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JP2004114954A - 車両用運転操作補助装置 - Google Patents

車両用運転操作補助装置 Download PDF

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JP2004114954A
JP2004114954A JP2002284257A JP2002284257A JP2004114954A JP 2004114954 A JP2004114954 A JP 2004114954A JP 2002284257 A JP2002284257 A JP 2002284257A JP 2002284257 A JP2002284257 A JP 2002284257A JP 2004114954 A JP2004114954 A JP 2004114954A
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西羅 光
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Abstract

【課題】レーンチェンジ等の動的な場面においても適切に運転補助を行うことのできる車両用運転操作補助装置を提供する。
【解決手段】自車および周囲車両の走行状態を検出する周囲状況検出手段と、前記周囲状況検出手段にて検出された周囲車両の状態に基づいて、自車にとって望ましい操作量を、推奨操作量系列として生成する推奨操作量生成手段と、運転者が未来に実行すると予想される操作量を、予測操作量系列として生成する運転者操作量予測手段と、自車の未来の操作に対する望ましさを、前記周囲状況検出手段にて検出された周囲車両の走行状態に基づいて評価する操作量評価手段と、前記推奨操作量系列と、前記予測操作量系列と、これら2つの操作量系列に対して前記操作量評価手段により計算される評価値と、に基づいて、自車の運転者に対し、物理的な刺激を与える運転操作指示手段と、を具備する。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用運転操作補助装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自車が走行する道路状況を認識して、道路状況に適した運転操作を促すために、操舵反力の形で運転者に情報を提示する装置に関する発明がいくつか提案されている。例えば、特開平9−66853号公報(以下、従来例1という)における車両の操舵力補正装置においては、前方の車線状態と自車の走行車線内での基準線からの偏りを検知し、偏りを修正するように操舵反力を加えている。また、周囲に障害物を検知した場合に、障害物の存在する方向に操舵した場合にも操舵反力を加える構成となっている。これは、自車の走行車線内に自車が進むべき目標経路を設定し、障害物の存在に応じて目標経路を補正している動作であると解釈することができる。
【0003】
一方、特開2000−198458号公報(以下、従来例2という)における車両の制御装置においては、従来例1と同様に自車の走行車線内に自車が進むべき目標経路を設定している。そして、運転者の過去の走行履歴をもとに、運転者の希望する車線位置、即ち、要求走行経路を推定し、要求走行経路に沿う位置を走行する場合には操舵反力を加えないようにしている。これは、目標経路を要求経路で補正していると解釈することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−66853号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2000−198458号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来例1に記載された発明には、運転者の意図を推定する機能を持つ要素が含まれていない。そのため、常にシステムが生成する目標経路に沿った走行が促されることになり、運転者の意図と生成された目標経路が異なる場合には、運転者の意図に反する操舵反力が加えられることになり、運転者に違和感を与えてしまうという問題点がある。
【0007】
また、従来例2に記載の発明は、そのような問題を解決すべく提案された発明ではあるが、運転者の要求経路をほとんどの場合において優先させるような構成となっており、周囲に他車両や障害物が存在する場合に運転者の要求経路が不適当な場合にも、運転者に注意を促すことができないという問題点があった。
【0008】
また、要求軌跡の推定方法についても、主として定常的な走行場面を前提とした推定方法となっており、定常走行の場面からレーンチェンジ(車線の変更)などの動的な場面に切り換わるところでは、要求軌跡の補正が間に合わずに、運転者の意図に反した操舵反力が加えられてしまうことがある、という問題点もあった。
【0009】
更に、上述した従来例1、及び従来例2は共に同一車線内を走行する場合の操舵の補助という機能しか持たない構成となっている。しかし、実際の運転操作は操舵と加減速が組み合わされて実現されるものであり、操舵の補助だけでは十分ではない場面も考えられる。レーンチェンジはその典型的な例として挙げることができる。レーンチェンジは、2つの車線をまたぐ動作であることと、加減速と操舵が組み合わされて実現される動作であり、従来例1、従来例2では十分に対応することができない場面となっている。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、レーンチェンジ等の動的な場面においても適切に運転補助を行うことのできる車両用運転操作補助装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、自車および周囲車両の走行状態を検出する周囲状況検出手段と、前記周囲状況検出手段にて検出された周囲車両の状態に基づいて、自車にとって望ましい操作量を、推奨操作量系列として生成する推奨操作量生成手段と、運転者が未来に実行すると予想される操作量を、予測操作量系列として生成する運転者操作量予測手段と、自車の未来の操作に対する望ましさを、前記周囲状況検出手段にて検出された周囲車両の走行状態に基づいて評価する操作量評価手段と、前記推奨操作量系列と、前記予測操作量系列と、これら2つの操作量系列に対して前記操作量評価手段により計算される評価値と、に基づいて、自車の運転者に対し、物理的な刺激を与える運転操作指示手段と、を具備したことを特徴とする。
【0012】
【発明の効果】
本発明によれば、運転者の意図を運転者操作量予測手段によって推定し、推定された運転者の意図、即ち、予測操作量系列と、システムが生成する推奨操作量系列とを、操作量評価手段によって表現された適当な評価規範に基づいて比較している。そして、運転者の意図が適切であるかどうかを数値的に評価、判断することができるので、運転者の意図が不適当と判断された場面では運転操作指示手段を用いて運転者に注意を促し、そうでない場面では運転者の意図を優先することによって、運転者に違和感を与えないような補助動作を実現することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用運転操作補助装置、及びその周辺機器の配置構成を示す説明図である。第1の実施形態では、従来技術として挙げた特開平9−66853号公報(従来例1)、及び特開2000−198458号公報(従来例2)との比較のために、走行車線内における横方向位置の保持を支援する装置に特化した例としている。
【0014】
図1において、前方レーダー1aは車両前面に取り付けられ、自車両前方に存在する複数の車両の位置を測定する。
【0015】
画像センサ(車線検出器)1bも同様に、車両前面の適所に取り付けられ、前方レーダー1aの測定情報を補完するとともに、道路上に引かれた車線(白線、黄線等)を検出する。
【0016】
後方レーダー1cは、車両の後部端面に取り付けられ、自車両後方に存在する複数の車両の位置を測定する。
【0017】
側方センサ1dは、左右の車両側面にそれぞれ1個ずつ取り付けられ、前方レーダー1a、及び後方レーダー1cの死角となる車両側方に存在する車両の位置を検出する。なお、側方センサ1dとしては、レーダーを用いることもできるが、超音波センサや画像センサを用いることも可能である。
【0018】
車速センサ2は、ロータリーエンコーダーをホイールに取り付けることで実現することができる。そして、ホイールの回転速度に応じた周期のパルス列を出力し、車速の計測値を得る。
【0019】
ハンドル3は、ステアリングシャフト4を介して前輪の操舵機構と連結されており、該ハンドル3を回転させることによって前輪を操舵する。更に、ハンドル3には回転角センサ5が取り付けられており、運転者のハンドル操作をハンドル回転角データとして計測する。
【0020】
演算部6は、マイクロコンピュータ及びその周辺部品から構成され、各センサ1b、1d、2、5、及び各レーダー1a、1cからの信号を、内蔵メモリに記録されたプログラムに従って処理し、反力モーター7を制御する。
【0021】
反力モーター7は、ハンドル3に加えられる操舵反力を増加、または減少させる場合に駆動され、操舵反力の変化によって運転者に注意を促す。
【0022】
図2は、演算部6の詳細な構成を示すブロック図である。同図に示すように、該演算部6は、推奨操作量生成手段6aと、運転者操作量予測手段6bと、操作量評価手段6cと、反力指令値演算部6dと、を具備している。そして、周囲状況検出手段としての、周囲センサ(前方レーダー1a、後方レーダー1c、側方センサ1d)、車線検出器1b、及び車速センサ2からの信号を入力し、且つ、運転者操作量検出手段としての、ハンドル回転角センサ5の出力信号を入力する。 更に、入力装置制御手段としての、反力モーター7に、演算処理により得られた出力信号を出力する。
【0023】
図3は、図2に示した運転者操作量予測手段6bの、より詳細な構成を示すブロック図である。同図に示すように、運転者操作量予測手段6bは、周囲車両群挙動予測手段6eと、予測演算部6fと、予測推奨操作量生成手段6gと、連結処理部6hと、を具備している。
【0024】
以下、図4に示す如くの道路状況を例にとり、図5、図6、図7に示すフローチャートを参照して、図2,図3に示した各ブロックの具体的な構成、及び処理動作について説明する。
【0025】
図4は、片側二車線の道路の左車線を自車Aが走行し、右車線前方に並走車Bが走行している状況を示している。簡単のため、直線道路を走行する場面を例に取り上げて説明するが、本発明を道路の曲線部を走行する場面に適用することは容易である。
【0026】
ここで、車線の進行方向にx座標をとり、垂直方向にy座標をとる。自車Aの走行車線(この場合左車線)の中央をy軸の原点にとる。x座標の原点は、例えば、自車Aの現在位置にとるなどすればよい(任意にとって構わない)。
【0027】
以下、自車Aの車体先端部のx座標をxA、重心の位置で測ったy座標の値をyA、並走車Bの先端部、後尾部のx座標をそれぞれxBF、xBR、左端部のy座標をyBと表記する。また、自車Aの車速はvAであり、並走車Bの車速vBよりも速い。そして、自車Aは並走車Bに接近しているものとする。
【0028】
図5は、処理全体の流れを示すフローチャートである。図5のステップ1では、レーダーやカメラ等の各種のセンサの情報を読み込む。ステップ2では、読み込まれた情報をまとめて、各車両の位置、速度、及び車線形状などの情報に換算して、自車Aの近傍の周囲地図情報を生成する。ここでいう周囲地図情報には、上記の説明で導入した各変数(xA、yA等、図4に示した各変数)が具体的な数値として格納されるほか、自車Aの周囲の車線位置、車線幅、車線形状の情報が格納される。
【0029】
ステップ3では、推奨操作量系列の生成が行なわれる。以下、ステップ3における推奨操作量系列の生成処理を、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0030】
