負極12に放電後にも電気化学的に活性なリチウムが残存する場合もある。また、放電後に活性なリチウムが残存しない場合であっても、負極12に予めリチウムを吸蔵させておくようにすれば、残存する場合に比べて程度は小さいが、上述した効果を得ることができるので好ましい。その場合、負極活物質層12Bに予め吸蔵させるリチウムの量は、負極容量の0.5%以上とすることが好ましい。
また、負極活物質層12Bに予め吸蔵させるリチウムの量は、金属リチウムの厚みに換算して、単位面積当たり0.02μm以上20μm以下であればより好ましい。製造方法にもよるが、単位面積当たり0.02μm未満では取り扱い雰囲気による酸化によりリチウムが失活してしまい、十分な効果を得ることができないからである。また、20μmを超えると、負極活物質層12が厚くなり、負極集電体11にかかる応力が著しく大きくなってしまい、更に、製造方法によっては取り扱い性および製造性が極度に低下してしまうからである。
正極14は、例えば、正極集電体14Aと、正極集電体14Aに設けられた正極活物質層14Bとを有しており、正極活物質層14Bの側が負極活物質層12Bと対向するように配置されている。正極集電体14Aは、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
正極活物質層14Bは、例えば、正極活物質としてリチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどのバインダーを含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料としては、例えば、一般式Lix MIO2 で表されるリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。リチウム含有金属複合酸化物は、高電圧を発生可能であると共に、高密度であるため、二次電池の更なる高容量化を図ることができるからである。なお、MIは1種類以上の遷移金属であり、例えばコバルトおよびニッケルのうちの少なくとも一方が好ましい。xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム含有金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 あるいはLiNiO2 などが挙げられる。
セパレータ15は、負極12と正極14とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ15は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンにより構成されている。
セパレータ15に含浸されている電解液、すなわち液状の電解質は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩であるリチウム塩と含んでおり、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート,ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネートあるいはエチルメチルカーボネート等の有機溶媒が挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
リチウム塩としては、例えば、LiPF6 ,LiCF3 SO3 あるいはLiClO4 が挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、金属箔よりなる負極集電体12Aを用意し、負極集電体12Aに、気相法または液相法により、負極活物質を堆積させることにより負極活物質層12Bを成膜する。また、粒子状の負極活物質を含む前駆層を集電体12Aに形成したのち、これを焼結させる焼結法により負極活物質層12Bを成膜してもよいし、気相法,液相法および焼結法のうちの2つまたは3つの方法を組み合わせて負極活物質層12Bを成膜するようにしてもよい。このように気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法を用いることにより、場合によっては、負極集電体12Aとの界面の少なくとも一部において負極集電体12Aと合金化した負極活物質層12Bが成膜される。なお、負極集電体12Aと負極活物質層12Bとの界面をより合金化させるために、更に、真空雰囲気下または非酸化性雰囲気下で熱処理を行うようにしてもよい。特に、鍍金により負極活物質層12Bを成膜する場合には、合金化しにくい場合があるので、必要に応じてこの熱処理を行うことが好ましい。また、気相法により成膜する場合においても、負極集電体12Aと負極活物質層12Bとの界面をより合金化させることにより特性を向上させることができる場合があるので、必要に応じてこの熱処理を行うことが好ましい。
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法が挙げられ、具体的には、真空蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法,CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法などが挙げられる。液相法としては電解鍍金あるいは無電解鍍金等の公知の手法が利用可能である。焼結法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼結法,反応焼結法あるいはホットプレス焼結法が利用可能である。
