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JP2007302508A - 酸化物焼結体、ターゲット、およびそれを用いて得られる透明導電膜 - Google Patents

酸化物焼結体、ターゲット、およびそれを用いて得られる透明導電膜 Download PDF

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JP2007302508A JP2006132198A JP2006132198A JP2007302508A JP 2007302508 A JP2007302508 A JP 2007302508A JP 2006132198 A JP2006132198 A JP 2006132198A JP 2006132198 A JP2006132198 A JP 2006132198A JP 2007302508 A JP2007302508 A JP 2007302508A
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Abstract

【課題】酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する酸化物焼結体、それを加工したターゲット、これを用いて直流スパッタリング法やイオンプレーティング法によって得られる耐薬品性に優れた低抵抗の透明導電膜を提供。
【解決手段】酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する酸化物焼結体であって、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ni)原子数比として0.02〜0.25であり、かつ比抵抗が50kΩcm以下であることを特徴とする酸化物焼結体;酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルと、ガリウムおよび/またはアルミニウムとを特定量含有する酸化物焼結体;これら酸化物焼結体を加工して得られるターゲット;このターゲットを用いて、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法で基板上に形成される透明導電膜などにより提供。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸化物焼結体、ターゲット、およびそれを用いて得られる透明導電膜に関し、より詳しくは、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する酸化物焼結体、それを加工したターゲット、これを用いて直流スパッタリング法やイオンプレーティング法によって得られる耐薬品性に優れた低抵抗の透明導電膜に関するものである。
透明導電膜は、高い導電性と可視光領域での高い透過率とを有する。透明導電膜は、太陽電池や液晶表示素子、その他各種受光素子の電極などに利用されている他、自動車窓や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍ショーケースなどのための各種の防曇用の透明発熱体としても利用されている。
透明導電膜には、酸化錫(SnO)系、酸化亜鉛(ZnO)系、酸化インジウム(In)系の薄膜が知られている。酸化スズ系には、アンチモンをドーパントとして含むもの(ATO)やフッ素をドーパントとして含むもの(FTO)が利用されている。酸化亜鉛系には、アルミニウムをドーパントとして含むもの(AZO)やガリウムをドーパントとして含むもの(GZO)が利用されている。最も工業的に利用されている透明導電膜は、酸化インジウム系である。その中でも錫をドーパントとして含む酸化インジウムは、ITO(Indium−Tin−Oxide)膜と称され、特に低抵抗の膜が容易に得られることから、これまで幅広く利用されてきた。
低抵抗透明導電膜は、太陽電池、液晶、有機エレクトロルミネッセンスおよび無機エレクトロルミネッセンスなどの表面素子や、タッチパネルなどに好適に用いられる。これらの透明導電膜の製造方法として、スパッタリング法やイオンプレーティング法が良く用いられている。特にスパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の成膜の際や、精密な膜厚制御を必要とする際に有効な手法であり、操作が非常に簡便であるため、工業的に広範に利用されている。
スパッタリング法は、薄膜の原料としてスパッタリングターゲットを用いる成膜法である。ターゲットは、成膜したい薄膜を構成している金属元素を含む固体であり、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物などの焼結体や、場合によっては単結晶が使われる。この方法では、一般に真空装置を一旦高真空にした後、アルゴン等の希ガスを導入し、約10Pa以下のガス圧のもとで、基板を陽極、スパッタリングターゲットを陰極とし、これらの間にグロー放電を起こしてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のスパッタリングターゲットに衝突させ、これによってはじきとばされるターゲット成分の粒子を、基板上に堆積させて膜を形成する。
また、スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分類され、高周波プラズマを用いるものは高周波スパッタリング法といい、直流プラズマを用いるものは直流スパッタリング法という。
一般に、直流スパッタリング法は、高周波スパッタリング法と比べて成膜速度が速く、電源設備が安価であり、成膜操作が簡単であるなどの理由で、工業的に広範に利用されている。しかし、絶縁性ターゲットでも成膜することができる高周波スパッタリング法に対して、直流スパッタリング法では、導電性ターゲットを用いなければならない。
スパッタリング法を用いて成膜する時の成膜速度は、ターゲット物質の化学結合と密接な関係がある。スパッタリング法は、運動エネルギーをもったアルゴン陽イオンがターゲット表面に衝突して、ターゲット表面の物質がエネルギーを受け取って弾き出される現象を用いたものであり、ターゲット物質のイオン間結合もしくは原子間結合が弱いほど、スパッタリングによって飛び出す確率は増加する。
ITOなどの酸化物の透明導電膜をスパッタリング法で成膜する方法には、膜を構成する元素の合金ターゲット(ITO膜の場合はIn−Sn合金)を用いてアルゴンと酸素の混合ガス中における反応性スパッタリング法によって酸化物膜を成膜する方法と、膜を構成する元素の酸化物焼結体ターゲット(ITO膜の場合はIn−Sn−O焼結体)を用いてアルゴンと酸素の混合ガス中における反応性スパッタリング法によって酸化物膜を成膜する方法がある。
このうち合金ターゲットを用いる方法は、スパッタリング中の酸素ガスを多めに供給するが、成膜速度や膜の特性(比抵抗、透過率)の成膜中に導入する酸素ガス量依存性が極めて大きく、安定して一定の膜厚、所望の特性の透明導電膜を製造することが難しい。これに対して酸化物ターゲットを用いる方法は、膜に供給される酸素の一部がターゲットからスパッタリングにより供給され、残りの不足酸素量が酸素ガスとして供給される。そのため成膜中に導入する酸素ガス量に対する成膜速度や膜の特性(比抵抗、透過率)の依存性が、合金ターゲットを用いる場合よりも小さく、より安定して一定の膜厚、特性の透明導電膜を製造することができるため、工業的には酸化物ターゲットを用いる方法が採られている。
生産性や製造コストを考慮すると、直流スパッタリング法の方が高周波スパッタリング法よりも、高速成膜は容易である。つまり、同一の電力を同一のターゲットに投入して成膜速度を比較すると直流スパッタリング法の方が2〜3倍ほど速い。また直流スパッタリング法でも、高い直流電力を投入するほど成膜速度が上がるため、生産性のためには有利である。このため、工業的には高い直流電力を投入しても安定して成膜することが可能なスパッタリングターゲットが有用となる。
一方、イオンプレーティングは、膜となるターゲット材の表面をアーク放電で局部的に加熱して、昇華,イオン化し、負に帯電させたワークに付着させて成膜する方法である。いずれも、低温で密着性のよい膜が得られ、非常に多種の基板性質や膜性質が選択でき、合金や化合物の成膜が可能で、環境にやさしいプロセスであるという特徴を有する。イオンプレーティングでもスパッタリングと同様で、酸化物タブレットを用いた方が安定して一定の膜厚、特性の透明導電膜を製造することができる。
上述のようにITOなどの酸化インジウム系材料が、工業的に広範に用いられているが、希少金属のインジウムが高価であることなどから、近年では非インジウム系の材料が求められている。
非インジウム系の材料としては、上述の様に、GZOやAZOなどの酸化亜鉛系材料、FTOやATOなどの酸化スズ系材料が知られている。特に酸化亜鉛系は、資源として豊富に埋蔵されているため低コストであって、ITOに匹敵する低比抵抗、高透過率を示す材料として注目されている。ただし、これを用いて得られる酸化亜鉛系透明導電膜は、通常の酸及びアルカリに対して容易に溶解するという長所はあるが、反面、酸・アルカリに対する耐性が乏しく、またエッチング速度の制御が難しいため、液晶ディスプレイ用途等で不可欠なウェットエッチングによる高精細なパターニング処理が困難である。よって、その用途は、パターニングを必要としない太陽電池などに限られている。このような理由から、酸化亜鉛系材料の耐薬品性を改善することが課題とされていた。
酸化亜鉛系透明導電膜の耐薬品性を改善する試みとしては、次のような例がある。特許文献1では、酸化亜鉛(ZnO)に、III族元素のアルミニウム(Al)等、あるいはIV族元素のシリコン(Si)等から選ばれるドナー不純物と、クロム(Cr)を共添加することにより、可視光透過性及び電気抵抗率を大きく損なうことなくZnO系透明導電膜の化学的特性の容易な制御を目的として、新しい不純物共添加のZnO透明導電膜、該薄膜製造するために使用されるターゲット材料及びパターニング技術が提案されている。
しかし、Crは毒性が強いことが知られているので、環境や人体に悪影響を与えないように考慮しなければならない。また、エッチング液を20〜5℃という通常より低い温度範囲に制御する必要があるため、工業的に適用し難い。
