JP2004147823A - 超音波造影信号の処理方法及び超音波診断装置 - Google Patents
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Abstract
【目的】コントラストハーモニックイメージング法によっても血流速度の違いを表示可能なことを課題とする。
【構成】超音波造影剤を投与した被検体に対して超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法であって、前記エコー受波信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示する。
【選択図】 図1
【構成】超音波造影剤を投与した被検体に対して超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法であって、前記エコー受波信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波造影信号の処理方法及び超音波診断装置に関し、更に詳しくは、超音波造影剤を投与した被検体に対して超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法及び超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、気泡からなる超音波造影剤を併用したハーモニックBモード(以下、コントラストハーモニックイメージング法とも呼ぶ)により、血管を含むような各種臓器の超音波断層映像を観測することが行われる。気泡により音響インピーダンスに大きな変化があると、強いエコー信号が発生すると共に、2次,3次の高調波信号が発生することで、専ら血液に含まれる気泡からのエコー信号を高感度で取り出せる。
【0003】
一例の臓器として肝臓の機能を説明すると、胃や小腸、大腸等から吸収された養分は門脈を通って肝臓(組織)に入る。門脈は肝細胞の間をぬって細かく細い血管に枝分れしており、養分を含む血液を肝臓の隅々に送り込む。養分は肝細胞の中に取り込まれ、そこで生体に必要な物質に再合成される。再合成された物質は再び血中に戻され、更に肝静脈、大静脈に入って心臓に戻り、体の各部に運ばれる。
【0004】
このような肝臓の診断は、腕の静脈に超音波造影剤を投与すると共に、該造影剤を含む血流が肝門脈末端の細い血管より肝組織に浸透し、貯留されていく状態を継続的に観測することで行われる。
【0005】
このような状況の下、従来は、基本波エコー信号と高調波信号とを巧みに利用することで広帯域のハーモニックスエコーを効率よく抽出する超音波撮影装置が知られている(例えば特許文献1)。その内容を具体的に言うと、1回目は波形歪みを起こすに足る音圧の超音波を送波することで、その受信エコーには基本波エコーとハーモニックスエコーとが含まれ、2回目は波形歪みを起こすに足りない音圧の超音波を前記と同一方向に送波することで、その受信エコーには基本波エコーのみが含まれる。そこで、これら2つのエコー信号の差を形成することにより、基本波エコーを相殺して、ハーモニックスエコーを抽出するものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−353155号公報([0043]〜[0046])。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1を含むような、従来のいずれのコントラストハーモニックイメージング法においても、気泡を含む血液がそこにあるか否かについては高感度で検出できるが、その血液が動いているか否かの状態の信号を得ることは出来なかった。即ち、従来は、コントラストハーモニックイメージング法によって血流速度の違いを表示することは困難であった。
【0008】
このため、従来方法で例えば肝臓の超音波診断を行う場合には、はじめに血管部が白く染まり、次に肝組織が白く染まると、観測の後期相では肝臓の全体が白く染まって血管部と肝組織との区別がつかなくなり、このため腫瘍等の疾患部と血管部との境界を把握することが困難なものとなっていた。
【0009】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的とする所は、コントラストハーモニックイメージング法によっても血流速度の違いを表示可能な超音波造影信号の処理方法及び超音波診断装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は例えば図1の方法により解決される。即ち、本発明(1)の超音波造影信号の処理方法は、超音波造影剤を投与した被検体に対して超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法であって、前記エコー受波信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示するものである。
【0011】
本発明者等は、超音波造影剤を使用した被検体からのエコー受波信号につき、その周波数成分を詳細に観察したところ、血流速度が比較的速い血管部では血流によるドプラシフトが大きいため、そのエコー受波信号には基本波成分fが多く含まれるが、血流速度が遅い組織の染映部では血流によるドプラシフトが小さいため、そのエコー受波信号では造影剤の振動等に伴う高調波成分2fが支配的となることを突き止めた。そこで、本発明(1)では、エコー受波信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号f,2fを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示することとした。従って、本発明(1)によれば、造影剤を使用したコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを表示可能となる。
【0012】
また本発明(2)の超音波造影信号の処理方法は、超音波造影剤を投与した被検体に対して極性反転した超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号の加算信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法であって、前記加算信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号f,2fを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示するものである。
