講演会「ピクトグラムとデザイン」(2020/02/16)
こんな講演を無料で聞けたので、行ってきました。
講師は2020年東京大会のスポーツピクトグラム開発メンバーである、グラフィックデザイナーの廣村正彰氏でした。貴重なお話が無料で聞ける機会とあり、私が申し込んだ時点で残り枠5名だったので、当日もほぼ満員だったと思われます。
以下、お話をかいつまんで。
ピクトグラムのはじまり
・スポーツピクトグラムは1964東京オリンピックで初めて公式に承認された(初めて作成されたわけではない)
・ピクトグラム自体の起源はオットー・ノイラート(オーストリア)のドイツ戦争経済博物館(1925年ころ)。
当時の識字率の低さより、ピクトグラムの作成に至る。
ウィーン・メソッドという方式を取り、ピクトグラムも当時は「アイソタイプ」という名称だった(ひと昔前まで使われる)。
アイソタイプ=絵で文字を表現するシステム。絵文字のこと。
・人種による人口統計図の例:興味のわく表示のしかた。靴+工場=靴工場
手作業と機械、それぞれの生産高を図の大きさで表現する。
1964東京オリンピックのスポーツピクトグラム
・エンブレムが2日で制作されたのは有名な話。(「いだてん」にも出てましたね)
・競技シンボルは20種類(2020年は50種類、パラが23種類)。
1950年くらいには原型がもうできていた。
・施設シンボルは39種類。
横尾忠則、宇野亜喜良などの当時若手が作成
し、田中一光などの代表者がまとめた。
(講演を行った廣村氏は、田中一光氏の弟子とのこと)
システムの中でのみやすさを考慮した。
東京2020オリンピックのスポーツピクトグラム
・自転車だけで5種類、陸上は1種類。陸上はピクトグラムを増やすべきでは?という意見もあったが、却下された。他には馬や空手も多い。
・全体の種類は今までで一番多い。
・円形に入ったバージョンも作成したが、白地バージョンのほうが多く使われている。
円形に入れると統一感が出るのでは?と思ったが、意外な結果になっている。
・発表の日は意見をネット検索して調べたが、反論はそんなになかった模様。
東京2020パラリンピックのスポーツピクトグラム
・2017~2019にオリンピックのピクトグラム完成が見えてからパラリンピックのピクトグラムの制作に着手。
・1つの競技で金メダルが何種類もあるので、代表としてどのクラスをデザインとして選ぶか迷った。
共通のシステム
・ピクトグラムを構成する基本的なルール(頭は丸、胴体は白、など)についても事前に決めた。
・北京オリンピックはテン書のピクトグラムだった。
・日本の場合は、日本の文化や歴史を表す以下のような11パターンを提案。
「ひらがな」
「鳥獣戯画」(5種類でネタがつきる)
「おりがみ」
「アニメ・漫画」(利権がややこしい)
「歴代競技のスター」(いくつかしか出てこない)など。
・その後、JOC→IOC→各競技の組織委員会の審査を通して決定。
最終案は「64年リスペクト」、特徴は「シンプル」。頭は丸、胴体は白、手足の動きでダイナミズムを示す。
・オリンピックの例
体操:男女共有なので性別を見せないように、床を選択
ボクシング:あえて上半身のみ。動きと道具(グローブなど)での「らしさ」。
柔道:道着を着せて「らしさ」、オリンピックは一本背負い、パラリンピックは巴投げの絵
馬術:馬の顔や足は垂直にするよう、馬術協会からの指摘
自転車:こまごまと競技に合わせて表示を変える
船:なんとか人を入れたい。帆を小さく、人を大きめに。
サーフィン:境界のラインから飛び上がるイメージを強調
・パラリンピックの例
パラ陸上:陸上のデザインを義足に変える
パラロードレース:ハンドバイク
パラサッカー:オリンピックとの違いをつける
パラバレー:おしりをつける
ボッチャ:右手で投げる
歴代オリンピックのピクトグラムのシステム
1968メキシコ:カラフル。自由。メキシコの古代文字からインスパイヤ。
1972ミュンヘン:ルフトハンザのロゴデザイナーであったオトル・アイヒャーのデザイン。水平・垂直・45度をベースとしたシステマティックさ。
1996アトランタ:古代ギリシャの陶器の人物像。
シドニー2000:アボリジニのブーメランが入っている。
アテネ2004:キクラデス文明の像。陶器の破片に書かれている。
北京2008:古代文字。テン書体。
ロンドン2012:2種類。1種類は路線図をイメージ。
リオ2016:カリオカ景観群の島の形をイメージ。
パリ2022:女性の顔。おしゃれ。黄色。
質問コーナー
・施設のピクトグラムは作らなかったのですか?
→すでにある国際ピクトグラム&施設のピクトグラムを利用します。個人的には作りたかった。聖火ランナーのピクトグラムは私(廣村氏)が作ってます。
以上。