カリフォルニアの失敗とアメリカ最大級のA/Bテストの始まり
テック業界の経済インパクト、カリフォルニア州の課題と解決法、マイアミの盛り上がりの理由、そして何故この流れはアメリカの文化を象徴するような現象
はじめに
IT産業が集まる街といえば、シリコンバレーが有名だ。Airbnb、Uber、Facebook、Salesforceなど数々の会社がサンフランシスコ近辺にオフィスを持つと同時に、名門VCオフィスが並ぶ「Sand Hill Road」もある。サンフランシスコのどのカフェに行っても、起業家が自分のアイデアを誰かにピッチしている姿を見かけるのが普通だった。テック業界の起点がサンフランシスコであるからこそ多くの会社はサンフランシスコにオフィスを抱えている。
ただ、それが変わってきている。実はここ数年でサンフランシスコとカリフォルニア州の状況が悪化している中、起業家やVCはカリフォルニア州から撤退。そしてコロナがその動きを加速したことで、今ではかなりの勢いでサンフランシスコから他の都市へテック業界が分散され始めている。何故このような動きになっているのか?多くの方はサンフランシスコに出張などで行くと、「道が汚い」、「ホームレスが多い」、「物価が高い」などが理由だと思いがちだが、それは結果論、本当の課題の症状にしか過ぎない。実際に裏を見ると、サンフランシスコの課題はもっと深刻で、解決するまでかなりの時間と労力がかかり、場合によっては解決できないかもしれない。
その結果、今までカリフォルニア州・シリコンバレーが握っていた経済圏を他の都市が取りに行けるようになった。よって、アメリカでは各都市が必死に自分たちの街やルールの制度をテック業界にアピールし合っている状態となっている。今アメリカでは最大級のA/Bテストが始まっている。
今回はテック業界の経済インパクト、次のテックハブの候補、カリフォルニア州の課題と解決法、マイアミの盛り上がりの理由、そして何故この流れはアメリカの文化を象徴するような現象なのかを解説したいと思います。
追記:ポッドキャストでも話していますので、よかったらこちらもぜひ(Apple Podcastはこちら)
カルフォルニア州のGDPは、世界トップクラス
シリコンバレーは他の都市と比べても圧倒的にテック企業やVCが多い。スタンフォード大学から良いエンジニアや起業家が卒業すると近場にいる会社にジョインして、そのスタートアップを探すためには近くにいた方が見つけやすいVCが集まり、そしてそのVCの近くにいることでより調達がしやすいため起業家やスタートアップが集まる、素晴らしい循環が生まれる。そしてスタートアップが成功してエグジット(M&Aもしくは上場)すると、そのスタートアップの創業者、従業員、そして株主であるVCたちが儲かる。そしてその儲けの一部を州の税金でとられたり、その儲けを使って家を購入したり、自分の子供の生活基準を上げるために学校に寄付したり、次の起業家を支援するためにスタートアップやVCに投資をしてカリフォルニア州の経済へ貢献している。さらにそのイノベーションを求めに他の都市や海外から企業が集まり、またまたカリフォルニア州の経済に貢献する。
実際にカリフォルニア州が別の国だった場合、2019年のカリフォルニア州のGDPの$3.13T(約343兆円)は世界でもトップ5の入る。
そしてテック企業だけを見ても、どれだけ世界に経済圏を持っているのかが分かる。ビッグテックのFAAAM(Facebook、Apple、Amazon、Alphabet、Microsoft)の2020年の合計売上は$1.2T(約131兆円)。日本の2020年GDPの539兆円のおよそ4分の1の数字であり、ビッグテックが一つの国であれば世界のトップ15に入る。
テック業界がどれだけ経済的インパクトを及ぼすか分かっているからこそ、Amazonが2017年9月に新しいオフィス「HQ2」を作りたいと発表したときに、200都市以上がAmazon HQ2を招くために応募した。その応募内容を動画を含めて申請する必要があったので、このような動画が200個以上ある。
最終的にはニューヨークのクイーンズ地区ロングアイランドシティとバージニア州アーリントン郡のクリスタルシティの2カ所に分割して建設することを発表。バージニア州はAmazonに$573M分の税控除、$23Mのキャッシュ、その他インセンティブをAmazonに提供。ニューヨークは$1.525Bの税控除、$325M分のキャッシュを提供。最終的にニューヨークの政治家や住民の批判を浴びたおかげでニューヨーク拠点を進めないことにしたが、Amazonは元々その2拠点で5万人の従業員、そして$5B以上の建設コストを投資すると言っていた。経済インパクトを予測するIMPLANによるとAmazonは少なくとも2021年〜2030年にかけて毎年$6.1B分(2030年には$15B)の経済貢献を及ぼすと計算している。
アメリカ最大級のA/Bテスト
そんな経済圏を及ぼすテック業界で、その袁譚を走っていたのがシリコンバレーだったが、ここ数年の間で徐々にシリコンバレーの力が減っている。これは他の都市にテックハブを作っていることや起業家・VCのネットワーク効果がインターネットの影響で落ちていて、その流れがコロナの影響で加速したのもあるが、1番の要因はカリフォルニア州自身にある。実際にスタートアップへの資金調達額のシリコンバレー企業への割合は徐々に落ちているのがPitchbookなど分かる。
コロナの影響ももちろんある。サンフランシスコから撤退するテック企業をモニタリングしているsf.citiの調査によると1,600万平方メートル分のオフィススペースの空きが出ていて、63%の企業がオフィスサイズを削減したとのこと。
さらにCoinbaseなどに初期投資したInitialized Capitalも投資先の調査を行なった際に、2020年では41.6%の起業家がサンフランシスコと回答したのに、2021年ではそれが28.4%まで落ちた(リモートの回答が42.1%)。