【0013】
本発明者等は、パルスインバージョン法によるコントラストハーモニックイメージング法において、極性反転した各エコー受波信号の加算信号につき、その周波数成分を詳細に観察したところ、血流速度が比較的速い血管部では加算信号に基本波成分fが多く含まれ、また血流速度が遅い組織の染映部では高調波成分2fが多く含まれることを突き止めた。そこで、本発明(2)では、前記加算信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号f,2fを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示することとした。従って、本発明(2)によれば、パルスインバージョン法によるコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを表示可能となる。
【0014】
本発明(3)では、上記本発明(1)又は(2)において、前記抽出した両信号f,2fを同一の超音波断層面上に異なる色彩で表示するものである。従って、血管部と組織部とを色分けにより容易に識別できる。
【0015】
また上記の課題は例えば図1の構成により解決される。即ち、本発明(4)の超音波診断装置は、超音波探触子1と、前記超音波探触子を駆動して被検体に対して超音波パルス信号を送受信する送受信手段2と、前記送受信手段で受信したエコー受波信号から基本波成分fと高調波成分2fを分離抽出するフィルタ手段4と、前記フィルタ手段の各抽出信号f,2fを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示する表示手段5とを備えるものである。従って、超音波造影剤を使用したコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを表示可能となる。
【0016】
また上記の課題は例えば図1の構成により解決される。即ち、本発明(5)の超音波診断装置は、超音波探触子1と、前記超音波探触子を駆動して被検体に対して極性反転した超音波パルス信号を送受信する送受信手段2と、前記送受信手段からの極性反転したエコー受波信号を加算する加算手段3と、前記加算手段の出力信号から基本波成分fと高調波成分2fを分離抽出するフィルタ手段4と、前記フィルタ手段の各抽出信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示する表示手段5とを備えるものである。従って、パルスインバージョン法を使用したコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを表示可能となる。
【0017】
本発明(6)では、上記本発明(4)又は(5)において、送受信手段からのエコー受波信号に基づいてBモード画像を形成するBモード処理手段を更に備え、表示手段はフィルタ手段の各抽出信号とBモード処理手段の出力信号とを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示するものである。従って、造影剤で強調されたハーモニックBモード画像に、生体組織のBモード画像を重ねて表示でき、よって使用者は周辺ハーモニックBモードイメージの観測環境を把握し易い。
【0018】
本発明(7)では、上記本発明(4)又は(5)において、送受信手段からのエコー受波信号に基づいてドプラモード画像を形成するドプラモード処理手段を更に備え、表示手段はフィルタ手段の各抽出信号とドプラモード処理手段の出力信号とを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示するものである。従って、上記造影剤で強調されたハーモニックBモード画像に、血流の速度、方向を含むようなドプラモード画像を重ねて表示でき、よって使用者は血流の詳細情報を容易に観測できる。
【0019】
本発明(8)では、上記本発明(4)〜(7)において、表示手段は同一の超音波断層面上に重ねて表示される各信号を異なる色彩で表示するものである。従って、使用者は各種信号処理モードに従う断層画像を識別し易い。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明に好適なる複数の実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通して同一符号は同一又は相当部分を示すものとする。
【0021】
図2は実施の形態による超音波診断装置のブロック図であり、図において、100はアレイ振動子を有する超音波探触子、200は超音波診断装置の本体部、300は超音波画像等のカラー表示部、400はキーボードや各種操作ボタン等を備えるコンソール部(CSL)である。
【0022】
本体部200には、超音波探触子100を駆動して被検体に対して超音波を送受信する送受信部10と、被検体からのエコー受波信号に基づき各種の画像表示モードに従う信号処理を行う信号処理部20と、各種の画像表示モードに対応する超音波断層画像を生成して画面に表示する画像処理部30と、本装置の主制御・処理を行う制御部40とが含まれる。また、上記信号処理部20には、B(Brightness)モード処理部21と、ハーモニックBモード処理部22と、カラードプラモード処理部23とが含まれ、超音波断層診断(撮影)の目的に応じて、各モード処理部21〜23の内の何れか1又は2以上の組合せが用いられる。
【0023】
なお、このハーモニックBモードには、微強超音波の伝搬に伴い発生する高調波成分を積極的に利用する方法や、造影剤との作用によって生じる非線形性を積極的に利用する方法等が含まれる。以下、撮影目的に応じたいくつかの構成例を具体的に説明する。
【0024】
図3は第1の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図(1)であり、被検体をパルスインバージョン方式によらない通常のハーモニックBモードの単独で造影検査する場合を示している。 なお、パルスインバージョン方式によらないとは、基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出する対象の信号が被検体からのエコー受波信号であって、正負極性の各エコー受波信号の加算信号を対象とするのではないという意味である。従って、被検体に対して正極性のみ又は負極性のみ又は正負極性のパルス信号を交互に送信することまでを制限するものではない。
【0025】