また、クロム(Cr)の代わりにコバルト(Co)もしくはバナジウム(V)を共添加した不純物共添加ZnO透明導電膜、該薄膜製造するために使用されるターゲット材料などが特許文献2に提案されている。しかし、コバルト(Co)は、インジウム(In)同様、希少金属である。また、バナジウム(V)は毒性を有するため、環境や人体に悪影響を与えないように考慮しなければならない。また、いずれを添加したとしても、特許文献1と同様に、エッチング液を20〜5℃という通常より低い温度範囲に制御する必要があるため、工業的に適用し難い。
また、特許文献3では、基体上に、酸化物膜、金属膜、酸化物膜とがこの順に(2n+1)層(n≧1)で積層された透明導電膜において、NiとZnとを含有する酸化物膜(NZ酸化物膜)、またはNiとZnとGaとを含有する酸化物膜(Gaを含むNZ酸化物膜)、が透明導電膜を形成する酸化物膜の少なくとも一部として設けられ、この透明導電膜が耐湿性および耐アルカリ性に優れると記載されている。しかし、NZ酸化物膜は、積層膜の一部を構成するものであって、金属膜と酸化物膜とで形成される2つの界面の両側に設けられることが好ましいとするだけで、NZ酸化物膜を得るためのターゲット、膜単独の性能は明らかにされていない。Gaを含むNZ酸化物膜の耐酸性については何も記載されておらず、また、耐酸性と耐アルカリ性に及ぼす膜の組成と結晶相の影響について、詳しい知見は示されていない。
特開2002−075061号公報 特開2002−075062号公報 特開平11−262968号公報
本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑み、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する酸化物焼結体、それを加工したターゲット、これを用いて直流スパッタリング法やイオンプレーティング法によって得られる耐薬品性に優れた低抵抗の透明導電膜を提供することにある。
本発明者らは、上記従来の問題点を解決するために鋭意研究を重ね、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する酸化物焼結体において、ニッケルの含有量をNi/(Zn+Ni)原子数比で0.02〜0.25とし、これをターゲットに加工して、直流スパッタリング法などで用いると、酸・アルカリに対する薬品耐性が高く低抵抗の酸化亜鉛系透明導電膜を得ることができ、また、さらにガリウムおよび/またはアルミニウムを特定量含有する酸化物焼結体をターゲットとして用いることで、得られる酸化亜鉛系透明導電膜の導電性が一層向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する酸化物焼結体であって、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ni)原子数比として0.02〜0.25であり、かつ比抵抗が50kΩcm以下であることを特徴とする酸化物焼結体が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルと、ガリウムおよび/またはアルミニウムを含有する酸化物焼結体であって、ガリウムおよび/またはアルミニウムの含有量が(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比として0を超え0.08以下、また、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比として0.02〜0.25であり、かつ比抵抗が5kΩcm以下であることを特徴とする酸化物焼結体が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、ニッケルの含有量が、Ni/(Zn+Ni)、又はNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比として0.05〜0.14であることを特徴とする酸化物焼結体が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第2の発明において、ガリウムおよび/またはアルミニウムの含有量が、(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比として0.01〜0.05であることを特徴とする酸化物焼結体が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、酸化ニッケル相が実質的に含有されないことを特徴とする酸化物焼結体が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、下記の式(A)で表されるX線回折測定によるピークの強度比が、25%以下であることを特徴とする酸化物焼結体が提供される。式中、I[NiZn1−xO(200)]は、立方晶の岩塩構造をとる複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相の(200)ピーク強度であり、I[ZnO(101)]は、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(101)ピーク強度を示す。
I[NiZn1−xO(200)]/I[ZnO(101)]×100 (%)… 式(A)
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、密度が5.0g/cm以上であることを特徴とする酸化物焼結体が提供される。
一方、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明の酸化物焼結体を加工して得られるターゲットが提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明に係り、ターゲットを用いて、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法で基板上に形成される透明導電膜が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する透明導電膜であって、ニッケルがNi/(Zn+Ni)原子数比で0.02〜0.25含有されることを特徴とする透明導電膜が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、さらに、ガリウムおよび/またはアルミニウムが、(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比で0を超え0.08以下含有されることを特徴とする透明導電膜が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第9の発明において、主として六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相から成り、下記の式(B)で表されるX線回折測定によるピーク強度比が、50%以上であることを特徴とする透明導電膜が提供される。式中、I[ZnO(002)]は、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(002)ピーク強度であり、I[ZnO(100)]は、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(100)ピーク強度を示す。
I[ZnO(002)]/(I[ZnO(002)]+I[ZnO(100)])×100 (%) … 式(B)
さらに、本発明の第13の発明によれば、第9の発明において、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相が実質的に含有されないことを特徴とする透明導電膜が提供される。
本発明によれば、酸化物焼結体が酸化亜鉛を主成分とし、さらに特定量のニッケルを含有しているために、これをスパッタリングターゲットとして用いれば、直流スパッタリングでもアーク放電が発生せず、耐薬品性に優れた透明導電膜を形成することが可能となる。また、さらにガリウムおよび/またはアルミニウムを特定量含有する酸化物焼結体とすることで、得られる透明導電膜の導電性を一層改善することができる。
本発明の酸化物焼結体は、イオンプレーティング用のタブレットとしても同様に用いることができ高速成膜が可能である。これにより得られた本発明の酸化亜鉛系透明導電膜は、最適な組成と結晶相に制御されるため、可視光透過性及び電気抵抗率を大きく損なうことなく、優れた耐薬品性を示し、比較的高価なインジウムを使用しない透明導電膜として工業的に極めて有用である。
以下、本発明の酸化物焼結体、ターゲット、およびそれを用いて得られる透明導電膜について詳細に説明する。
1.酸化物焼結体
本発明の酸化物焼結体は、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する酸化物焼結体であって、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ni)原子数比として0.02〜0.25であり、かつ比抵抗が50kΩcm以下であることを特徴とする(以下、これを第一の酸化物焼結体ともいう)。
また、本発明の酸化物焼結体は、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルと、ガリウムおよび/またはアルミニウムを含有する酸化物焼結体であって、ガリウムおよび/またはアルミニウムの含有量が(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比として0を超え0.08以下、また、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比として0.02〜0.25であり、かつ比抵抗が5kΩcm以下であることを特徴とする(以下、これを第二の酸化物焼結体ともいう)。
(1)第一の酸化物焼結体
本発明の第一の酸化物焼結体は、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを特定量含有する酸化物である。ニッケルの含有量は、Ni/(Zn+Ni)原子数比で0.02〜0.25の割合である。上記の組成範囲でニッケルが含まれているので、この酸化物焼結体をターゲットの原料として用いると、スパッタリングなどによって形成される酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の耐薬品性が向上する。