実際にAP Newsによるとカリフォルニアの人口は去年18.2万人減った。1850年から毎年人口が上がっていた州からすると、これだけ人が州を離れたのは170年間起きなかった出来事。州になってから始めてカリフォルニアは議員の席を一つ失ってしまった。逆にテキサス州とフロリダ州は席を増やしたので、今後の選挙にもこれは影響する(過去二回の大統領選挙ではテキサスとフロリダは共和党寄りだった)。
後ほど何故カリフォルニア州から撤退するスタートアップ・VCが多いかを説明するが、重要なのはこの流れが起き始めていること。そしてこの経済的チャンスを掴みにいく都市が増えている。過去のポッドキャストにも一部の都市を説明したことあるが、以下都市が次のテックハブの候補となっている。
注目されている都市
ユタ州のリーハイ
通称シリコンスロープと言われているSaaSがかなり強い都市。2020年だけでも3社の大型M&Aがあった。
Adobeのデジタル部門がユタにいて、BYUなど有名な学校があるからシリコンバレーのVCがいなくても勝手に伸びてたが、最近はシリコンバレーの投資家もユタ企業に出資を積極的に行なっている。モルモン教の拠点としてアメリカでは珍しく多くの人口が英語以外の言語を話せて宗教活動を行なった若者が大分め、営業・カスタマーサポートに適したスキルセットを持っている。
有名スタートアップ:Qualtrics、Divvy、Podium、Weave、Lendio、Nav、MXなど
ノースカロライナ州のローリー
最近Appleが$1Bかけてオフィスを作ると言ったノースカロライナ州のローリー市はあまり知られてないが、多くの大手テック企業がそこにオフィスを抱えている。実際にIBM、Redhat、Cisco Systems、Lenovo、Microsoftなどもこの辺りにオフィスを抱えているからこそ、スタートアップ文化が生まれている。そしてもちろん最も影響があるのは恐らくEpic Games。2020年のノースカロライナからのスタートアップ資金調達額が伸びている1番の理由はEpic Gamesの成長(2020年の$3.6Bのうち、半分がEpic Gamesから来ている)。
コロラド州のデンバー
コロラド州も多くのテック企業がオフィスを抱えている。Google、Facebook、Salesforce、Gusto、Robinhoodなどが事例となる。さらに2020年9月に上場したPalantirは本社をカリフォルニアからコロラドに移転した。2006年からアクセラレータープログラムのTechStarsが立ち上がり、10年前はアーリーステージの強い場所として見られていたのが、ここ最近では4社のコロラド出身のユニコーンが誕生した。
ワシントン州のシアトル
シアトルもコロラド州のデンバーと同じようにテック企業の二つ目のオフィスとして人気になっている。今ではUber、Twitter、Facebook、Disneyなどがエンジニアチームをシアトルに置いているケースが増えている。そもそもMicrosoftとAmazonの本社でもあるシアトルは良い人材で溢れてた。2020年Q3だけでもQumuloの$125M調達、Auth0の$120M調達、Remitlyの$85M調達などが起きている。
カリフォルニア州のロサンゼルス
サンフランシスコのスタートアップは減っているかもしれないが、ロサンゼルスは特定のカテゴリーではかなり人気になっている。C向けスタートアップ、特にソーシャル系のスタートアップはロサンゼルスに集める傾向にある。Snapchatをはじめ、最近ではライブコマースで$100M調達したPopshop Live、ユニコーン入りしたCameoやGOAT、eスポーツ家の100 Thievesなど今の主流トレンドである「クレイエイターエコノミー」に最も相応しい都市かもしれない。多くのYouTuberやTiktokerもいるため、カリフォルニア州の中では期待の場所。
オレゴン州のポートランド
コロナ前からサンフランシスコからポートランドに移転するスタートアップが増えていたが、今はさらに加速していると言われている。バックオフィス系のソフトウェア企業もいれば、Schmidt’s NaturalsなどCPG系のスタートアップも多く出てきている。Appleはポートランドをハードウェア拠点として置いているらしいので、ハードウェアのノウハウを持った人材も多いかもしれない。
テキサス州のオースティン
所得税がゼロのテキサス州は数年前からオースティンが拠点となり、多くのスタートアップや大企業が入ってきている。最近だとTeslaのギガファクトリーがオースティンに作られる予定であったり、Oracleも本社をオースティンに移転することとなった。最近は多くの起業家がオースティンで家を購入している傾向になっているので、今後さらにテックハブとなりそう。YCの直近のバッチだけでも150人以上の起業家がオースティンに集まっている。
C向けスタートアップはまだ少なく、今はB2B系サービスが多いらしいが、このリストの中だとテックハブになり得る都市のトップ2に入る街。
ジョージア州のアトランタ
数年前に「ユタの次はアトランタだよ」と言われて無視してたが、最近のアトランタのスタートアップがすごい結果を出している。コカ・コーラ、デルタ、CNN、Home Depotなど古い会社の本社がある場所として認識されがち。
最近だとCalendlyは$85M ARRで$3Bの時価総額、OneTrustは$2.5Bの時価総額、Greenlightは$2Bの時価総額、そしてKabbageは$800Mで買収された。
さらにアトランタではヒップホップ文化の影響で多くのアーティストやインフルエンサーがいる。そのため、トレンドセッターになり得る場所でもあり、今後はかなりシリコンバレーのVCも入ってくると想定される。
フロリダ州のマイアミ