図6のステップ3−1では、周囲車両群挙動予測手段6eの設定が行なわれる。周囲車両群挙動予測手段6eは、未来の自車Aの操作から自車Aをも含む周囲車群の未来の応答を予測する微分方程式、或いは差分方程式を有している。以下に、図4に示した場面における具体的な処理方法について説明する。
【0031】
簡単のため、自車Aは、進行方向の運動に関しては等速直線運動を行なうとする。このとき、考慮しなければならないのは、進行方向に対して垂直方向(横方向)の運動である。横方向の車両運動のモデルとして、例えば「文献1:M. Shimakage, et. al., ”Design of Lane−Keeping Control with Steering Torque Input for a Lane−Keeping Support System,” SAE2001−91−0480, 2001.」には、以下の(1)式、及び(2)式に示す如くの二輪モデルが記されている。
【0032】
【数1】
Figure 2004114954
【数2】
Figure 2004114954
但し、φは車両のヨー角、Iは車両のヨー角まわりの慣性モーメント、Cf、Crはそれぞれ前輪、後輪のコーナリングパワー、lf、lrはそれぞれ車両重心から前輪または後輪までの距離、uは前輪の舵角、mは車両の質量である。
【0033】
進行方向の運動に関しては、等速直線運動を仮定しているので、次の(3)式で表現することができる。
【0034】
【数3】
Figure 2004114954
また、並走車Bについては、希望車速v を維持するような動作をしているものと仮定し、次の(4)式に示すモデルに従うものとする。
【0035】
【数4】
Figure 2004114954
この場合、前輪舵角uを、系に対する操作量とみなすことができる。厳密には運転者が直接入力できる操作量は、ハンドル3の回転角である。ここでは、簡単のため、ハンドル3の回転角と前輪の舵角との間には、一対一の対応関係が成立しているものと考え、前輪の舵角を運転者の操作量であるとみなす。
【0036】
以上より、系の状態を表現する状態ベクトルとして、以下の(5)式を導入することができる。
【0037】
【数5】
Figure 2004114954
但し、Tはベクトルの転置記号である。すると、周囲車両群挙動予測手段6eが有する方程式は、次の(6)式、(7)式のように構成することができる。
【0038】
【数6】
Figure 2004114954
【数7】
Figure 2004114954
なお、(5)式に示した状態ベクトルの成分のうち、ヨーレート(φ・)や横方向速度(yA・)は、図1の配置図に示した各種のセンサ、レーダーでは直接測定することができないが、(1)、(2)式から状態観測器を設計、実装することにより、容易にその推定値を得ることができる。図5のステップ2における周囲地図生成の処理には、このような状態観測器による状態推定も含まれるものと考え、以下では、(5)式に示した状態ベクトルの、全ての成分の情報が利用可能であるとする。
【0039】
以上のような微分方程式を検出された周囲地図に基づいて構成するのが、ステップ3−1における処理の内容である。
【0040】
次に、ステップ3−2では、操作量評価手段6cにより、評価関数が設定される。評価関数は、自車の操作の結果予想される系の応答の望ましさを数値的に評価する手段である。予測区間全体にわたる評価を行なうために、次の(8)式に示すような、積分型の評価関数を用いる。
【0041】
【数8】
Figure 2004114954
ここで、t0は評価の開始時刻、τは評価区間の長さであり、L(x,u,t)は時刻tにおける瞬間的な評価を表す微分可能な関数であり、L(x,u,t)の部分に運転に対する要請を数学的に表現した関数を実装する。評価区間の具体的な長さは、例えば10秒程度の値を設定する。
【0042】
また、評価関数の具体形としては、様々なものが考えられる。以下、その一例を示す。
【0043】
まず、操舵量はなるべく小さい方がいいという要請を考えることができる。評価関数は値が小さいほどよい評価であると定義すると、操舵に対する要請を数学的に表現するものとして、(9)式に示す如くの評価関数Lu(u)を考えることができる。
【0044】
【数9】
Figure 2004114954
また、車線位置に関しては、通常は中央を走行することが望ましいと考えられる。そこで、以下の(10)式に示す如くの評価関数LY(yA)を考えることができる。
【0045】
【数10】
Figure 2004114954
但し、Lyは車線幅、nは適当な自然数であり、nが大きいほど車線中央付近の小さな偏りには甘く、車線から逸脱するような大きな偏りには厳しい評価となる。
【0046】
更に、並走車との関係を評価の中に入れることが考えられる。例えば、図4に示したように並走車Bが横幅の大きな大型トラックであった場合には、この大型トラックに近づいて並走するのは乗用車の運転者に緊張を強いる場合がある。たとえ車線の右寄りを走行する傾向のある運転者であったとしても、大型車両を追い抜く場合には、車線の左寄りに位置を修正して走行することを好むと考える方が自然である。そこで、次の(11)、(12)、(13)式に示す如くの評価関数を導入する。
【0047】
【数11】
Figure 2004114954
【数12】
Figure 2004114954
【数13】
Figure 2004114954
(11)式に示す評価関数は、自車Aと並走車Bとの横方向の距離が小さくなれば小さくなるほど、大きな値をとる関数であり、且つ、自車Aと並走車Bとの縦方向の位置が離れている場合には、数値の増加が小さくなるように変化する関数である。これにより、並走車Bと並走する場合にだけ偏り走行を抑制する効果を得ることができる。
【0048】
以上のような様々な要請を表現した評価関数の線形加重和をとることで、全体の評価関数を構成する。即ち、次の(14)式に示す評価関数を得ることができる。
【0049】
【数14】
Figure 2004114954
ここで、wU、wY、wLは、(9)〜(11)式に示した各要請に対する重みを表すパラメータである。
【0050】
以上のような評価関数を検出された周囲地図に基づいて構成するのが、ステップ3−2における処理の内容である。
【0051】
ステップ3−3では、時間変数を0に初期化する。ここでいう時間変数とは、推奨操作量系列の生成過程におけるシミュレーション時間に相当する変数である。後述するように、推奨操作量系列は最適操作量の算出と、この最適操作量を用いた状態予測(シミュレーション)を繰り返しながら、各シミュレーション時刻で算出された最適操作量を連結していくことで構成されていくので、シミュレーション時刻を保持する変数が必要になる。ここでは、その変数を時間変数あるいはシミュレーション時刻と呼ぶことにして、以後変数tsで表す。
【0052】
ステップ3−4では、シミュレーション時刻tsにおける周囲地図を確定する。ts=0であれば、周囲状況検出手段(図2参照)によって得られた実際の周囲地図がメモリ上にロードされ、ts>0であれば、周囲車両群挙動予測手段6e、及び1ステップ前に算出された最適操作量により予測された周囲地図がロードされる。
【0053】
ステップ3−5では、時刻tsにおける最適操作量を求めるアルゴリズムが実行される。一般に、(6)式に示した微分方程式に従う系において、(8)式に示した評価関数(但し、この場合t0にtsを代入した式)を最小にするような操作量uを求める問題は最適制御問題として定式化されており、最適な操作量uが満たすべき必要条件が導かれている。最適性の条件を書き下すために、次の(15)式に示す関数(ハミルトニアン)を導入する。
【0054】
【数15】
Figure 2004114954
ここで、λ(t)は最適制御問題を解くために導入された補助変数である。このとき、最適性の必要条件は、次の(16)、(17)、(18)式ように書き下すことができる。
【0055】
【数16】
Figure 2004114954
【数17】
Figure 2004114954
【数18】
Figure 2004114954
但し、x0はステップ3−4において確定したシミュレーション時刻tsにおける、周囲地図(状態ベクトル)である。
【0056】
最適制御問題の一般的な解法は次のようなものである。まず、(17)、(18)式で定義される、x、λに関する2点境界値問題を解く。得られた解x*、λ*を、(16)式に示した方程式に代入する。このとき、(19)とおくと、(20)式という方程式に帰着することができる。
【0057】
【数19】
Figure 2004114954
【数20】
Figure 2004114954
上記の(20)式を、uに関して解くことで、最適な操作量uを得ることができる。推奨操作量生成手段6aは、以上のような計算を行なうソフトウェアである。
【0058】
なお、2点境界値問題の解法については、「文献2:加藤寛一郎著 工学的最適制御 非線形へのアプローチ」では、解法の1つとしてダイレクトシュート法に言及しており、それを用いてもよい。また、2点境界値問題を直接解くことなく最適操作量を近似的に求める方法が、例えば、「文献3:T. Ohtsuka, ’’Continuation/GMRES method for fast algorithm of nonlinear receding horizon control’’ Proc. 39th IEEE Conference on Decision and Control, pp.766−771,2000. 」に示されているので、そのような方法を利用することもできる。以上のようなアルゴリズムによって、最適操作量を求めるのが、ステップ3−5における処理の内容である。
【0059】
ステップ3−5で生成した最適操作量u*(t)、ts≦t≦t+τは、そのすべてが推奨操作量系列として用いられるわけではない。ステップ3−5で得られた最適操作量は、区間ts≦t≦t+τで最適な操作量であるが、運転操作自体は一般にt=ts+τで終了するとは限らないので、推奨操作として提示する操作量は、時間が進むのに合わせて、常に更新していかなければならない。そこで、推奨操作量系列を格納するメモリを、生成される最適操作量とは別に確保しておき、記録された推奨操作量系列を生成された最適操作量で順次上書きしていくことで、推奨操作量系列を更新していく。
【0060】
そのような処理によって、各時刻で生成された最適操作量が連結される形で推奨操作量系列が生成されていくことになり、計算時間の許す限り任意の長さの推奨操作量系列を生成することができる。
【0061】
ステップ3−6は、そのような処理を行なうステップであり、ステップ3−5で計算された最適操作量に基づいて、時刻ts以降の推奨操作量系列を更新する。
【0062】
生成する推奨操作量系列の長さは、予め所定の長さTfに設定しておく。具体的な長さとしては、運転操作における一連の操作をカバーできる程度の値をとればよく、例えば10秒から30秒程度の値を設定することが考えられる。ステップ3−7では、予測時間tsの現在値と、Tfとを比較し、tsがTfを越えた場合には、ステップ3−8に進み、0≦ts≦Tfまでの推奨操作量系列u*(t)を出力し、処理を終了する。
【0063】
tsがTfまで到達していない場合には、ステップ3−9に進み、生成された最適操作量を用いた場合のΔtだけ後の時刻における系の状態量x(ts+Δt)を周囲車両群挙動予測手段6eを用いて予測する。Δtは、制御系のサンプリング周期と同程度の値をとればよく、例えば0.1秒程度の値を設定する。
【0064】
ステップ3−10では、シミュレーション時刻TsをΔtだけ先に進めて、ステップ3−4に戻る。以上が、図5のステップ3における推奨操作量系列生成処理の内容である。
【0065】
推奨操作量系列u*(t)が生成されると、図5のステップ4に進み、生成された推奨操作量系列を、操作量評価手段6cによって評価する。操作量評価手段6cは、推奨操作量生成手段6aにおいて用いられた評価関数と同様の役割を果たす計算手段であり、類似した関数で構成することができる。