図3(A)にその構成を模式的に示す。図において、▲1▼’はハーモニックBモードの信号処理系、222は被検体に基本波の超音波信号を送信した場合のエコー受波信号から基本波成分fを抽出するローパスフィルタ(LPF)、31はLPF222の出力信号に例えば紫色のデータを付与する紫色データ付加部(VLT)、223は前記エコー受波信号から高調波成分2fを抽出するハイパスフィルタ(HPF)、32はHPF223の出力信号に例えば橙色のデータを付与する橙色データ付加部(ORG)、33は前記色付けされた各カラー画像データを同一断層面上に合成してカラー表示する画像合成部である。以下、動作を説明する。
【0026】
図5(A)に超音波探触子100によって生成される音場を示す。計測に利用する遠距離音場では、ビーム中央部の振幅が最強となるため、2次高調波が発生し易い領域となっている。この2次高調波成分を積極的に画像化することにより、高い方位分解能及びスライス方向分解能が得られる。
【0027】
係る状況の下で、本発明者等は、超音波造影剤を使用した被検体からのエコー受波信号につき、その周波数成分を詳細に観察したところ、血流速度が比較的速い血管部では血流によるドプラシフトが大きいため、そのエコー受波信号には基本波成分fが多く含まれるが、血流速度が遅い組織の染映部では血流によるドプラシフトが小さいため、そのエコー受波信号では造影剤の振動等に伴う高調波成分2fが支配的となることを突き止めた。この関係を図3(B)にグラフ化して示す。
【0028】
図3(A)に戻り、この構成を例えば肝臓の撮影に適用すると、血管部では造影剤に動きがあるために、基本波成分fが支配的となる。そこで、エコー受波信号からLPF222によって基本波成分fを抽出すると共に、この基本波成分fに対しては例えば紫色のデータを付すことにより血管部を紫色で表示する。一方、組織部では造影剤に動きがないため、高調波成分2fが支配的となる。そこで、エコー受波信号からHPF223によって高調波成分2fを抽出すると共に、この高調波成分2fに対しては例えば橙色のデータを付すことにより組織の部分を橙色で表示する。
【0029】
上記本第1の実施の形態(1)によれば、造影剤を使用したエコー受波信号から基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出することで、従来捨てていたような血流の情報を映像化でき、よってコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを有効に識別できる。
【0030】
図4は第1の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図(2)であり、被検体をパルスインバージョン方式によるハーモニックBモードの単独で造影検査する場合を示している。図4(A)にその構成を模式的に示す。図において、▲1▼はパルスインバージョン方式によるハーモニックBモードの信号処理系、221は極性反転した各エコー受波信号を加算する遅延加算部、222は加算信号から基本波成分fを抽出するローパスフィルタ(LPF)、31はLPF222の出力信号に対して例えば紫色のデータを付与する紫色データ付加部(VLT)、223は加算信号から高調波成分2fを抽出するハイパスフィルタ(HPF)、32はHPF223の出力信号に対して例えば橙色のデータを付与する橙色データ付加部(ORG)、33は前記色付けされた各カラー画像データを同一断層面上に合成してカラー表示する画像合成部である。
【0031】
図5(B)にパルスインバージョン法による2次高調波の抽出原理を示す。まず音圧が高から低に変化するような正相の基本波パルスaを送信してそのエコー信号bを保存し、次に音圧が低から高に変化するような逆相の基本波パルスcを送信してそのエコー信号dを保存する。この場合に、音圧が高い部分の音波は速く伝わり、また音圧が低い部分の音波は遅く伝わる性質があるため、図示の如く、エコー信号bの波形は外側に伸び、またエコー信号dの波形は内側に縮む傾向にある。そこで、各エコー信号b,dを所定のタイミングで加算することにより、図示の如く,基本波成分fが相殺され、2次高調波成分2fのみが強調されて抽出される。
【0032】
この実施の形態(2)では、更に超音波造影剤を使用することで、専ら造影剤からのエコー受波信号を高感度で取り出す。但し、被検体を観測中は、超音波造影剤が破壊しない程度の超音波パルスを毎回送信するものとする。このような状況下では、音圧が高いと、気泡が小さく、媒質密度が高いため、音速は速く、また音圧が低いと、気泡が大きく、媒質密度が低いため、音速は遅い傾向にある。従って、上記パルスインバージョン法と同様の高調波抽出作用が得られる。
【0033】
次に図4(B)を参照して本実施の形態(2)のバブルハーモニックBモードにおける血流速度と加算信号との関係を説明する。高調波成分2fについては、血流速度の小さい組織部では、1回目と2回目のエコー受波信号間で血流による位相のずれが殆ど生じないため、両信号を加算すると、高調波成分2fのみが強調されて抽出されるが、血流速度の大きい血管部では、1回目と2回目のエコー受波信号間で血流による位相のずれが生じるため,両信号を加算すると、高調波成分2fは減少する傾向にある。一方、基本波成分fについては、上記の現象とは逆であり、血流速度の小さい組織部では、1回目と2回目のエコー受波信号間で殆ど位相のずれが生じないため、両者を加算すると、上記の如く基本波成分fは相殺されるが、血流速度の大きい血管部では、1回目と2回目のエコー受波信号間で位相のずれが生じるため,両信号を加算すると、基本波成分fは増大する傾向にある。そこで、本第1の実施の形態(2)では、加算信号から基本波成分fと高調波成分2fを分離抽出することにより、血流速度の大小を識別することとしている。
【0034】
図4(A)に戻り、上記の如く、血管部では造影剤に動きがあるため、基本波成分fが残る。そこで、加算信号からLPF222によって基本波成分fを抽出すると共に、この基本波成分fに対しては例えば紫色のデータを付すことにより血管部の断層像を紫色で表示する。一方、組織部では造影剤に動きがないため、高調波成分2fが残る。そこで、加算信号からHPF223によって高調波成分2fを抽出すると共に、この高調波成分2fに対しては例えば橙色のデータを付すことにより組織部の断層像を橙色で表示する。
【0035】
図6は第1の実施の形態による超音波断層影像のイメージ図であり、図6(A)に肝臓を造影検査した場合の早期相における超音波断層イメージを示す。早期相では門脈に投与された造影剤が血流と共に末端の細い血管に運ばれていく様子を紫色で観測できる。更には,門脈末端の細い血管からの血液が境界部の肝組織に貯留され始めて、その部分が橙色で染まると共に、一部の血流は門脈の末端から肝静脈の末端にバイパスされている。なお、この例ではハーモニックBイメージのみを観測しているため、肝臓の全体形状は表示されない。