こちらは記事の後半で別途説明しますが、今のアメリカのスタートアップ業界で最もホットなテックハブ候補場所はマイアミ。個人的にも知り合いのVCからの話を聞く限り、他の場所とは比較にならないほどのパッションとエネルギーが作り上げられている。
実際にテック業界で働いている人のLinkedInプロフィールをベースにマイアミ・ヘラルド紙の記者が調査したところ、マイアミに住んでいる人が一番増えて、サンフランシスコが一番減った。
アメリカの最大級のA/Bテストが開始している
各都市は違う税金制度、政治活動、そして文化を持っているため、どの街が最も今のシリコンバレー起業家にフィットするかA/Bテストされている。そして各都市の市長や政府関連の人たちは必死で起業家にアピールしている。
今現在はマイアミとオースティンがリードしていると思われる。どの都市が勝つのかはまだ分からないが、明らかなのはアメリカでは大きな経済圏の移行が行われ始めていること。
カリフォルニア州の失敗はなんだったのか
10年以上前から「次のシリコンバレー」を作りたい都市はあったが、その動きが今加速している。加速している理由はコロナ以外に、カリフォルニアやサンフランシスコとテックコミュニティの関係性、そしてカリフォルニアの政府、政治、考え方の違いが大きな要素となっている。
カリフォルニア州はコロナ期間中に多額のコストを抱いたが、最終的には州としては黒字だった。その主な理由はテック企業と2020年と2021年の上場の多さ。カリフォルニアは他の州よりも高い譲渡所得課税があり、カリフォルニア州民のキャピタルゲインを年々見ると、かなり上がっているのが分かる。
キャピタルゲインの税金は全て個人所得税として分類されるが、カリフォルニア州の「売上」(税金からの収入)を見ると、3分の2が個人所得税から来ていることが分かる。ちなみに企業からの税金は10%、消費税からは16%ぐらい。
ここで重要なポイントがある。この個人所得税は誰から来ているのか?実際にデータを見ると、カリフォルニア州の個人所得税の半分はトップ1%の収入者から来ている。 カリフォルニアには1,300万世帯があるので、その1%の13万世帯(ある計算では4万世帯)がカリフォルニアの売上の30%を支えていることになる。この13万世帯のうち、ほとんどはテック業界に関連する人だと想定すると、カリフォルニアは気をつけなければ数万世帯が他の州に行くだけで何千億円と損することになる。
カリフォルニア州の今の状況
州がどういう課題を持っているかの前に、まずはカリフォルニア州の今の状況を知った上で、裏の課題に移りたいと思います。幾つかカテゴリー分けして今の州の実績を記載しました:
💰 経済と職
・8.1%の失業率:2021年3月時点で50州のうち下から2番目(労働省労働統計局)
・18.2%の貧困率:アメリカで最下位(The Center Square)
・13.3%の所得税:最も高い州(The Balance)
🌲 環境問題
・石油・天然ガス井の設置許可を2倍にしてクリーンエネルギーを無視(PR NewsWire)
・最も山火事が多い州(Insurance Information Institute)
🏡 生活の質
・最もホームレスの数が多い州(USICH)
・83.3%の高校以上の卒業率:アメリカで最下位(World Population Review)
・生活費ではアメリカで2番目に高い(World Population Review)
💉 コロナ
・一時期はコロナの感染率がアメリカでは下から2番目(NBC News)
・ワクチンの分配率が下から5番目(SF Gate)
🆘 その他
・2014年以降、大手企業50社が州から撤退(ほとんどが2019年か2020年に撤退している)
・州から撤退した企業例:トヨタ、Charles Schwab、Tesla、Oracle
・上記企業だけで30万人の採用と$77Bの売上が失われる
・300万人が州から離れていて、53%のカリフォルニア州民は州から離れたいと言っている(SF Gate)
サンフランシスコだけを見ても、犯罪率がアメリカの都市でトップ2%に入る。しかもそれは伸びている一方。直近の数字を見ても、強盗、自動車の盗難、放火などが去年と比較して27.1%、12.7%、22.1%増加している。コロナ期間中は2019年と比較して実は強盗の数が84%増、自動車の盗難が20%増、そして放火が55%上がった。
そしてサンフランシスコはホームレスの課題が大きいため、街中の人間の糞の数が多すぎて、それをトラッキングするマップが埋もれている。
サンフランシスコとカリフォルニアがこういう状況に陥ったのは、その都市と州を管理する人たちが責任を少なくとも一部は抱えている。そして都市・州の政治的な意向とモチベーションを見ると、何故カリフォルニアに不満を抱える人が増えたのかが分かる。
リベラルすぎるデメリット
アメリカの一つ国としての素晴らしさは、色んなアイデアや考え方があること。その中でも政治はかなり違う意見やアメリカの方向性を考えている人たちがいる。アメリカでは「右寄り・赤色」が共和党、「左寄り・青色」をリベラルと見ているが、大統領や議会のどちら寄りかによってアメリカの国内と海外ポリシーが変わってくる。以下アメリカの地図を見ると、州ごとで大きな偏りな州があるのが分かる。
中でもカリフォルニアはめちゃくちゃリベラルな州。ただ、最近だとそれが左寄りに傾きすぎて、社会主義の領域に入り始めている。そして同時に多くの人が左寄りのため、新しい考え方が少なく、一つのシステム・人々が州をコントロールすることになってしまう。チャレンジャーがいないシステムが存在すると、二つのことが起こる可能性が出てくる。まずはクオリティ担保がしにくくなる。政治家として良い仕事をしないとアメリカでは次の選挙で政権交代をするが、カリフォルニアでは人を変えてもほとんどアイデアは同じ。そしてもう一つは同じ人たちが権力を持っていると、お金でその人たちをコントロール出来るようになる。カリフォルニアではどちらとも起きているのが今の現状。