【0066】
ここでは、上述の(8)式で定義された評価関数における被積分関数をそのまま流用し、積分の評価区間のみを変更した、次の(21)式で、操作量評価手段を構成する。
【0067】
【数21】
Figure 2004114954
ここで、積分区間Oは、推奨操作量系列の評価区間を表しているが、具体的な区間の設定方法に関しては後述する。
【0068】
ステップ4(図5)の具体的な処理内容は、周囲車両群挙動予測手段6eによる予測と合わせて積分演算を実行し、(21)式に示す値を求めることである。
【0069】
推奨操作量系列に対する評価が終わったら、ステップ5へ進む。ステップ5では、運転者の操作履歴の情報が読み込まれる。この場合、ハンドル3に取り付けられたハンドル回転角センサ5で検出されたハンドル回転角(または前輪舵角)の時系列データが読み込まれる。
【0070】
ステップ6では、運転者の未来の操作の予測系列である予測操作量系列を生成する処理が行なわれる。ステップ6における予測操作量系列の生成処理のフローチャートを図7に示す。
【0071】
図7のステップ6−1では、運転者の操作履歴のみから予測される操作履歴由来予測操作量um(t)が算出される。最も簡単な操作履歴由来予測操作量の生成方法としては、請求項13に示したような、現在の操作量が一定の値に保持されるとするものである。即ち、現在時刻をt0とすると、次の(22)式を、操作履歴由来予測操作量とする。
【0072】
【数22】
Figure 2004114954
ここで、τ0は操作履歴由来予測操作量の長さを表すパラメータであり、例えば1〜2秒程度の短い値を設定する。
【0073】
請求項14に示したような、現在の操作量の変化率を一定値に保持するという方法も考えられる。その場合、操作履歴由来予測操作量は次の(23)式のようになる。
【0074】
【数23】
Figure 2004114954
ここで、操作量の変化率u・(t0)は、例えば、次の(24)式で近似的に求めることができる。
【0075】
【数24】
Figure 2004114954
ここで、Δtはデータ計測周期である。
【0076】
ステップ6−2では、ステップ6−1で求めた操作履歴由来予測操作量を用いて、周囲車両群挙動予測手段6eの(6)式を積分し、x(t0+τ0)の予測値を求める。
【0077】
ステップ6−3では、x(t0+τ0)を初期状態として、図6に示した推奨操作量生成アルゴリズムを実行し、時刻t0+τ0における推奨操作量系列を、(25)式に示すように生成する。
【0078】
【数25】
Figure 2004114954
ステップ6−4では、操作履歴由来予測操作量um(t)と、予測推奨操作量系列ur(t)とを連結して、以下の(26)式に示す予測操作量系列up(t)を生成する。
【0079】
【数26】
Figure 2004114954
ステップ6−5では、上記のup(t)を予測操作量系列として出力し、予測操作量系列生成処理のステップ6を終了する。
【0080】
ステップ7(図5)では、ステップ4と同様に、生成された予測操作量系列を次の(27)式の操作量評価手法によって評価し、その評価値を求める。
【0081】
【数27】
Figure 2004114954
ここで、Πは予測操作量系列の評価区間を表している。
【0082】
推奨操作量系列の予測区間Oと予測操作量系列の評価区間Πの設定方法にはいくつかの方法が考えられる。以下、図8に基づいて、評価区間Πの設定方法について説明する。
【0083】
図8は、推奨操作量系列と予測操作量系列の生成例を示している。時刻t≦t0における操作履歴から、操作履歴由来予測操作量um(t)を生成し、その後に予測推奨操作量ur(t)を連結することで、予測操作量系列up(t)を構成している。一方、現在時刻t0における推奨操作量系列u*(t)も生成されている。ここで、図8に示すように、以下の(28)〜(31)式に示す4つの時間区間を定義する。
【0084】
【数28】
Figure 2004114954
【数29】
Figure 2004114954
【数30】
Figure 2004114954
【数31】
Figure 2004114954
区間O、Πの設定例として、以下のような組み合わせが考えられる。
【0085】
▲1▼O=T2、Π=T3、▲2▼O=T1、Π=T1、▲3▼O=T2、Π=T2、▲4▼O=T3、Π=T3、▲5▼O=T4、Π=T4、このうち、▲4▼、▲5▼で用いられるΠ=T3、T4を実行するためには、推奨操作量系列の長さをTfからTf+τ0に伸ばす必要がある。
【0086】
▲1▼は、生成される推奨操作量系列の変化に注目する区間設定であるのに対して、他の設定例(▲2▼,▲3▼,▲4▼,▲5▼)は評価区間を同一とすることで、偏りのない比較を行なうことを目的としている。
【0087】
ステップ8では、推奨操作量系列u*(t)及びその評価値JR、予測操作量系列up(t)及びその評価値Jpから、ハンドル3に加える反力の大きさを決定する。反力決定の基本的な考え方は以下のようなものである。
【0088】
推奨操作量系列u*(t)は、現状の道路環境における最も望ましい(設定してある評価関数を最小にするという意味で)操作であると考えることができる。しかし、実際には推奨操作量どおりに運転しなくても問題なく走行を続けることができる場合が多く、必要以上に運転者の操作に介入すると、却って運転者に違和感を与えてしまう恐れがある。
【0089】
運転者の意図する操作が不適切なものでない限りは、運転者の意図する運転操作に介入しないようなシステムの方が、運転を支援するシステムとしては適当な場合が多い。
【0090】
生成された推奨操作量系列に従う必要性がどの程度あるのかを評価することができれば、介入が必要か否か、必要であればどの程度必要なのか、を決定することができる。
【0091】
図7に示したフローチャートによって構成した予測操作量系列は、最初の時間τ0の間は、運転者の操作履歴から推測した操作履歴由来予測操作量から構成されており、必ずしも最適な操作になっているとは限らない。そこで、時間τ0の間、必ずしも最適でない動作をした場合に、操作量系列に対する評価がどの程度悪くなるかを、操作量評価手段6cが算出した評価値を比較することで調べ、評価値の変化の度合いでどの程度の反力による介入が必要であるかを決定する、という方法が考えられる。
【0092】
即ち、仮に予想される運転者の操作が適切なものであるか、或いは現在の周囲状況が多少の運転の自由を許容できる程度に余裕のある状況である場合には、予測操作量系列に対する評価値JPは、推奨操作量系列に対する評価値JRと比較してそれほど評価値が増加しないことが予想される。
【0093】
一方、運転者の操作が不適切なものであり、なおかつ現在の周囲状況が運転者に正確な操作を要求する緊迫した状況である場合には、評価値JPはJRと比較して大きな値になることが予想される。
【0094】
以上、評価値JPとJRとの比較により、運転者の操作への介入の必要性が判断できることを説明した。そこで、反力モーターへ指令する反力トルクの指令値の決定則として、例えば次の(32)、(33)、(34)式に示す如くの制御則を考えることができる。
【0095】
【数32】
Figure 2004114954
【数33】
Figure 2004114954
【数34】
Figure 2004114954
ここで、Tcom(u)は、操舵量がuであるときの反力トルクの指令値、T0(u)は、ハンドル3に加えられる反力トルク特性の初期設定値で、Tcom(u)、T0(u)ともに左回転させるトルクを正としている。一方で、操舵量uは、右方向への操舵を正としている。εは適当な正の定数、gmaxは関数g(x)の最大値を表す適当な正の定数である。Tは反力トルクの修正量を制限するために導入した操作量偏差積分の上限(下限)値である。
【0096】
以上の制御則の説明図を図9に示す。例えば、時刻t0において右方向へ操舵している状況であったとする。この時、左方向への操舵を推奨する推奨操作量が得られ、なおかつ予測操作量系列の評価値JPは、推奨操作量系列の評価値JRと比較してかなりの悪化が見られたとする。このとき、左方向への反力を大きくするような修正トルク指令値が(32)式から算出されるので、それに従って左方向への反力トルクが強化されるような反力トルク特性Tcom(u)が設定され、このTcom(u)を実現するような反力トルクの指令値が反力モーター7に出力される。
【0097】
以上のステップ8の処理が終わったところで、図5のフローチャートに示した制御サイクルが終了し、所定時間後に次の制御サイクルが開始されるまで現在の状態が保持される。
【0098】
図10に、上述した本発明の第1の実施形態を図4の場面に適用した場合の結果と、従来技術との比較を示す。図4に示したように、自車が左車線を右寄りに走行していて、前方に右車線を左寄りに走行している大型トラックがいて、自車が大型トラックを追い抜いていく場面を考える。
【0099】
特開平9‐66853号公報(従来例1)に記載された発明では、通常、車線中央に目標軌跡が設定されるので、図10の右側の図の一点鎖線で示したような目標軌跡に沿って走行するように操舵反力が加えられる。従って、図4、図10の場面のように右寄りを走行している場合には左方向への転舵を推奨する反力トルクが常に加えられることになる。このような特性は、運転者の意図を考慮しておらず、車線右寄りを走行することを好む運転者には違和感を与える恐れがある。
【0100】
特開2000‐198458号公報(従来例2)に記載された発明では、運転者の希望する車線位置を考慮して反力特性を修正しているので、もし運転者がずっと車線内の右寄りを走行している場合には、目標軌跡も図10の右側の図の点線で示したように車線右寄りに設定され、右寄りの車線位置を保持するような反力トルク特性が設定される。
【0101】
但しこの場面では、目標軌跡に沿って走行した場合、大型トラックを追い抜くときに、大型トラックに接近したまま走行することになり、運転者は緊張を強いられる場合がある。大型トラックとの距離を開けるために、左方向へ操舵しようとすると、目標軌跡から逸脱すると判定されて左方向への操舵が重くなるような反力トルクが加わり、やはり運転者に違和感を与えてしまう恐れがある。
【0102】
本発明では、まず図10の左側の枠内に示したような推奨操作量系列が生成される。図10では、現在の位置をしばらく保持した後、左方向へ操舵し、その後またしばらく操舵量を0付近に保持した後、右方向へ操舵する、といった操作量が生成された様子を示している。
【0103】
このような操作を実行した場合の車両の動作は、図10の右側の図の実線で示したような挙動になり、これが目標軌跡となる。大型トラックを追い抜く時には左側に寄ってトラックとの距離を開けるような軌跡となっている。反力トルクは運転者の意図から推定された予想軌跡と目標軌跡との比較によって決められる。運転者が右に寄った車線位置を保持してきた場合には、このまま右寄りの車線位置を保持するような操作履歴由来予測操作量が生成される。
【0104】
大型トラックに接近するにつれて、右寄り車線位置を保持するような操作に対する評価は悪くなっていくので、大型トラックとの距離が詰まるにつれて次第に左方向への操舵を促す反力トルクが強くなっていく。大型トラックを追い抜いた後は、目標軌跡は車線中央への復帰を推奨する軌跡となるが、そのまま左寄りの車線位置を保持した場合でも評価が大きく悪くなることはないので、右方向への操舵を促す反力トルクはごく穏やかなものになるか、或いは、全く提示されず、運転者の操作にあまり介入しないような動作になる。
【0105】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。本実施形態では、必要な場面でだけ運転者に操舵反力が提示され、運転者に違和感を与えることなく、余裕のある運転の実現を支援することができることを示した。