ここで透明導電膜の耐薬品性を、耐酸性と耐アルカリ性に分けて、ニッケルの含有量との関係を述べる。ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ni)原子数比で0.02未満である場合は、得られる透明導電膜の耐酸性、耐アルカリ性がともに不十分で、0.25を超える場合には、後で詳述するように膜の結晶性が低下するため、十分な耐酸性が得られなくなる。ただし、耐アルカリ性は、ニッケルの含有量が多くなるほど良好であり、0.25を超えた場合でも十分良好である。また、ニッケルの含有量が0.25を超えると、膜の結晶性が低下するため、比抵抗も高くなってしまう。直流(DC)スパッタリングを可能とするためには、比抵抗が50kΩcm以下であることが必要であり、比抵抗が高くなる傾向は好ましくない。比抵抗を下げるためには、酸化物焼結体の製造時に、例えば、還元雰囲気での焼結や熱処理などを付加することが望ましい。また、低い比抵抗、ならびに優れた耐酸性と耐アルカリ性を得るためには、ニッケルの含有量をNi/(Zn+Ni)原子数比で0.05〜0.14の範囲とすることがより一層好適である。
本発明では酸化物焼結体が主に酸化亜鉛相から構成されているが、この酸化亜鉛相とは、JCPDSカード36−1451に記載された六方晶のウルツ鉱構造のものを指し、酸素欠損、亜鉛欠損の非化学量論組成のものも含まれる。添加元素であるニッケルは、通常、上記酸化亜鉛相の亜鉛サイトに固溶している。
本発明の酸化物焼結体においては、該酸化物焼結体中に、JCPDSカード47−1049に記載の酸化ニッケル相が含まれていないことが好ましい。ニッケルが酸化亜鉛相に固溶されずに、良導電体でない酸化ニッケル相として酸化物焼結体中に含まれていると、スパッタリング時のアルゴンイオンの照射によって、帯電し、絶縁破壊を起こすためアーク放電を生じ、直流(DC)スパッタリングによる安定した成膜が困難になるからである。
また、本発明の酸化物焼結体中には、JCPDSカード75−0270から75−0273に記載のニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相が、次式(A)で定義される、X線回折測定で得られる六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(101)によるピークと、立方晶の岩塩構造をとる複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相の(200)によるピークの強度比が25%以下の範囲で含まれることが好ましい。
I[NiZn1−xO(200)]/I[ZnO(101)]×100 (%)… 式(A)
ここで、I[NiZn1−xO(200)]は、X線回折測定で得られる立方晶の岩塩構造をとる複合酸化物NiZn1−xO(x=0.7または0.8)相の(200)ピーク強度を示し、I[ZnO(101)]は、X線回折測定で得られる六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(101)ピーク強度を示している。
酸化物焼結体中にニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相が上記の強度比の範囲を超えて存在すると、膜中に立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相が生成するため、耐酸性が著しく低下する。
また、ニッケルの含有量が多い場合には、酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相が生成しやすいため、適切な条件に設定されたプロセスで酸化物焼結体を製造する必要がある。
酸化物焼結体の密度は、5.0g/cm以上であることが好ましい。密度が5.0g/cmよりも低いと、直流スパッタリングが困難になることはもとより、ノジュールの生成が著しくなるなどの問題が生じる。ノジュールは、スパッタリングに伴いターゲット表面のエロージョン部に発生する微細な突起物のことをいい、該ノジュールに起因して異常放電やスプラッシュが発生し、これが原因となってスパッタリングチャンバ内に粗大な粒子(パーティクル)が浮遊し、該粒子が、成膜途中の膜に付着して品質を低下させる原因となる。ただし、イオンプレーティング法で成膜する場合は、焼結体密度が高すぎると割れが起こるため、3.5〜4.5g/cmの範囲の比較的低い密度が好ましい。
本発明の酸化物焼結体は、主にニッケルが固溶した酸化亜鉛相で構成されていて、50kΩcm以下の比抵抗を持っており、直流(DC)スパッタリングによる安定的な成膜が可能である。なお、ニッケル以外に、他の添加元素(例えば、インジウム、チタン、タングステン、モリブデン、イリジウム、ルテニウム、レニウムなど)が、本発明の目的を損なわない範囲で含まれていてもよい。
(2)第二の酸化物焼結体
本発明の第二の酸化物焼結体は、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルと、ガリウムおよび/またはアルミニウムを含有する酸化物焼結体であって、ガリウムおよび/またはアルミニウムの含有量が(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比として0を超え0.08以下、また、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比として0.02〜0.25であり、かつ比抵抗が5kΩcm以下であることを特徴とする。
上記酸化物焼結体において、導電性の向上に寄与するガリウムおよび/またはアルミニウムが、上記の組成範囲で含まれていなければならない。ガリウムおよび/またはアルミニウムの総含有量が(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比で0.08を超えると、本発明の酸化物焼結体を原料とするターゲットを用いて成膜される透明導電膜の結晶性が低下するため、比抵抗が高くなるとともに、耐薬品性、特に耐酸性の低下を招いてしまう。
また、前記のとおり、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比で0.02未満である場合は、透明導電膜は十分な耐酸性と耐アルカリ性が得られず、0.25を超えると十分な耐酸性が得られないばかりか、比抵抗も高くなってしまうので好ましくない。また、低い比抵抗、ならびに優れた耐酸性と耐アルカリ性を得るためには、ガリウムおよび/またはアルミニウムの総含有量を(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比で0.01〜0.05、ニッケルの含有量をNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比で0.05〜0.14の範囲とすることがより一層好適である。
本発明では酸化物焼結体が主に酸化亜鉛相から構成されているが、この酸化亜鉛相とは、JCPDSカード36−1451に記載された六方晶のウルツ鉱構造のものを指し、酸素欠損、亜鉛欠損の非化学量論組成のものも含まれる。添加元素であるガリウム、アルミニウム、およびニッケルは、通常、上記酸化亜鉛相の亜鉛サイトに固溶している。
主にガリウムおよび/またはアルミニウム、ならびにニッケルが上記の組成範囲で固溶した酸化亜鉛相で構成されている場合は、5kΩcm以下、より好ましくは1kΩcm以下の導電性を得ることが可能であるため、直流(DC)スパッタリングによる成膜において、より高いパワーを印加することができ、高速成膜が可能である。
2.酸化物焼結体の製造
本発明において酸化物焼結体は、その製造方法によって特に制限されない。例えば、(1)原料粉末から成形体を形成する工程と、(2)該成形体を焼結炉に入れて焼結させる工程を含む方法によることができる。本発明の酸化物焼結体中には、上記酸化ニッケル相の生成が無いことが望ましいわけであるが、製造条件のうち、例えば、原料粉末の粒径、混合条件および焼成条件に大きく依存する。
(1)成形体の形成
原料粉末から成形体を形成する工程では、第一の酸化物焼結体であれば、原料粉末として酸化亜鉛粉末に酸化ニッケル粉末を添加し、第二の酸化物焼結体であれば、これに、周期律表の第III族元素を含む酸化ガリウム粉末および/または酸化アルミニウム粉末を添加して混合する。周期律表の第III族元素は、高密度かつ高導電性の焼結体とするのに大きく寄与する。
原料粉末は、平均粒径によって特に制限されないが、いずれも平均粒径が5μm以下、特に3μm以下の粉末を用いることが望ましい。例えば、第一の酸化物焼結体であれば、平均粒径3μm以下の酸化亜鉛粉末、平均粒径3μm以下の酸化ニッケル粉末、また、第二の酸化物焼結体であれば、さらに、平均粒径3μm以下の酸化ガリウム粉末および/または平均粒径3μm以下の酸化アルミニウム粉末を用いて、ボールミル混合を12時間以上、より好ましくは18時間以上行った混合粉末を用いることが、酸化物焼結体中の酸化ニッケル相の生成を抑制するのに有効である。平均粒径が3μmを超え、あるいは混合時間が12時間未満では、各成分が均一に混合されず、酸化亜鉛相中にガリウムおよび/またはアルミニウム、ならびにニッケルが上記の組成範囲で固溶しにくくなり、そのために得られる酸化物焼結体の酸化亜鉛相中に酸化ニッケル相、または多量の複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相が存在することになり好ましくない。
一般に、酸化亜鉛系の酸化物焼結体において、安定して成膜可能なターゲット用酸化物焼結体を作る場合、酸化亜鉛に添加する元素の酸化物を原料粉末として用いることが好ましいが、酸化亜鉛と添加する他金属とを組み合わせた原料粉末からも製造することは可能である。しかし、酸化物焼結体中に添加した金属粉末(粒子)が存在していると、成膜中にターゲット表面の金属粒子が溶融してしまうので、ターゲットと膜の組成の違いが大きくなり好ましくはない。
