[無料]3分で読める、初めて山に登る人が読むべき情報
最近、都市近郊の低山を登る人が増えていて、同時に低山での山岳遭難も増えているそうです。なので、初めて登山する人が注意すべき装備や行動を最低限書きました。
ここに書いてあるようなことを怠った結果、山で亡くなる人が多くいます。すでに知られている情報を知らず、同じような理由で山で亡くなるのです。死ぬために山に登るわけでないのなら他人の失敗から学びましょう。
お願いですから、これくらいは読んでから山に入ってください。
対象読者
初めて山に登る人、連れて行ってもらったことあっても自分で予定などを決めて登るのが初めての人、登山初心者、自称ベテラン。
山は暗いぞ、ヘッドランプは持つべし
まず初めに大事なのは、夜の山はガチで暗いってこと。本当に真っ暗だから日が落ちれば明かりなしには何も出来ません。
ヘッドランプ(ヘッデン)を持たずに山に入るなんて高尾山でも論外です。スマホのライトは暗いしバッテリーがもったないのでライトは別に持ちましょう。
なんでもいいから雨具も持つべし
ホームセンターで安いカッパを買ってもいいし300円のビニールガッパでもいいから(本当は良くない)雨具を持ってください。
低山なら折りたたみ傘も便利。晴れてても雨具は必須です。遭難した翌日以降も晴れるとは限らないからね。
この際、ザックと靴は目をつむろう
本当はザック(リュックサック)や登山靴も登山用のを買いましょうと言いたいけど、家にある適当なリュックサックとスニーカーでもいいです。
登山用ではないものを山で使うと、なぜ登山用のものが高価なのか分かるでしょう。
綿や麻の衣類はNG
綿は濡れると乾きにくいので、風に吹かれると夏でもメチャクチャ冷えます。だから普通は綿のシャツやジーンズで山には登りません。でも知らないと綿の衣類を着てしまいます。
登山では普通、化繊やウールの衣類を着ます。わざわざ買うのが嫌ならジャージと運動用の速乾性Tシャツを着てください。綿のTシャツとジーンズよりはマシです。
防寒具も持ってね
山は季節が少なくとも2ヶ月ズレます。5月の山は3月の街くらい寒いし、特に北アルプスは長く雪が残ります。6月の北アルプスは普通に雪山、7月でも雪が残り、アイゼンやピッケルが必要な場合があります。
↑これは6月の槍沢です。アイゼンとピッケルは必須装備。慣れてればアイゼンは付けなくても歩けるけどピッケルは必須です。
低山でも10月の山はもう冬支度。特に夜は寒いですよ。防寒具もカッパもなしで怪我をして動けなくなり、更に雨なんか降ってきたら寒さで死にます。夏でもフリースやライトダウンなどの防寒具を持ってください。カッパはもう、言わずもがな。
↑この写真は4月中旬の八ヶ岳。春でも普通に雪山でしょ?低山でも季節感としては2ヶ月寒い方にズレると思ってください。防寒着は必須です。
人が多い山に行くべし
人が少ない山に行って遭難すると死にます。土日や祝日にメジャーな山に行ってください。道や道標が整備されていて人が多くて山頂に茶屋がある山がいいです。
水とか食べ物を忘れてもお金があれば買えます。東京近郊なら高尾山や近くの景信山、陣馬山辺りです。
なお、山頂に茶屋や売店がある山は非常に限られていて、普通はそんなもん無いので水や食べ物を持たずに山に登ると死にます。平日は休みの茶屋もあるので要注意。
必ず行き先を文字で残してね
どこの山のどのコースに登ったのか分からないまま行方不明になる人が多すぎます。「xx日にoo山のyyコースを登ります」でいいからメールやLINE、紙のメモで家族に残してください。そしてメモの通りの場所に行きましょう。急に予定を変えたら、変えた予定も文字で送って下さい。
どこの山に行ったか分からないと探すのが大変です。すぐ見つかれば助かる怪我でも行き先が分からないと探してるあいだに死にます。
どんな低山でも毎回欠かさず行き先を家族に知らせるのは基本です。いちいち家族に知らせるのが嫌ならせめてSNSに痕跡を残してください。じゃないと骨すら見つかりません。
一人で山に入ると死亡率は3倍になる
統計上、単独登山の死亡・行方不明件数はパーティ登山の3倍です。
一人で山に入って捻挫して動けなくなればやがて死にます。街なら大したことない怪我でも山では死ぬので一人で山に入るのはお勧めしません。