【0106】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、余裕をもった加減速運動の実現を支援するために、アクセルペダルへ反力を提示する装置に特化した例を示す。
【0107】
図11は、第2の実施形態に係る車両用運転操作補助装置、及びその周辺機器の配置構成を示す説明図である。基本的な装置構成は第1の実施形態と共通であるが、第2の実施形態では、ハンドル3ではなく、アクセルペダルへ31の反力提示が目的であるので、ハンドル回転角センサやハンドルへの反力モーターは必ずしも必要ではなく、それに代わってアクセルペダル3の踏み込み角度を検出するアクセルペダル角度センサ33と、アクセルペダル31の反力を制御する反力モーター32が搭載されている。
【0108】
演算部6の構成も、図2に示した第1の実施形態の構成と共通である。但し、運転者の操作履歴がハンドル操作の履歴ではなく、アクセルペダル31の操作履歴に置き換わる。また、後述するように、周囲車両群挙動予測手段6eや操作量評価手段6c等の具体的な構成についても異なるものとなる。
【0109】
以下、図12に示す如くの場面を例にとって、第2の実施形態における車両用運転操作補助装置の動作の詳細について説明する。
【0110】
図12は、左車線を自車Aが走行しており、その前方には先行車Bが走行している。自車Aの速度は、先行車Bの速度よりもやや速く、ゆっくりと車間距離が縮まっている状況であるとする。また、右車線前方には、隣接車Cが走行しており、車線中央から車線左側に走行位置を変化させてきており、左車線への車線変更を開始しているものとする。車両の進行方向にx軸を設定し、自車A,先行車B,隣接車Cのx座標をそれぞれ、xA、xB、xCとし、各車両の速度をそれぞれ、vA、vB、vCと表記する。また、横方向にy座標を設定し、左車線の中央を−1、右車線の中央を1とする。
【0111】
もし、隣接車Cが自車Aの前方に車線変更してきた場合には、自車Aは隣接車Cとの車間距離を調整するために減速する必要が出てくるので、運転者には減速を促すような情報を提示するべきである。以下、そのような動作をさせるための、装置の構成方法について説明する。
【0112】
図2に示したような装置を構成するためには、まず周囲車両群挙動予測手段6eを、図12に示した場面に適合するように構成する必要がある。周囲車両群挙動予測手段6eは、各車両の運動をモデル化することで構成される。
【0113】
最初に自車Aの運動をモデル化する。ここでは、自車Aは車線変更しないものと仮定し、自車Aの加減速度だけを調整する車両とみなす。従って、自車Aは次の(35)式のようにモデル化することができる。
【0114】
【数35】
Figure 2004114954
ここで、uは自車Aに対する加減速指令である。
【0115】
次に、先行車Bをモデル化する。先行車Bは、希望車速v で走行し続けることを目標とするような動作をする車両としてモデル化すれば、次の(36)式がそのようなモデルの一例となる。
【0116】
【数36】
Figure 2004114954
ここで、kBは適当な正の定数である。
【0117】
最後に、隣接車Cをモデル化する。隣接車Cは、車両進行方向に関しては、先行車Bに対して、次の(37)式で表されるような車間距離制御則に従って動作するものとする。
【0118】
【数37】
Figure 2004114954
但し、hCは隣接車Cの目標車間時間、kC1、kC2は先行車Bに対する追従特性を決める適当な正のパラメータである。
【0119】
横方向に関しては、次の(38)式のように、時定数1/ωの一次遅れを伴って、滑らかに左車線へ車線変更してくるものとする。時定数としては、例えば5.0秒程度の値が考えられる(その場合、ω=0.2となる)。このとき、隣接車Cの車線変更は、(38)式でモデル化される。
【0120】
【数38】
Figure 2004114954
以上のモデルを前述した(6)式の如くの微分方程式にまとめるためには、状態ベクトルx、関数f(x,u,t)を、次の(39)式、(40)式のように定義すればよい。
【0121】
【数39】
Figure 2004114954
【数40】
Figure 2004114954
以上が図12に示した場面における、周囲車両群挙動予測手段6eの具体的な例である。
【0122】
操作量評価手段6cについても、図12の場面に適合するような要請を設定し、評価関数の形で表現しなければならない。以下にその一例を示す。
【0123】
まず最初に考えられるのは、加減速の小さな操作量が望ましいという要請である。その要請を数学的に表現できる関数として、例えば、(41)式に示す如くの評価関数Lx(u)が考えられる。
【0124】
【数41】
Figure 2004114954
次に、先行車Bに対して適切な距離を保つという要請を挙げることができる。運転者がある目標車間時間hA(例えば1.5秒程度の値)を持っており、先行車Bに対して、車間時間がhAとなるような状態が望ましいと考えていたとすると、そのような要請を満たす関数として、例えば(42)式に示すものを挙げることができる。
【0125】
【数42】
Figure 2004114954
ここで、xpは自車Aに対する先行車のx座標である。(42)式に示した評価関数は、xp−xA=hAvA、即ち、先行車Bとの車間時間が目標と一致したときに最小値をとり、自車Aが先行車Bに近づくにつれて、無限に大きくなり、自車Aが先行車Bから離れれば離れるほど、大きくなる、という関数になっている。
【0126】
先行車Bのxpは、隣接車Cの車線変更の状態によって異なる。隣接車Cが車線変更する前は、Bが先行車であるが、隣接車Cが車線変更した後は、この隣接車Cが新たな先行車となる。
【0127】
この際、評価関数も微分可能となっていなければならないので、隣接車Cの車線変更の状態を表す変数yCを用いて、xpを微分可能な関数になるように構成する。例えば、(43)式に示す如くの合成変数を用いれば、上記のような車線変更に伴う問題は回避できる。
【0128】
【数43】
Figure 2004114954
更に、先行車に対する衝突時間をなるべく大きくする、という要請を考えることができる。先行車に対する衝突時間(Time to Collision, TTC)は、次の(44)式で定義される。
【0129】
【数44】
Figure 2004114954
但し、vpは先行車の車速である。衝突時間(TTC)は、(44)式の定義のままでは無限大を含む等、扱いが難しいので、衝突時間の逆数をベースにして評価関数を構成する。即ち、以下の(45)式を考える。
【0130】
【数45】
Figure 2004114954
但し、λ、λ0は、適当な正の定数である。(45)式は、先行車の車速が自車速よりも小さくなるにつれて、衝突時間の逆数に一致するようになり、逆に先行車の車速が自車速よりも大きくなるにつれて、0に収束するような性質を持っている。衝突時間が長くなれば、衝突時間の逆数は小さくなるので、(45)式は、評価関数は値が小さいほど望ましい、とする設定に合致する。
【0131】
先行車速vpについても、前述した(43)式と同様の合成変数を用いればよい。即ち、以下の(46)式のように設定すれば、図12に示した場面に適合する評価関数を得ることができる。
【0132】
【数46】
Figure 2004114954
以上のような評価関数の線形加重和をとることで、全体の評価関数を構成する。即ち、次の(47)が得られる。
【0133】
【数47】
Figure 2004114954
ここで、wX、wR、wCは、各要請に対する重みをあらわすパラメータである。
【0134】
以上のように、周囲車両群挙動予測手段6eと、操作量評価手段6cを適用場面に適合するように構成することができれば、装置の処理手順は、第1の実施形態に示した手順とほぼ同一となり、図5、6、7に示したフローチャートに従って、処理が進められていく。
【0135】
相違する点は、図5のステップ5において、運転者の操作履歴として、ハンドルの回転角ではなく、アクセルペダルの踏み込み角を用いることと、ステップ8において操舵反力トルクではなく、アクセルペダル反力を計算して提示する部分だけである。
【0136】
また、図7のステップ6−1の操作履歴由来予測操作量の生成に関しては、図12に示す如くの周囲地図が得られたところで、自車Aは先行車Bへ接近している場面である、といったように場面を特定することができれば、請求項15で言及しているようなドライバーモデルを用いて、第1の実施形態に示した方法よりも精度の高い操作履歴由来予測操作量を生成することができる。
【0137】
例えば、先行車へ接近するという動作を表現するドライバーモデルとして、次の(48)式に示すモデルがあったとする。
【0138】
【数48】
Figure 2004114954
ここで、hAは運転者の目標車間時間、k1、k2は適当なパラメータであり、これらのパラメータは標準的なドライバーの特性を反映した値を設定してもよいし、標準的な値を初期設定値として、過去に運転者が同様な場面に置かれたときにとった運転操作に基づいて値を修正してもよい。
【0139】
何らかの方法で、これら3つのパラメータが確定できた場合には、周囲車両群挙動予測手段6eに記憶された(34)〜(39)式において、(35)式を上述の(48)式に置き換えた上で、必要な時間だけ周囲車両群挙動予測手段6eの式を積分する。その際に、各積分ステップにおいて、次の(49)式の値を計算して、その値を操作履歴由来予測操作量として記録していく。
【0140】
【数49】
Figure 2004114954
以上の方法により、ドライバーモデルに基づく操作履歴由来予測操作量を生成することができる。ドライバーモデルに基づく操作量予測は、第1の実施形態で説明した単純な信号の外挿による方法と比較して、より長い予測区間にわたって比較的信頼できる操作量を生成することができる。予測推奨操作量を生成せずに、操作履歴由来予測操作量だけで予測操作量系列を構成することも可能である。
【0141】
図5のステップ8における反力の指令値演算も、操舵トルクがアクセルペダルの反力に置き換わるだけで、ほとんど同一に構成することができる。即ち、アクセルペダルに加わる反力の指令値Fcom(u)の決定則として、次の(50)式を設定する。
【0142】
【数50】
Figure 2004114954
ここで、F0(u)は、反力の初期設定特性であり、Fは反力の修正量を制限するための操作量偏差積分の上下限値である。
【0143】
図12の場面において、本発明を適用した結果の例を図13に示す。図13の上段の図が推奨操作量系列と予測操作量系列の生成結果である。推奨操作量系列は、隣接車Cの車線変更を予測して、加速を緩めて若干減速するような操作を指示している。
【0144】
このとき、例えば運転者の注意力が低下しており、隣接車Cの車線変更に気がつかず、現在の加速状態をこの後τ0の間だけ続けたとする。その後に生成された予測推奨操作量は、現在の推奨操作量系列よりも強い減速を指示するものとなっている。これは、時間τ0の間に自車Aが隣接車Cに近づきすぎたために、このような操作量が生成されたものと考えられる。
【0145】
推奨操作量系列と予測操作量系列を(28)式で定義した区間T2上で評価したときの評価値JP、JRが算出され、(49)式に基づいて、提示する反力の指令値が計算される。この場合、JPがJRよりも目立って増加していたので、ペダルの反力を増やして、運転者に減速を促すべきである、という判断のもとに、反力モーターに指令が伝達され、アクセルペダルには通常の場合よりも強い反力が提示される。
【0146】
以上、本発明の第2の実施形態に係る車両用運転操作補助装置について説明した。本発明を用いることにより、減速が必要な場面にも関わらず運転者が加速を続けてしまうような場合に、アクセルペダルの反力を強くすることで運転者に注意を喚起し、余裕をもった運転の実現を支援できることを示した。