【0036】
図6(B)に例えばt=1〜2分程度の後期相における超音波断層イメージを示す。この状態では、門脈からの血液が肝組織の略全体に貯留されつつあり、肝臓におけるより広範囲の部分が橙色に染まっている。なお、引き続き肝門脈に気泡が流れ込んでいる場合は、引き続き血管部が紫色に染まっている。従って、観測の後期相でも、血管部とその周囲の腫瘍等を含む組織とを容易に識別できる。なお、観測終了したときは、肝臓を強い音線でスキャンすることにより、気泡を破壊する。
【0037】
上記本第1の実施の形態(2)によれば、極性反転した各エコー受波信号の加算信号から基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出することで、従来捨てていたような血流の情報を映像化でき、よってパルスインバージョン法によるコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを有効に識別できる。
【0038】
図7は第2の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図であり、上記ハーモニックBモードによる造影画像に、通常のBモードによる画像を重ねて表示する場合を示している。図7(A)にその構成を模式的に示す。図において、▲1▼は上記図4(A)と同様のハーモニックBモードによる信号処理系、▲2▼はBモードによる信号処理系である。
【0039】
図7(B)に肝臓を造影検査した場合の早期相における超音波断層イメージを示す。本第2の実施の形態では、生体からの基本波成分からなるエコー受波信号に基づきBモード画像を形成して画面に例えば白色で表示することにより、観測の早期相から肝臓の全体組織を観測できる。
【0040】
図8は第3の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図であり、上記に加え、更にカラードプラモード(CFM:カラーフローマッピング法)による血流情報の画像を重ねて表示する場合の構成を模式的に示している.図において、▲1▼はハーモニックBモードによる信号処理系、▲2▼はBモードによる信号処理系、▲3▼はドプラモードによる信号処理系である。ドプラモードによる信号処理系▲3▼には、公知のものを使用できるが,1例の構成を図示する。ここには、極性反転させない複数のエコー受波信号につき直交I,Q軸成分について夫々に受信検波を行う直交検波部231と、少なくとも前後2波分の各検波出力I1,I2及びQ1,Q2について夫々に差分を求める減算器232I,232Qと、各減算出力のI,Q信号に基づき高速に周期の算出等による周波数分析を行う自己相関器233と、周波数分析結果から気泡の流速v、方向p、流速の分散σ等を含む血流情報を求める演算部234とが含まれる。
【0041】
このような構成により、上記バブルハーモニックBモードによる画像に、上記ドプラモードにより得られた血流情報をカラーによりリアルタイムに2次元的に表示する。例えばプローブに向かう血流を赤、遠ざかる血流を青、速さを輝度、分散を緑色の混合で表示する。本第3の実施の形態によれば,上記バブルハーモニックBモードにより、血流の速い部分と遅い部分とを比較的高分解能で識別できる。更には、カラードプラモードの併用により。血流のより詳細な情報が容易に得られる。
【0042】
なお、上記ドプラモード用のパルスは、ドプラモード専用として別個にバースト送受信しても良いし、又は上記バブルハーモニックBモード用のエコー受波信号をドプラモード用に利用しても良い。
【0043】
また、上記本発明に好適なる複数の実施の形態を述べたが、本発明思想を逸脱しない範囲内で各部の構成、制御、処理及びこれらの組み合わせの様々な変更が行えることは言うまでも無い。
【0044】
【発明の効果】
以上述べた如く本発明によれば、コントラストハーモニックイメージング法によっても血流速度の違いを表示可能なため、簡単な構成により超音波診断に有用な情報が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明する図である。
【図2】実施の形態による超音波診断装置のブロック図である。
【図3】第1の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図(1)である。
【図4】第1の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図(2)である。
【図5】ハーモニックBモード処理を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態による超音波断層影像のイメージ図である。
【図7】第2の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図である。
【図8】第3の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図である。
【符号の説明】
10 送受信部
20 信号処理部
30 画像処理部
40 制御部
21 Bモード処理部
22 ハーモニックBモード処理部
23 カラードプラモード処理部
100 超音波探触子
200 本体部
300 表示部
400 コンソール部(CSL)
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波造影信号の処理方法及び超音波診断装置に関し、更に詳しくは、超音波造影剤を投与した被検体に対して超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法及び超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、気泡からなる超音波造影剤を併用したハーモニックBモード(以下、コントラストハーモニックイメージング法とも呼ぶ)により、血管を含むような各種臓器の超音波断層映像を観測することが行われる。気泡により音響インピーダンスに大きな変化があると、強いエコー信号が発生すると共に、2次,3次の高調波信号が発生することで、専ら血液に含まれる気泡からのエコー信号を高感度で取り出せる。
【0003】
一例の臓器として肝臓の機能を説明すると、胃や小腸、大腸等から吸収された養分は門脈を通って肝臓(組織)に入る。門脈は肝細胞の間をぬって細かく細い血管に枝分れしており、養分を含む血液を肝臓の隅々に送り込む。養分は肝細胞の中に取り込まれ、そこで生体に必要な物質に再合成される。再合成された物質は再び血中に戻され、更に肝静脈、大静脈に入って心臓に戻り、体の各部に運ばれる。
