今日も世界で褒められろ♥ 「ファッションドリーマー」で“かわいい”をクリエイトする
「わがままファッション ガールズモード2 よくばり宣言!」や「FabStyle」を遊び倒した元女児なので、Nintendo Direct 2023.2.9で「ファッションドリーマー」の初報が来たときは「うおおおおえええええ!?!?」※と飛び上がった。
※「やっとNintendo Switchに着せ替えゲームが来た!」という喜び×「開発はガールズモードと同じシンソフィアなのに『ガールズモード』ではない? あれぇ?」という戸惑いの叫び。男性型のプレイヤーアバターがあることはPVで察したので、「なるほど、『ガールズ』のタイトルはふさわしくないわけか」と納得した。
発売前情報だけではどんなゲームなのかいまいちわからないことに戸惑いつつも、着せ替えゲームに飢えていたので、事前予約してダウンロード購入した。チャリン
ガールズモードの続編を望んでいたユーザーからは厳しい評価を受ける向きがあるようだが、個人的には「ファッションドリーマー」を楽しめている。このゲーム、どうも向き不向きがあるようだ。
おそらく「ガールズモード」シリーズを遊んだ経験がある人は、その経験こそがゲームの概要の理解を妨げているように思われる。
「ファッションドリーマー」適性の有無
このゲームに向いている人
いまある素材を組み合わせて理想のコーデをつくりあげたい人
キャラクリエイトが好きな人
作業感が苦にならない人
「ハッピーホームデザイナー/パラダイス」が理想のインテリアをゲーム内で実現させるのが魅力のゲームだとすると、「ファッションドリーマー」はそのファッション版だと言える。筆者も「ハッピーホームデザイナー/パラダイス」にドハマりしたタイプのコツコツ作業型ゲーマーである。あれで脳汁出しながら家作りに勤しんだ人は「ファッションドリーマー」も楽しめると思う。
こういった「用意された素材をユーザーが自由に組み合わせて楽しむ」タイプのゲームをSandbox game(サンドボックス型ゲーム)という。Sandbox=砂場で砂を使って子どもが遊ぶような自由度の高さが魅力だが、一方でストーリー性やタスクに乏しいという特徴もある。
Minecraftやシムシティなどもこのサンドボックス型ゲームに該当する。マイクラは遊んだことがないが、幼少期にシムシティを遊ばせてもらって楽しかった記憶があるな……。
3DSから遥かにグラフィックが向上したNintendo Switchなので、グラフィックは本当にいい(まあこれは動画を見ればわかるか)。
他にもユーザーが撮影したスクリーンショットがたくさん投稿されているので、XやInstagramで"#ファッションドリーマー"あるいは"#FashionDreamer"を検索してみると雰囲気がわかるだろう。
この4枚のスクリーンショット、すべて同じ顔立ち・体型の自作ミューズだが、髪色・髪型・服装・仕草を変更して撮影してみた(フレームやスタンプ遣いのセンスがある人はもっと素敵な撮影ができるはず)。もとの顔立ちが同じでもこれだけ化けさせることができる。
無個性主人公に感情移入しながらゲームを楽しむタイプのゲーマーなので、こうしてアバターでさまざまな人間に「化ける」体験ができるのは着せ替えゲームならではの楽しみだなぁと感じる。なお、ミューズはひとつのアカウントにつき4体まで作成できるようだ。
このゲームに向いていない人
「ガールズモード」シリーズがやりたい人
自由度が高いゲームではゲーム側から目標設定をして誘導してほしい人
ストーリーがないと世界観に没入できずゲームを楽しめない人
まあ「ガールズモード」と類似の内容のゲームを作って売りたいんだったら「ガールズモード5」として売るよね、という話である。根本からして別物なので、ガルモやりたきゃガルモをやろう。ガルモを期待してファッションドリーマーをやるな(大声)。過去作を長く遊べるよう3DSを大事に使え。
自由度が高い世界でなにをしたらいいかわからなくなるタイプの人は「ファッションドリーマー」に向いていない。
ミューズ(「ファッションドリーマー」でプレイヤーが操作するアバターのこと)の設定を終えると、ミューズはゲーム内世界「イヴ」に下着姿で放り出される。ストーリーもなければ「イヴ」や「コクーン」の成り立ちに関する説明もないため、「次にこうすべき」という導線は存在しない。魔王を倒して世界を救うとか、No.1スタイリストを目指すとか、そうした目標も設定されていない。
