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Naomi:丸い鼻とNew Yorkのブロンド

Charpter 1: 長野の山奥で生まれた小さな憧れ

私は子供の時から、将来世界を跨ぐかっこいいキャリアウーマンになりたいとずっと思ってる。

延々とつづく山、冬になったら膝まで雪が積もる長野の小さな町に生まれた。
地元の工場で生産管理をしている父と、はつらつでいつも声の大きい陽気な母。
高校卒業して、父が働いている工場で経理をしている母、顔立ちがはっきりしてちょっとイケメンな父に一目惚れし、3年後、私が生まれた。

大して英語は喋れない両親だが、将来この山から出て、
海外で活躍できる期待を込めたせいか、日本でも海外でも通用する名前ーー奈穂美(Naomi)と私に名付けた。
物ごろがついた時から、家のテレビはずっと洋画が流れている。
大都会ニューヨークを走っていたハイヒールを履いてる長身スレンダーでブロンドな女優に見惚れて、
母が保護者会に参加するたびに、大事に取っていた黒革のハイヒールをこっそりと履いて転けてしまったけど、
あの颯爽としたブランの皮手帳を持っているブロンドは、
私にとって初めての憧れであった。

「いつかああなりたいな」と。

母が『ローマの休日』にハマりすぎて、オードリー・ヘプバーンの演じたお姫様と同じ髪型を私に押し付けた。
残念なことに、私は父のはっきりした顔立ちを遺伝できておらず、
丸い鼻を中心とした少し平らかな顔を見事に母からもらった。
そんな髪型が似合うわけがなく、その前髪が眉毛下伸びるまで、
毎日おばあちゃん要らない帽子を毎日かぶっていた。

それでも、いつも陽気で元気なお母さんからいつも元気もらっているから、
一時期恨んでいたが、前髪が伸びたにつれ、母親のことを許してあげた。

そんな毎日BGMのように流れている洋画のおかげか、私の小さなこころに海外への憧れが生まれた。

私の誕生日は、不思議なことに両親の結婚記念日と重なって、12月24日のクリスマスイブだ。
その三つの祝いで、その日にだけ、家から車で1時間半かけて、
父と母が結婚式を挙げた軽井沢のプリンスホテルに行って、家族で祝うことにしている。
一度に済ませるからだ。
ワインはいつも一番安いものを頼むらしく、コース料理とちょっと大きいイチゴの載せてあったケーキが食べれる、
我が家にとって、年に一番の日でもあった。

何より、クリスマス雰囲気の溢れた軽井沢の町、全てがクリスマスツリーに飾っているオーナメントのように、
楽しくてワクワクで、終わりに来ないでほしいと思った。
年に一度の軽井沢。それは私にとって都会の最初のイメージ。
それに重ねて、いつかニューヨークやパリといった大都会にいる妄想をしていた。
笑わないでね。

記憶の中では、12回家族3人で軽井沢のプリンスホテルに行ったのだろうか。
やがて大学受験がきた。
私は、両親と違ってなぜか勉強だけは好きで、できてる方だと思われている。
母親の影響で英語の勉強に励んでいたせいか、見事に東京の上智大学に受かって、それももちろん英文学科。
それを目指したのも、「あのブランの皮手帳を持っているブロンドのおかげだ」。

母があんまりにも嬉しく、コツコツと貯めたお金を私に1年間ロンドン留学にも行かせてくれた。

つづく。


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