売上は顧客や社会からの「支持」という「資産」を運用して得られる「運用益」の事であるという仮説(メモ)
僕は会社経営は、ファンド運営する機関投資家に近い部分があるという仮説を持って経営をしてきた。
機関投資家は投資家から集めたお金を「ファンド」として、様々な対象に投資する事で運用し、「運用益」を稼ぐのが仕事だ。
例えば投資家から10億円を集めて、そのお金を投資して、運用益を年間5%上げると、その年の稼ぎは5千万円になる。(実際にはそのうちの一部が運営者の取り分になるわけだが、話をシンプルにするために以降の文章も敢えてその部分は無視して書く)
これと同じように経営者である僕らは、社会全体や顧客からの「支持」というファンドを運用して「売上」という運用益を得るのが仕事だと捉えるのが適切なんじゃないかと考えている。
事業運営をしていれば「売上」をどのように上げて行くか、あるいは成長させて行くかを考えなくてはならない。
機関投資家が収益を増やす方法は二つある。
一つは運用するファンドの運用利回りを高める方法だ。
より高い運用効率が期待できる投資先に資金を配分して行く事で、運用利回りを向上させれば収益を高める事ができる。つまり前述の例で行けば10億のファンドを5%で運用して5千万円稼いでいたところを、頑張って10%で運用すれば収益は1億円になるという事だ。
しかしこれは同時にファンドの元本を毀損するリスクを高める事でもある。運用益を高めるために高利回りの投資対象に資金配分するという事は、当然だがそういうことだ。
もう一つの方法は運用するファンド総額を増やす事に注力する方法だ。
つまりそれまで10億のファンドを運用していたところを、かりにさらに投資家かお金を集め得て20億にする事が出来れば、運用利回りは同じ5%でも収益は倍の1億円になるという事だ。
こちらの方は確かに実績を積み、投資家を信用させ、地道な営業活動を続ける事で実現する必要があり、短期的に実現する事は難しそうではあるが、元本毀損のリスクを高めずに収益を成長させる事ができる。
これと同じように僕ら経営者にも「売上」を上げるために出来るアプローチは2種類あるんだと思う。
一つは社会や顧客からの「支持」という資産の運用効率を高める事に努めるというアプローチだ。
僕らのEC業界で言えば、CVRを高めるとかCPAを高めるとかそういう数値を高めるアプローチをする事がそれにあたるだろうし、最近のゲーム業界だとAURPだとかになるのかな。
確かにこれが上手くいけば素晴らしい。が、このあたりの数値を高めるための施策は同時に元本たる社会や顧客からの支持を毀損するリスクが存在している。
多くの高度なマーケティング戦術(主としてSPや広告を想定)というものは、確かに直近の売上を高める効果があるのかもしれないが、実は増やした運用益(=売上)は元本(=社会や顧客からの支持)を取り崩して生み出してる。。なんて事が結構ある気がする。
そしてもう一つの方法が社会や顧客からの「支持」という運用資産を増やす事に努めるということだ。
これは非常に手間もかかり、進捗や成果の測定も困難で、なかなか難しい道だが、この「支持」という資産を極大化して行けば、極論を言うと、目標運用利回りを極限まで低く設定する事が出来、元本毀損のリスク(つまり顧客や社会からの支持を失うリスク)を極小化出来る。
投資で言えば米国債に投資する様な感覚だ。安心感が半端ないw
僕らは創業から今まで基本的に後者の考え方でやってきた、なのでどんどんマーケティングノウハウは不要になっていった。広告はほとんど使わなくても早い成長を維持できてるので、以前培った広告のノウハウはほとんど不要になってしまった。
過去に展開しいた様々なSP企画も全くやらなくなった。だからどういう特典がCVRを押し上げるかとか、ボタンをどこに、どういう色でおいたらCVRが5%UP!とかそういう事もほとんど必要なくなった。
とにかくただただサイトに来てくれる人たちに
「来てよかった」
「また来よう」
「誰かに奨めたい」
と思ってもらうにはどうするかだけに集中してきたし、社会的に存在意義を評価してもらえる会社であれるように
「面白い会社だよね」
「これからが楽しみだよね」
「機会があったら応援したいな」
「働いてみたいな」
と思ってもらえるにはどうしたら良いかだけをひたすら考えてやってきた。
僕が言いたいのはどっちが良い悪いという事じゃなくて、前者のアプローチだけじゃなくて、後者のアプローチもあるってことと、後者のアプローチも確かに実利につながっているとイメージするために、ファンド運営をメタファにするのは良いアイディア難じゃないかという事なんだよね。