JP2006278112A - 色素増感太陽電池及び色素増感太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性基板、該導電性基板上に、増感色素を吸着した多孔性半導体層、キャリア輸送層及び対極をこの順で少なくとも有し、前記増感色素が、吸収スペクトルにおける吸収ピーク波長の異なる2種の増感色素からなり、かつ、吸収ピーク波長を長波長側に有する増感色素の分子量よりも、吸収ピーク波長を短波長側に有する増感色素の分子量が小さいことを特徴とする色素増感太陽電池により上記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
しかしながら、太陽電池として実用化するためには、更なる変換効率の向上が望まれている。
導電性基板、該導電性基板上に、増感色素を吸着した多孔性半導体層(半導体電極)、キャリア輸送層、対極をこの順に有する色素増感太陽電池は、多孔性半導体層表面上の増感色素が光を吸収することにより、色素分子内の電子が励起され、励起電子が多孔性半導体層に注入され、該電子を取り出すことで電気エネルギーを得ている。しかしながら、多孔性半導体層表面上には増感色素で覆われていない部分が存在し、増感色素から注入された電子が、増感色素で覆われていない部分からキャリア輸送層に流れる(逆電流)という現象がある。この現象は光電変換効率を低下させる。
以下では、色素増感太陽電池の各構成要素を説明する。
本発明において、多孔性半導体層は、導電性基板上に形成される。
導電性基板としては、金属基板のようにそれ自体が導電性を有する基板、またその表面に導電層を有するガラス、プラスチック等の基板が利用できる。後者の場合、好ましい導電材料は、金、白金、銀、銅、アルミニウム、インジウム等の金属、導電性カーボン、インジウム錫複合酸化物、フッ素をドープした酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。これら導電材料は、常法によって、該基板上に形成できる。導電層の膜厚は0.02〜5μm程度が好ましい。
また、導電性基板側が受光面となる場合、該基板は、透明であることが好ましい。
更に、該導電性基板が受光面でない場合には、白金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ニッケル、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン等の金属基板を用いてもよい。
多孔性半導体層は、通常半導体微粒子の集合体からなる。
また、多孔性半導体層の空隙率は、40〜80%であることが好ましい。40%より小さい場合、色素溶液が浸透し難いため色素吸着が困難になるので好ましくなく、80%より大きい場合、膜の強度が弱いので好ましくない。
最も好ましい半導体微粒子の形態である酸化チタンは、各種文献に記載されている方法に準じて作製できる。例えば、作製法としては、「新合成法:ゾル−ゲル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」第35巻、第9号1012〜1018頁(1995)等が代表的なものとして挙げることができる。また、Degussa社が開発した塩化物を高温加水分解することにより得る方法も適している。
多孔性半導体層の形成方法は、例えば、透明導電膜上に半導体微粒子を含有する懸濁液を塗布し、乾燥及び/又は焼成する方法が挙げられる。
上記方法を具体的に説明する。
多孔性半導体層には2種類の増感色素を吸着させる。
増感色素としては、有機色素や金属錯体色素を用いることができる。有機色素は、例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
増感色素は、多孔性半導体層に吸着させることにより半導体を分光増感させることができる。増感色素の吸着は、多孔性半導体層の形成用の半導体微粒子に行っても、多孔性半導体層に行ってもよい。通常は多孔性半導体層を形成後に吸着させた方が、半導体微粒子に吸着させるより、増感色素の吸着性が向上するので好ましい。
対極は、半導体電極(多孔性半導体層)と共に一対の電極を構成し得るものである。通常、支持基板上に形成される。対極は、支持基板側から導電層、触媒層の順の積層体からなる構成を有していてもよい。
支持基板としては、通常太陽電池の基板として使用できる透明又は不透明の基板が挙げられる。
なお、触媒層の電気伝導性が高い場合には、導電層を設けなくてもよい。
キャリア輸送層は、電子、ホール及び/又はイオンを輸送できる導電性材料から構成されることが好ましい。例えば、ポリビニルカルバゾール、トリフェニルアミン等のホール輸送材料;テトラニトロフロレノン等の電子輸送材料;ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性ポリマー;液体電解質、高分子電解質等のイオン導電体;ヨウ化銅、チオシアニン酸銅等の無機p型半導体が挙げられる。
上記の導電性材料の中でも、イオンを輸送できる導電性材料、すなわちイオン導電体が好ましい。
液体電解質は、酸化還元性電解質を含むことが好ましい。