【0004】
このような肝臓の診断は、腕の静脈に超音波造影剤を投与すると共に、該造影剤を含む血流が肝門脈末端の細い血管より肝組織に浸透し、貯留されていく状態を継続的に観測することで行われる。
【0005】
このような状況の下、従来は、基本波エコー信号と高調波信号とを巧みに利用することで広帯域のハーモニックスエコーを効率よく抽出する超音波撮影装置が知られている(例えば特許文献1)。その内容を具体的に言うと、1回目は波形歪みを起こすに足る音圧の超音波を送波することで、その受信エコーには基本波エコーとハーモニックスエコーとが含まれ、2回目は波形歪みを起こすに足りない音圧の超音波を前記と同一方向に送波することで、その受信エコーには基本波エコーのみが含まれる。そこで、これら2つのエコー信号の差を形成することにより、基本波エコーを相殺して、ハーモニックスエコーを抽出するものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−353155号公報([0043]〜[0046])。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1を含むような、従来のいずれのコントラストハーモニックイメージング法においても、気泡を含む血液がそこにあるか否かについては高感度で検出できるが、その血液が動いているか否かの状態の信号を得ることは出来なかった。即ち、従来は、コントラストハーモニックイメージング法によって血流速度の違いを表示することは困難であった。
【0008】
このため、従来方法で例えば肝臓の超音波診断を行う場合には、はじめに血管部が白く染まり、次に肝組織が白く染まると、観測の後期相では肝臓の全体が白く染まって血管部と肝組織との区別がつかなくなり、このため腫瘍等の疾患部と血管部との境界を把握することが困難なものとなっていた。
【0009】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的とする所は、コントラストハーモニックイメージング法によっても血流速度の違いを表示可能な超音波造影信号の処理方法及び超音波診断装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は例えば図1の方法により解決される。即ち、本発明(1)の超音波造影信号の処理方法は、超音波造影剤を投与した被検体に対して超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法であって、前記エコー受波信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示するものである。
【0011】
本発明者等は、超音波造影剤を使用した被検体からのエコー受波信号につき、その周波数成分を詳細に観察したところ、血流速度が比較的速い血管部では血流によるドプラシフトが大きいため、そのエコー受波信号には基本波成分fが多く含まれるが、血流速度が遅い組織の染映部では血流によるドプラシフトが小さいため、そのエコー受波信号では造影剤の振動等に伴う高調波成分2fが支配的となることを突き止めた。そこで、本発明(1)では、エコー受波信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号f,2fを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示することとした。従って、本発明(1)によれば、造影剤を使用したコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを表示可能となる。
【0012】
また本発明(2)の超音波造影信号の処理方法は、超音波造影剤を投与した被検体に対して極性反転した超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号の加算信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法であって、前記加算信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号f,2fを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示するものである。
【0013】
本発明者等は、パルスインバージョン法によるコントラストハーモニックイメージング法において、極性反転した各エコー受波信号の加算信号につき、その周波数成分を詳細に観察したところ、血流速度が比較的速い血管部では加算信号に基本波成分fが多く含まれ、また血流速度が遅い組織の染映部では高調波成分2fが多く含まれることを突き止めた。そこで、本発明(2)では、前記加算信号より基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出し、該抽出した両信号f,2fを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示することとした。従って、本発明(2)によれば、パルスインバージョン法によるコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを表示可能となる。
【0014】
本発明(3)では、上記本発明(1)又は(2)において、前記抽出した両信号f,2fを同一の超音波断層面上に異なる色彩で表示するものである。従って、血管部と組織部とを色分けにより容易に識別できる。
【0015】
また上記の課題は例えば図1の構成により解決される。即ち、本発明(4)の超音波診断装置は、超音波探触子1と、前記超音波探触子を駆動して被検体に対して超音波パルス信号を送受信する送受信手段2と、前記送受信手段で受信したエコー受波信号から基本波成分fと高調波成分2fを分離抽出するフィルタ手段4と、前記フィルタ手段の各抽出信号f,2fを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示する表示手段5とを備えるものである。従って、超音波造影剤を使用したコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを表示可能となる。
【0016】