サンフランシスコの犯罪率が高い理由は地方検事の考え方が理由
以前サンフランシスコの犯罪率の増加について話したが、この現象が起きた一つの大きな理由は2020年1月にサンフランシスコの地方検事として任命されたチェサ・ブーダンさんが大きく関係している。チェサさんがまだ1歳の時に親が国内のテロリスト集団の一員として強盗事件に巻き込まれて捕まった。彼の母親は2人の警官と警備員の重罪謀殺で生涯20年、父親は生涯75年の刑を宣告された。チェサさんは子供の時の記憶で牢屋に言って親と会話をする経験が自分の政治的思考を作り上げたと語っている。彼の思いは牢屋や刑務所に入っている人の数を減らすことで、その強い意志を持ったまま弁護士になった。
ちなみにアメリカでは軽罪で意味なく刑務所行きの人が多いので、チェサさんのメッセージが多くの人に響き、2019年末の検事選挙で勝ち抜いた。そこで彼の考えに賛同しない検事をクビにしたり、より簡単に刑務所から出ていく、もしくは刑務所に行かせない制度を作った。ここで犯罪とドラッグの悪循環が生まれた。まず、ドラッグ(特にフェンタニル)を販売する人が増えた。もちろん警察は犯罪者を捕まえに行くが、チェサさんが彼らを刑務所に入れないため、結局何も罰を受けずにサンフランシスコ(特にテンダーロインあたり)に戻ってくる。安心に犯罪が出来るのを見ると、もちろん犯罪率が上がってしまう。そして多くのドラッグ販売者が増えると、ドラッグの値段が安くなり、より多くの人が試して、より多くの人が中毒になってしまい、その人たちもドラッグを買い続けるためにいづれかは自分たち自身も犯罪者にならなければいけなくなる。そしてドラッグを購入したお金は犯罪グループに行ってしまうので、犯罪者の収入源が増えて、より多くのドラッグを販売するようになる。
2020年1月から11月の間では2019年の1.5倍ぐらいのドラッグの過剰摂取の死が出た。実は多くの警察官はこの悪循環が起きていることを知っていて、かなりフラストレーションが溜まっている。そして最近はそのフラストレーションをTwitterでさらけ出している。例えばこちらのツイートで、SF警察が過去18ヶ月間で同じ犯罪者が15回の自動車・バイク盗難を繰り返していることをつぶやいていた。
犯罪をしても責任を負われないと、こういう光景が毎日のように起きてしまう。
捕まえても検事が刑務所に入れてくれないと理解している警察官たちは捕まえることを諦めるか、辞めるのを洗濯している。2020年1月から6月だけで23人の警察官が退職届を出している。その結果、サンフランシスコは犯罪者を受け入れる街となってしまう。そしてこの話は実はある日本人も被害を受けている。2020年12月31日にアメリカのデータエンジニアとして勤めていた阿部華子さんがひき逃げ犯よって亡くなられた。運転手は強盗罪で仮釈放中の男で、実は5回ほど警察に捕まっていて、直近では2020年12月20日に捕まっていた。
これはどう見ても防げた死である。ここで重要なのは、刑務所に人を必ず入れるのが正しいという話ではない。各案件にはニュアンスがあり、その人が何回も同じ犯罪を繰り返したり、本当に危険を及ぼすリスクが高ければ刑務所に入れるべきだし、軽罪だけであれば刑務所に入れないほうが良いかもしれない。ただ、チェサさんの方針だと誰もが刑務所には入らない状況を作ってしまう。
そしてこれはサンフランシスコだけの問題ではなく、左寄りに行き過ぎた人たちの共通なる課題に見える。ロサンゼルスの地方検事のジョージ・ガスコンさんも同じような動きをしている。自ら検事としての権力を潰しているのがカリフォルニア、特にサンフランシスコとロサンゼルスの犯罪率、ホームレス、ドラッグ問題に貢献している。
もちろん、チェアさんとガスコンさんの考えは完全に間違っている訳ではない。アメリカの今の刑務所はプライベートカンパニーが運営していて、黒字化するために最悪のコンディションになっていて、刑務所に入った人たちが上手く一般市民として戻れる仕組みが整っていない。なのでそこの根本的な課題はあるが、その解決法が刑務所に入れないのは間違いな気がする。ただ、この悪質な制度と循環を多くのカリフォルニアの市民が見ていて、その制度を劇的に変えたいと選挙で語る人たちに投票してチェサさんやガスコンさんが選ばれた。そして今その二人の解決法が間違っているのを見て、多くの州民はまた怒りを上げている。
政治家をコントロールする官公労
犯罪率以外にも、サンフランシスコとカリフォルニアは様々な分野で課題がある。それを作り上げている一部の理由は、多くのカリフォルニアの政治家、特に州知事は官公労など特別組合から多大なる寄付金をもらっていること。このお金の流れによって、官公労や特別組合のいいなりになってしまっている。例えば教育・学校関係では、アメリカのCDCがワクチンを受けてなくても先生たちはコロナの感染する可能性が低いので学校を再開してリアルで授業を行っても良いと判断したが、ニューサム州知事は公立校を完全にオープンさせなかった。もちろんその間は私立校はオープンした。ニューサム州知事がこのような判断に至ったのは、3万人もいるカリフォルニア教師協会がワクチンを全員受けるまでオープンするのは危険と言い続けたから。
そもそもコロナの始まりの時にカリフォルニアの教師協会は先生に授業を教えるなと指示を出したり、オンライン授業を長く拒否していた。そしてようやくオンライン授業を受け入れた時も、OC Registerによると学生とオンラインで一緒に過ごすミニマムの時間を減らすようにロサンゼルスの教師協会が要求した。その結果、多くの親は公立校を捨てて、コストがかかっても家で必死に教えたり、私立校に入れたり、チャータースクール(民間が運営する公立学校)に子供を入れる流れになった。
