はじめに

クトゥルフ神話TRPG界隈で注目されている問題のひとつ、それが人気コンテンツの設定やキャラクターを流用した盗作シナリオだ。クトゥルフ神話TRPGの同人シナリオ界隈では、人気ゲームや小説、さらには3次元アイドルのラジオドラマCDなど、さまざまなメディアから内容を流用し、クトゥルフ神話TRPGシナリオとして公開・販売されることが度々あり、毎回炎上を引き起こしている（エルコル・神任せなど）。今回、注目するのは、人気ホラーゲーム『文字化化』を元にしたとされるシナリオ『侵々刻々』だ。このシナリオへの盗作疑惑の経緯について記す。最後に私自身の意見を述べる。

そもそも『文字化化』とは？

『文字化化』は、八名木（X：@yatu3zi）が制作したホラー脱出アドベンチャーゲーム。Steamで販売されており、「ホラー男子との恋愛」をテーマに掲げた、女性向けの言語解読×探索ADV。異界に迷い込んだ主人公が、人外のバケモノたちと交流しながら言葉を解読し、脱出を目指すというストーリーが展開される。

探索要素やホラー演出に加え、登場人物との恋愛要素が組み込まれており、特に「言語解読」という独自のシステムが特徴。プレイヤーに謎解きの楽しさや緊張感を与えながら、物語の核心に迫る仕掛けが多くの注目を集めている。

問題となったキャラクター：赤い傘の男
作中で登場するのが「赤い傘の男」。このキャラクターには以下の特徴がある。

• 赤いトレンチコートと赤い傘を身に着けた目を引く外見

• 目と耳を隠すような髪型で、不気味さが際立つデザイン

• 高身長で威圧的な雰囲気をまとい、主人公を追いかけてくる怪異として描かれる

盗作疑惑のシナリオ『侵々刻々』とは

『侵々刻々』（しんしんこくこく）は、作者・鷲田（Xアカウント：@cocwashida）が2024年12月3日に発表したクトゥルフ神話TRPG 6版向けのR-18シナリオ。タイマン・ソロ向けのシティクローズド型で、怪奇・ホラー・異常性癖をテーマとする。KPC：巷で噂されている不審者。PC：人間であればよい。
キャッチフレーズは「浸々と。刻々と。迫るのだ。ーーー■■■が。」

盗作疑惑までの時系列

2022年10月7日：『文字化化』試作版BOOTH上で公開
2023年9月21日 ：『文字化化』体験版ver2BOOTH上で公開
2024年9月19日 ：『文字化化』体験版ver3BOOTH上で公開
2024年11月11日：『文字化化』正式版をSteam・DLsite上で販売。
2024年12月3日 ：鷲田がシナリオ『侵々刻々』をXにてトレーラー画像を公開。1話完成済。頒布はテストプレイで検討。
2024年12月4日 ：AIRA(X@AIRAI_junkygirl）が鷲田に『侵々刻々』の問題点を指摘

盗作疑惑箇所

• 『侵々刻々』のトレーラー画像が『文字化化』に登場する赤い傘の男と酷似しているとX上で指摘。

• 指摘内容は（赤いトレンチコート、赤い傘、シルエットからわかる髪型、相手に執着する人外設定、そして高身長という赤い傘の男の特徴。

・トレーラーと赤い傘の男との画像比較

問題点指摘までのやり取りの時系列とポイント

以下はX上での制作側（鷲田）と告発者AIRA(X@AIRAI_junkygirl）のやり取りを纏めたである。カッコ内は12月4日にて書き込まれたX のポストの時間)

• 告発者の指摘（10:46～）
  告発者が「赤い男」のデザインが『文字化化』の「赤い傘の男」と酷似していることを指摘。特に「赤いトレンチコート」「赤い傘」「高身長」「執着する人外」という4つの要素が一致していることを問題視し、元ネタの記載がないことを問う。

• 制作側（鷲田）の弁明（11:17～）
  鷲田は「『文字化化』のキャラクターを認知すらしていなかった」「これらの要素は偶然一致した」と主張。また、キャラクターデザインについては「性癖や好み」に基づいて発想したと説明。ただし、詳細なアイデアの源流については具体性を欠いていた。