単独で山に登るということは、装備やルートの判断、安全管理、遭難やトラブルの対処を全部自分一人で出来なくてはいけません。道中で誰かに道を聞きがちな人や、行くか戻るかの判断を出来ない人、山中で会った人に「連れて行って下さい」なんて言っちゃう人は、遭難する前にソロ登山をやめて下さい。今すぐ。
せめて、一人で登るなら、人気のある山を休日に登りましょう。日曜の夕方や月曜日に登ると次の土曜まで誰も通らない可能性が高いため、動けなければそのまま死にます。
一緒に登る友達や仲間がいない方は、どうにかして探してください。
バラバラになっちゃダメですよ
複数人(パーティー)で登っても、行動中にバラバラになっちゃダメです。
「歩くの遅いから先に行ってます」「追いかけるので先に行っててください」「お父さんは先に降りて荷物片付けてるよ」なんて言いながらいなくなってしまうケースが多すぎです。
そんなことをしていると、遅れた子供だけいなくなるとか、先に行ったお父さんだけ遭難して1年後に骨が見つかって歯の治療痕で特定するなんて事になります。
必ず全員一緒に行動してください。
1人でさっさと歩いて行っちゃうリーダーなんて論外です。メンバーとの距離が空きすぎないようにしましょう。せめて見通せる距離で歩きましょう。
一緒に歩けないパーティーは、パーティーで登っている意味がありません。単独行と同じです。そういう歩き方をするのであれば、単独行と同じ緊張感を持って行動しましょう。
午後から登る?論外です
山は朝登り始めて15時には下山するのが基本です。日帰りなら登りはじめは遅くても10時。それでも歩けるのはコースタイムで4時間程度です。休憩など入れたら15時を回ります。歩くのが遅い人なら、午前11時スタート+5時間のコースを7時間で歩いたら18時到着。秋や冬なら真っ暗ですね。
闇夜の山をヘッデンの明かりで行動(※)すると道を間違えやすく、間違えた挙げ句崖から落ちて死にます。
嘘だと思うでしょ?ガチですよ?
午後から山に登ろうとするなんて論外なので近所の公園で散歩してください。山に登るなら早起きしてください。
高尾山などを登ると、稲荷山コース(普通に山道)でも下山中の14時過ぎに登ってくる手ぶらの若者とすれ違います。正直、『なに考えてるんだろう…』と思います。おそらく『リスクを知らない』だけなんでしょうけど。
※基本的にヘッデンはビバークの際に手元を照らすために使うもので、一般的に夜間は行動しません。明け方に歩き始める事はあっても真夜中に行動するのは物好きか遭難予備軍くらいです。
物好きは好きにしたらいいと思います。それなりの技術や覚悟もあるでしょう。無自覚な遭難予備軍はヤバいので夜間行動は避けましょう。
地図とコンパスも目をつむろう
紙の地図とコンパスを持てと言いたいけど、持ってても使えなければ意味がない。だったらせめてスマホに登山用のGPSアプリを入れてください(※)。使えない地図やコンパスよりはマシでしょう。
もし道に迷ったら、来た道を分かる場所まで引き返してください。闇雲に下ったり無理やり突き進んだりしないように。ただ、ずっと道迷いに気づかなければ深みにハマって戻れなくなります。こまめに現在地を確認して、間違っていたら早めに戻って下さい。
現在地確認を怠ると、いつまでも道間違いに気づけません。気づいたときには引き返せなくなってるかも。
※…ここでは私が作っている『ジオグラフィカ』を紹介していますが、使うアプリは登山用ならなんでもいいです。
モバイルバッテリーは必須です
スマホをGPSとして使うなら必ずモバイルバッテリーも持ちましょう。スマホに頼ってスマホのバッテリーが無くなったら詰みます。救助要請も出来なくなります。
ケーブルもお忘れなく。
モバイルバッテリーについてはコチラにもまとめました。読んでください。
低山だって舐めちゃダメ
登山を知らない人は標高が高い山のほうが難しいと思いがちですが間違いです(※)。低い山は道が錯綜していたり道標が整備されていなかったりするので道迷い遭難がよく起きます。
登山道は普通に歩けても、一歩道から外れて登山道外に出てしまうと、斜面は急で崩れやすく木や藪で見通しが悪くリカバリーは困難です。ハイキングレベルの山でも、登山道から外れたらリスクは一気に跳ね上がります。
奥多摩や丹沢、六甲山なども意外と急峻だったりします。標高300mの山でも10mの崖から落ちれば死にます。低山を舐めると簡単に死ぬので注意してください。