【0147】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、加減速と操舵が組み合わされた操作が必要な場面において、運転者の運転意図を推定、評価し、運転者の操作が不適切であると判断された場合には警報を鳴らすことによって運転者に注意を促す警報システムに特化した例を示す。
【0148】
図14は、第3の実施形態に係る車両用運転操作補助装置、及びその周辺機器の配置構成を示す説明図である。基本的な装置構成は第1,第2の実施形態と同様であるが、警報装置8が加わえられ、反力を提示するための反力モーター類が取り除かれている。なお、図14には示していないが、ブレーキペダルにもアクセルペダルと同様に踏み込み角センサを取り付けて、その情報を同じように利用することができる。なお、この後に説明する具体的な適用場面の例は、ブレーキペダルの操作による減速が必要ない場面なので、アクセルペダルからの情報だけを利用する実施例を説明している。
【0149】
以下、図15に示す如くの場面を例にとって、第3の実施形態に係る車両用運転操作補助装置の動作を詳細に説明する。図15は、左車線を自車Aが走行中に、前方に自車よりも遅い速度で走行する先行車Bを捕捉し、右車線には、自車Aのやや後方に自車Aとほぼ同一、或いは若干速い程度の速度で走行する隣接車Cが走行している場面である。なお、座標系は第2の実施形態で説明した図12と同一にとるものとする。
【0150】
自車Aが現在の車線に留まれば、先行車Bとの車間距離を調整するために、いずれは減速を強いられることになる。また、右車線に車線を変更すれば、減速することなく走行を続けることができるが、右車線には隣接車Cが近くを走行しており、不用意な車線変更はリスクを伴う。
【0151】
このような場面で、自車Aの運転者がとる行動としては、加速して隣接車Cとの車間距離を開けてから、右車線に車線変更するか、或いは、左車線で緩減速して隣接車Cをやり過ごしてから、右車線に車線変更するかのいずれかが考えられる。後者は、比較的リスクの少ない操作であるが、前者は、先行車Bとの車間距離や隣接車Cとの速度差によっては、無理な操作になる可能性がある。無理な操作に対しては、警報装置8を鳴らして運転者に警告を発することが望ましい。以下、そのような動作を実現するシステムの構成方法を説明する。
【0152】
装置の構成や処理内容は、ほぼ第1,第2の実施形態と同様である。相違する部分は、アクセルペダル31の操作と、ハンドル3の操作の両方が、運転者操作履歴として利用されることと、反力指令値ではなく警報装置8に対する指令が出力される部分だけである。
【0153】
演算部6で行なわれる処理内容も基本的には同一であるが、周囲車両群挙動予測手段6eの微分方程式と、操作量評価手段6cの評価関数は、図15の場面に適合したものに変更する必要があるので、以下にそれらについて説明する。
【0154】
最初に、周囲車両群挙動予測手段6eであるが、この場面では、先行車Bと隣接車Cは車線変更せず、自車Aだけが車線変更するものと仮定する。従って、自車Aは加減速操作と車線変更操作の2つの操作が可能である。そこで、自車Aのモデルを次(51)式のように構成する。
【0155】
【数51】
Figure 2004114954
【数52】
Figure 2004114954
ここで、uxは加減速指令値、uyは車線位置の指令値である。車線変更動作は、厳密には(1)、(2)式のような車両の横方向のダイナミクスを考慮した式に基づいて定式化すべきであり、自車に対する操作量も車線位置ではなく操舵角とすべきである。ここでは簡単のため、車線位置の指令は、所定の適当な車線変更のパターンに基づいて操舵角の指令に変換されるものとし、結果として現れる車両の横方向の運動が(52)式の微分方程式で近似できるものとしてモデル化している。なお、uy及びyAは、−1(左車線中央)から1(右車線中央)までの値をとるものとする。ωは、車線変更の速さを表す時定数の逆数に相当する適当な正の定数である。
【0156】
先行車Bのモデルは、第2の実施形態と同一のモデルを用いる。即ち、前述した(36)式に示したモデルを用いることにする。
【0157】
隣接車Cについても、先行車が存在しない場面では、先行車Bと同様に希望車速で走行するモデルを用いることができる。一方、自車Aが隣接車Cの前方に車線変更した場合には、隣接車Cは希望車速で走行を続けられるとは限らなくなるので、自車Aとの車間距離を、所定の値に維持するような動作をするものとしてモデル化する。即ち、(53)式、(54)式となる。
【0158】
【数53】
Figure 2004114954
【数54】
Figure 2004114954
周囲車両群挙動予測手段6eの微分方程式は、微分可能な関数でなければならないので、(53)、(54)式のような、場合分けを含むようなモデルはそのままでは利用することができない。そこで、(53)式と(54)式を何らかの方法で、微分可能な関数で記述できるように連結する必要がある。
【0159】
隣接車Cに対する先行車の有無は、自車Aの車線変更と直接結びついていることに注目し、次の(55)式に示す連続関数を導入する。
【0160】
【数55】
Figure 2004114954
λは、適当な正のパラメータである。s(yA)は、s(−1)=0、s(1)=1を満たす微分可能な連続関数となっている。この関数を用いて、(53)、(54)式から次の、(56)式に示すモデルを作る。
【0161】
【数56】
Figure 2004114954
(56)式の右辺は、微分可能な連続関数となっているので、周囲車両群挙動予測式を構成するモデルとして用いることができる。
【0162】
以上で、すべての車をモデル化することができた。前述した(6)式のような状態ベクトルxと関数f(x,u,t)の形で表記すると、次の(57)式、(58)式のようにまとめることができる。
【0163】
【数57】
Figure 2004114954
【数58】
Figure 2004114954
ここで、システムの入力は、uxとuyの2つとなるので、これらの入力をまとめて、(59)式のように表記している。
【0164】
【数59】
Figure 2004114954
以上が、図15の場面における、周囲車両群挙動予測手段6eの具体例である。
【0165】
次に、図15に示した場面に適合するような、操作量評価手段6cの一例を示す。この場合も、第2の実施形態と同様に、加減速の小さな操作量が望ましいという要請を取り入れる。評価関数として、第2の実施形態と同様に、(60)式を設定する。
【0166】
【数60】
Figure 2004114954
自車Aの走行位置をなるべく車線中央付近に保つという要請も、基本的な要請として考えられる。特に、本実施形態では、2つの微分方程式を(55)式のような連続関数を使って連結しているため、yAが−1或いは1以外の値をとることは、予測モデルの精度という面でも望ましくない。そこで、次の(61)式に示す如くの評価関数を設定し、uyが−1或いは1以外の値をとることを抑制する。
【0167】
【数61】
Figure 2004114954
運転者の希望車速付近に走行車速を保つことを要請として取り上げることも考えられる。そのような要請を評価関数として表現すると、例えば、(62)式に示すような関数が考えられる。
【0168】
【数62】
Figure 2004114954
ここで、v は、運転者の希望車速である。
【0169】
第2の実施形態と同様に、先行車Bに対して適切な距離を保つという要請は、第3の実施形態においても基本的な要請として考慮する必要がある。評価関数についても第2の実施形態と同一の(42)式を用いることができる。但し、この場面では先行車はBであるので、(63)式のように表記する。
【0170】
【数63】
Figure 2004114954
また、右車線に車線変更する場合には、後方車両との車間距離も考慮する必要がある。後方車両の場合、先行車と違って車間距離が開きすぎると困るということはないので、(63)式右辺第1項に相当する項は必要ない。この場合、後方車両に相当するのはCなので、次の(64)式のような評価関数を設定することができる。
【0171】
【数64】
Figure 2004114954
また、先行車Bに対する評価は、自車Aが左車線にいる場合、隣接車Cに対する評価は、自車Aが右車線にいる場合にだけ考慮すれば良いので、評価関数についても連続関数s(yA)を用いて、2つの関数を連結する。即ち、次の(65)をもって、周囲車両との車間距離に対する要請を表す評価関数として設定する。
【0172】
【数65】
Figure 2004114954
先行車、及び後続車との衝突時間が短くなりすぎないようにする、という第2の実施形態で用いた要請は、この場面においても有効な要請として考慮する価値がある。評価関数も第2の実施形態において示した(45)式と同一の式を流用することができる。但し、車間距離に対する要請と同様に、同一車線上にいる車両だけを評価の対象とする場合には、次の(66)、(67)、(68)式ように評価関数を構成する。
【0173】
【数66】
Figure 2004114954
【数67】
Figure 2004114954
【数68】
Figure 2004114954
以上のような評価関数の線形加重和をとることで、全体の評価関数を構成する。即ち、(69)式が得られる。
【0174】
【数69】
Figure 2004114954
ここで、wX、wY、wV、wR、wCは、各要請に対する重みをあらわすパラメータである。
【0175】
以上のように、周囲車両群挙動予測手段6eと、操作量評価手段6cを図15の場面に適合するように構成することができれば、装置の処理手順は、第1の実施形態の場合とほぼ同一であり、図5、6、7に示したフローチャートに基づいて、処理が進められていく。相違する点は、図5のステップ5において運転者の操作履歴として、ハンドルの回転角とアクセルペダルの踏み込み角の両方を用いることと、ステップ8において操舵反力を計算するのではなく、警報の有無を判定して、警報が必要ならその音量も決めて警報を鳴らす点のみである。
【0176】
以下、図16、図17に基づいて、図15に示した場面における具体的な装置の動作について説明する。
【0177】
図16は、図15において、先行車Bとの車間距離が大きく、且つ隣接車Cの車速が、自車Aと同じ程度の車線変更が比較的容易な条件における動作の例である。
【0178】
図16の左側下段には、記録された運転者の操作履歴を示している。それによれば、運転者の操作の履歴は、左車線を走行し続けながら、駆動力(アクセルペダル角度から換算)を増加させているような操作履歴となっている。この時点での推奨操作量系列を求めたところ、右側下段のような推奨操作量系列が得られた。
【0179】
これは、加速しながら隣接車Cの前方に車線変更して、その後緩減速して速度を調整するような操作となっている。一方、(22)式のような予測方法に従って操作履歴由来予測操作量を求めると、中央上段に示したような操作履歴由来予測操作量となる。
【0180】
操作履歴由来予測操作量の後に予測推奨操作量を連結して、右側上段のような予測操作量系列が得られた。推奨操作量よりも若干強い加速と早いタイミングでの車線変更となっているが、基本的には推奨操作量系列に類似した操作となっている。この場合、推奨操作量系列に対する評価値JRと、予測操作量系列に対する評価値JPにはあまり大きな差が生じていないので、警報装置8は作動させない。
【0181】
一方、図17は、図16よりも先行車Bとの車間距離が短く、且つ隣接車Cの車速が自車Aよりも速く、車線変更が難しい条件における動作の例となっている。この場合においても、運転者の操作履歴は図16の例と同様に、加速を始めて隣接車Cの前方への車線変更を狙った操作をしているという条件を与えている。しかし、この場合、生成された推奨操作量系列は、図17右側下段に示したように、減速して隣接車Cをやり過ごした後に、右車線へ車線変更する操作を推奨している。
【0182】
