ビジネス会話改造論14~毛づくろいビジネス会話(漠然と曖昧の間、あるいは畳語の研究)
『月刊機械技術』連載中のコラム。雑誌ではページの都合で元原稿が少し短くなっています。ここでは雑誌の了解を得て、元原稿をUPしています。
今回は11月号(第14回「毛づくろいビジネス会話」)。途中まで無料で読めますよ(定期購読マガジンの方は全部読めます)。
現在出ている12月号には、次のコラム(第15回「霞ヶ関文学に学ぶ」)が載っています。書店で手に入ります。読んでいただけると嬉しい。
では、11月号掲載コラムの元原稿をどうぞ。
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ビジネス会話改造論
14(毛づくろいビジネス会話)
『毛づくろいの会話』と呼ばれるものがある。
「今日は、ちょっと暑くないですか?」
「そうですね、ちょっと。まだこんな日がありますね」
「なかなかカレンダー通りにはいきません」
「いきませんねえ。こういう季節は何着ればいいのか迷います」
「迷いますねえ」
「ここんとこ雨もないし」
「ないですね。たまには降ってくれないと」
「そうそう。でも雨ばっかりも困ります」
「ちょうどいい天気ってないもんですね」
「ないですねえ」
……と、こんな会話はいくらでも続けていられる。こういうのを『毛づくろいの会話』と呼ぶ。猿がお互いの体についているゴミなどをとる行為を俗に「サルのノミ取り」というが、ヒトの会話というのはあれから発展したものではないかという説があるのだ。
ちなみに、上の会話を話している二人にとって、暑かろうと寒かろうとどっちでもいいのだ。雨が降ろうと降るまいと、どっちでもいい。着るものもどうでもいい。内容は関係なく、お互いの情緒を共有できればいいだけなのだ。
「天気予報、あたりませんもんね」
「あたりませんねえ」
「まあ、最近は異常気象だからあてにくいでしょうけど」
「異常気象ですねえ」
……どうでもいい会話だからいくらでも続けられる。
こうやってえんえん書いていけば今回の原稿が全部埋まって私として大変楽チンなのだが、それでは怒られてしまう。
これと同様に、『毛づくろいビジネス会話』とでも名づけたい、内容的にはどうでもいいやりとりがある。
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お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。