【リバース1999】イルミナシオンと錬金術
今回は恐怖に塗れたルート77のストーリーやイルミナシオンが行っていた儀式について考察を交えて解説を行っていきます。
・元ネタ
今回の舞台となったモーテルはチューズデーが飼い慣らしていた怪談を生み出す超自然存在で、その正体は『幽霊屋敷』でした。
モーテル自体が悪霊だったというオチはサイコホラー映画の金字塔である『シャイニング』と同じで、他にも『鏡』に映る幻影や廊下を彷徨う双子などこの映画のオマージュが盛り込まれていた。
ホラー映画には明るくないので、おそらく他の映画ネタも盛り込まれていたかもしれない。
・アルゴスとカイラ
今回のストーリーはカウガールの傭兵アルゴスを支点に展開していて、彼女は妹の『カイラ』を探してモーテルを詮索していた。
一方、外出していたリーリャはばったり『カイラ』と名乗る少女と出出会ったが、しかし彼女はアルゴスが言っていたカイラの特徴の”翡翠の瞳”ではなく”淡い碧眼”だった。
彼女の容姿はアルゴスの悪夢の中で視た『カイラ』と瓜二つだったが、目の色や頭巾の模様など異なっていたため、リーリャが出会った少女は『カイラ』ではなかった。
では結局のところ『カイラ』を名乗っていたのは何者かと云うと、前のストーリーの最後に出てきたイルミナシオンの一員で『ミス・グレイス』という名の少女で、『カイラ』とは偶々似ていてなりすましていたと思われる。
では本当の『カイラ』はどうなったかというと、チューズデーの供述に出てきたイルミナシオンの儀式に巻き込まれ鏡に閉じ込められてしまった少女というのが『カイラ』だったと思われる。
しかし、そうなるとアルゴスが鏡に写った『カイラ』を、テキサスの怪談の『ブラッディマリー』と思い込み鏡を撃ってしまいましたが、果たして彼女が撃ったのは『ブラッディマリー』だったのか……
イルミナシオンについて
イルミナシオンはあらゆるオカルトを信仰するニューエイジ運動を基盤に発展したマヌス・ヴェンテッタの支持母体である。
イルミナシオンの一員であるグレイスとキンバリーはモーテルを拠点にして、ある"儀式"を行っていた。
ヴェルティの部屋に書かれていたのはその"儀式"に使用するための錬成陣であった。
イルミナシオンが落としたと思われる手帳には『哲学者の薔薇園』という錬金術の資料から引用したものが書かれており
この資料は不老不死の妙薬である『エリクシール(=賢者の石)』のレシピ本のようなもので、その効能や生成工程が書かれている。
これらのことから彼らが描いた陣法の記号を解読すると――
錬金術の基本的な三位一体の陣を基盤にして、3つの端には錬金術記号が描かれている。
下はアラビア錬金術の三大元素の一つ『硫黄🜍=魂』
左上はプラトンの4大元素の内のどれか、おそらく『火🜂=精神』
右上は魂を引き寄せる錬金素材の『磁石🝓』であると思われる
最も重要なのが真ん中の『無限∞』
無限は錬金術の象徴である『ウロボロス』であり、死と生、始まりと終わり、陰と陽など表裏一体などの意味を持つ。
そして『賢者の石』を象徴する存在である。
これらのことから推測するにグレイス達は『賢者の石』を生成しようとしていたと思われるが、しかしながらイルミナシオンが何故『賢者の石』を錬成しようとしたか不明のまま。
更に洞察を深めていくが――
手帳に引用されていた『哲学者の薔薇園』はキリスト教の意匠が多く書き込まれており、最後の版画には受難を経て復活するイエスが書かれており、『賢者の石』の完成を意味しております。
これはイエスが死して復活した存在だったり、イエスの血が病を治す万能薬として効能があった事から、錬金術師は暫しイエスと『賢者の石』を同一的なものと視ている。
そしてイルミナシオンが降臨を待ち望んでいる『受難者』という言葉も、本来イエスが磔刑を受けたことを意味する。
つまり『受難者』とはマヌスヴェンデッタにとってイエスのような存在であると考えられが、そうなるとやはり『アルカナ』が候補として上がる。
『アルカナ』が自身が死ぬことを信徒に予告していたこともイエスと符号する部分があるため、『受難者』はアルカナのことを指していると考えられる。
つまりイルミナシオンの儀式とは、錬成陣で賢者の石を創り、アルカナ(受難者)を生き返らせることを目的としていた?
元より最初からマヌス・ヴェンデッタは錬金術師であるレグルスが身につけていた、賢者の石の核となる『アンチモンレグルス』を奪おうとしていたことからも、マヌス・ヴェンデッタにとって『賢者の石』はかなり重要なモノなのは違いない。
また偶然かもしれないが『賢者の石』と同一的なものに、パラケルススが定義した『アルカナ』というものがある。
『パラケルスス』は16世紀の錬金術師で、従来の非金属を金にする錬金術の思想とは異なり、医療に重きをおいた錬金術の研究を行っていた。
キリスト教からは『悪魔使い』と批判されていたが、彼自身は熱心な信徒だったことから三位一体を重要視しており、錬金術にもその思想が用いられている。
ここから本題に戻るが――
パラケルススは万物に存在する核を『アルカナム』と呼称し、これを錬金術で蒸留したものを「賢者たちの星辰的な石」または『アルカナ』と云う”完全な物質”が存在すると唱えた。
この『アルカナ』は”霊魂と肉体”を結びつける霊的な物質であり、『分かつものを再び一つに』という錬金術の根幹となる格言を体現したもの。
ただこのアルカナとヴェンデッタのアルカナが同一という考察は安直である。
それでもマヌスヴェンデッタと賢者の石の関係性は最初から示唆されており、偶々マヌスヴェンデッタのトップと賢者の石と同一的なアルカナが同じ名前というのも偶然とも思えない。
結局のところ、どこまで関係性があるかわからないが
『賢者の石』は一般的には不老不死の妙薬として知られているが、それ以上に難解な教義が含まれており、キリスト教/ギリシア哲学/インド哲学など幅広い思想に影響をもたらしていることからも、リバース1999のストーリーの根幹を担うアイテムになっていると考えられる。
以上で考察は終わりです。
今回のストーリーではレイクミドロとはまた違った怖さがあり、特にアルゴスの結末についてはあまりに悲惨で脚本家に対して恐ろしさを感じた。
しかしそんな容赦のない物語や、超難解な錬金術の要素を出してくるのがやはりこのゲームの魅力と痛感させられる物語でした。