原料粉末は、公知の装置を用いて混合、撹拌し、バインダー(例えば、PVA)などを添加して造粒した後、10〜100μmの範囲に整え、こうして得た顆粒を例えば1000kg/cm以上の圧力で加圧成形し、成形体とする。ついで、原料粉末を金型でプレス成形することにより粉末が圧縮され、密度の高い凝結粒子となり嵩密度が向上し、より高密度の成形体を得ることができる。1000kg/cmより低い圧力では嵩密度の向上が不十分で、満足できる密度向上効果が期待できない。
(2)成形体の焼結
成形工程に続く焼結工程は、該成形体を焼結炉に入れて焼結させる工程であり、焼成法は、簡便な常圧焼成法でもよいが、ホットプレス法でもよい。
例えば、焼結炉内の大気に酸素を導入する雰囲気で、1100℃〜1600℃、好ましくは1200℃〜1500℃で、10〜30時間、好ましくは15〜25時間焼結する。温度が1100℃より低いと焼結が不十分であり、密度が低くなり焼結体の抵抗値が高くなる。また、得られた焼結体から製造したターゲットは、成膜速度が遅くなる、異常放電などスパッタ時に不具合が生じるので好ましくない。この際、1〜3℃/分で昇温することができる。焼結後、冷却する際は酸素導入を止め、1000℃までを10℃/分で降温することができる。
得られる酸化物焼結体の密度が5.0g/cm以上となるようにすることが好ましい。密度が5.0g/cmよりも低いと、直流スパッタリングが困難になることはもとより、ノジュールの生成が著しくなるなどの問題が生じる。
3.ターゲット
上記の方法で製造された第一又は第二の酸化物焼結体は、平面研削等により加工し、所定の寸法にしてから、バッキングプレートに貼着することにより、本発明のターゲット(単一ターゲットともいう)とすることができる。必要により数枚の焼結体を分割形状にならべて、大面積のターゲット(複合ターゲットともいう)としても良い。
ターゲットには、スパッタリング用ターゲットとイオンプレーティング用ターゲットが含まれる。なお、イオンプレーティング法では、このような材料がタブレットと称される場合もあるが、本発明ではターゲットと総称することにする。
ターゲットは、Niが添加された酸化亜鉛焼結体をベースとするもの(第一のターゲット)であるか、または、酸化亜鉛を主成分とし、ガリウムおよび/またはアルミニウム、ならびにニッケルが固溶した酸化亜鉛相で構成されている酸化物焼結体をベースとするもの(第二のターゲット)である。
4.透明導電膜の製造
本発明の透明導電膜は、上記本発明のターゲットを用いて、成膜装置中で基板の上にスパッタリング法あるいはイオンプレーティング法により形成される。特に、直流(DC)スパッタリング法は、成膜時の熱影響が少なく、高速成膜が可能であるため工業的に有利であり好ましい。
すなわち、本発明の方法は、前記酸化物焼結体から作製した第一又は第二のターゲットを用い、特定の基板温度、圧力、酸素濃度などのスパッタ条件を採用することで、基板上にNiを含有する酸化亜鉛よりなる透明導電膜を形成する方法である。
本発明により透明導電膜を形成するには、スパッタガスとしてアルゴンなどの不活性ガスを用い、直流スパッタリングを用いることが好ましい。また、スパッタリング装置内は、0.1〜1Pa、特に0.3〜0.8Paの圧力としてスパッタリングすることができる。
本発明においては、例えば、5×10−5Pa以下まで真空排気後、純Arガスを導入し、ガス圧を0.2〜0.5Paとし、直流電力100〜300Wを印加して直流プラズマを発生させ、プリスパッタを実施することができる。このプリスパッタを5〜30分間行った後、必要により基板位置を修正したうえでスパッタリングすることが好ましい。
本発明では、基板を加熱せずに成膜できるが、基板を50〜300℃、特に80〜200℃に加熱することもできる。基板が樹脂板、樹脂フィルムなど低融点のものである場合は加熱しないで成膜することが望ましい。
上記本発明の酸化物焼結体から作製したスパッタリングターゲットを用いれば、耐薬品性、導電性に優れた透明導電膜を、直流スパッタリング法によって基板上に製造することができる。よって製造コストを大幅に削減できる。また、上記酸化物焼結体から作製したイオンプレーティング用のタブレットを用いた場合にも同様の透明導電膜の形成が可能である。
5.透明導電膜
本発明の透明導電膜は、上記方法により、特定のターゲットを用いて、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法で基板上に形成される。
すなわち、前記酸化物焼結体から加工されたターゲットを用いて、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法で製造された透明導電膜であって、(1)酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する透明導電膜であって、ニッケルをNi/(Zn+Ni)原子数比で0.02〜0.25の割合で含有する膜(以下、第一の膜ともいう)か、あるいは、(2)酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルと、ガリウムおよび/またはアルミニウムを含有する透明導電膜であって、(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比で0を超え0.08以下の割合で含有し、ニッケルをNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比で0.02〜0.25の割合で含有する膜(以下、第二の膜ともいう)であることを特徴とする。
これまでの酸化亜鉛系透明導電膜といえば、通常の酸及びアルカリに対して容易に溶解し、酸・アルカリに対する耐性に乏しくエッチング速度の制御が難しいため、液晶ディスプレイ用途等で不可欠なウェットエッチングによる高精細なパターニング処理が困難であるという問題を有していた。本発明は、工業的に有用な直流スパッタリング法やイオンプレーティング法による高速成膜に供することが可能な、アーク放電の生じにくいスパッタリングターゲット或いはイオンプレーティングタブレットを用いるので、電気的・光学的特性を損なうことなく高い酸・アルカリに対する薬品耐性を有する酸化亜鉛系透明導電膜を得ることができる。特に、膜の組成および結晶相を制御することによって、高い耐薬品性を示す酸化亜鉛系透明導電膜が得られる。
本発明の透明導電膜は、上記酸化物焼結体を原料として成膜されるため、酸化物焼結体の組成が反映されていることが好ましい。すなわち、第一の膜が、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する透明導電膜であって、ニッケルをNi/(Zn+Ni)原子数比で0.02〜0.25の割合で含有するものであり、また、第二の膜が、酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルと、ガリウムおよび/またはアルミニウムを含有する透明導電膜であって、(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比で0を超え0.08以下の割合で含有し、ニッケルをNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比で0.02〜0.25の割合で含有することが望ましい。
この透明導電膜は、酸化亜鉛を主成分とし、上記組成範囲のニッケルを含有することによって、優れた耐薬品性を示す。ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ni)原子数比で0.02未満である場合は、透明導電膜は十分な耐酸性、耐アルカリ性を示さず、0.25を超える場合には、膜の結晶性が低下するため、十分な耐酸性が得られなくなる。ただし、耐アルカリ性は、ニッケルの含有量が多くなるほど良好であり、0.25を超えた場合でも十分良好である。ニッケルの含有量が0.25を超え、膜の結晶性が低下した場合には、導電性も損なわれてしまう。
透明導電膜は、さらに上記の組成範囲のガリウムおよび/またはアルミニウムを含有することによって、より高い導電性を示すことも可能となる。ガリウムおよび/またはアルミニウムの含有量が、(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比で0.08を超える場合には、膜の結晶性が低下するため、十分な耐酸性が得ることができなくなる。
さらに、この透明導電膜が優れた耐薬品性と低い比抵抗を示すためには、上記のガリウムおよび/またはアルミニウムの総含有量が(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比で0.01〜0.05であり、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比で0.05〜0.14であることが、より一層好ましい。
特許文献3では、前述したように、NiとZnとGaとを含有する酸化物膜(Gaを含むNZ酸化物膜)が耐湿性ならびに耐アルカリ性が優れることが開示され、その請求項2には、NiとZnの総和に対してNiを5〜80原子%含むことが示され、非常に広範な組成範囲が規定されている。しかし、このような広範な組成範囲を規定しているのは、膜の耐湿性と耐アルカリ性の評価しか行われていないからであり、耐酸性を考慮した場合には上記範囲がすべて許容されるわけではない。さらに、特許文献3では、後述するような膜の生成相や結晶性が与える耐酸性への影響に関して、何ら記述されていない。
本発明の透明導電膜は、主としてJCPDSカード36−1451に記載された六方晶のウルツ鉱構造の酸化亜鉛相から成るが、高い導電性と優れた耐酸性を得るためには、前記したように膜の結晶性が重要である。
すなわち、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のc面が基板に対して平行になるように配向していることが重要である。
特に、次の式(B)で定義される、X線回折測定で得られる六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のc面(002)とa面(100)のピーク強度比が、50%以上であることが好ましい。
I[ZnO(002)]/(I[ZnO(002)]+I[ZnO(100)])×100 (%) … 式(B)