また上記の課題は例えば図1の構成により解決される。即ち、本発明(5)の超音波診断装置は、超音波探触子1と、前記超音波探触子を駆動して被検体に対して極性反転した超音波パルス信号を送受信する送受信手段2と、前記送受信手段からの極性反転したエコー受波信号を加算する加算手段3と、前記加算手段の出力信号から基本波成分fと高調波成分2fを分離抽出するフィルタ手段4と、前記フィルタ手段の各抽出信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示する表示手段5とを備えるものである。従って、パルスインバージョン法を使用したコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを表示可能となる。
【0017】
本発明(6)では、上記本発明(4)又は(5)において、送受信手段からのエコー受波信号に基づいてBモード画像を形成するBモード処理手段を更に備え、表示手段はフィルタ手段の各抽出信号とBモード処理手段の出力信号とを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示するものである。従って、造影剤で強調されたハーモニックBモード画像に、生体組織のBモード画像を重ねて表示でき、よって使用者は周辺ハーモニックBモードイメージの観測環境を把握し易い。
【0018】
本発明(7)では、上記本発明(4)又は(5)において、送受信手段からのエコー受波信号に基づいてドプラモード画像を形成するドプラモード処理手段を更に備え、表示手段はフィルタ手段の各抽出信号とドプラモード処理手段の出力信号とを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示するものである。従って、上記造影剤で強調されたハーモニックBモード画像に、血流の速度、方向を含むようなドプラモード画像を重ねて表示でき、よって使用者は血流の詳細情報を容易に観測できる。
【0019】
本発明(8)では、上記本発明(4)〜(7)において、表示手段は同一の超音波断層面上に重ねて表示される各信号を異なる色彩で表示するものである。従って、使用者は各種信号処理モードに従う断層画像を識別し易い。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明に好適なる複数の実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通して同一符号は同一又は相当部分を示すものとする。
【0021】
図2は実施の形態による超音波診断装置のブロック図であり、図において、100はアレイ振動子を有する超音波探触子、200は超音波診断装置の本体部、300は超音波画像等のカラー表示部、400はキーボードや各種操作ボタン等を備えるコンソール部(CSL)である。
【0022】
本体部200には、超音波探触子100を駆動して被検体に対して超音波を送受信する送受信部10と、被検体からのエコー受波信号に基づき各種の画像表示モードに従う信号処理を行う信号処理部20と、各種の画像表示モードに対応する超音波断層画像を生成して画面に表示する画像処理部30と、本装置の主制御・処理を行う制御部40とが含まれる。また、上記信号処理部20には、B(Brightness)モード処理部21と、ハーモニックBモード処理部22と、カラードプラモード処理部23とが含まれ、超音波断層診断(撮影)の目的に応じて、各モード処理部21〜23の内の何れか1又は2以上の組合せが用いられる。
【0023】
なお、このハーモニックBモードには、微強超音波の伝搬に伴い発生する高調波成分を積極的に利用する方法や、造影剤との作用によって生じる非線形性を積極的に利用する方法等が含まれる。以下、撮影目的に応じたいくつかの構成例を具体的に説明する。
【0024】
図3は第1の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図(1)であり、被検体をパルスインバージョン方式によらない通常のハーモニックBモードの単独で造影検査する場合を示している。 なお、パルスインバージョン方式によらないとは、基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出する対象の信号が被検体からのエコー受波信号であって、正負極性の各エコー受波信号の加算信号を対象とするのではないという意味である。従って、被検体に対して正極性のみ又は負極性のみ又は正負極性のパルス信号を交互に送信することまでを制限するものではない。
【0025】
図3(A)にその構成を模式的に示す。図において、▲1▼’はハーモニックBモードの信号処理系、222は被検体に基本波の超音波信号を送信した場合のエコー受波信号から基本波成分fを抽出するローパスフィルタ(LPF)、31はLPF222の出力信号に例えば紫色のデータを付与する紫色データ付加部(VLT)、223は前記エコー受波信号から高調波成分2fを抽出するハイパスフィルタ(HPF)、32はHPF223の出力信号に例えば橙色のデータを付与する橙色データ付加部(ORG)、33は前記色付けされた各カラー画像データを同一断層面上に合成してカラー表示する画像合成部である。以下、動作を説明する。
【0026】
図5(A)に超音波探触子100によって生成される音場を示す。計測に利用する遠距離音場では、ビーム中央部の振幅が最強となるため、2次高調波が発生し易い領域となっている。この2次高調波成分を積極的に画像化することにより、高い方位分解能及びスライス方向分解能が得られる。
【0027】
係る状況の下で、本発明者等は、超音波造影剤を使用した被検体からのエコー受波信号につき、その周波数成分を詳細に観察したところ、血流速度が比較的速い血管部では血流によるドプラシフトが大きいため、そのエコー受波信号には基本波成分fが多く含まれるが、血流速度が遅い組織の染映部では血流によるドプラシフトが小さいため、そのエコー受波信号では造影剤の振動等に伴う高調波成分2fが支配的となることを突き止めた。この関係を図3(B)にグラフ化して示す。
【0028】
図3(A)に戻り、この構成を例えば肝臓の撮影に適用すると、血管部では造影剤に動きがあるために、基本波成分fが支配的となる。そこで、エコー受波信号からLPF222によって基本波成分fを抽出すると共に、この基本波成分fに対しては例えば紫色のデータを付すことにより血管部を紫色で表示する。一方、組織部では造影剤に動きがないため、高調波成分2fが支配的となる。そこで、エコー受波信号からHPF223によって高調波成分2fを抽出すると共に、この高調波成分2fに対しては例えば橙色のデータを付すことにより組織の部分を橙色で表示する。
【0029】