公立校の生徒数が減ると、その学校への政府からの資金が減って先生を雇えなくなるはずだが、2020年7月にニューサム州知事は学生がいてもいなくても、そして学校がオープンしてもオープンしなくても先生の給料をギャランティーする議案を通した。
ニューサム州知事は何故これだけ先生や教師協会に対して甘いのか?それはお金の流れを見ると明確になる。SF Gateによるとカリフォルニア教師協会はカリフォルニアの民主党に$2.2Mほどの寄付金を過去4年間で提供している。これだけお金をもらっていれば、知事でもいいなりになるしかない。実際に州議会の3分の2のメンバーは直接カリフォルニア教師協会からお金をもらっている(もちろんニューサム州知事ももらっている)。
そしてこのリサーチでビックリした内容は公的機関で働いているカリフォルニア州民の給料。2015年時点では200万人の給料を調査したところ、平均給料が$140K弱(1,530万円)だった。ちなみに民間部門では当時は$62K、公的機関で働く人たちの半分以下だった。ちなみにSFのテック業界でも大体$150Kぐらいが平均となる(大体のテックCEOはSeries B以降でようやく$200Kぐらいになる)。
そしてアメリカの公的機関の給料をトラッキングするOpen The Booksによると、カリフォルニアの公的機関では34万人以上が$100K以上もらっていたことが判明。あるトラックドライバーは$159Kの給料、あるロサンゼルスのライフガードが$365K、カリフォルニア大学サンフランシスコ校付属病院であるナースが$501Kの給料をもらってた。この34万人だけで$45Bのコストをカリフォルニアが払っている。2017年でもロサンゼルスの44人のライフガードが$200Kから$365Kの給料をもらってたことが判明された。
サンフランシスコでも同じ現象が起きている。2,000人の公的機関の従業員が$250K以上もらっている。
以前サンフランシスコの街が人間の糞で溢れていると話したが、それを解決するはずのモハメッド・ヌルさん(自称ミスタークリーン)は2018年では$269Kの給料をもらっていた。
結果としてテック業界などお金持ちがカリフォルニアから撤退すれば、カリフォルニアに残されるのは公的機関の従業員だけかもしれない。ただ、このように官公労などのいいなりになると、多大なコストがかかってしまう。それは年金のコスト。カリフォルニアの公的機関では大体15年ぐらい働いて引退すると、州の特別年金制度に該当する。50歳の時に引退すれば元々の給料の8割を確保できる。そうすると仕事をしなくても、毎年もらってた給料の8割が自動的に入ってくる。しかも結婚していれば、自分が亡くなっても、結婚相手が亡くなるまで年金が入る仕組みになっている。大体働いていた最後の3年ぐらいの平均給料をベースに年金が計算されるので、最後の3年間は出来るだけ残業などをして給料を上げる傾向にある。そして50歳で引退してもまだ仕事は出来るので、その後に別の公的機関で働く人が多い。実際に郡保安官だったジム・クーパーさんは50歳で引退した時に$173Kの年金を毎年もらうようになったが、その後に別の仕事で毎年$107Kの給料をもらっていたので、結果的に$281Kの給料をもらっている。
この年金制度の支払いの負担がどんどん大きくなる一方、カリフォルニアは後に払えなくなる。2019年では8万人の引退しているカリフォルニア市民が毎年$100K以上の年金をもらっていた。今現在の年金制度に入っている人たちへの支払い義務を見ると、$160Bから$200Bぐらいお金が足りない状況となる。カリフォルニアの今の経済でもこのレベルのコスト負担は保てない、そしてこれから人がカリフォルニアから離れることを考えると、この課題はさらに大きくなるだけ。
ちなみにこの年金制度から401Kのような制度に変更する議案は過去に出たことがある。多くの企業は年金制度から401K制度に変えてたので、議案自体はカリフォルニアの今の課題の良い解決案になったかもしれない。ただ、官公労などのプレッシャーにより、公的機関の従業員は年金制度のままとなった。
コロナの影響で自治体の権力が拡大された
もちろん、政府なのでコストがあるのは仕方がない。多大なる教育コストや公的機関へのコストも、その分のベネフィットがあれば州民も納得するはず。実際に個人的には累進課税の制度があるのは正しいと思うので、お金持ちが税金を払わないことを提案しているのではない。ただ、税金などのお金の使い道が州民のためにならないのであれば、何かしらの変化が必要だと思う。
例えば学校をオープンする方針を考えるのではなく、サンフランシスコの教育委員会は$400Kのコストをかけて44校の名前を変えることを判断したり、才能児が高等数学の授業を受けれらなくするなど、おかしな制度や無駄なコストを作っている。カリフォルニアのロックダウンとそれを解除する判断は多くのレストランや中小企業を苦しめた。ロックダウンを一部解除してレストランに外で座れるように要求した際に、多くのレストランは平均$30K(300万円以上)かけて外で座れる席やコロナ対策の器具を用意した結果、3〜4週間後にまたロックダウンすることを決めた。Yelpによるとアメリカで最もレストランが閉鎖したのはカリフォルニア州だった。
私も以前働いていたロサンゼルスのスタートアップは自治体向けにサービスを提供している。そこで明らかになったのが、政府の袋元に入ると、リプレイスされにくくなり、さらに多大なるお金をもらえること。実際に我々がサービス提供する時にあるNPOと一緒に働くことになったが、そのNPOのコンサル契約は異常に高かった。そして高いのにも関わらず、彼が出したレポートだけでパフォーマンスが判断されていたので、実際のROIを自治体としては計算できなかった。実際に我々のソフトウェアでROIが可視化され始めた時にそのNPOがかなり焦り、我々を買収するオプションを提示したり、営業妨害することを脅してきたり、協力しない方針を見せた。運よく我々のプロダクトの強みとビジョンに賛同してくれた自治体の人がいたためソフトウェアを政府は我々のソフトウェアを使い続けてくれているが、そのNPOも未だに活用されて、無駄なコストを自治体が支払っている。