「ハイキングしかしないから登山の知識は要らない」ではありません。どんな山でも、山に入るなら最低限知っておかなければいけないことはあります。
※標高が高い山は寒さや空気の薄さ、雪や岩など別の難しさもありますが、北アルプスのメジャールートより奥多摩や奥秩父のマイナールートの方が遥かに困難だったりします。特にバリエーションルートなどは十分に経験を積んで、必要な装備や技術を身に着けてパーティーを組んで行きましょう。
いきなり富士山に登るな
富士登山に憧れるのはいいのですが、曲がりなりにも日本の最高峰です。真夏でも山頂に気温は0℃まで下がり、風が吹けば体感温度は氷点下。夏の午後は雷雨になることも多く、落石や滑落の事故も起こります。
行動時間も長く、上りは体力を要します。空気が薄く、運動不足では体力が続きません。下りも長いため、トレーニングをしていなければ足の筋肉を破壊されます。下山中に歩けなくなるのは、足の筋肉が壊れてしまったためです。帰っても、しばらくは筋肉痛で歩けないでしょう。
富士山に登る前には、必ずトレーニングをしてください。1000m程度の山に登り、2000m程度の山にもいくつか登り、体力と筋力を上げて、装備の使い方にも習熟した上で富士山に登りましょう。
富士山は日本一の山です。敬意を持って準備しましょう。
遭難したら絶対の正解なんかありません
「道に迷ったら下ってはいけない、とにかく登れ」「動くな、じっとしてろ」「来た道を引き返せ」って、どれも一理はありますが状況によっては出来なかったり間違いになったりもします。
「登山道があって行き先が分かるなら下ってもいいし、尾根にだって登れない崖はあります」「どこに行ったのか分からない登山者が待ってたって、見つけてもらえるとは限りません」「来た道が分かってれば遭難してないわ」
遭難した場所、怪我の有無、天候、季節、装備、知識、技術、メンバー、水や食料の有無、通信状態などなどによって取るべき行動は変わります。簡単な「こうしたら絶対助かる」なんてことはありません。
ではどうしたらいいか?それを考えるには知識が必要です。登山は、勉強せずにやるには危険すぎる遊びです。勉強しましょう。命がけの遊びをするんですから、無知で続けてたら死にますよ。
行動中に酒を飲む?論外です
お酒に強い人でも酒を飲めば酔います。自分は酒に強いから酔ってないと思ってるのは本人だけ。安心してください、ちゃんと酔ってます。酔った状態で登山道を歩くなんて自殺行為です。法律で規制されてないだけで、飲酒運転と変わりません。
お酒を飲むなら下山後や、泊まる場所に着いてからにしてください。山に連れて行ってくれた人が行動中にお酒を飲むタイプだったら、もう一緒に登らないことをオススメします。
ザックの重みはリスクの重み
なんでもかんでも持てばいいわけじゃありませんが、登山の装備はそれなりの重さがあります。本当は、上に書いてないものもいろいろ必要です。
街や文明社会で暮らしていると天気が悪ければ建物に入ればいいし、寒いなら服が簡単に手に入るし食べ物や飲み物もお金を出せばすぐ買えます。山はすべてが違います。
自然に関わるリスクや不便さを自分で背負うのが登山です。だからザックは重くなります。それは登山という遊びによるリスクの重さです。
トレランのザックは小さいだろうって?アレは、装備の不足を技術と体力でねじ伏せるスタイルです。そういう事をしたいのなら技術と体力を付けてください。
山で人は簡単に死ぬ
山と街は違います。とても危険な場所です。装備や知識が足らないと簡単に死にます。どんな低山でも、高尾山だって落ちたら死ぬかもなという崖が沢山あります。丹沢の大山でも人は死んでます。高尾山でも遭難は起きます。むしろ、登る人が多いので遭難も多い。
すべての山には死のリスクがあります。登山は、そういうところに行く遊びなんだと自覚しましょう。
山で人は簡単に死にます。
以上を気を付けて、山を楽しんでくださいね⭐️
山は良いぞ😊
補足
これだけ書いても登山に必要な情報のごく一部、ほんの触りです。『はじめに』の部分です。
登山は一生をかけても極められないくらい奥が深く、十分な経験があるはずの人も死んでいく危険な遊びです。標高の低い高いに関わらず山では人が死にます。よく勉強して、リスクと対策を理解した上で無欲に楽しんでください。
欲を出すと死にます。
更に詳しい情報はコチラ(連載中)
登山に関する本も読みましょう。本は効率よく情報を得られます。