WBSとガントチャートは別物。軽視すると痛い目に…
以前、次のようなポストを投稿しました。
WBSとガントチャートを混同している事例、たまに見かけます。
改めてですが…両者は、それぞれ役割が異なる別のツールです。
WBSとガントチャートの違い、それぞれの役割をおさらいしてみましょう。
WBSは、「何をすべきか?」を抜けもれなく洗い出すツール
WBSの正式名称は、Work Breakdown Structure。
W = Work(タスク/やるべきことを)
B = Breakdown(細分化して落とし込んだ)
S = Structure(構成図)
その名の通りですね(笑)
WBSの強みは、大小のタスクを階層構造に分けて分解・整理し、俯瞰して確認できること。
「プロジェクトの目的を達成するためには何をすべきか?」を、抜けもれなくかっちり整理するのに、WBSは無くてはならないツールです。
WBSの概念・役割については、こちらのページが分かりやすい。
ガントチャートは、「いつやるのか?」を可視化するツール
ガントチャートの説明は、こちらのページがおすすめ。
キーワードは「時間軸」。
ガントチャートは、時間軸でのスケジュール、進捗状況を誰が見てもハッキリ把握できるようにするためのツール、と言ってもよいでしょう。
平たく言えば「スケジュール表」ですね。
なぜ、WBSはガントチャートと混同されがちなのか?
WBSとガントチャートは、それぞれ役割が異なるツール。
では、なぜ、WBSをガントチャートと混同してしまう人が多いのでしょうか?
考えられる理由のひとつは…
PMによっては、WBSとガントチャートを合体させたようなチャートを用意して担当プロジェクトをマネジメントしている人もいます。
そのような合体チャートを見た人が、ガントチャートのことを「WBS」と呼ぶようになった…というのは、確かにひとつありそうですね。
ただ、問題の根っこは、もう少し別のところにあるような気がしていて。
スケジュール/進捗管理を気にする人は多いけれども、「そもそも何をやるべきなんだっけ?」をつきつめて整理するプロセスを重視している人は、意外と少ないのではないか。
WBSの本来の存在意義、役割を正しく認識していないがゆえに、WBSをガントチャート(=スケジュール表)と混同してしまうのでは?という気がするのです。
(逆を考えてみると、WBSのことを「ガントチャート」と呼ぶ人はいないですよね)
ここで、疑問に思う人もいるかもしれません。
「WBSとガントチャートが別物であることは分かった。でも、ツールはあくまでも手段。ガントチャートでもタスクを管理できるのだから、わざわざWBSを別に作る必要はないのでは?」
ドキュメントをいくつも用意して更新するのはめんどう。ガントチャートだけ作ればOK、なのでしょうか?
WBSを軽視すると痛い目にあう理由
結論から言うと、プロジェクトをスムーズに進めるうえで、ガントチャートとは別にWBSでタスクを整理しておく作業はメチャクチャ大切です。
たしかに、ガントチャートにもタスクを記述しますが、ガントチャートは時間軸でスケジュールを可視化することを優先したフォーマットなので、タスクそのものを構造的に整理する作業には向いていません。
なので、「抜けもれ」に気づきにくい。
結果、多くの「忘れ物」を残したまま、プロジェクトをスタートしてしまうことが多いのです。
で、開発が進んでプロジェクトが中盤にさしかかったあたりで、「そういえば、◯◯も改修する必要あるじゃん…」「◯◯の申請も必要じゃん…」みたいなのが、あとになってボロボロと出てくる。
もともとは計画になかったタスクが追加されるので、当然のことながら進捗は遅れる。炎上。ピンチ。
プロジェクトメンバーの力も借りてWBSを磨き込む
タスクを抜けもれなく構造的に洗い出すために、WBSが必須であることは、お分かりいただけたかと思います。
じゃあ、WBSのフォーマットでタスクを整理すれば抜けもれのないタスク分解が一発で終わるかというと、そう簡単な話でもなく…
プロジェクトメンバーの力も借りて、WBSを磨き込んでいく必要があります。
PMがWBSの叩き台を作り、プロジェクトメンバーを集めて、WBSをアップデートするための「WBS指差し確認会」を必ずやりましょう。
WBSを見ながら、「他に、やるべきことはありませんか?」と、ちょっとしつこいくらいにメンバーに念押しして聞いていきます。
そうすると、細かなタスクをみんなで指差し確認していく中で、「あ、そういえば◯◯もやる必要あるわ」「◯◯も必要だよね」が、ボロボロと出てきます。
必ずと言ってよいほど、出てきます。
この議論を何度かくり返すことで、網羅的なWBSを作ることができるのです。
「いつまでにやるか?」
…を考えるよりもまず、
「何をやるべきか?」
…ここをしっかり洗い出すことが、プロジェクトをスムーズに進めるうえでは欠かせませんね。