ユーザーはわけもわからずミューズを走り回らせ、遭遇したNPCミューズのコーデを「いいね」することで手当たり次第にファッションアイテムを獲得していくことになる。するとだんだん手持ちのアイテムが増え、コーディネートの幅が増す。この過程で「あれ? これ楽しいかも……」と思えるかどうかが、「ファッションドリーマー」適性の有無を左右する。
序盤のみの体験版があるとよいのだが、本記事を執筆している2023年11月8日時点ではそういったものは配信されていない。残念。
ゲームか、SNSか
素材収集の簡素化
「いいね」するだけでファッションアイテムを獲得する――これに違和感を覚えるゲーマーは多いはずだ。私たちゲーマーにとってゲーム内のアイテムは、購入するか、なんらかのミッションを達成した報酬として入手するものだから。事実、「ガールズモード」シリーズでもすべてのファッションアイテムはゲーム内通貨で購入するのが原則だった。
「ファッションドリーマー」では、アイテムの入手が簡単になった分、予算を気にせず適当なアイテムを揃えることができ、それらを組み合わせて基本的なコーディネートができるようになる。「いいね」するだけなので、コストはかからない。ユーザーが自分の理想のコーディネートを実現するために、まずはさまざまなミューズに出会うことが必要になってくる。
先に話題に挙げた「ハッピーホームデザイナー/パラダイス」では、出されたお題に適したアイテムがプリセットされており、ユーザーの手持ちのアイテムと併用してインテリアコーディネートを行う。コーディネートが終わると、プリセットアイテムはすべてユーザーの手持ちアイテムに加わる。こうしてコーディネートを経験すればするほど、使える素材が増えていくという仕組みだ。
コーディネートが肝なので、その素材となるアイテムを入手するためのコストはできるだけ小さい方がいいというわけだ。
この「いいね」でアイテムを獲得するシステム、一部のユーザーの間ではミーム化して「羅生門」と呼ばれているらしい。
うまい言い回しだが、下人のように“引剥”をするわけではない。ボタンひとつで他者の身に着けているファッションアイテムとコーディネートをコピーする感覚である。「いいね」したミューズにもされたミューズにもデメリットはない。
……ここまで書いて気付いたけど、これ「素材収集」じゃないな。アクセスしたユーザーなら誰でも際限なく素材を使えるようになるのだから、「素材共有」だ。
さまざまなミューズに出会うことで、手持ちのアイテムを増やし、気に入ったコーディネートができるようになる。「このスカートの色違いがほしいな」などと思うこともあるだろう。それそのものを身に着けているミューズを探して「いいね」してもよいが、自分で色違いのアイテムをクリエイトする(=要するにクラフト)こともできる(手持ちの素材かゲーム内通貨を消費する)。
アイテムクリエイトで自分のほしいアイテムを直に生み出せるようになると、もちろん自分のやりたいコーディネートの実現に近づけるし、あるいは「こういうコーディネートもできるかも」「こういうフォトが撮れるかも」と新たにアイディアの幅が広がっていくのがおもしろい。
自分がクリエイトしたアイテムは、「自分が作ったもの」としてマイブランドのマークがつく。これをコーディネートに組み入れたり、自分のショールームに飾ったりしておけば、他のミューズに「いいね」されることで他のミューズにも使われていく。マイブランドのアイテムが他のミューズにも使われて伝播していくたびに、ユーザーには通知が届く。
一応各ミューズはインフルエンサーという設定なので、フォロワーが一定数増えればランクが上がっていってエンドロールが流れるのを見ることができる。かといって「プラチナインフルエンサーになった! よし、クリアだ」という達成感があるわけではない。「まだ見ぬファッションアイテムを使ってみたい!」という欲望に駆られ、筆者は相変わらずイヴでミューズ業を続けている(このままでは風花雪月無双に戻れない……!)。
やりたいファッションを実現するSNS