このような話はアメリカ中起きている。ただ、コロナ期間中にカリフォルニアでは自治体に異常なる権力を持ったため、この課題はさらに深刻になった。カリフォルニア含め、ほとんどの自治体では何かしらのサービスを導入する際には、勝手に一社を決められなく、競争入札によって判断が必要となる。ただ、コロナ期間中に「緊急事態」になったため、カリフォルニア政府は急に競争入札が必要ない随意契約を提携し始めた。今までの記事を読んでいるとどのような展開になるかは分かると思うが、無駄なコストとニューサム州知事へ寄付した人・企業がメリットしたように見える。
元々州は全契約情報を公開してなかったが、誰かが情報公開請求をしたおかげで公開された。そこではとんでもない無駄遣いが行われているのが分かった。例えば$1.4Bほどを鼻腔スワブなどコロナ検査のためのサプライの契約をPerkinElmer社と締結したが、実態は他の民間企業が多くの検査を行っていた。さらにAccentureにコロナのトラッキングと管理サイトを作るのに数年に渡って$100M弱の契約を締結していた。
そしてニューサム州知事に寄付した数社の会社が多額の随意契約を締結している。
・UnitedHealth:合計$220Kをニューサム州知事に寄付した。$490M分の契約を獲得(コロナ検査とデータトラッキング)
・Bloom Energy:$85.2Kをニューサム州知事に寄付した。$2Mの契約を獲得(人工呼吸器の修理)
・BYD:$40Kをニューサム州知事に寄付した。$1.2B以上の契約を獲得(マスク販売)
もちろん、たまたまこうなったかもしれないが、実際にこれだけのコストが必要だったのか、そして何故この企業を選んだのか納得のある説明がまだない。寄付金が関係していなくても、お金の管理が緊急事態の途中にうまく管理できないのはおかしい気がする。
このような状態であれば、テック業界や多くの州民が離れたい理由が分かりやすい。そしてテック業界からすると、リモートワークが他の州民と比べてやりやすいので、カリフォルニアにいる必要がない。今までいた理由はサンフランシスコのネットワーク効果だけで、今となっては多額の税金やコストを州に提供しているのに、子供の教育制度が悪化していて、街が汚く、犯罪が増加していて、州の政府は何も変える気がないため、リターンがマイナスになっている。
カリフォルニアはテック業界との長い付き合いを当たり前だと思ってしまっている。カリフォルニア州議会のロレナ・ゴンザレスさんが以下のようなメッセージをテック業界を代表する一人であるイーロン・マスクに送るような形であれば、明らかにカリフォルニアはテック業界を拒絶しているのが分かる。
カリフォルニア州の課題解決
個人的にはカリフォルニアの課題について記事を書きたくはない。メタバース、SNS、メディア、C向けサービス、Z世代などポジティブでこれから世界を変えるような出来事について今まで書いていたが、今のカリフォルニアの課題があまりにも酷すぎて書かないといけない状況になった。カリフォルニアがアメリカのイノベーションの街であり続けて欲しいし、これだけすごい人たちが一つの州に集まることは普通ありえない話。だからこそカリフォルニアの課題を理解すること、そしてその解決法、または次のシリコンバレーになり得る場所を知るのが大事だと思う。
この州の課題解決するのは中々大変。人が多いし、お金持ちも多いが、そのお金持ちに経済的に頼ってしまっているのが今の現状で、今後年金制度のおかげでお金が足りなくなってしまう。同時にカリフォルニアの法律制度は政府の予算の使い方、税金制度、権力の分配にかなり制限を与えてしまっているので、変えるのが難しい。そして何より今の法律を変えたくない、お金を持っている組織たちが政治家をコントロールできている。
そうなると政府のリーダーシップからの変化しか道がないかもしれない。実は今サンフランシスコでは地方検事のチェサ・ブーダンさんを解職させるリコール運動が始まっている。ロサンゼルスでもガスコン地方検事に対してリコール運動が始まった。そしてカリフォルニア州ではニューサム州知事のリコールを求める署名集めが行われた。州知事を解職するリコール運動で必要なのは150万個の署名が必要で、最終的には170万以上の署名が集められた。今年の夏から秋にリコール選挙が行われるが、今のことろはニューサム州知事が勝てるチャンスの方が大きい。最初はコロナの対応に遅れていたニューサム州知事はバイデン大統領の指示によって16歳以上の人は誰でもワクチンを受けられる体制にしてからカリフォルニアのワクチンの分配率がかなり上がり、2020年と2021年では多くのテック上場があったため、所得税をかなりとれて経済がポジティブに見える。実際に1911年以降、カリフォルニアの州知事をリコールさせようとした回数は55回あったが、3回しか成功していない。最後にリコールが成功したのは2003年。当時州知事だったグレイ・デイブスさんがアーノルド・シュワルツェネッガーさんにリプレイスされた。今現在23人ほどが選挙活動を始めた。
この動きはテック業界、特にVCがリードしている。Business Insiderによると、ニューサム州知事のリコールするためのキャンペーンで$3.3Mの寄付金を集めたRescue Californiaのうち13%はVCからだった。さらにブーダン地方検事のリコールキャンペーンに対する寄付金の22%がVCから来ている。
実際にリーダーシップが変わっても、カリフォルニアの課題を解決するには少なくとも数年はかかる。まだ短期的にはシリコンバレーはアメリカで最もイノベーションが起きる街としてい続けるが、長期的に続くかはこの選挙と今後のカリフォルニアの州としての動きによって変わる。
次のシリコンバレーに最も近いのはマイアミ!?