ここで、I[ZnO(002)]は、X線回折測定で得られる六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(002)ピーク強度であり、また、I[ZnO(100)]は、X線回折測定で得られる六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(100)ピーク強度を示している。ピーク強度の比が50%未満の場合、導電性が損なわれるとともに、十分な耐酸性を得ることができない。
また、ニッケルをNi/(Zn+Ni)原子数比、又はNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比で0.25より過剰に含んだ場合、もしくは原料である酸化物焼結体に酸化ニッケル相やニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相が多量に含まれる場合、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケルもしくはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相の寄与が大きくなり、透明導電膜には、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相が形成されるようになってしまう。立方晶構造の酸化亜鉛相は、透明導電膜の高比抵抗化を招くだけでなく、耐酸性を低下させるため、膜中に含まれていないことが好ましい。たとえ式(B)のX線回折強度比が50%以上であっても、立方晶構造の酸化亜鉛相が含まれる場合には、十分な耐酸性を得ることができない。
本発明の透明導電膜は、液晶ディスプレイなどの配線材料として用いられるが、そのためにはフォトレジストを用いたウェットエッチングでパターニングできることが重要である。すなわち、ウェットエッチングによるパターニングを可能とするためには、弱酸の有機酸(関東化学製ITO−06N)に対して30〜100nm/minの範囲の適度なエッチングレートを示すこと、および、弱アルカリに対してエッチングされないことが必要である。
また、帯電防止用途などの機能性の透明導電膜として用いる場合には、最低限の耐候性が重要である。すなわち、弱酸については上記と同程度であって、かつ弱アルカリ(5%KOH)に対して20nm/min以下のエッチングレートを示すことが必要である。
本発明の透明導電膜は、前記したように、酸化亜鉛にニッケルを添加した酸化物焼結体を加工したターゲットを用いるか、酸化亜鉛とニッケルに、さらにガリウムおよび/またはアルミニウムを適正な組成範囲で添加した酸化物焼結体を加工したターゲットを用い、膜の構造と結晶性を適切に制御することによって製造されるので、優れた耐酸性と耐アルカリ性を有している。したがって、上記のエッチング特性を十分満足することが可能である。
本発明において透明導電膜の膜厚は、用途によって異なるので特に規定できないが、50〜500nm、好ましくは100〜300nmである。50nm未満であると十分な比抵抗が確保できず、一方、500nmを超えると膜の着色の問題が生じてしまうので好ましくない。
また、透明導電膜の可視域(400〜800nm)での平均透過率は80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。平均透過率が80%未満であると有機EL素子などへの適用が困難となる。
6.透明導電性基材
本発明において、上記の透明導電性薄膜は、通常、ガラス板、石英板、樹脂板又は樹脂フィルムから選択されるいずれかの基材(基板)上に成膜され透明導電性基材となる。
この透明導電性基材は、前記の透明導電膜をLCD、PDP、或いはEL素子などの表示パネルの陽極及び/又は陰極として機能させるものである。基材としては、光透過性の支持体を兼ねることから、一定の強度と透明性を有する必要がある。
樹脂板もしくは樹脂フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)などが挙げられ、これらの表面にアクリル樹脂が被覆された構造の樹脂板もしくは樹脂フィルムでもよい。
基材の厚さは、特に限定されるわけではないが、ガラス板や石英板であれば、0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmであり、樹脂板又は樹脂フィルムの場合は、0.1〜5mm、好ましくは1〜3mmとされる。この範囲よりも薄いと強度が弱く取り扱いも難しい。一方、この範囲よりも厚いと透明性が悪いだけでなく重量が大きくなり好ましくない。
上記基材には、単層または多層からなる絶縁層、半導体層、ガスバリア層又は保護層のいずれかを形成することができる。絶縁層としては、酸化珪素(Si−O)膜または窒化酸化珪素(Si−O−N)膜などがあり、半導体層としては、薄膜トランジスター(TFT)などがあり主にガラス基板に形成され、ガスバリア層は、水蒸気バリア膜などとして、酸化珪素(Si−O)膜、窒化酸化珪素(Si−O−N)膜、アルミニウム酸マグネシウム(Al−Mg−O)膜、または酸化スズ系(例えば、Sn−Si−O)膜などが樹脂板もしくは樹脂フィルムに形成される。保護層は、基材の表面を傷や衝撃から守るためのものであり、Si系、Ti系、アクリル樹脂系など各種コーテングが使用される。なお、基材に形成しうる層はこれらに限定されず、導電性を有する薄い金属膜などを施すこともできる。
本発明によって得られる透明導電性基材は、比抵抗、光透過率、表面平坦性などの面で優れた特性をもつ透明導電膜が成膜されているため、各種の表示パネルの構成部品として極めて有用である。また、上記透明導電性基材を備えた電子回路実装部品としては、有機EL素子の他にレーザー部品などを挙げることができる。
以下に、本発明の実施例を用いて、さらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
(焼結体の原料粉末)
平均粒径が3μm以下の酸化亜鉛粉末と、平均粒径が3μm以下の酸化ガリウム粉末および/または平均粒径が3μm以下の酸化アルミニウム粉末、ならびに平均粒径が3μm以下の酸化ニッケル粉末を原料粉末とした。
(酸化物焼結体の評価)
得られた酸化物焼結体の比抵抗を、研磨面に対し、四探針法で測定した。また、得られた酸化物焼結体の端材を粉砕し、粉末X線回折測定を実施し、生成相の同定を行った。
(透明導電膜の基本特性評価)
得られた透明導電膜の膜厚を表面粗さ計(テンコール社製)で測定した。膜の比抵抗は、四探針法によって測定した表面抵抗と膜厚の積から算出した。膜の光学特性は、分光光度計(日立製作所社製)で測定した。膜の生成相は、X線回折測定(PANalytical社製)によって同定した。なお、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の生成は、X線回折を用いた逆格子空間マッピング測定によって判定した。
(透明導電膜の耐薬品性評価)
膜厚約200nmの透明導電膜を成膜し、耐薬品性を以下の手順で調べた。耐酸性については、30℃に設定したITO用有機酸エッチング液ITO−06N(関東化学製)に20秒間浸漬し、浸漬前後の膜厚差から求めた1分間当たりのエッチング速度によって判定した。耐アルカリ性についても同様に、5%のKOH水溶液に1分間浸漬し、求めた1分間当たりのエッチング速度によって判定した。
(実施例1)
ガリウムおよびアルミニウムを含まず、ニッケルのみを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を次のようにして作製した。
それぞれ平均粒径が3μm以下の酸化亜鉛粉末と酸化ニッケル粉末を出発原料として用い、酸化ニッケルは、ニッケルとしての含有量がNi/(Zn+Ni)原子数比で0.11となるように配合した。原料粉末を水とともに樹脂製ポットに入れ、湿式ボールミルで混合した。この際、硬質ZrOボールを用い、混合時間を18時間とした。混合後、スラリーを取り出し、濾過、乾燥、造粒した。該造粒物を、冷間静水圧プレスで3ton/cmの圧力をかけて成形した。
次に、成形体を次のように焼結した。炉内容積0.1m当たり5リットル/分の割合で、焼結炉内の大気に酸素を導入する雰囲気で、1400℃で20時間焼結した。この際、1℃/分で昇温し、焼結後の冷却の際は酸素導入を止め、1000℃までを10℃/分で降温し、酸化亜鉛およびニッケルからなる酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が50kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.6g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前記式(A)で定義される、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(101)によるピークと、立方晶の岩塩構造をとる複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相の(200)によるピークの強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体を、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングして、スパッタリングターゲットとした。直径152mm、厚み5mmの大きさに加工し、スパッタリング面をカップ砥石で最大高さRzが3.0μm以下となるように磨いた。
これをスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーキング抑制機能のない直流電源を装備した直流マグネトロンスパッタリング装置(アネルバ製)の非磁性体ターゲット用カソードに、スパッタリングターゲットを取り付けた。基板には、無アルカリのガラス基板(コーニング♯7059)を用い、ターゲット−基板間距離を60mmに固定した。5×10−5Pa以下まで真空排気後、純Arガスを導入し、ガス圧を0.3Paとし、直流電力200Wを印加して直流プラズマを発生させ、プリスパッタを実施した。十分なプリスパッタ後、スパッタリングターゲットの直上、すなわち静止対向位置に基板を配置し、加熱せずにスパッタリングを実施して、透明導電膜を形成した。
アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前記式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、2.5×10−3Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、30nm/minであり、適度な酸に対するエッチングレートを示した。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(比較例1)
従来のガリウムをドープした酸化亜鉛の酸化物焼結体を作製した。出発原料として酸化亜鉛粉末と酸化ガリウム粉末を用い、ガリウムとしての含有量がGa/(Zn+Ga)原子数比で0.05となるように配合した。
得られた酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.5g/cmであった。X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認された。
酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。
得られた透明導電膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)による反射のみが観察され、前記式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。また、膜の比抵抗を測定したところ、8.3×10−4Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、560nm/minであった。適度とされるエッチングレートに比べてかなり高い値を示し、耐酸性が低いことが明らかとなった。5%KOHに浸漬したところ、エッチングレートは180nm/minとなり、耐アルカリ性も低いことが明らかとなった。結果を表1に示す。
(実施例2)
ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。出発原料として酸化亜鉛粉末、酸化ガリウム粉末、および酸化ニッケル粉末を用い、酸化ガリウムは、ガリウムとしての含有量がGa/(Zn+Ga)原子数比で0.005となるように、酸化ニッケルは、ニッケルとしての含有量がNi/(Zn+Ga+Ni)原子数比で0.02となるように配合した。
実施例1と同様にして焼結し、得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が5kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.5g/cmであった。X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、1.9×10−3Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、70nm/minであり、適度な酸に対するエッチングレートを示した。5%KOHに浸漬した場合は20nm/minであり十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例3)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.08に変更した以外は、実施例2と同様のNi/(Zn+Ga+Ni)原子数比0.02の組成と作製方法で、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。
得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が5kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.5g/cmであった。X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、1.6×10−3Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、70nm/minであり、適度な酸に対するエッチングレートを示した。5%KOHに浸漬した場合は20nm/minであり十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(比較例2)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.10に変更した以外は、実施例2と同様のNi/(Zn+Ga+Ni)原子数比0.02の組成と作製方法で、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、5kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.4g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察されたものの、実施例2と比較すると、酸化亜鉛相のピーク強度は低下しており、ガリウム過剰に起因する結晶性の低下が示唆された。それでも前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%となった。膜の比抵抗を測定したところ、5.9×10−3Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、340nm/minであった。適度とされるエッチングレートよりかなり高い値を示し、耐酸性が低いことが明らかとなった。5%KOHに浸漬したところ、エッチングレートは110nm/minと低く、耐アルカリ性も十分でないことが明らかとなった。ガリウムの含有量が過剰であることに起因した、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の結晶性の低下が影響し、耐薬品性が低下したと推測された。結果を表1に示す。
(比較例3)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.08に、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比を0.01に変更した以外は、実施例2と同様の作製方法で、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、5kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.5g/cmであった。
酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、1.5×10−3Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、190nm/minであった。適度とされるエッチングレートより高い値を示し、耐酸性が十分でないことが明らかとなった。5%KOHに浸漬したところ、エッチングレートは80nm/minと低く、耐アルカリ性も十分でないことが明らかとなった。ニッケルの含有量が十分でないため、耐薬品性が低下したと推測された。結果を表1に示す。
(実施例4)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.05、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比を0.05に変更した以外は、実施例2と同様にして、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.5g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、9.5×10−4Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、30nm/minであり、適度なエッチングレートであった。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例5)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.01、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比を0.11に変更した以外は、実施例2と同様にして、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.4g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、9.7×10−4Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、30nm/minであり、適度なエッチングレートであった。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例6)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.03に、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比を0.11に変更した以外は、実施例5と同様の作製方法で、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.5g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、9.4×10−4Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、30nm/minであり、適度なエッチングレートであった。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例7)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.05に、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比0.11に変更した以外は、実施例5と同様の作製方法で、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.4g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、9.7×10−4Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、30nm/minであり、適度なエッチングレートであった。