……ここまで読んで「これはゲームではないのでは?」と思った人もいるだろう。ぶっちゃけ、筆者もそう感じた。ゲームというよりは、ファッションを媒介としたSNSなのである。
総務省のサイトから引用したが、「ファッションドリーマー」の「イヴ」の世界はこれに該当する。ゲームを買った人専用に用意された交流空間で、ファッションをシェアし合って遊んでいる印象である。
かといって、現実のSNSのような対人関係の煩わしさは(筆者は)感じない。発売前は「いや別にインフルエンサーとかなりたいわけじゃないんだけどなぁ……」と不安視していた陰キャ寄りオタクの筆者だったが、これらの仕様が自分のやりたいおしゃれを妨げないことがわかっため、不安なく楽しめている。
先に、「いいね」でファッションアイテムを入手するというシステムは、他人からコピーさせてもらう感覚と書いたが、コピーからファッションを始めるという発想は、案外ファッションの本質を突いているような気がする。現実でも、ファッションを趣味とする人はモデルのコーディネートや色遣いを模倣し、手持ちのアイテムを組み合わせて新たなコーディネートを生み出すものだ。
「ファッションドリーマー」において、ファッションアイテムは「モノ」ではなく「データ」である。他人に「いいね」してコーディネートを入手する様は、Xにおけるリポストのように、SNSで情報を共有・拡散する様によく似ている。
基本的に「いいね」するだけでゆるくつながるSNS形式のゲームなので、会話はいらない。実際、オンラインモードを遊んでいると他言語を使うミューズと交流することがよくある(ミューズの挨拶が他言語で表示される)。言語が異なってもまったく問題ないのは、Instagramに通じるところもあるかもしれない。エンドロールを見る限りではかなりローカライズに人員を割いていることがうかがえ、このゲームが言語や地域を問わず世界で遊ばれることをねらって作られたものであることがわかる。
ただ現実的なことを書くと、SNS的要素がある以上、他のオンラインゲームと同様廃れたときにどう楽しめるかが心配にはなる。NPCのミューズがいるのでまったく遊べなくなるわけではないだろうが……。
ファッションの多様性
誤答のないルカット
「ルカット」とは「ファッションドリーマー」内の用語で、ミューズをコーディネートすることを指す。本記事における「ルカット」はコーディネートと読み替えていただいて差し支えない。
「ガールズモード」シリーズでは、各アイテムにはジャンルが設定されており、NPCから「クール」「スポーティー」「エレガント」などのお題を出されると、なるべくそのジャンルに属するアイテムをたくさん使ったコーディネートをすることでNPCに喜ばれた(より高い評価を得ることができた)。つまり、「正解」があった。当然、オーダーに合わないコーディネートを行うとNPCにがっかりされるわけである。
「ファッションドリーマー」は、オーダーに合わないルカットを行っても、相手に嫌な顔をされることがない。オーダーを満たしていればNPCとの友好度は上がりやすくなるが、下がることはない。「誤答」がないのだ。
加えて、他ユーザーに自分のミューズをルカットしてもらったとき、できる反応は「いいね」「ありがとう」「フォローする」の三つである。「素敵なルカットだ」と思ったら「いいね」すればいいし、「これちょっと好みじゃないな」と思った場合でも、相手に否定的な反応を返す必要はない。
これらのシステムもユーザーが理想のファッションを追求する上でのストレス削減になっている。
タイプA / タイプB
ミューズ、すなわちアバターには「タイプA」と「タイプB」がいる。最近のゲームによくあるシステムだが、要するに「女性型」と「男性型」の性別明示を避けたものだ。
従来の「ガールズモード」シリーズでは主人公として用意されているアバターはすべて女性である。男性をコーディネートすることもできるバージョンもあったが、あくまでもおまけに過ぎなかった。「ファッションドリーマー」ではユーザーがタイプBのミューズを使用することもできるし、タイプBのミューズを相手にルカットすることで、男性のファッションを楽しむことができる。
ミューズの設定によってはタイプAに髭を生やすこともできるし、タイプBもメイクができる。
ただ、メイクは過去作の方ができることが多かったような気がする。