上記本第1の実施の形態(1)によれば、造影剤を使用したエコー受波信号から基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出することで、従来捨てていたような血流の情報を映像化でき、よってコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを有効に識別できる。
【0030】
図4は第1の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図(2)であり、被検体をパルスインバージョン方式によるハーモニックBモードの単独で造影検査する場合を示している。図4(A)にその構成を模式的に示す。図において、▲1▼はパルスインバージョン方式によるハーモニックBモードの信号処理系、221は極性反転した各エコー受波信号を加算する遅延加算部、222は加算信号から基本波成分fを抽出するローパスフィルタ(LPF)、31はLPF222の出力信号に対して例えば紫色のデータを付与する紫色データ付加部(VLT)、223は加算信号から高調波成分2fを抽出するハイパスフィルタ(HPF)、32はHPF223の出力信号に対して例えば橙色のデータを付与する橙色データ付加部(ORG)、33は前記色付けされた各カラー画像データを同一断層面上に合成してカラー表示する画像合成部である。
【0031】
図5(B)にパルスインバージョン法による2次高調波の抽出原理を示す。まず音圧が高から低に変化するような正相の基本波パルスaを送信してそのエコー信号bを保存し、次に音圧が低から高に変化するような逆相の基本波パルスcを送信してそのエコー信号dを保存する。この場合に、音圧が高い部分の音波は速く伝わり、また音圧が低い部分の音波は遅く伝わる性質があるため、図示の如く、エコー信号bの波形は外側に伸び、またエコー信号dの波形は内側に縮む傾向にある。そこで、各エコー信号b,dを所定のタイミングで加算することにより、図示の如く,基本波成分fが相殺され、2次高調波成分2fのみが強調されて抽出される。
【0032】
この実施の形態(2)では、更に超音波造影剤を使用することで、専ら造影剤からのエコー受波信号を高感度で取り出す。但し、被検体を観測中は、超音波造影剤が破壊しない程度の超音波パルスを毎回送信するものとする。このような状況下では、音圧が高いと、気泡が小さく、媒質密度が高いため、音速は速く、また音圧が低いと、気泡が大きく、媒質密度が低いため、音速は遅い傾向にある。従って、上記パルスインバージョン法と同様の高調波抽出作用が得られる。
【0033】
次に図4(B)を参照して本実施の形態(2)のバブルハーモニックBモードにおける血流速度と加算信号との関係を説明する。高調波成分2fについては、血流速度の小さい組織部では、1回目と2回目のエコー受波信号間で血流による位相のずれが殆ど生じないため、両信号を加算すると、高調波成分2fのみが強調されて抽出されるが、血流速度の大きい血管部では、1回目と2回目のエコー受波信号間で血流による位相のずれが生じるため,両信号を加算すると、高調波成分2fは減少する傾向にある。一方、基本波成分fについては、上記の現象とは逆であり、血流速度の小さい組織部では、1回目と2回目のエコー受波信号間で殆ど位相のずれが生じないため、両者を加算すると、上記の如く基本波成分fは相殺されるが、血流速度の大きい血管部では、1回目と2回目のエコー受波信号間で位相のずれが生じるため,両信号を加算すると、基本波成分fは増大する傾向にある。そこで、本第1の実施の形態(2)では、加算信号から基本波成分fと高調波成分2fを分離抽出することにより、血流速度の大小を識別することとしている。
【0034】
図4(A)に戻り、上記の如く、血管部では造影剤に動きがあるため、基本波成分fが残る。そこで、加算信号からLPF222によって基本波成分fを抽出すると共に、この基本波成分fに対しては例えば紫色のデータを付すことにより血管部の断層像を紫色で表示する。一方、組織部では造影剤に動きがないため、高調波成分2fが残る。そこで、加算信号からHPF223によって高調波成分2fを抽出すると共に、この高調波成分2fに対しては例えば橙色のデータを付すことにより組織部の断層像を橙色で表示する。
【0035】
図6は第1の実施の形態による超音波断層影像のイメージ図であり、図6(A)に肝臓を造影検査した場合の早期相における超音波断層イメージを示す。早期相では門脈に投与された造影剤が血流と共に末端の細い血管に運ばれていく様子を紫色で観測できる。更には,門脈末端の細い血管からの血液が境界部の肝組織に貯留され始めて、その部分が橙色で染まると共に、一部の血流は門脈の末端から肝静脈の末端にバイパスされている。なお、この例ではハーモニックBイメージのみを観測しているため、肝臓の全体形状は表示されない。
【0036】
図6(B)に例えばt=1〜2分程度の後期相における超音波断層イメージを示す。この状態では、門脈からの血液が肝組織の略全体に貯留されつつあり、肝臓におけるより広範囲の部分が橙色に染まっている。なお、引き続き肝門脈に気泡が流れ込んでいる場合は、引き続き血管部が紫色に染まっている。従って、観測の後期相でも、血管部とその周囲の腫瘍等を含む組織とを容易に識別できる。なお、観測終了したときは、肝臓を強い音線でスキャンすることにより、気泡を破壊する。
【0037】
上記本第1の実施の形態(2)によれば、極性反転した各エコー受波信号の加算信号から基本波成分fと高調波成分2fとを分離抽出することで、従来捨てていたような血流の情報を映像化でき、よってパルスインバージョン法によるコントラストハーモニックイメージング法でも血流速度の違いを有効に識別できる。
【0038】
図7は第2の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図であり、上記ハーモニックBモードによる造影画像に、通常のBモードによる画像を重ねて表示する場合を示している。図7(A)にその構成を模式的に示す。図において、▲1▼は上記図4(A)と同様のハーモニックBモードによる信号処理系、▲2▼はBモードによる信号処理系である。
【0039】
図7(B)に肝臓を造影検査した場合の早期相における超音波断層イメージを示す。本第2の実施の形態では、生体からの基本波成分からなるエコー受波信号に基づきBモード画像を形成して画面に例えば白色で表示することにより、観測の早期相から肝臓の全体組織を観測できる。
【0040】