酸化還元性電解質としては、一般に、電池や太陽電池等において使用できるものであれば特に限定されない。具体的には、I-/I3 -系、Br2 -/Br3 -系、Fe2+/Fe3+系、キノン/ハイドロキノン系等の酸化還元性電解質が挙げられる。
これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
液体電解質中の電解質濃度は、0.1〜1.5モル/リットルの範囲が好ましく、0.1〜0.7モル/リットルの範囲が特に好ましい。
次に、高分子電解質としては、酸化還元種と、酸化還元種を溶解あるいは酸化還元種を構成する少なくとも1つの物質と結合できる固体状の物質とからなることが好ましい。固体状の物質としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンスルフィド等の高分子化合物又はそれらの架橋体、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキサイド等の高分子官能基に、ポリエーテルセグメント又はオリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として付加したもの又はそれらの共重合体等が挙げられ、その中でも特に、オリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として有するものやポリエーテルセグメント構造を側鎖として有するものが好ましい。
酸化還元種は、上記液体電解質で挙げたものと同様のものを使用できる。
また、対極と多孔性半導体層との接触を防止するために、スペーサーを用いてもよい。スペーサーとしては、ポリエチレン等の高分子フィルムが挙げられる。フィルムの膜厚は、多孔性半導体層が酸化チタンからなる場合、その膜厚とキャリア輸送層のイオンの移動度を考慮すると10〜50μmくらいが適当である。
また、上記色素増感太陽電池(ユニットセル)を2つ以上直列接続させて、色素増感太陽電池モジュールとしてもよい。このモジュールは、高い変換効率を実現できる。
・多孔性半導体層の作製
透明導電膜8として膜厚1μmのSnO2膜を蒸着した厚さ1.1mmのガラス板(日本板硝子社製)の支持基板9の透明導電膜8側に、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、Ti nanoxide D/SP)をスクリーン印刷により、10μm程度の膜厚、10mm×10mm程度の面積で、透明導電膜8の上に塗布した。得られた塗膜を、100℃で30分間予備乾燥した後、大気雰囲気中で500℃にて40分間焼成することで、多孔性半導体層7として膜厚8μmの酸化チタンを得た。
増感色素5(色素I)としてトリス(イソチオシアナト)−ルテニウム(II)−2,
2’:6’,2’’−ターピリジン−4,4’,4’’−トリカルボン酸のトリス−テトラブチルアンモニウム塩(化合物3、分子量1363、吸収ピーク波長620nm、商品名Ruthenium620−1H3TBA、Solaronix社製)を濃度2×10-4モル/リットルとなるように、アセトニトリル(キシダ化学社製)及び2−ブタノール(キシダ化学社製)の混合溶媒に溶解させた。この溶液に、デオキシコール酸(Aldrich社製)を濃度2×10-2モル/リットルとなるように、加えて溶解させ、色素Iの吸着用溶液を得た。
更に、増感色素6(色素II)としてNKX−2311(化合物5、分子量418、吸収極大波長504nm、林原生物化学研究所製)を濃度2×10-4モル/リットルとなるように色素Iの吸着用溶液に溶解させ、色素I及び色素IIの吸着用溶液を得た。
得られた色素I及び色素IIの吸着用溶液に、上記ガラス板を約20時間浸漬させることにより色素I及び色素IIを多孔性半導体層に吸着させた。その後、約70℃で約10分間乾燥させた。
濃度0.1モル/リットルとなるようにヨウ化リチウム(Aldrich社製)を、濃度0.6モル/リットルとなるようにジメチル−プロピルイミダゾリウムアイオダイド(四国化成製)を、濃度0.05モル/リットルとなるようにヨウ素(Aldrich社製)を、アセトニトリル(Aldrich社製)に溶解させて、キャリア輸送層4として用いる酸化還元性電解液を作製した。
透明導電膜2を備えた支持基板1(上述ガラス板と同じ基板)の透明導電膜2側に白金膜を1μm蒸着して対極としての白金層3を形成した。
この対極と上記で得られた多孔性半導体層を短絡防止のためのスペーサーを挟んで重ねた。酸化還元性電解液を支持基板1と9の間隙より注入し、それらの側面を樹脂でシールした。次いで、各電極にリード線を取り付けることで、太陽電池を得た。
得られた太陽電池に、1kW/m2の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、特性(Jsc、Voc、FF、光電変換効率)を測定した。結果を表1に示す。
色素IIにNKX−2569(化合物7、分子量387、吸収極大波長489nm、林原生物化学研究所製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池を作製し、特性の測定を行った。結果を表1に示す。