この記事の初めに、コロナの影響とカリフォルニアの状況によってテック業界はサンフランシスコやシリコンバレーに住み続ける必要性が無くなっていると話したが、そこで今一番テック業界でホットな街、次のシリコンバレーになり得る場所として言われているのはフロリア州のマイアミ。
マイアミは昔からお金持ちが住む街だった。所得税がゼロ、生活費が低く、ビーチがあり、冬は最低20度ぐらい、アート業界が集まっていてな文化なところが街として魅力を持っている。ただ、今までそこまで多くのスタートアップはいなかった。一番有名なフロリダ州のスタートアップはおそらくMagic LeapやShipmonkぐらいしかいなかったが、ここ数年で少しずつ起業家が集まり始めていた。
2020年にあるサンフランシスコの投資家が街中で歩いていた時にホームレスの人に襲われて、警察に報告しても何も対応をしてくれなかったのに呆れてマイアミに引っ越したのがマイアミの初期グロース(シードラウンドw)のきっかけ。その投資家がTwitterやVC業界の仲間たちにマイアミの良さを伝えて、2020年に後半にFounders FundでStripe、LinkedIn、Yelp、Squareなどに投資したPayPalマフィアメンバーのKeith Raboisさんがマイアミに移った。KeithさんはVC業界ではかなり著名な人物でTwitterでもかなりアクティブなため、その影響ですぐに数名のVCがマイアミに引っ越してきた。これがマイアミのSeries Aとも呼べるかもしれないw。
著名VCが数名マイアミに引っ越してきている情報を知ったマイアミの市長であるフランシス・スアレスさんはこのチャンスを見逃さなかった。民主党ではTwitchなど現代のテクノロジーを活用して若者層にリーチ出来るアレクサンドリア・オカシオ=コルテスさんと同じレベルの現代のコミュニケーションに長けているスアレス市長はVC業界で最も使われるSNSのTwitterでマイアミをアピールし始めた。一番最初のツイートでFounders Fundのメンバーが「シリコンバレーにマイアミに移したい」と言った時にスアレス市長が今ではマイアミのテック業界のスローガンとなったのが「How can I help?(何か手伝えることがありますか?)」。
そこからスアレス市長が色んなテック起業家やVCをメンションしたツイートやDMでマイアミに誘うようになった。例えば大手テック企業のリモートオフィスとしてマイアミを人気にするためにTwitter/SquareのCEOのジャック・ドーシーをメンションしたツイートを送った。
メンション・DMしてマイアミに行かせて、そこで魅力を伝えて残るように説得するのがスアレス市長の戦略だったが、その影響でアメリカのテック業界ではマイアミの市長にTwitterでフォローされるとマイアミに行かなければいけないというインサイドジョークまでになった。そして同時にパタゴニアのフリースやAllbirdsのスニーカーを使うサンフランシスコのVCをもじった「VC Starter Kit」のマイアミ版まで作られた。
そしてTwitterだけでなく、2020年12月末から2021年1月でアメリカのテック業界が音声SNSのClubhouseにまた群がった際にサンフランシスコとオースティンの市長と一緒にお互いの都市をテック業界にアピールするClubhouse回を主催した。結果として今まで以上にシリコンバレーからマイアミに引っ越す起業家とVCが増えた。その引っ越しをサポートするために、スアレス市長はマイアミに引っ越したマットレススタートアップのEight Sleepと提携して、マイアミに引っ越してから3ヶ月以内でEight Sleep商品を購入すると20%ディスカウントをもらえるキャンペーンを行った。
実際にどれだけスアレス市長がテック業界でマイアミを盛り上げたかを見ると、これが次世代政治家と思う。
これだけの動きを行ったからこそ、2020年ではVC業界の「今風」のステータスを出すには、ファンドのGPがマイアミに住むのが条件に入り始めた。
ただ、スアレス市長はそれだけで止まらなかった。イーロン・マスクさんとも話して、Boring Companyのトンネルを導入を検討したいと発表。
さらにビットコインを完全サポートをした。2021年2月に市長の下で働いている従業員が給料をビットコインで受けられて、住民が市に対して払うフィーをビットコインで支払えて、税金もビットコインでしはることができて、市がビットコインに投資ができるようにした。テック業界を誘うだけではなく、市をテック化しているアクションはテック業界からも高く評価された。
もちろんプロモーションキャンペーンは続けていた。2021年2月にはサンフランシスコにスアレス市長が過去のツイートを野外広告として表示した。「マイアミに引っ越すのを考えてますか?私にDMしてください。」というツイート。
野外広告戦略はかなり効果的で、多くのテック業界の人たちがツイートしてくれた。
その結果、2021年2月時点では数十名の有名起業家やVCがマイアミに住んでいる状況となった。
そしてVC業界からの興味がピークを迎えてた時に、あるすごい出来事が起きた。それが非公式で始まったMiami Tech Week。このイベントは人気アクセラレーターのOn Deckのマイアミプログラムのローンチを告知し始めたVCたちをスアレス市長がイベントをもっと壮大にしたいと発表した。
しかもスアレス市長は2月からYouTubeを始めていて、そこで多くのテック業界のVCや起業家とインタビューしていたので、スアレス市長のテック業界に対してのフレンドリーさは明確だった。