図16の例と同様、中央上段に示したように操作履歴由来予測操作量を生成し、予測推奨操作量を連結して予測操作量系列を構成すると、右側上段のような操作量となり、推奨操作量系列と比較しても強い減速を指示する操作が得られている。これは、現在行なっている程度の加速では、隣接車Cの前方に安全に車線変更できるだけの空間を確保できる前に、先行車Bとの車間距離が縮まって減速を余儀なくされることを予測している、と解釈することができる。
【0183】
この場合、予測操作量系列が強い減速を行なっていることもあり、予測操作量系列に対する評価JPは推奨操作量系列に対する評価JRよりも悪くなっている。そこで、警報装置8を作動させて、加速を続けることが危険であることを運転者に警告する。警報装置8の作動規則にも様々なものが考えられるが、最も簡単な規則は、JP/JRがある所定の閾値を越えた場合に警報を鳴らすというものである。
【0184】
あるいは、警報に何段階かのレベルを設け、JP/JRの値によって警報のレベルを決定し、高いレベルになるほど警報の音量を大きくする、といった構成をとることもできる。
【0185】
以上が、本発明の第3の実施形態である。本発明を用いることにより、加減速と操舵が組み合わされた動作を適切に評価し、運転者の意図が不適切な場合に、警報音で運転者に注意を喚起し、余裕のある運転の実現を支援できることを示した。
【0186】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、請求項5〜請求項11に記載したような、推奨操作量系列を使用せずに、運転者に適切な操作を促すように反力を加えたり、警報を加えたりする装置の構成方法を説明するための例を示す。
【0187】
第4の実施形態に係る車両用運転操作補助装置の配置構成図は、第2の実施形態で示した図11とほぼ同一である。但し、ここでは第3の実施形態において用いられた警報装置8をも備えているものを考える。
【0188】
図18に、第4の実施形態に係る車両用運転補助装置に係る演算部6の詳細構成を示すブロック図を示す。請求項5〜請求項7の発明においては、運転者操作量予測手段6aから反力指令値演算手段6cまでの要素で構成されるが、請求項8〜請求項11の発明では、予測操作量修正手段6dを加えた構成となる。
【0189】
以下、図19に示す如くの道路状況を例にとり、図20、21に示すフローチャートに基づいて、各ブロックの具体的な構成方法を説明する。
【0190】
図19の場面は、右車線を走行中の自車Aが、前方を走行する車両Bとの車間距離を縮めるために、加速している場面を示している。一方、左車線には車両C、車両Dの2つ車両が走行しており、車両Dの車速は、他の車両の車速よりも遅く、車両Cは車両Dとの車間距離を保つために減速を始めているものとする。車両Cと車両Dの希望走行車速は明らかに違っており、車両Cは可能であれば右車線に車線変更して、車両Dを追い越そうとすることが予想される。
【0191】
図20は、第4の実施形態における演算部6の処理手順を示すフローチャートである。
【0192】
図20のステップ11では、レーダーやカメラなどのセンサの情報を読み込む。ステップ12では、読み込まれた情報をまとめて、各車両の位置、速度、および車線形状などの情報に換算して、自車のまわりの周囲地図情報を生成する。
【0193】
ステップ13では、運転者の操作履歴が読み込まれる。この場合、運転者のアクセルペダルの踏み込み角度の時系列データが読み込まれることになる。
【0194】
ステップ14では、運転者の予測操作量系列を生成が行なわれる。ステップ14における予測操作量系列の生成処理のフローチャートを図21に示す。
【0195】
図21のステップ14−1では、運転者の行動を予測するドライバーモデルの設定が行なわれる。例えば、図19の場面は、自車Aにとっては、車両Bへ接近する場面である。そこで、第2の実施形態にて例に挙げた(48)式のようなドライバーモデルを設定することができる。パラメータhA、k1、k2は、運転者の操作履歴の情報や、現在の車間距離、相対速度等の情報を用いて、適当な値に設定される。先行車を表すインデックスpについては、車両Cの車線変更に伴って、以下の(70)式ように定められる。
【0196】
【数70】
Figure 2004114954
ステップ14−2では、周囲車両群挙動予測手段6eの設定が行なわれる。ここでも、各車の動きをモデル化した式を結合することで、周囲車両群挙動予測手段6eを構成する。自車Aについては、ステップ14−1で設定したドライバーモデルがそのまま周囲車両群挙動予測手段6eのモデルとなる。
【0197】
車両Bについては、ここでは第2の実施形態における(36)式と同一のモデルを用いるとする。車両Dについても、(36)式と同様のモデルを用いるとする。即ち、(71)式を車両Dのモデルとする。
【0198】
【数71】
Figure 2004114954
車両Cについても、(48)式と同様のモデルを用いることができる。但し、車両Cの場合には、車線変更によって先行車が変わるので、具体的には次の(72)式ようなモデルを考えることになる。
【0199】
【数72】
Figure 2004114954
以上が車両Cの縦方向のモデルであるが、車両Cについては車線変更もモデル化する必要がある。車線変更のモデルも様々なものが考えられるが、ここではその一例を以下に紹介する。
【0200】
車両Cも固有の希望速度v を持っており、この希望速度v よりも遅く走り続ける先行車がいる場合には、適当な時期に車線変更して先行車を追い越そうとする運転特性を持つとする。そこで、車線変更の意志に関係する変数として、次の(73)式を定義する。
【0201】
【数73】
Figure 2004114954
但し、t0は車両Cが減速を始めた時刻である。ここで定義したzC(t)の値があるしきい値zC0よりも大きくなった場合に、車両Cは追い越しをする意志を固めて車線変更が可能か否かのチェックを行なうものとする。
【0202】
図19に示した状況の場合、移動先車線を走行している車両はBおよびAであるので、車両B、Aそれぞれに対して車線変更が余裕を持って行なえるかどうかの指標を計算し、判断を行なう。車線変更の判断のために、以下の(74)、(75)、(76)式ような判定関数を導入する。
【0203】
【数74】
Figure 2004114954
【数75】
Figure 2004114954
【数76】
Figure 2004114954
但し、dは加速度の次元を持つ適当な正の定数であり、一般的な運転手が余裕をもって実行できる最大の減速度を目安とした値が設定される(例えば2.0m/s程度の値)。また、関数sd(x)は、次の(77)式で定義される関数である。
【0204】
【数77】
Figure 2004114954
以上の判定関数を用いて、車両Cの車線変更のモデルとして次の(78)式のようなルールを構成する。
【0205】
【数78】
Figure 2004114954
但し、h0は、車線変更の可否判断の閾値となる適当な正の定数である。(74)式の意味は、以下の通りである。まず、相対速度が正、即ち車両Bが車両Cよりも速い速度で走行している場合には、(74)式は車両Bと車両Cとの間の車間距離を、車両Cの車速で割った値、即ち、車両Cから見た車両Bまでの車頭時間と一致する。
【0206】
即ち、車頭時間がしきい値h0よりも大きい場合に、車線変更が可能であると判断することを意味している。次に、相対速度が負、車両Bが車両Cよりも遅い速度で走行している場合を考える。この場合、(74)式の意味するところは、仮に、その時点で車両Cが右に車線変更した時に、車両Cが加速度dで減速して車両Bと同一の速度まで減速し終った時の車両Cから見た車両Bまでの車頭時間に相当する値である(厳密には分母がvのままなので一致しない)。
【0207】
相対速度が負の大きな値を持てば、それだけhBCの値は小さくなるので、車線変更はしにくくなる。(75)、(76)式についても同様である。
【0208】
以上のようなモデルを組み合わせて、周囲車両群挙動予測手段6eを構成することが、ステップ14−2における処理の内容である。
【0209】
ステップ14−3では、時間変数またはシミュレーション時刻を初期化する。シミュレーション時刻の意味は、第1の実施形態におけるものと全く同一である。
【0210】
ステップ14−4では、シミュレーション時刻tsにおける周囲地図を確定する。ts=0であれば、周囲状況検出手段によって得られた実際の周囲地図がメモリ上にロードされ、ts>0であれば、周囲車両群挙動予測手段6eと、1ステップ前に算出された予測操作量から予測された周囲地図がロードされる。
【0211】
ステップ14−5では、予測操作量が計算される。この場合、(49)式を(70)式の条件で計算するだけである。前述した実施形態と異なり、時刻tsにおける予測操作量だけが計算される。
【0212】
ステップ14−6では、ステップ14−5で計算された予測操作量を、既に生成された予測操作量系列に加える。
【0213】
ステップ14−7では、シミュレーション時刻と予測の終端時刻が比較され、終端時刻まで達している場合には、ステップ14−8へ進み、現在の予測操作量系列を出力して、予測操作量系列の生成処理を終了する。
【0214】
そうでない場合には、ステップ14−9へ進み、計算された予測操作量と周囲車両群挙動予測手段6eを用いて、時刻ts+Δtにおける系の状態量を予測し、ステップ14−10でシミュレーション時刻を更新して、ステップ14−4に戻る。
【0215】
以上が、図20のステップ14における予測操作量系列生成処理の内容である。なお、図20のフローチャートには記していないが、請求項9〜請求項12の発明を用いる場合には、予測操作量系列生成処理の後に、修正予測操作量系列の生成が行なわれる。修正予測操作量系列としては、例えば以下の(79)式に示すような修正操作量が考えられる。
【0216】
【数79】
Figure 2004114954
但し、um(t)は、修正予測操作量系列、up(t)は、ステップ14で生成された予測操作量系列、Δuは適当な正の定数とする。即ち、生成された予測操作量より加速度が大きく出る操作量系列と、加速度が小さく出る操作量系列をそれぞれ生成しておく。
【0217】
ステップ15では、ステップ14において生成された予測操作量系列を設定された評価量評価手段で評価し、その評価値を求める。操作量評価手段は、次の(80)式に示すような第2,第3の実施形態と同様の積分型の評価を用いるとする。
【0218】
【数80】
Figure 2004114954
被積分関数L(x,u,t)についても、第2、第3の実施形態において示したものと同様な関数を流用できる。例えば、加減速に関する要請、車間距離に関する要請、衝突時間における要請を組み合わせて評価関数を構成するのであれば、次の(81)式のような評価関数となる。
【0219】
【数81】
Figure 2004114954
但し、wX、wR、wCは、各要請に対する重みを表すパラメータである。また、LX(ux)は、前述した(60)式をそのまま流用し、LR、LCについては、次の(82)式、(83)式に示す如くの関数を用いるとする。
【0220】
【数82】
Figure 2004114954
【数83】
Figure 2004114954
なお、インデックスPは、前述した(70)式に従って決定される。また、請求項8〜請求項11に示した発明を用いる場合には、予測操作量系列に対する評価値の計算に続いて、修正予測操作量系列についてもその評価値を(80)式に従って計算する。
【0221】
ステップ16では、警報の必要性の有無が判定される。(80)式に示した評価関数の評価値が所定の閾値よりも大きければ、警報装置8を作動させる、というのが最も簡単な判定手段である。第3の実施形態に示したように、数値の大きさによって警報音の音量を変えるということも考えられる。
【0222】
また、警報ではなく、第2の実施形態において示したように、アクセルペダルの反力を強くすることで、運転者に注意を促すという構成も考えられる。特に、請求項8〜請求項11までに示した発明は、反力提示に適した方法であり、(79)式で生成した2つの修正予測操作量系列のうち、評価値が悪くなる方の修正量と同じ方向の操作に対する操作反力を強めるような構成を考えることができる。