図8は第3の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図であり、上記に加え、更にカラードプラモード(CFM:カラーフローマッピング法)による血流情報の画像を重ねて表示する場合の構成を模式的に示している.図において、▲1▼はハーモニックBモードによる信号処理系、▲2▼はBモードによる信号処理系、▲3▼はドプラモードによる信号処理系である。ドプラモードによる信号処理系▲3▼には、公知のものを使用できるが,1例の構成を図示する。ここには、極性反転させない複数のエコー受波信号につき直交I,Q軸成分について夫々に受信検波を行う直交検波部231と、少なくとも前後2波分の各検波出力I1,I2及びQ1,Q2について夫々に差分を求める減算器232I,232Qと、各減算出力のI,Q信号に基づき高速に周期の算出等による周波数分析を行う自己相関器233と、周波数分析結果から気泡の流速v、方向p、流速の分散σ等を含む血流情報を求める演算部234とが含まれる。
【0041】
このような構成により、上記バブルハーモニックBモードによる画像に、上記ドプラモードにより得られた血流情報をカラーによりリアルタイムに2次元的に表示する。例えばプローブに向かう血流を赤、遠ざかる血流を青、速さを輝度、分散を緑色の混合で表示する。本第3の実施の形態によれば,上記バブルハーモニックBモードにより、血流の速い部分と遅い部分とを比較的高分解能で識別できる。更には、カラードプラモードの併用により。血流のより詳細な情報が容易に得られる。
【0042】
なお、上記ドプラモード用のパルスは、ドプラモード専用として別個にバースト送受信しても良いし、又は上記バブルハーモニックBモード用のエコー受波信号をドプラモード用に利用しても良い。
【0043】
また、上記本発明に好適なる複数の実施の形態を述べたが、本発明思想を逸脱しない範囲内で各部の構成、制御、処理及びこれらの組み合わせの様々な変更が行えることは言うまでも無い。
【0044】
【発明の効果】
以上述べた如く本発明によれば、コントラストハーモニックイメージング法によっても血流速度の違いを表示可能なため、簡単な構成により超音波診断に有用な情報が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明する図である。
【図2】実施の形態による超音波診断装置のブロック図である。
【図3】第1の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図(1)である。
【図4】第1の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図(2)である。
【図5】ハーモニックBモード処理を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態による超音波断層影像のイメージ図である。
【図7】第2の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図である。
【図8】第3の実施の形態による超音波撮影方式を説明する図である。
【符号の説明】
10 送受信部
20 信号処理部
30 画像処理部
40 制御部
21 Bモード処理部
22 ハーモニックBモード処理部
23 カラードプラモード処理部
100 超音波探触子
200 本体部
300 表示部
400 コンソール部(CSL)
Claims (8)
- 超音波造影剤を投与した被検体に対して超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法であって、前記エコー受波信号より基本波成分と高調波成分とを分離抽出し、該抽出した両信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示することを特徴とする超音波造影信号の処理方法。
- 超音波造影剤を投与した被検体に対して極性反転した超音波パルス信号を送信し、得られたエコー受波信号の加算信号に基づきハーモニックBモード画像を形成する超音波造影信号の処理方法であって、前記加算信号より基本波成分と高調波成分とを分離抽出し、該抽出した両信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示することを特徴とする超音波造影信号の処理方法。
- 前記抽出した両信号を同一の超音波断層面上に異なる色彩で表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波造影信号の処理方法。
- 超音波探触子と、
前記超音波探触子を駆動して被検体に対して超音波パルス信号を送受信する送受信手段と、
前記送受信手段で受信したエコー受波信号から基本波成分と高調波成分を分離抽出するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段の各抽出信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示する表示手段とを備えることを特徴とする超音波診断装置。 - 超音波探触子と、
前記超音波探触子を駆動して被検体に対して極性反転した超音波パルス信号を送受信する送受信手段と、
前記送受信手段からの極性反転したエコー受波信号を加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号から基本波成分と高調波成分を分離抽出するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段の各抽出信号を同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示する表示手段とを備えることを特徴とする超音波診断装置。 - 送受信手段からのエコー受波信号に基づいてBモード画像を形成するBモード処理手段を更に備え、表示手段はフィルタ手段の各抽出信号とBモード処理手段の出力信号とを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示することを特徴とする請求項4又は5に記載の超音波診断装置。
- 送受信手段からのエコー受波信号に基づいてドプラモード画像を形成するドプラモード処理手段を更に備え、表示手段はフィルタ手段の各抽出信号とドプラモード処理手段の出力信号とを同一の超音波断層面上に識別可能な態様で表示することを特徴とする請求項4又は5に記載の超音波診断装置。
- 表示手段は同一の超音波断層面上に重ねて表示される各信号を異なる色彩で表示することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1に記載の超音波診断装置。
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