このMiami Tech WeekのきっかけとなったOn Deckのキックオフイベントは100人ぐらいの参加者の予定だったが、それが一気に数百人へと拡大した。マイアミの空港ではVCと起業家だらけになり、サンフランシスコからマイアミの航空券がいつもの値段の2倍へと上がった。
もちろんスアレス市長はMiami Tech Weekの中心い常にいた。彼のYouTubeシリーズ「Cafecito」をMiami Tech Weekの途中に行うと発信した。
朝9時だったのに、多くの起業家やVCが集まった。
そしてスアレス市長のスピーチの後に、約百人ぐらいの起業家やVCが彼と写真を撮るためにわざわざ並んだ。
結果としてイベントは大成功。公式な「Miami Tech Week」イベントが一つもないまま終わったが、テック業界では誰もがマイアミに行きたくなる雰囲気を作れた。
実際にMiami Tech WeekにいたVC数名に聞いたところ、今のマイアミは2000年〜2010年前半のサンフランシスコの雰囲気と言う人が多い。これだけポジティブな空気を味わったのは久しぶりと言っている。
確かに、このような景色と天気だと多くの人が集まる。
テック業界が集まるからこそ、サンフランシスコと似たネットワーク効果が生まれ始めている。二日間で何社もVCから資金調達が決まった。
さらにKeith Raboisさんが数名のVCにマイアミオフィスを作るように説得した。
実際に直近に名門VCのGeneral Catalystがマイアミにオフィスを立ち上げることが判明された。
来年のMiami Tech Weekが既に確定になっているが、行けたら行く予定です!
今後もマイアミがテックハブであり続けるように、スアレス市長はソフトバンクと話して、ソフトバンクにマイアミ企業に$100Mの投資を約束してもらった。そして彼のマイアミが何故良い街かと聞かれた時の回答を聞くと、明らかにカリフォルニアの課題を理解している。税金制度、犯罪率、ホームレス問題、テック業界との関係性などがマイアミの強みと話しているが、これはカリフォルニアの課題そのもの。
もちろんマイアミはすぐにサンフランシスコをテックハブとして越すことは出来ない。そもそもニューヨーク、ボストン、オースティンの方が今現在はテックハブとしては大きい。ただ、これだけテック業界がポジティブに話す街と政府は中々ないので、今後マイアミにかなり期待している。
アメリカの最大の武器は移民とそこから生まれるモチベーション
今回の言動はアメリカの経済とスタートアップ文化が何故世界でトップなのかを示している。アメリカの起業家とよく話すからこそ、多くの日本の方から「日本とアメリカの起業家の差」について聞かれることが多いが、今までは「市場の大きさ、判断基準、リスクを取る度合い」などと回答していたが、実はもう一つ根本的に重要な点があると思っていて、それがカリフォルニアからの撤退を理由づける根本の理由だと思っている。それはモチベーションの違い。
2012年の調査だが、Pew Research Centerが色んな国を回って、各国の人たちに「頑張りは成功に繋がるか?」と聞いたところ、アメリカでは77%の人たちがその概念を信じていた(ちなみに日本は40%の人しか頑張りが成功に繋がると信じている)。
アメリカ人は頑張ることが成功に繋がると信じているからこそ、それだけモチベーションがある。そしてさらにアメリカは移民の国。アメリカに移民する人たちは楽をするためにアメリカに行っていない。アメリカでは誰でもが成功できるチャンスを与えられるのを信じて移民している。そうすると移民している人たちも高いモチベーションを持ってアメリカに入ってきている。Forbesによるとアメリカのユニコーン($1B以上の時価総額の会社)の半分以上が移民した創業者がいると調査している。
モチベーションが高いのに最終的には成功しても嫌われる、もしくは多大なるコストを払わなければいけないとなると、別の成功ルートを見つけるのがアメリカ人のやり方。母国からアメリカへ移民してきた起業家のように、今度はサンフランシスコやカリフォルニアから別のアメリカの州へ新しい機会を探しに生き始めているのが今の現状。そのハングリー精神を持っている起業家をどの都市が獲得できるかがこれから数年間に渡ってアメリカ内の最大の戦いになる。ただ、明らかなのは、アメリカだからこのように州に対しての不満をテック業界が声を出せて、アクションに落とし込める。
今後もアメリカのテックエコシステムがどう進化するのか、そして次のシリコンバレーがどこになるのか(記事では話してなかったが、最後のオプションはどの町でもなくクラウド上にシリコンバレーが存在すること)を追っていきたいと思います。
Written by Tetsuro (@tmiyatake1)
Chicago-New York-SF-Where is the next? Miami will be under the sea. People want to live in dry-land with green. Denver is a good location but lacks enough water. North Texas is wide but lacks green attraction. Somewhere Oregon and Washington is a candidate but takes care of Tsunami.
>>アメリカでは「右寄り・青色」が共和党、「左寄り・赤色」をリベラル...
逆ではないでしょうか?