また、オンラインモードで遊んでもタイプBのミューズをあまり見かけないため、タイプBのファッションアイテムが流通しづらいのも難点か。まあ女性キャラクターのコーディネートしかできないガルモシリーズを楽しむ男性ユーザーも普通にいたし、ファッションドリーマーでもタイプAのミューズしか使わない男性ユーザーがいてもおかしくないな。
色彩に興味があるとより楽しい
今作、色彩の調和による加点が入る点が個人的にはかなり気に入っている。明度や彩度に関する組み合わせの判定があり、よいカラーリングのコーディネートをするとそれを教えてくれる。「差し入れがオシャレ」等の褒めコメントがつくのもうれしい。
もちろん不満点もある
楽しんではいるが、不満点がないわけではない。他のユーザーがもっとしっかり挙げてくれているので、こちらでは要点だけ述べる。
異なるタイプのファッションアイテムを利用できない
骨格やシルエットなどの技術的な問題があるのは理解できるが、なんとかならなかったのか……
ファッションアイテムの収納上限が5000個しかない
タイプAとタイプBでは帽子・めがね・アクセサリー以外のアイテムの共有ができないため、操作しているミューズとタイプの異なるファッションアイテムが収納数を圧迫することになる
【2024/05/08追記】更新データVer.1.3.0で収納数が5000個→6000個に増加
ファッションアイテムがたくさんあるのに検索がしづらい
せめて色や材質による検索が行えるようにしてほしい
【2024/05/08追記】更新データVer.1.3.0でカラーフィルタが追加された
ガチャとビンゴのテンポが悪すぎる
スタオケのスキップチケットに馴らされた自分にはあまりにも虚無
チケット1枚とか10枚とかの単位ではなく、あるだけまとめて回させてほしい
気に入ったコーディネートを何パターンか保存したい
コーディネートやルカットの画面で「いま着ているものを全部脱ぐ」ボタンや拡大・縮小機能がほしい【2024/05/08追記】更新データVer.1.2.0でズーム機能が追加された
【2024/05/08追記】更新データVer.1.4.0で着用中アイテムを一括で外す機能が追加された
全体的に機能に関する説明が足らず不親切なので、ゲーム内で完結できるようにしてほしい
一応FAQはあるが、他のユーザーのXへのポストを見るまで気づかなかった機能が何点かある
なんだかんだで結構不満点も出てきてしまった。いずれもゲームプレイの快適さを阻害する要素である。すでに無料アップデートでアイテムが追加されることは発表されているが、こうしたシステム上の不満点に対してもなんらかの対応がほしいところである。
そういえばNintendo Switch Online未加入でもオンラインモードが遊べるという説明がゲーム内でされていないのはだいぶもったいないと思う……。
余談:Model Debut3 #nicola
着せ替えシミュレーションゲームとして「Model Debut3 #nicola」が発売されている。発売日は「ファッションドリーマー」と同日の2023年11月2日。客層がかぶりそうなのになぜ同日発売にした!?
個人的には「モデビュ」シリーズの存在は知っていたが、ゲームオタクというよりはおしゃれ好きのティーンズ向けのゲームという印象が強かったせいで遊んだことはなく、今回の最新作も完全に意識の埒外にあった。だが「モデビュ3」は「女性主人公がモデルとしてファッションショーの優勝を目指す」というわかりやすいストーリーがあるようなので、従来通りの女子向け着せ替えゲームを楽しみたいのであればこちらがよさそうだ。機会があれば遊んでみたい。
今日も俺はイヴで“かわいい”を作る
かわいいお洋服を着たいとは思いつつ、試着も衣類の保管も面倒くさがるズボラ、ファッションを楽しむ前にまずはリングフィットアドベンチャーをやるべき体型……というリアルファッション弱者な自分は、「ファッションドリーマー」の世界で大いに架空のファッションを楽しめている。現実のクローゼットには到底入りきらない量のアイテムを掛け合わせ、まだ見ぬ理想のおしゃれを作る作業に飽きるのは、もうしばらく先のようだ。
先にも書いたがガールズモード過去作のユーザーというよりは、筆者と同様コツコツ作業のあるサンドボックス型ゲームが好きな人におすすめしたい。