【0223】
例えば、(79)式において、加速度を大きくした修正予測操作量系列の評価が悪くなった場合には、ドライバーがそれ以上アクセルペダルを踏み込もうとしたときに、アクセルペダルの反力を強くする、という反力モーターの制御則を組み込むことが考えられる。
【0224】
以上のステップ16の処理が終わったところで、図20のフローチャートに示した制御サイクルが終了し、所定時間後に、次の制御サイクルが開始されるまで現在の状態が保持される。
【0225】
図19に示した場面における装置の動作は概略、次のようなものになる。自車Aの車両Bに対する車間距離がすでに比較的接近しており、自車Aの車速が車両Cの車速よりも速いような場合には、車両Cの自車Aに対する車線変更可否の判定関数(75)が小さな値となるので、車両Cは車両Aの前方には車線変更しないと予測される。従って、自車Aは通常どおり車両Bへの接近動作を続けるものと予測されるので、その場合警報は発せられない。
【0226】
一方、自車Aと車両Bとの車間距離が大きく、且つ車両Cの車速が自車Aよりも速いような場合には、車両Cは自車Aの前方に車線変更してくることが予想される。その場合には、通常どおり車両Bへ接近する動作は、車両Cが前方に車線変更してきた後に減速動作が必要になるなどして、評価関数の値を悪化させることが予想される。
【0227】
必要な減速動作が大きい場合には、評価関数の評価値が閾値を越えて警報装置8が作動し、運転者に車両Cの車線変更に注意するように促すことになる。また、反力を提示する構成とした場合も、加速側の修正予測操作量系列に対する評価が大きく悪化するので、加速を抑制する反力が提示され、運転者に減速を促すことになる。
【0228】
以上、本発明の第4の実施形態について述べた。本実施形態では、推奨操作量系列を用いることなく、より簡単な演算によって、運転者に適切な注意を促す方法を示した。
【0229】
このようにして、上述した各実施形態に係る車両用運転操作補助装置では、運転者の意図を運転者操作量予測手段によって推定し、推定された運転者の意図、即ち、予測操作量系列と、システムが生成する推奨操作量系列とを、操作量評価手段によって表現された適当な評価規範に基づいて比較しており、運転者の意図が適切であるかどうかを数値的に評価、判断することが可能になるので、運転者の意図が不適当と判断された場面では運転操作指示手段を用いて運転者に注意を促し、そうでない場面では運転者の意図を優先することによって、運転者に違和感を与えないような補助動作を実現することができる。
【0230】
また、自車の操作として加減速と操舵の両方を考慮し、加減速と操舵を組み合わせた推奨操作量系列を生成することができるので、レーンチェンジなどの加減速と操舵が組み合わされた複合的な場面においても、加減速と操舵の両方を補助する運転操作補助装置を構成することができる。
【0231】
更に、推奨操作量系列と比較して時の予測操作量系列に対する評価の悪化の度合いに応じて、運転者に提示する刺激を大きくしているので、運転者に現在の操作および意図がどの程度不適切なものであるかを刺激の大きさという形で提示することができる。
【0232】
また、現在の操作および意図が不適切なものではないことが、操作量系列の評価値に大きな差異が生じないことで示された場合に、運転者の操作に介入しないようになっているので、過剰な運転操作補助装置の介入によって運転者に違和感を与えることを防ぐことができる。
【0233】
更に、運転者操作量予測手段によって推定された運転者の意図、即ち、予測操作量系列のみを評価、判断して運転操作指示手段を制御する構成とすれば、場面によっては同様の動作をする一方で、より少ない計算量で装置を動作させることができる。
【0234】
また、予測操作量系列に対する評価の悪さに応じて、運転者に提示する刺激を大きくする構成とすることにより、運転者に現在の操作および意図がどの程度不適切なものであるかを刺激の大きさという形で提示することができる。
【0235】
更に、現在の操作および意図が不適切なものではないことが、予測操作量系列の評価値が所定の水準よりも良いということで示された場合に、運転者の操作に介入しないようになっているので、過剰な運転操作補助装置の介入によって運転者に違和感を与えることを防ぐことができる。
【0236】
また、修正予測操作量系列を生成、評価して、予測操作量系列からはずれた操作量系列が加えられた場合の評価値の変化を調べることができるので、より良い操作を促すためにはどのような刺激を与えればよいかを判定することができる。
【0237】
更に、現在の予測操作量系列よりも評価が悪化するような方向の操作を判定し、評価が悪くなるような操作を抑制するような刺激を与えているので、運転者にどのような操作が不適切であるかを提示することができる。
【0238】
また、予測操作量系列に対する修正予測操作量系列の評価の悪化の度合いによって運転者に提示する刺激を大きくしているので、運転者が現在の予想からはずれる操作をとった場合に、その操作がどの程度不適切なものであるかを刺激の大きさという形で提示することができる。
【0239】
更に、修正予測操作量系列の評価の悪化の度合いが小さい場合には、たとえ評価が悪化するような方向に操作がずれても運転者の操作に介入しないようになっているので、過剰な運転操作補助装置の介入によって運転者に違和感を与えることを防ぐことができる。
【0240】
また、運転者の過去の操作履歴をもとに未来の操作を予測するという構成になっているので、精度良く運転者の意図を推定することができる。また、予測操作量系列を過去の操作履歴から予測される系列、即ち、操作履歴由来予測操作量と、未来の周囲状況から計算される予測推奨操作量という二つの異なる操作量系列を連結すること予測操作量系列を構成しているので、予測区間の途中でレーンチェンジが始まるような必ずしも定常的ではない走行場面においても、運転者の意図を反映した予測操作量系列を構成することができる。
【0241】
更に、操作履歴由来予測操作量を現在の操作量だけから決定しているので、簡便に操作履歴由来予測操作量を生成することができる。
【0242】
また、操作履歴由来予測操作量を現在の操作量およびその変化率だけから決定しているので、簡便に操作履歴由来予測操作量を生成することができる。
【0243】
更に、操作履歴由来予測操作量をドライバーの特性を反映した動的モデルを用いて構成しているので、簡便な予測方法と比較してより長い予測区間にわたって精度良く予測操作量を生成することができる。
【0244】
また、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルの操作履歴を検出しており、操舵、加速、減速のうち必要な操作すべてを予測操作量系列の生成に用いることができるので、より多様な場面に対して精度のよい予測を行なうことができる。
【0245】
更に、周囲状況として自車周囲の他車両、車線位置、車線形状などを検出しているので、現在の車線内での車両位置の偏り防止に留まらず、他車両への追突防止や車線変更を含む動作に対する適切な介入や警報など、より多様な場面に対応することができる。
【0246】
また、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルの3つの入力装置の操作特性を変更することができるので、操舵、加速、減速の各操作に対して、必要な操作を操作反力の形で提示することができる。
【0247】
更に、警報装置によって運転者に注意を促すという構成となっているので、運転者の操作に直接介入することなく注意を促すことができる。
【0248】
また、車両の加減速が小さい操作を望ましいとする評価を用いているので、より加減速の小さい操作が推奨される傾向が強くなり、乗り心地の良い穏やかな操作を促すことができる。
【0249】
更に、先行車との車間距離が近くなりすぎるような操作を望ましくないとする評価を用いているので、先行車との車間距離を確保するように促すことができる。
【0250】
また、後続車との車間距離が近くなりすぎるような操作を望ましくないとする評価を用いているので、後続車との車間距離を確保するように促すことができる。
【0251】
更に、先行車に対する衝突時間が短くなるような操作を望ましくないとする評価を用いているので、先行車に対して急接近する操作を抑制することができる。
【0252】
また、後続車に対する衝突時間が短くなるような操作を望ましくないとする評価を用いているので、後続車が急接近してくるような操作を抑制することができる。
【0253】
更に、自車速が目標車速の付近に保たれるような操作を望ましいとする評価を用いているので、目標車速と比較して速すぎたり遅すぎたりするような操作が抑制される傾向が強くなり、目標車速付近に車速を保つ操作を容易にすることができる。
【0254】
また、自車の操舵量が小さくなるような操作を望ましいとする評価を用いているので、頻繁に操舵が行なわれるような操作が抑制される傾向が強くなり、乗り心地の良い安定した操作を促すことができる。
【0255】
更に、自車が車線中央を走行するような操作を望ましいとする評価を用いているので、車線から逸脱するような操作が抑制される傾向が強くなり、運転者の車線位置調整の操作を支援することができる。
【0256】
また、自車が隣接車線上の車両と並走するような操作を望ましくないとする評価を用いているので、隣接車線上の車両とも距離を保つような操作が推奨される傾向が強くなり、運転者が緊張を強いられる場面が回避されるような操作を促すことができる。
【0257】
更に、様々な要請を表現した評価関数の線形加重和をとることによって評価関数を構成しているので、評価関数に乗じる重みパラメータを変更することで、複数の要請の間でトレードオフをとるような評価を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両用運転操作補助装置の、第1の実施形態を示す配置構成図である。
【図2】図1に示した演算部6の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した運転者操作量予測手段6bの構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係り、自車が左側車線を走行し、並走車が右側車線を走行している様子を示す説明図である。
【図5】第1の実施形態に係る車両用運転操作補助装置の、処理動作を示すフローチャートである。
【図6】図5に示す「推奨操作量系列生成」の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図5に示す「予測操作量系列生成」の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係る車両用運転操作補助装置を適用することにより得られる結果を示す特性図であり、操作量系列の生成例、及び評価区間を示す。
【図9】第1の実施形態に係る反力トルクの制御則についての説明図である。
【図10】第1の実施形態と、従来例との比較を示す説明図である。
【図11】本発明に係る車両用運転操作補助装置の、第2の実施形態を示す配置構成図である。
【図12】第2の実施形態に係り、自車が左側車線を走行し、その前方に先行車が存在し、且つ右側車線に隣接車が存在する様子を示す説明図である。
【図13】第2の実施形態に係る車両用運転操作補助装置を適用することにより得られる結果を示す特性図である。
【図14】本発明に係る車両用運転操作補助装置の、第3の実施形態を示す配置構成図である。
【図15】第3の実施形態に係り、自車が左側車線を走行し、その前方に先行車が存在し、且つ右側車線の自車両後方に隣接車が存在する様子を示す説明図である。
【図16】第3の実施形態に係る車両用運転操作補助装置を適用することにより得られる結果を示す特性図である。