次いで、例えば、負極活物質層12Bに負極容量の0.5%以上40%以下のリチウムを吸蔵させることが好ましい。リチウムを吸蔵させる方法には、公知のいずれの技術を用いてもよい。例えば、負極活物質層12Bの表面に気相法により金属リチウムを堆積させて吸蔵させるようにしてもよく、金属リチウム箔を貼り付けることにより、あるいは粉末状の金属リチウムを塗布することにより、リチウムを吸蔵させるようにしてもよい。また、金属リチウムと錯体を形成する芳香族化合物を用い、そのリチウム錯体と負極活物質層12Bとを接触させることによりリチウムを吸蔵させるようにしてもよいし、負極活物質層12Bに電気化学的にリチウムを挿入するようにしてもよい。
中でも、気相法により金属リチウムを堆積させてリチウムを吸蔵させる方法が好ましい。活性の高い粉末状の金属リチウムを扱うのは危険性が高く、また、電気化学的にリチウムを挿入する場合などのように溶媒を用いると負極の取り扱いが悪くなり、電池の製造プロセスへの適用性も悪くなってしまうからである。更に、気相法によれば吸蔵させるリチウムの量を容易に制御することができると共に、大面積にわたって均一にリチウムを吸蔵させることもでき、ロール状の電極なども連続的に処理することができるからである。
気相法としては、例えば真空蒸着法あるいはイオンプレーティング法などの原材料を加熱して成膜するものが好ましいが、スパッタリング法などを用いてもよい。例えば、負極活物質層12Bを気相法により成膜する場合には、用いる装置によっては大気開放せずに金属リチウムを連続して堆積させるようにしてもよい。このように連続して行うようにすれば、余分な吸着水の存在や酸化皮膜の形成を抑制することができるので好ましい。この場合、負極活物質層12Bの成膜と金属リチウムの堆積とを真空蒸着法などの同一の方法により行うようにしてもよく、負極活物質層12Bをスパッタリング法により成膜し、金属リチウムを真空蒸着により堆積させるなどの異なる方法により行うようにしてもよい。
気相法を用いる場合、堆積させた金属リチウムは、その量あるいは堆積速度などにもよるが、堆積させる過程において負極活物質層12Bに拡散し、合金化が進行して吸蔵される。なお、リチウムの負極活物質層12Bへの拡散、合金化を促進するために、更に、非酸化雰囲気下において熱処理を行うようにしてもよい。
また、気相法を用いる場合には特に、リチウムの吸蔵量を、金属リチウムの厚みに換算して、単位面積当たり0.02μm以上20μm以下とすることが好ましい。上述したように、0.02μm未満では酸化によるリチウムの失活により十分な効果を得ることがでず、20μmを超えると、製造性が低下してしまうからである。
また、正極14を、例えば、正極活物質と導電材とバインダーとを混合して合剤を調製し、これをN−メチルピロリドンなどの分散媒に分散させて合剤スラリーとして正極集電体14Aに塗布し、圧縮成型して正極活物質層14Bを形成することにより作製する。
そののち、例えば、負極12、電解液を含浸させたセパレータ15および正極14を積層して、外装カップ11と外装缶13との中に入れ、それらをかしめる。これにより図1に示した二次電池が得られる。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極14からリチウムイオンが離脱し、電解液を介して負極12に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極12からリチウムイオンが離脱し、電解液を介して正極14に吸蔵される。その際、負極12には、少なくとも初期の充放電サイクルにおいて、放電後にも電気化学的に活性なリチウムが残存している。よって、リチウムが電解液との反応などにより消費されても、負極12からリチウムが補充される。また、放電末期においても、負極12の電位上昇が抑制される。よって、優れた充放電サイクル特性が得られる。
このように本実施の形態では、負極12が少なくとも初期の充放電サイクルにおいて放電後にも電気化学的に活性なリチウムを有するようにしたので、電解液との反応などによりリチウムが消費されてもリチウムを補充することができ、特に初期の充放電サイクルにおいて著しく生じる劣化を抑制することができる。また、放電末期における負極12の電位上昇を抑制することもでき、負極12の電位上昇に伴う劣化も抑制することができる。よって、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
特に、負極12が初回充電前(初回充放電前)にリチウムを予め吸蔵しているようにすれば、予め吸蔵しているリチウムにより負極12の表面に被膜を形成することができ、サイクル初期において電解液との反応などによりリチウムが消費されることを抑制することができる。また、放電に伴う負極活物質層12の膨張収縮により負極集電体11にかかる応力を緩和することができる。更に、負極活物質層12Aがケイ素またはゲルマニウムの単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む場合には、負極活物質層12Aに存在するダングリングボンドや、または水素あるいは酸素などの不純物を低減させることもできる。
また、負極活物質層12Bに予め吸蔵させるリチウムの量を負極容量の0.5%以上40%以下とすれば、サイクル特性をより向上させることができると共に、容量も大きくすることができる。
更に、負極活物質層12Bに予め吸蔵させるリチウムの量を、金属リチウムの厚みに換算して、単位面積当たり0.02μm以上20μm以下の範囲内とすれば、より高い効果を得ることができると共に、取り扱い性および製造性を向上させることができる。
加えて、負極活物質層12Bに気相法により金属リチウムを堆積させてリチウムを吸蔵させるようにすれば、吸蔵させるリチウムの量を容易に制御することができると共に、大面積にわたって均一にリチウムを吸蔵させることもできる。また、金属リチウムを堆積させる過程において負極活物質層12Bにリチウムを吸蔵させることもできるので、負極12の取り扱いを容易とすることができる。更に、負極活物質層12Bを気相法により形成する場合には、連続成膜も可能であり、製造工程を簡素化することができる。