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例8)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.05、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比を0.14に変更した以外は、実施例2と同様にして、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.5g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、9.9×10−4Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、30nm/minであり、適度なエッチングレートであった。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例9)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.005、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比を0.25に変更した以外は、実施例2と同様にして、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が5kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.6g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークとして、c面(002)だけでなくa面(100)のピークも観察された。ただし、そのピーク強度は低く、a面(100)に対するc面(002)の比率は70%であった。次に、膜の比抵抗を測定したところ、2.2×10−3Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、60nm/minであり、適度なエッチングレートを示した。5%KOHの場合は10nm/minであり、わずかにエッチングされたが十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例10)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.08、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比を0.25に変更した以外は、実施例2と同様にして、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が5kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.6g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークとして、c面(002)だけでなくa面(100)のピークも観察され、a面(100)に対するc面(002)の比率は50%であった。膜の比抵抗を測定したところ、2.4×10−3Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、100nm/minであり、適度なエッチングレートを示した。5%KOHに浸漬した場合のエッチングレートは20nm/minであり、わずかにエッチングされたが十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(比較例4)
Ga/(Zn+Ga)原子数比を0.08に、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比を0.27に変更した以外は、実施例2と同様の作製方法で、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、5kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.6g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定に加え、逆格子空間マッピング測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の他に、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在が確認された。六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークについては、c面(002)だけでなくa面(100)のピークも観察され、a面(100)に対するc面(002)の比率は30%と低かった。膜の比抵抗を測定したところ、6.2×10−3Ωcmと高い値を示した。 次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、220nm/minであった。適度とされるエッチングレートより高い値を示し、耐酸性が十分でないことが明らかとなった。同様に、5%KOHに浸漬したところ、エッチングレートは70nm/minと低く、耐アルカリ性も十分でないことが明らかとなった。ニッケルの含有量が過剰であることに起因した、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相が生成と六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の結晶性の低下が影響し、耐薬品性が低下したと推測された。結果を表1に示す。
(実施例11)
湿式ボールミルによる混合時間を8時間に短縮した以外は、実施例6と同様のGa/(Zn+Ga)原子数比0.03、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比0.11の組成と作製方法で、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.0g/cmであった。X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の他に、酸化ニッケル相は確認されなかったが、立方晶の岩塩構造をとるニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークが確認された。前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は25%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電はごく稀に起こるものの、基本的には安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークとして、c面(002)だけでなく小さいa面(100)のピークも観察され、a面(100)に対するc面(002)の比率は90%であった。膜の比抵抗を測定したところ、1.1×10−3Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、50nm/minであり、実施例6よりは速いものの適度なエッチングレートであった。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(比較例5)
平均粒径が約5μmの酸化ニッケル粉末を原料粉末として用い、湿式ボールミルによる混合時間を2時間に短縮した以外は、実施例6と同様のGa/(Zn+Ga)原子数比0.03、Ni/(Zn+Ga+Ni)原子数比0.11の組成と作製方法で、ガリウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、1kΩcm以下であった。また密度は4.8g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の他に、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相およびニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークが確認された。前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は70%であった。
酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングを行ったが、酸化物焼結体の比抵抗が低かったにもかかわらずアーク放電が頻発し、安定した成膜ができなかった。結果を表1に示す。
(実施例12)
ガリウムの代わりにアルミニウムを添加するため、出発原料として酸化ガリウム粉末ではなく酸化アルミニウム粉末を用いた以外は、実施例2と同様のAl/(Zn+Al)原子数比0.005、Ni/(Zn+Al+Ni)原子数比0.02の組成と作製方法で、アルミニウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が5kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.4g/cmであった。
X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、1.9×10−3Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、70nm/minであり、適度なエッチングレートであった。また、5%KOHに浸漬した場合のエッチングレートは20nm/minであり、わずかにエッチングされたが十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例13)