【図17】第3の実施形態に係る車両用運転操作補助装置を適用することにより得られる他の結果を示す特性図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係り、演算部6の詳細な構成を示すブロック図ある。
【図19】第4の実施形態に係り、自車が左側車線を走行し、その前方に先行車が存在し、右側車線前方、及び後方に他の車両が存在する様子を示す説明図である。
【図20】第4の実施形態に係る車両用運転操作補助装置の、処理動作を示すフローチャートである。
【図21】図20に示した「予測操作量系列生成」の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1a 前方レーダー
1b 画像センサ(車線検出器)
1c 後方レーダー
1d 側方センサ
2  車速センサ
3  ハンドル
4  ステアリングシャフト
5  ハンドル回転角センサ
6  演算部
6a 推奨操作量生成手段
6b 運転者操作量予測手段
6c 操作量評価手段
6d 反力指令値演算部(運転操作指示手段)
6e 周囲車両群挙動予測手段
6f 予測演算部
6g 予測推奨操作量生成手段
6h 連結処理
8  警報装置
31 アクセルペダル
32 反力モーター
33 アクセルペダル角度センサ

Claims (29)

  1. 自車および周囲車両の走行状態を検出する周囲状況検出手段と、
    前記周囲状況検出手段にて検出された周囲車両の状態に基づいて、自車にとって望ましい操作量を、推奨操作量系列として生成する推奨操作量生成手段と、
    運転者が未来に実行すると予想される操作量を、予測操作量系列として生成する運転者操作量予測手段と、
    自車の未来の操作に対する望ましさを、前記周囲状況検出手段にて検出された周囲車両の走行状態に基づいて評価する操作量評価手段と、
    前記推奨操作量系列と、前記予測操作量系列と、これら2つの操作量系列に対して前記操作量評価手段により計算される評価値と、に基づいて、自車の運転者に対し、物理的な刺激を与える運転操作指示手段と、
    を具備したことを特徴とする車両用運転操作補助装置。
  2. 前記推奨操作量生成手段は、自車に対する未来の操作として、自車の加減速及び操舵のうちの少なくとも一方を考慮し、前記推奨操作量系列として、自車の加減速指令の時系列、及び操舵指令の時系列のうちの少なくとも一方を生成することを特徴とする請求項1に記載の車両用運転操作補助装置。
  3. 前記推奨操作量系列に対する前記操作量評価手段による評価値と、予測操作量系列に対する前記操作量評価手段による評価値と、の差異が大きくなる程、前記運転操作指示手段が運転者に与える物理的刺激を強くすることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置。
  4. 前記推奨操作量系列に対する前記操作量評価手段による評価値と、前記測操作量系列に対する前記操作量評価手段による評価値と、の差異が、所定のレベルよりも小さい場合には、前記運転操作指示手段による運転者への刺激を停止することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  5. 自車および周囲車両の走行状態を検出する周囲状況検出手段と、
    運転者が未来に実行すると予想される操作量を、予測操作量系列として生成する運転者操作量予測手段と、
    自車の未来の操作に対する望ましさを、前記周囲状況検出手段にて検出された周囲車両の走行状態に基づいて評価する操作量評価手段と、
    前記予測操作量系列と、この予測操作量系列に対して前記操作量評価手段により計算される評価値と、に基づいて、自車の運転者に対し、物理的な刺激を与える運転操作指示手段と、
    を具備したことを特徴とする車両用運転操作補助装置。
  6. 前記予測操作量系列に対する前記操作量評価手段による評価値が悪いほど、前記運転操作指示手段が運転者に与える物理的刺激を強くすることを特徴とする請求項5に記載の車両用運転操作補助装置。
  7. 前記予測操作量系列に対する前記操作量評価手段による評価値が所定のレベルよりも良い場合には、前記運転操作指示手段を作動させないことを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置。
  8. 自車および周囲車両の走行状態を検出する周囲状況検出手段と、
    運転者が未来に実行すると予想される操作量を、予測操作量系列として生成する運転者操作量予測手段と、
    前記運転者操作量予測手段にて生成された予測操作量系列に対し、所定の修正量を加えることで、他の予測操作量系列を修正予測操作量系列として生成する予測操作量修正手段と、
    自車の未来の操作に対する望ましさを、前記周囲状況検出手段にて検出された周囲車両の走行状態に基づいて評価する操作量評価手段と、
    前記予測操作量系列と、前記修正予測操作量系列と、これら2つの操作量系列に対して前記操作量評価手段により計算される評価値と、に基づいて、自車の運転者に対し、物理的な刺激を与える運転操作指示手段と、
    を具備したことを特徴とする車両用運転操作補助装置。
  9. 前記運転操作指示手段は、前記予測操作量系列に対する評価値よりも評価が悪くなるような修正予測操作量系列が存在する場合には、該修正予測操作量系列に加えられた修正量と同方向の操作を抑制する方向に働く刺激を与えることを特徴とする請求項8に記載の車両用運転操作補助装置。
  10. 前記予測操作量系列に対する評価値と比較して、評価が悪くなった前記修正予測操作量系列に対する評価値が悪いほど、前記運転操作指示手段が運転者に与える物理的刺激を強くすることを特徴とする請求項9に記載の車両用運転操作補助装置。
  11. 前記修正予測操作量系列に対する評価が、前記予測操作量系列に対する評価よりも悪くなったときの、前記修正予測操作量系列の評価値が、所定のレベルよりも悪くなっていない場合には、前記運転操作指示手段を作動させないことを特徴とする請求項9または請求項10のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置。
  12. 運転者による操作量を検出する操作量検出手段を備え、
    更に、前記運転者操作量予測手段は、
    周囲車両の未来の挙動を予測する周囲車両群挙動予測手段と、
    周囲車両の、未来のある時点での状態に基づき、その時点以後の、自車にとって望ましい操作量の時系列を予測推奨操作量として生成する推奨操作量生成手段と、を備え、
    過去のある時点から現在までの、運転者の操作履歴に基づいて構成される操作量系列としての操作履歴由来予測操作量と、該操作履歴由来予測操作量及び前記周囲車両群挙動予測手段から予測される所定時間経過後の周囲車両の状態に基づいて生成される予測推奨操作量と、の2つの操作量系列を連結することにより、前記予測操作量系列を構成することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  13. 前記運転者操作量予測手段は、前記操作量検出手段にて検出された現在の操作量を一定値に保持した操作量系列を、前記操作履歴由来予測操作量として用いることにより、前記予測操作量系列を構成することを特徴とする請求項12に記載の車両用運転操作補助装置。
  14. 前記運転者操作量予測手段は、前記操作量検出手段にて検出された現在の操作量の変化率を一定値に保持した操作量系列を、前記操作履歴由来予測操作量として用いることにより、前記予測操作量系列を構成することを特徴とする請求項12に記載の車両用運転操作補助装置。
  15. 前記運転者操作量予測手段は、運転者の特性を表現した動的モデルを含み、該動的モデルは、運転者による過去の操作履歴、及び過去の周囲車両状態の履歴に基づいて、運転者の未来の操作量を算出するモデルであり、前記動的モデルにより算出された操作量系列を、前記操作履歴由来予測操作量として用いることにより、前記予測操作量系列を構成することを特徴とする請求項12に記載の車両用運転操作補助装置。
  16. 前記運転者の操作量として、ハンドルの回転角、アクセルペダルの踏み込み量、及びブレーキペダルの踏み込み量のうちの、少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項12〜請求項15のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  17. 前記周囲状況検出手段は、自車の速度、自車から周囲車両までの距離、周囲車両の自車に対する相対速度、自車周囲の車線位置及び車線形状、のうちの少なくとも1つを検出することを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  18. 前記運転操作指示手段は、ハンドルの操舵反力、アクセルペダルの反力、及びブレーキペダルの反力のうちの、少なくとも1つを加えることで、運転者に物理的な刺激を与えることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  19. 警報手段を具備し、前記運転操作指示手段は、前記警報手段に警報指令を出力することで、運転者に周囲状況に適した操作をとるように促すことを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  20. 前記操作量評価手段は、車両の加減速が小さくなるような操作量を望ましいとする評価値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  21. 前記操作量評価手段は、先行車との車間距離が近くなりすぎるような操作量を望ましくないとする評価値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  22. 前記操作量評価手段は、後続車との車間距離が近くなりすぎるような操作量を望ましくないとする評価値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  23. 前記操作量評価手段は、自車と先行車との車間距離を、自車と先行車との相対速度で除した値として得られる時間が短くなるような操作量を望ましくないとする評価値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  24. 前記操作量評価手段は、自車と後続車との車間距離を、自車と先行車との相対速度で除した値として得られる時間が短くなるような操作量を望ましくないとする評価値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  25. 前記操作量評価手段は、自車の走行速度がある所定の目標車速付近に保たれるような操作量を望ましいとする評価値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  26. 前記操作量評価手段は、自車の操舵量が小さくなるような操作量を望ましいとする評価値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  27. 前記操作量評価手段は、自車が車線中央を走行するような操作量を望ましいとする評価値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  28. 前記操作量評価手段は、自車が、隣接する車線上を走行する他車両に接近しすぎるような操作量を望ましくないとする評価値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
  29. 前記操作量評価手段は、複数の評価関数の線形加重和をとることにより構成されることを特徴とする請求項1〜請求項28のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
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