テクノ新譜試聴メモ:2019-09
リッチー・ホウティンのDE9シリーズに連なる新作"CLOSE COMBINED"が出た。各種配信サイトのほか、YouTubeでも全編が公開されています。スマートフォン試聴に最適化しているのか、縦長の映像なのでフルスクリーンでの視聴がおすすめ。
DJミックスとハードウェア電子楽器によるライブが混然一体となったパフォーマンスで、そのスタイルは快楽原則に忠実なハードかつアシッドなサウンドに回帰している。V字型に配置されたブースのなかには、ミキサー、DJコントローラー、MIDIコン、モジュラーシンセなどのツマミとフェーダーとボタンが敷き詰められていて、映像にはそれらを鬼のように操る本人の様子が並列の3つの視点で克明に記録されている。わたしもまだ全部聴けていないんだけど、リッチーがこういうテンションに戻ってきているのは知らなかったので、なんだかうれしい。
9月の新譜試聴メモです。
Ōcktawian - YE666 [Binary Cells 6]
今月一番ヤバかったやつ。Ōcktawianはスペインのアーティストらしくて、このBinary CellsのEPで初めて知った。シンセがギラギラしたプリミティブなテクノをたくさん作っている。この曲も、ウワモノのアルペジオに徐々に変調がかかって次第に狂気を帯びていく様がかっこいい。低音の鳴りも間違いなく、推せる。
TWR72 - Nerve [TWR72 THE ARCHIVE 1]
TWR72の未発表曲集が自身のサブレーベル的な扱いで出ていた。木琴の高音のような耳につくハイプなフレーズが反復する奥で、中域を占めている丸いブンブンとした音や、キュンキュン言っている高音が謎めいていて楽しい。オーソドックスなハットやクラップの抜き差しが心地よく、いつものTWR72と同様に使いやすそうなツールトラック。
Re:Axis - Surrender [Planet Rhythm UK D19014]
ポルトガルのRe:AxisによるEPから、どれも良いけどB面のこの曲がいかにもB面って感じの渋いグルーヴで好み。重心低めのハウシーなループの上に、ごく控えめに差し込まれる浮遊感のあるシンセパッドが気持ちいい。これくらいのノリがいいんだよ、みたいなね。
JUDAΣ - DIΣTRESS I [Darkmatter Inc. 5]
いつも楽しみにしているJUDAΣ(Judas)の新譜。今回はArtsのサブレーベルであるDarkmatter Inc.からのリリースで、カタログナンバー5番にしてレーベルオーナーのEmmanuel以外の作品は初めてのようだ。サウンド的には相変わらずとエクスペリメンタルと実用の境界の際どいところを攻めており、空間処理も極まっている。獣の鳴き声のようにも聞こえる残響のあるノイズとグリッサンドの応答を延々聞いてると、夜の電子の森の中に迷い込んだようでキマってくる。
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「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。通常は楽曲単位での紹介、まれにEPやアルバム単位で紹介することもあります。