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悪用禁止!詭弁と陰謀論の教科書 第1回「あったことをなかったことにする技術」

詭弁、陰謀論、ディープフェイクがまかり通る今の世の中ですから、何が真実か見極める目を養わなければなりません。そこで「詭弁・陰謀論の見破り方講座」みたいなものを書いてみようと思い立ちました。
防犯について知るには泥棒から学ぶのが一番といいますから、本稿ではあえて「こうすれば人を騙せる」という詭弁のハウツーをお教えしたいと思います。以下に示す知識は決して悪用することなく、あくまで詭弁を見破るために使っていただきたいと思います。

アジェンダは次のとおりです。

第1回 あったことをなかったことにする手法
第2回 なかったことをあったことにする手法
第3回 相手の反論をいなす手法
第4回 騙されない洞察力を養うには

第1回 あったことをなかったことにする詭弁

自分の思想や世界観から見て「ああ、あの歴史上の出来事がなければ自分の主張通りなのに」とか、「あの応援している企業の不祥事がなかったら良かったのに」と思うことがありますよね。
あったことをなかったことにするのは割と簡単です。ちょっと議論のルールをいじってしまえば良いのです。

普通のあるべき議論


まず、普通の議論というのはどのように進んでいくのか見ていきましょう。

立証責任をいずれかに設定する
②立証者が何らかの証拠を提出し、そこから一定の推認がなされる
③相手方に、その推認を覆すための反証責任が生じる(立証責任の転換
④相手方が反証のための証拠を提出する・・・(以下続く)

例えば、「彼が犯罪を犯した」ことを立証したいとします。当然、犯罪があると主張する側に立証責任があります(①)。

①立証責任をいずれかに設定する

立証者が「彼の犯罪には5人の目撃証言がある」と主張し、「なるほど彼が犯人のようだな」との推認がなされます(②)。これ以降は相手方にその証言を覆す立証責任が生じます(③)。

②立証者が何らかの証拠を提出し、そこから一定の推認がなされる
③相手方に、その推認を覆すための反証責任が生じる(立証責任の転換)

すると相手方は、「その5人は真犯人に買収されています。その証拠に、こんな不審な振込履歴があります」と言って買収の証拠を提出してきます(④)。すると立証責任はまた元の側に戻り、今度はその「不審な振込履歴」について「いや不審じゃない」と反論する責任が生じます。
こうして議論が進んでいくのです。

④相手方が反証のための証拠を提出する・・・(以下続く)

さて、このルールの一番のミソは、「推認」によって立証責任が転換するという点です。「スリーアウトチェンジ!」といった具合に攻守が逆転するのです。もしこの「チェンジ」を防ぐことができれば、延々と攻撃し続けることができ、決して負けることはありません
では、どうすればチェンジを防げるのか。「推認」を否定すればよいのです。

どのような事実からどのような推認を行うかについては、刑事裁判でもない限り特段のルールはなく、常識に従うほかありません。常識は人によって異なるので、そこに詭弁が入り込む隙があります。つまり、推認の部分に常識外れの考えを持ち込むことで、相手を攻撃し続けることができるのです。

あったことをなかったことにする具体策

いよいよ「あったことをなかったことにする方法」について具体的に述べていきましょう。そのプロセスは次のとおりです。

①立証責任を相手方に課す
②相手の主張からの「推認」を拒否し続ける

①立証責任を相手方に課す

まず、「ないことの立証は『悪魔の証明』になりますよね。あったと主張する側が立証してくださいね」と言って、「ある派」に立証責任を課します。ここまでは何ら詭弁ではありません。

②相手の主張からの「推認」を拒否し続ける

その後、相手の主張からの「推認」を拒否し続ければ、立証責任がこちら側にやってくることはなく、相手がひたすら立証というハードルに苦しみ続けることになります。とにかく拒否してください。

どうやって推認を拒否するのか。その方法は様々あって、詳しくは第3回で取り上げるつもりですが、例えば「彼が犯人だ。なぜなら5人の目撃者がいる」といった主張に対しては、「その目撃者は工作員だ」と言えばOKです。

推認を拒否すれば立証責任は相手方のまま!

さらに「工作員である証拠は?」と聞かれれば、「工作員であることは既にアメリカの政治学者ハワード氏が証明済みだ」などと適当なウソを言って、検証に手間がかかることを言えばOKです。本当はそんな証明などなされていないのですが、「ちゃんと調べなよ。証明されてるぜ」と言い続ければ良いのです。

「そんな適当なウソをついてもすぐバレるだろう」と思われるかもしれませんが、1対1の短時間で終わる議論ならそう簡単にはバレません。ネット環境さえなければ、数百人の聴衆を騙すことも可能でしょう。
一方、数十万人規模の人を長期間に渡って騙すには、この程度のウソではいけません。もっと組織的なウソをつく必要があります。

より組織的に騙す方法

組織的な協力があれば、「ハワード氏」を用いた適当なウソのつき方を、より巧妙にすることができます。
その方法とは、事前に「目撃者が工作員であることは既にハワード氏が証明済みである」というウソをネットのあちこちに書き込んでおくことです。

そうすると、「証明済み」というワードだけが一人歩きしてくれるので、あたかも「目撃者=工作員」という話が強く推認されるような状況を作り出すことができます。
すると推認によって立証責任は相手方に移り、相手方に「ハワード氏の主張が間違っていると立証する責任」をなすり付けることが可能になります。

相手に立証責任が移転する一方、立証は不可能に!

相手はハワード氏の主張について調べ、そのプロセスのどこに誤りがあるのかを見つけなければ次の反証に進めません。
しかし、実際にはハワード氏による証明など一切なされていないし、いくらネットを叩いても「(なんか分からんけど)証明した(らしい)」という話がヒットするばかりで、その証明とやらの詳細はどこにも落ちていないので、相手は具体的にどこが間違っているのかを指摘できず、反論する方法を失うのです。

「ハワード氏」というのは私がたった今考えた架空の人物ですが、こうした詭弁を組織的に行う際には、もちろん実在の人物を複数人用意しなければなりません。
そこそこネット上で名の知れた人物で、過去にテレビにもよく出ていた有名人ならばなお適任です。今はバズれば儲かる仕組みがありますから、陰謀論に乗っかってくれる有名人はいくらでも探せるはずです。そういう人に依頼して、できればyoutubeに動画でもアップしてもらえれば最適です。

そして彼ら複数人が「みんなそう言ってる」と主張すれば、もはや原典であるナマの情報が何なのかは分からなくなります。反論するには相手方の詳細な証明プロセスを分析して矛盾を探さなければならないのに、その証明プロセスが見つからないわけですから、反論は事実上不可能になります。

「みんなそう言ってる」の強み

以上、今回は「あったことをなかったことにする方法」について述べてきました。次回はその逆で、「なかったことをあったことにする方法」について述べていきたいと思います。

続きはこちら。


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