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、リード21,22が取り付けられた電極巻回体30をフィルム状の外装部材40A,40Bの内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
リード21,22は、外装部材40A,40Bの内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。リード21,リード22は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材40A,40Bは、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に張り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40A,40Bは、例えば、ポリエチレンフィルム側と電極巻回体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40A,40Bとリード21,リード22との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、リード21,リード22に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40A,40Bは、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図3は、図2に示した電極巻回体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。電極巻回体30は、負極31と正極32とをセパレータ33および電解質層34を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ35により保護されている。
負極31は、負極集電体31Aの片面あるいは両面に負極活物質層31B設けられた構造を有している。正極32も、正極集電体32Aの片面あるいは両面に正極活物質層32Bが設けられた構造を有しており、正極活物質層32Bの側が負極活物質層31Bと対向するように配置されている。負極集電体31A,負極活物質層31B,正極集電体32A,正極活物質層32Bおよびセパレータ33の具体的な構成は、第1の実施の形態における負極集電体12A,負極活物質層12B,正極集電体14A,正極活物質層14Bおよびセパレータ15と同様である。
電解質層34は、保持体に電解液を保持させたいわゆるゲル状の電解質により構成されている。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液あるいは高温における膨れを防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩)の構成は、第1の実施の形態と同様である。保持体は、例えば高分子材料により構成されている。高分子材料としては、例えばポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、負極31および正極32のそれぞれに、保持体に電解液を保持させた電解質層123を形成する。そののち、負極集電体31Aの端部にリード21を溶接により取り付けると共に、正極集電体32Aの端部にリード22を溶接により取り付ける。次いで、電解質層34が形成された負極31と正極32とをセパレータ33を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ35を接着して電極巻回体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40A,40Bの間に電極巻回体30を挟み込み、外装部材40A,40Bの外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、リード21,22と外装部材40A,40Bとの間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図2および図3に示した二次電池が完成する。
この二次電池は、第1の実施の形態と同様に作用し、第1の実施の形態と同様の効果を有する。
更に、本発明の実施例について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の実施例では、上記実施の形態において用いた符合および記号をそのまま対応させて用いる。
(実施例1−1〜1−4)
図2および図3に示したような二次電池を作製した。まず、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体31Aの上にスパッタリング法によりケイ素よりなる負極活物質層31Bを形成した。次いで、負極活物質層31Bの上に真空蒸着法により金属リチウムを堆積させた。金属リチウムを堆積させる際の雰囲気は1×10-3Pa未満とし、堆積速度は5nm/sよりも大きくした。なお、堆積させる金属リチウムの量、すなわち負極活物質層31Bに予め吸蔵させるリチウムの量は、実施例1−1〜1−4で負極活物質層31Bの有するリチウム吸蔵容量の5%、10%、20%、30%と順に変化させた。また、負極活物質層31Bの厚みは、負極活物質層31Bの持つ容量から予め吸蔵させるリチウムの容量を差し引いた容量が一定となるようにした。すなわち負極活物質層31Bの厚みは、実施例1−1では5.26μm、実施例1−2では5.56μm、実施例1−3では6.25μm、実施例1−4では7.14μmとした。
金属リチウムを堆積させたのち、真空槽にアルゴンガスを注入して大気圧とし負極31を取り出したところ、その段階ですでに金属リチウムは負極活物質層31Bに合金化して吸蔵されており、金属リチウムとしては存在していなかった。これにより実施例1−1〜1−4の負極31を得た。
