■畳の五つの魅力
古民家といえば「畳」ということで、あらためて畳の魅力を知っておこう。
「今回はキーワードを挙げて、古民家風のレトロな部屋作りのコツを紹介します。畳の魅力のキーワードは、1)弾力性と衝撃吸収性、2)調湿機能、3)断熱性・保温性、4)防音効果、5)香りの五つです」(岡田さん)
あまり意識したことがなかったが、確かに畳には弾力性がある。
「畳には適度な弾力性と衝撃吸収性があります。それは足腰への負担を軽減し、転倒時の怪我を予防してくれることにつながります。2)調湿機能については、畳はイグサで作られていて優れた調湿機能があります。夏は湿気を吸収し冬は乾燥を抑制するので、一年を通して快適な空間を保ってくれます。3)断熱性・保温性については、熱伝導率が低いため、“夏は涼しく冬は暖かい”という特徴があります。冷暖房の効きがよく、省エネにも効果的とされているのです」(岡田さん)
四つ目のキーワードは防音効果だ。
「畳は音を吸収する効果があり、足音や物音などを軽減します。最後の5)香りについては、イグサの自然な香りが特長です。リラックス効果や安眠効果をもたらしてくれます」(岡田さん)
畳にはメリットとなる特長がいくつもあることがわかった。レトロな雰囲気を持ち合わせているだけでなく、機能性も高いということだ。
■レトロな部屋を作る二つの基本
畳はもちろんそうでない部屋でも、賃貸住宅で古民家風のレトロな部屋に仕上げるための基本はあるのだろうか。
「キーワードは二つ、1)全体のバランス、2)自分らしさの表現です。まず1)全体のバランスについては、古民家風のレトロな要素を詰め込みすぎないことです。ごちゃごちゃした印象にならないよう、全体のバランスを意識することが大切です」(岡田さん)
もうひとつの「自分らしさ」とはどのようなものだろう。
「レトロな部屋には決まったかたちはありません。自分の好きなように、オリジナリティ溢れる空間を創り上げていくという気持ちも大切ですよ」(岡田さん)
社寺建築も手掛けるプロの口からオリジナリティという言葉が出るとは少し意外だ。型にはまらず、自分自身が楽しんで作り上げるとよいだろう。
■レトロな部屋を作る六つの具体的なポイント
基本を知ったら、次は具体的なポイントだ。
「古民家風のレトロな部屋作りの具体的なポイントは六つあります。1)色の組み合わせ、2)素材、3)照明、4)建具、5)古さと新しさのミックス、6)植物です」(岡田さん)
まず色の組み合わせはどう考えればよいのだろうか。
「古民家風のレトロな空間には、落ち着いた色合いがよく合います。茶色、ベージュ、緑色などをベースに、差し色として赤色や黄色を取り入れるとよいでしょう。2)素材については、天然の素材を取り入れることで、より温かみのある空間になります。木、土、石などの素材を積極的に使用しましょう。3)照明については、和紙のペンダントライトやランタンなど、温かみのある照明が適しています。間接照明を取り入れることで、落ち着いた雰囲気を演出することもできますよ」(岡田さん)
4)の建具とは、そもそもどのようなものだろうか。
「建具とは、部屋と外部との仕切りに用いる、開け閉めできる戸や障子、窓などの総称です。その建具については、引き戸や格子戸など、古民家によく使われるものを使用するとよいでしょう。障子やふすまを取り入れるのも効果的です。そして、建具とも関係しますが、5)古さと新しさのミックスは、レトロな要素と現代的な要素をミックスすることで、おしゃれな空間になります」(岡田さん)
最後の植物についてはどのように考えればよいのだろうか。
「植物を取り入れると、空間が温かみのある雰囲気になります。観葉植物や、盆栽などがおすすめです」(岡田さん)
古民家風のレトロな部屋作りというと、和風のもので統一しようと考えがちだが、必ずしもそれが正解とは限らない。今回教わったポイントを押さえ全体のバランスを考慮しつつ、自分の好みに仕上げることを楽しむとよいだろう。
●専門家プロフィール:岡田 佑真
古民家鑑定士一級、二級建築士。社寺建築岡田工務店株式会社・専務取締役。社寺建築岡田工務店は社寺建築の他に一般住宅の新築や古民家リノベーションを手掛けている。
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