元SIer派遣エンジニアが見たSIerあるある桃太郎
昔々あるところにCOBOLの金融システムを保守しているおじいさんと、政府システム開発の孫請け会社でプロジェクトマネジメントをしているおばあさんがいました。
おじいさんは山を登ったところの上位会社に障害管理表を提出しに、おばあさんは川を少し上ったところの「システムアーキテクトのプロフェッショナル集団」を標榜する2次請けのコンサル会社にスケジュール延長交渉をしに行きました。
おばあさんが川のふもとを歩いていると、上流からそれはそれは大きな仕様上の不備を含んだ桃がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。
(おや、これは持ち帰りたくないわ)と内心迷惑に思いつつも、甘受する他ないので、その桃を持ち帰って内部で検討することにしました。
そして、おじいさんとおばあさんが桃の仕様を精査しようとすると、突然中から元気の良い優秀なプログラマが飛び出してきました。
「これはきっと、神さまがくださったにちがいない」
求人サイトに多額の掲載費を費やして採用したのに、みんなすぐ辞めてしまったので、おじいさんとおばあさんは大喜びです。
桃から生まれたプログラマーを、おじいさんとおばあさんは桃太郎と名付けました。桃太郎はスクスク育って、やがてありとあらゆる言語を操るとても優秀なプログラマーとなりました。
そしてある日、おばあさんは桃太郎に言いました。
「さあ炎上案件へ参画して、火を消してくるのです。残業代?ウチは年俸制だからそんなものはありませんよ」
おばあさんに職務経歴書を印刷してもらい、炎上案件の面談へ出かけました。
途中で、シニアプロジェクトマネージャーを名乗る男に出会いました。
「私は1,000人月規模の大規模プロジェクトマネジメントの経験があります。今54歳でプログラミングは全く出来ませんが、進捗管理ならお手の物です。おこしつけた人月100万円をいただければお供しますよ」
そして今度は、上席コンサルタントを名乗る男に出会いました。
「私は数多くのプロジェクトでイニシアチブをとってトータルソリューションによるイノベーションを推進して多くのクリティカルなバリューを生み出してきました。ゼロベースでグローバルなナレッジを蓄積してクライアントとのウィンウィンなリレーションを構築出来ます。おこしつけた人月120万円をコミットしていただければジョインしますよ」
そして今度は、自称3年目のプログラマーを名乗る男に出会いました。
「得意言語はjavaです。主にボタンをクリックするとメニューがバッと開く機能を作ったりしてましたね。将来はたくさんの人をまわして大きな仕事を動かすようなマネージャーになりたいです。おこしにつけた人月50万円をいただければおともします。え?MVCってなんですか?」
見送りの男が言いました。
「さっきの上席コンサルタントとセットなら人月45万円に割引しますよ」
こうして、シニアプロジェクトマネージャー、上席コンサルタント、自称3年目のプログラマーの仲間を手に入れた桃太郎は、ついに炎上案件へやってきました。
シニアプロジェクトマネージャーは必死にExcel方眼紙の印刷時の罫線の位置を調整していましたが、他の作業を依頼するとこう言いました。
「それは私の仕事じゃありません」
上席コンサルタントがアドバイスしました。
「CSのクリティカルなイシューのフィージビリティ・スタディが不足しているからタスクがASAPなのでMECEのファクトがウィンウィンなのでは?」
自称3年目のプログラマーが言いました。
「言われた通りにやったのに、なんかエラーが出て動きません」
そしてさすがの顧客も、激昂して大あばれです。
とうとう桃太郎は
「まいったぁ、まいったぁ。こうさんだ、助けてくれぇ」
と、手をついてあやまりました。
ところが連絡をうけたおじいさんとおばあさんはプロジェクト脱退を認めませんでした。
こうして桃太郎はダークサイドに堕ち、いつしか闇プログラマーとして頭角を表し、今ではカノッサ機関に保護され、機関内のIT関係の作業を担うようになったとの噂である。だがipアドレスを改ざんしているので彼の本当の消息を知る者はいない…
参考:君は闇プログラマーを知っているか?
http://togetter.com/li/48811
闇プログラマーとは
引用:
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C7%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE%A1%BC
封印されし太古の言語を使う闇のプログラマーのこと。5年前に最後の一人が死んで滅びたとされていたが、2010年9月8日、twitterで生き残りがいるとの情報が出回った。AIを使い、IPを偽装できる。ネットワークには契約しておらず、無断で他人の無線LAN回線を使ってネットに現れる。PCは使わない。地球上のどこにいるかは不明だが、もしかしたら君の近くにもいるかもしれない。