続いて、正極活物質である平均粒径5μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2 )の粉末と、導電材であるカーボンブラックと、バインダーであるポリフッ化ビニリデンとを、コバルト酸リチウム:カーボンブラック:ポリフッ化ビニリデン=92:3:5の質量比で混合し、これを分散媒であるN−メチルピロリドンへ投入して合剤スラリーとした。そののち、この合剤スラリーを厚み15μmのアルミニウムよりなる正極集電体32Aに塗布して乾燥させ、加圧して正極活物質層32Bを形成し、正極32を作製した。
負極31および正極32を作製したのち、これらの上に、エチレンカーボネート42.5質量%と、プロピレンカーボネート42.5質量%と、リチウム塩であるLiPF6 15質量%とからなる電解液30質量%に、重量平均分子量60万のブロック共重合であるポリフッ化ビニリデン10質量%と、ジメチルカーボネート60質量%とを混合して溶解させた前駆体溶液を塗布し、常温で8時間放置してジメチルカーボネートを揮発させることにより電解質層34を形成した。
電解質層34を形成したのち、電解質層34を形成した負極31と正極32とをセパレータ33を介して積層し、長手方向に巻回して最外周部に保護テープ35を接着して電極巻回体30を形成した。セパレータ33にはポリプロピレン製フィルムを用いた。そののち、アルミラミネートフィルムよりなる外装部材40A,40Bの内部に電極巻回体30を挟み込み封入した。これにより、実施例1−1〜1−4の二次電池を得た。
作製した実施例1−1〜1−4の二次電池について、25℃の条件下で充放電試験を行い、50サイクル目の容量維持率を求めた。その際、充電は、1mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で電流密度が0.02mA/cm2 に達するまで行い、放電は、1mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。なお、充電を行う際には、負極31の容量から予め吸蔵させたリチウムの量を差し引いた容量の初回での利用率が90%となるようにし、負極31に金属リチウムが析出しないようにした。50サイクル目の容量維持率は、初回放電容量に対する50サイクル目の放電容量の比率、すなわち(50サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100として算出した。得られた結果を表1に示す。
Figure 2008243828
また、作製した実施例1−1〜1−4の二次電池について、3サイクル目の放電終了後に電池を解体し、負極31を取り出してジメチルカーボネートで洗浄し、これを作用極としたコイン型の半電池を作製した。その際、電解質にはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを1:1の質量比で混合した溶媒にリチウム塩であるLiPF6 を1.0mol/dm3 となるように溶解させた電解液を用い、セパレータにはポリプロピレン製フィルムを用い、対極には金属リチウム箔を用いた。
作製した半電池について、作用極からリチウムが脱離するように、電解を0.06mA/cm2 の定電流密度で両極間電位差が1.4Vに達するまで行ったのち、1.4Vの定電圧で電流密度が0.02mA/cm2 に達するまで行ったところ、作用極からリチウムの脱離に相当する電気量が観察された。すなわち、実施例1−1〜1−4の二次電池では、負極31に放電後にも電気化学的に活性なリチウムが残存していることが分かった。なお、表1には残存Liの欄に“有”と示した。
実施例1−1〜1−4に対する比較例1−1として、負極に予めリチウムを吸蔵させないことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして二次電池を作製した。比較例1−1の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、充放電試験を行い、50サイクル目の容量維持率を求めた。その結果も表1に合わせて示す。また、実施例1−1〜1−4と同様にして、1サイクル目の放電終了後に負極を取り出して半電池を作製し、作用極からリチウムの脱離が有るか否かを確認した。その結果、作用極からリチウムの脱離に相当する電気量は観察されず、比較例1−1の二次電池では、負極に放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存していないことが分かった。なお、表1には残存Liの欄に“無”と示した。
表1から分かるように、負極31に放電後も電気化学的に活性なリチウムが残存している実施例1−1〜1−4によれば、残存していない比較例1−1に比べて、高い容量維持率が得られた。すなわち、負極31が放電後にも電気化学的に活性なリチウムを有するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例2−1〜2−4)
負極活物質層31Bをスパッタリング法でゲルマニウムにより形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして実施例2−1〜2−4の負極31を作製し、同様にして二次電池を作製した。また、実施例2−1〜2−4に対する比較例2−1として、負極に予めリチウムを吸蔵させないことを除き、他は実施例2−1〜2−4と同様にして負極を作製し、二次電池を作製した。作製した実施例2−1〜2−4および比較例2−1の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、充放電試験を行い、50サイクル目の容量維持率を求めた。また、放電後の負極31を取り出して半電池を作製し、実施例2−1〜2−4については3サイクル目の放電後の負極31に電気化学的に活性なリチウムが残存しているか否かを、比較例2−1については1サイクル目の放電後の負極に電気化学的に活性なリチウムが残存しているか否かを確認した。その結果を表2に示す。