色素IIにNKX−2554(化合物13、分子量362、吸収極大波長460nm、林原生物化学研究所製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池を作製し、特性の測定を行った。結果を表1に示す。
色素IIにNKX−2718(化合物17、分子量471、吸収極大波長460nm、林原生物化学研究所製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池を作製し、特性の測定を行った。結果を表1に示す。
色素IIにNKX−2656(化合物18、分子量607、吸収極大波長490nm、林原生物化学研究所製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池を作製し、特性の測定を行った。結果を表1に示す。
色素IIを用いずに実施例1と同様にして太陽電池を作製し、特性の測定を行った。結果を表1に示す。
図2に示す4個のユニットセルを直列に接続した集積化された色素増感太陽電池モジュールの作製を行った。その製造工程を以下に示す。
支持体21として10cm×10cmの日本板硝子社製SnO2付きガラス基板を用いた(透明導電膜22=フッ素ドープ酸化スズ)。幅10mm、隣り合うユニットセルの間隔を350μmの短冊状になるように、SnO2にレーザー光(YAGレーザー)を照射し、SnO2を蒸発させることによりパターニングを行った。
前記支持体上に、多孔性半導体層23を実施例1と同様の方法で形成し、ユニットセルの半導体層の大きさが、横10mm×縦90mm×膜厚15μmとなるようにした。
次に、得られた吸着用溶液に上記ガラス板を約20時間浸漬させることにより増感色素を多孔性半導体層に吸着させた。その後、多孔性半導体層をエタノール(Aldrich社製)で洗浄・乾燥した。
絶縁層28としてデュポン社製ハイミラン1855を1mm×95mmで切り出したものを用いて、図2の形状となるように両支持体を貼り合わせ、約100℃のオーブン中で10分間加熱することにより圧着した。その後、絶縁層の間隙に、支持基板29に設けた封入口(図示せず)より市販の導電性ペースト(藤倉化成製、商品名「ドータイト」)を注入し、乾燥させることにより、接続層27を形成した。
得られた太陽電池に、1kW/m2の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、特性を測定した。結果を表1に示す。
色素IIを用いずに実施例6と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製し、特性の測定を行った。結果を表1に示す。
2、8、22、26 透明導電膜
3、25 白金層
4、24 キャリア輸送層
5 増感色素I
6 増感色素II
7、23 半導体層
27 接続層
28 絶縁層(スペーサー)
Claims (10)
- 導電性基板、該導電性基板上に、増感色素を吸着した多孔性半導体層、キャリア輸送層及び対極をこの順で少なくとも有し、前記増感色素が、吸収スペクトルにおける吸収ピーク波長の異なる2種の増感色素からなり、かつ、吸収ピーク波長を長波長側に有する増感色素の分子量よりも、吸収ピーク波長を短波長側に有する増感色素の分子量が小さいことを特徴とする色素増感太陽電池。
- 前記吸収ピーク波長を短波長側に有する増感色素の分子量が、吸収ピーク波長を長波長側に有する増感色素の分子量より、50以上小さいことを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池。
- 前記吸収ピーク波長を長波長側に有する色素の分子量が、650〜2000であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池。
- 前記吸収ピーク波長を短波長側に有する色素の分子量が、150〜900であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池。
- 前記吸収ピーク波長を短波長側に有する色素が、300〜510nmの光波長領域に吸収ピーク波長をもつことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
- 前記吸収ピーク波長を長波長側に有する色素が、ルテニウムピリジン錯体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
- 前記吸収ピーク波長を長波長側に有する色素が、ターピリジン系ルテニウム錯体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
- 前記多孔性半導体層が、酸化チタンからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
- 前記多孔性半導体層が、40〜80%の空隙率を有することを特徴とする請求項8に記載の色素増感太陽電池。
- 請求項1〜9のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池を2つ以上直列接続した色素増感太陽電池モジュール。
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