ガリウムの代わりにアルミニウムを添加するため、出発原料として酸化ガリウム粉末でなく酸化アルミニウム粉末を用いた以外は、実施例6と同様のAl/(Zn+Al)原子数比0.03、Ni/(Zn+Al+Ni)原子数比0.11の組成と作製方法で、アルミニウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。
得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.4g/cmであった。X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、9.5×10−4Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、30nm/minであり、適度なエッチングレートであった。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例14)
ガリウムの代わりにアルミニウムを添加するため、出発原料として酸化ガリウム粉末でなく酸化アルミニウム粉末を用いた以外は、実施例8と同様のAl/(Zn+Al)原子数比0.05、Ni/(Zn+Al+Ni)原子数比0.14の組成と作製方法で、アルミニウムとニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。
得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.4g/cmであった。X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、9.9×10−4Ωcmであった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、30nm/minであり、適度なエッチングレートであった。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
(実施例15)
実施例6で添加したガリウムの一部をアルミニウムに置き換えて、Ga/(Zn+Ga)原子数比0.025、Al/(Zn+Al)原子数比0.005とした以外は、実施例6と同様の、(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比0.03、Ni/(Zn+Al+Ni)原子数比0.11の組成と作製方法で、ガリウム、アルミニウム、ならびにニッケルを含む酸化亜鉛を主成分とする酸化物焼結体を作製した。
得られた酸化物焼結体の組成を分析したところ、ほぼ配合組成と同じであることを確認した。酸化物焼結体の比抵抗値を測定したところ、比抵抗が1kΩcm以下であることが確認された。また密度は5.4g/cmであった。X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみが確認され、立方晶の岩塩構造をとる酸化ニッケル相またはニッケルと亜鉛を含む複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相による回折ピークは確認されなかった。すなわち、前出の式(A)で定義される、ニッケルと亜鉛を含む複合酸化物相(200)に対する酸化亜鉛相(101)のピーク強度比は0%であった。
このような酸化物焼結体をボンディングしてスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングによる成膜を行った。アーク放電は起こらず、安定した成膜が可能であった。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。膜の生成相をX線回折測定によって同定したところ、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相のみによって構成されており、立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相の存在は確認されなかった。この六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の回折ピークは、c面(002)反射によるもののみが観察され、前出の式(B)で定義される、前記酸化亜鉛相のa面(100)に対するc面(002)のピーク強度比は100%であった。膜の比抵抗を測定したところ、1.0×10−3Ωcmを示し、実施例6よりはわずかに高かった。
次に、得られた透明導電膜をITO−06Nに浸漬した場合のエッチングレートを測定したところ、30nm/minであり、適度なエッチングレートであった。5%KOHに対しては全くエッチングされず、十分な耐アルカリ性が得られた。結果を表1に示す。
Figure 2007302508
上記実施例1では、酸化物焼結体が酸化亜鉛を主成分とし、さらに特定量のニッケルを含有しているために、これをスパッタリングターゲットとして用いたときに、直流スパッタリングでもアーク放電が発生せず、耐薬品性に優れた透明導電膜を形成できた。また、実施例2〜10、実施例12〜14では、さらにガリウムおよび/またはアルミニウムを特定量含有する酸化物焼結体としたので、得られる透明導電膜の導電性を一層改善することができることが分かる。なお実施例11では、原料粉末の混合時間を変えたために得られる酸化物焼結体の密度が若干小さくなったが、得られる透明導電膜の耐薬品性、導電性はさほど影響を受けていないことが分かる。
これに対して、比較例1では、ニッケルが添加されていない従来のガリウム添加酸化亜鉛焼結体であり、比較例2〜4は、ニッケル及びガリウムが添加されているが、その添加量が本発明の範囲から外れるので、これを用いて得られる透明導電膜の耐薬品性、導電性が不十分であった。比較例5では、原料粉末の混合時間が極めて短時間であり、酸化物焼結体に酸化ニッケル相が生成したため、スパッタリングでアーク放電が生じ透明導電膜を成膜できないことが分かる。

Claims (13)

  1. 酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する酸化物焼結体であって、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ni)原子数比として0.02〜0.25であり、かつ比抵抗が50kΩcm以下であることを特徴とする酸化物焼結体。
  2. 酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルと、ガリウムおよび/またはアルミニウムを含有する酸化物焼結体であって、ガリウムおよび/またはアルミニウムの含有量が(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比として0を超え0.08以下、また、ニッケルの含有量がNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比として0.02〜0.25であり、かつ比抵抗が5kΩcm以下であることを特徴とする酸化物焼結体。
  3. ニッケルの含有量が、Ni/(Zn+Ni)、又はNi/(Zn+Ga+Al+Ni)原子数比として0.05〜0.14であることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化物焼結体。
  4. ガリウムおよび/またはアルミニウムの含有量が、(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比として0.01〜0.05であることを特徴とする請求項2に記載の酸化物焼結体。
  5. 酸化ニッケル相が実質的に含有されないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物焼結体。
  6. 下記の式(A)で表されるX線回折測定によるピークの強度比が、25%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化物焼結体。
    I[NiZn1−xO(200)]/I[ZnO(101)]×100 (%)… 式(A)
    (式中、I[NiZn1−xO(200)]は、立方晶の岩塩構造をとる複合酸化物NiZn1−xO(x=0.6、0.7、0.8または0.9)相の(200)ピーク強度であり、I[ZnO(101)]は、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(101)ピーク強度を示す)
  7. 密度が5.0g/cm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化物焼結体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の酸化物焼結体を加工して得られるターゲット。
  9. 請求項8に記載のターゲットを用いて、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法で基板上に形成される透明導電膜。
  10. 酸化亜鉛を主成分とし、さらにニッケルを含有する透明導電膜であって、ニッケルがNi/(Zn+Ni)原子数比で0.02〜0.25含有されることを特徴とする請求項9に記載の透明導電膜。
  11. さらに、ガリウムおよび/またはアルミニウムが、(Ga+Al)/(Zn+Ga+Al)原子数比で0を超え0.08以下含有されることを特徴とする請求項10に記載の透明導電膜。
  12. 主として六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相から成り、下記の式(B)で表されるX線回折測定によるピーク強度比が、50%以上であることを特徴とする請求項9に記載の透明導電膜。
    I[ZnO(002)]/(I[ZnO(002)]+I[ZnO(100)])×100 (%) … 式(B)
    (式中、I[ZnO(002)]は、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(002)ピーク強度であり、I[ZnO(100)]は、六方晶のウルツ鉱構造をとる酸化亜鉛相の(100)ピーク強度を示す。)
  13. 立方晶の岩塩構造をとる酸化亜鉛相が実質的に含有されないことを特徴とする請求項9に記載の透明導電膜。
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