Figure 2008243828
表2に示したように、実施例2−1〜2−4には放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存していたが、比較例2−1には放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存していなかった。また、実施例2−1〜2−4によれば、実施例1−1〜1−4と同様に、比較例2−1よりも高い容量維持率が得られた。すなわち、負極活物質にゲルマニウムを用いても、ケイ素を用いた場合と同様に、負極31に放電後も電気化学的に活性なリチウムが残存するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例3−1〜3−4)
厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体31Aの上に空蒸着法によりスズよりなる厚み5μmの負極活物質層31Bを形成し、続いて不活性雰囲気下において200℃で12時間熱処理を行い、そののち負極活物質層31Bの上に真空蒸着法により金属リチウムを堆積させて負極31を作製したことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして二次電池を作製した。また、実施例3−1〜3−4に対する比較例3−1として、負極に予めリチウムを吸蔵させないことを除き、他は実施例3−1〜3−4と同様にして負極を作製し、二次電池を作製した。作製した実施例3−1〜3−4および比較例3−1の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、充放電試験を行い、50サイクル目の容量維持率を求めた。また、放電後の負極31を取り出して半電池を作製し、実施例3−1〜3−4については3サイクル目の放電後の負極31に電気化学的に活性なリチウムが残存しているか否かを、比較例3−1については1サイクル目の放電後の負極に電気化学的に活性なリチウムが残存しているか否かを確認した。その結果を表3に示す。
Figure 2008243828
表3に示したように、実施例3−1〜3−4には放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存していたが、比較例3−1には放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存していなかった。また、実施例3−1〜3−4によれば、実施例1−1〜1−4,2−1〜2−4と同様に、比較例3−1よりも高い容量維持率が得られた。すなわち、負極活物質にスズを用いても、ケイ素あるいはゲルマニウムを用いた場合と同様に、負極31に放電後も電気化学的に活性なリチウムが残存するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
なお、真空蒸着法に代えてめっきにより負極活物質層31Bを形成したことを除き、実施例3−1〜3−4と同様にして二次電池を作製し、評価したところ、実施例3−1〜3−4と同様の結果が得られた。
(実施例4−1〜4−5)
図1に示したようなコイン型の二次電池を作製した。負極12は実施例1−1〜1−4と同様にして作製した。その際、堆積させる金属リチウムの量、すなわち負極活物質層12Bに予め吸蔵させるリチウムの量は、実施例4−1〜4−5で負極活物質層12Bの有するリチウム吸蔵容量の5%、10%、20%、30%、40%と順に変化させた。また、負極活物質層12Bの厚みは、負極活物質層12Bの持つ容量から予め吸蔵させるリチウムの容量を差し引いた容量が一定となるように、実施例4−1では5.26μm、実施例4−2では5.56μm、実施例4−3では6.25μm、実施例4−4では7.14μm、実施例4−5では8.33μmとした。
また、正極14も実施例1−1〜1−4と同様にして作製した。次いで、作製した負極12と正極14とを電解液を含浸させたセパレータ15を介して積層し、外装カップ11および電池缶13の中に入れ、かしめることにより封入した。電解液にはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを1:1の質量比で混合した溶媒に、リチウム塩であるLiPF6 を1.0mol/dm3 となるように溶解させたものを用い、セパレータ50にはポリプロピレン製フィルムを用いた。これにより実施例4−1〜4−5の二次電池を得た。電池の大きさは直径20mm、厚み16mmとした。
実施例4−1〜4−5に対する比較例4−1として、負極に予めリチウムを吸蔵させないことを除き、他は実施例4−1〜4−5と同様にして負極を作製し、二次電池を作製した。また、実施例4−1〜4−5に対する比較例4−2〜4−4として、負極に予め吸蔵させるリチウムの量を負極活物質層の有するリチウム吸蔵容量の0.3%、0.5%、または1%としたことを除き、他は実施例4−1〜4−5と同様にして負極を作製し、二次電池を作製した。
作製した実施例4−1〜4−5および比較例4−1〜4−4の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、充放電試験を行い、50サイクル目の容量維持率を求めた。また、1サイクル目の放電後の負極12を取り出して半電池を作製し、負極12に電気化学的に活性なリチウムが残存しているか否かを確認した。その結果を表4に示す。
Figure 2008243828
表4に示したように、実施例4−1〜4−5には放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存していたが、比較例4−1〜4−4には放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存しておらず、実施例4−1〜4−5の方が比較例4−1〜4−4よりも高い容量維持率が得られた。なお、比較例4−1〜4−4の結果から、放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存しない場合であっても、負極に予めリチウムを吸蔵させておくようにすれば、サイクル特性を改善できることが分かった。また、負極に予め吸蔵させるリチウムの量を負極活物質層の有するリチウム吸蔵容量の0.5%以上とすればより好ましいことも分かった。
(実施例5−1〜5−5)
負極活物質層12Bをスパッタリング法でゲルマニウムにより形成したことを除き、他は実施例4−1〜4−5と同様にして負極12を作製し、同様にして二次電池を作製した。また、実施例5−1〜5−5に対する比較例5−4として、負極に予め吸蔵させるリチウムの量を表5に示したように変えたことを除き、他は実施例5−1〜5−5と同様にして負極を作製し、二次電池を作製した。作製した実施例5−1〜5−5および比較例5−1〜5−4の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして、充放電試験を行い、50サイクル目の容量維持率を求めた。また、1サイクル目の放電後の負極12を取り出して半電池を作製し、負極12に電気化学的に活性なリチウムが残存しているか否かを確認した。その結果を表5に示す。
Figure 2008243828
表5に示したように、実施例5−1〜5−5には放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存していたが、比較例5−1〜5−4には放電後に電気化学的に活性なリチウムが残存しておらず、実施例5−1〜5−5の方が比較例5−1〜5−4よりも高い容量維持率が得られた。また、比較例5−1〜5−4の結果から、負極活物質にゲルマニウムを用いた場合も、ケイ素を用いた場合と同様に、負極に予めリチウムを吸蔵させておくようにすればサイクル特性を改善することができ、予め吸蔵させるリチウムの量を負極活物質層の有するリチウム吸蔵容量の0.5%以上とすればより好ましいことが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解質の保持体として高分子材料を用いる場合について説明したが、窒化リチウムあるいはリン酸リチウムを含む無機伝導体を保持体として用いてもよく、高分子材料と無機伝導体とを混合して用いてもよい。
また、上記実施の形態および実施例では、負極集電体12A,31Aに負極活物質層12B,31Bが設けられた負極12,31について説明したが、負極集電体と負極活物質層との間に他の層を有していてもよい。
更に、上記実施の形態および実施例では、コイン型、または巻回ラミネート型の二次電池について説明したが、本発明は、円筒型、角型、ボタン型、薄型、大型、積層ラミネート型の二次電池についても同様に適用することができる。また、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る二次電池の構成を表す分解斜視図である。 図2に示した電極巻回体のI−I線に沿った構成を表す断面図である。
符号の説明
11…外装カップ、12,31…負極、12A,31A…負極集電体、12B,31B
…負極活物質層、13…外装缶、14,32…正極、14A,32A…正極集電体、14
B,32B…正極活物質層、15,33…セパレータ、16…ガスケット、21,22…
リード、30…電極巻回体、34…電解質層、35…保護テープ

Claims (8)

  1. 負極集電体に、気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により、ケイ素(Si)またはゲルマニウム(Ge)の単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む負極活物質層を形成する工程と、
    前記負極活物質層に、負極容量の5%以上40%以下のリチウムを吸蔵させる工程と
    を含む負極の製造方法。
  2. 前記リチウムを吸蔵させる工程において、気相法により前記負極活物質層の表面に金属リチウムを堆積させる
    請求項1記載の負極の製造方法。
  3. 前記リチウムの吸蔵量を、金属リチウムの厚みに換算して、単位面積あたり0.02μm以上20μm以下とする
    請求項2記載の負極の製造方法。
  4. 前記リチウムを吸蔵させる工程において、前記負極活物質層の表面に、金属リチウム箔を貼り付け、または金属リチウムを塗布する
    請求項1記載の負極の製造方法。
  5. 前記リチウムを吸蔵させる工程において、金属リチウムと錯体を形成する芳香族化合物のリチウム錯体を、前記負極活物質層とを接触させる
    請求項1記載の負極の製造方法。
  6. 前記負極活物質層を形成する工程ののち、さらに真空雰囲気下または非酸化性雰囲気下において熱処理を行なう工程を含む
    請求項1記載の負極の製造方法。
  7. 前記リチウムを吸蔵させる工程ののち、さらに非酸化雰囲気下において熱処理を行う工程を含む
    請求項1記載の負極の製造方法。
  8. 負極集電体に、気相法,液相法および焼結法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により、ケイ素(Si)またはゲルマニウム(Ge)の単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む負極活物質層を形成する工程と、
    前記負極活物質層に、負極容量の5%以上40%以下のリチウムを吸蔵させることで負極を作製する工程と、
    正極集電体に、正極活物質を形成することにより正極を作製する工程と、
    前記負極および正極を、電解質と共に、外装部材に挿入する工程と
    を含む二次電池の製造方法。
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