• 告発者からの再追及（11:32～）
  告発者は、「赤いコートと赤い傘」という組み合わせがどのように生まれたのか、アイデアの経緯を具体的に示すよう求めた。さらに、個々の要素が一致しすぎている点についても疑問を呈する。

• 制作側の追加説明（11:50～）
  鷲田は、「トレンチコートと雨」「赤い色はホラーの象徴」として自然に発想したと回答。また、「赤い傘」については明確な説明を避け、個人的な好みからの発想と主張。類似点の指摘に対しては偶然と繰り返し弁明。

• 告発者の不信感（12:01～）
  告発者は、デザインの「完璧な一致」が偶然だとする主張に納得せず、「赤い傘の男」の特徴をすべて持つキャラクターがどのように誕生したのか、再度説明を求める。

• 制作側の最終的な回答（12:30）
  鷲田は「詳細は完成後に確認してほしい」と述べ、現在の説明には限界があると表明。最終的には「誤解を招いたことを反省している」と謝罪し、完成後のPDFでのシナリオ開示を提案。

• 告発者の結論（12:35～）
  告発者は、制作側がアイデアの源流を明確に示せないまま類似性を偶然とする姿勢に懐疑的なまま、「シナリオの制作を続けるなら今後PDFを公開するべき」と提案。やり取りが終了。

• 『侵々刻々』作者 鷲田 の返答まとめ

  • 『文字化化』の赤い傘の男は知らなかった。シナリオトレーラーを発表した次の日に『文字化化』の存在を知った。

  • そのため『文字化化』のネタ・オマージュシナリオではない

  • 類似点は見た目と怪奇的な部分だけである。シナリオ基盤の進捗が進めば伏せったーなどで公開する

  • 類似したことに関しては、シナリオの基盤など完成次第、ふせなどを使用して詳細をまとめる予定

  • トレンチコートや雨、高身長、執着心を持つキャラクターといった要素が前から好きだったので関係はない

  • 自分の好みからゆえ簡単な発想でゲームの要素と合致しただけで全くの偶然である

  • トレーラー画像が赤色主体なのはゴア要素とホラー要素から連想した

  • 髪型のシルエットの一致の指摘には言及なし

  • 会話後より自身のポストに返信不可を設定

おわりに

　私は、この作者鷲田が確実に「黒」だと思っている。1つ1つの要素が5つ以上も重なれば、それは偶然とは考えにくい。もしなんとか強いインスピレーションを得て作成した後から既存の作品との類似点に気づいてしまったのであれば、類似点を修正するのが一般的な対応だろう。しかし今回『侵々刻々』作者の鷲田は開き直る姿勢のようであり、問題の本質を理解していないか、意図的に無視しているような印象を受けた。というより現在鷲田のXでは返信が閉鎖状態となっているため、無視しているようなではなく、明白だ。
　このような既存の作品から要素を流用する盗作シナリオが一つでも少なくなることを祈る。
　また、『文字化化』の作者である八名木様は、すでに心ないメッセージや問い合わせに疲れているため、この問題についてはお問い合わせを送らないようにお願いする。

問題点指摘のやり取りの詳細

詳細な内容に興味を持った方のため、魚拓代わりに記載しておく。

12月4日10時46分：告発者以下告「こちらのシナリオはホラーゲーム『文字化化』のオマージュかパロディシナリオですか？配布の有無に関わらず、元ネタの記載は必要です。 赤いトレンチコート、赤い傘、シルエットからわかる髪型、相手に執着する人外、そして高身長という点、全て一致していますが、無関係なのですか？」
（『侵々刻々』のトレーラーポストを引用ポスト）

11時17分～42分：鷲田「ご連絡ありがとうございます。 ご連絡いただいた内容についてですが こちら元々仰っていただいた作品自体はこのシナリオを発想/作成の際、まだそちらのキャラクターを認知すらしていない状況でした。今回AIRA様のご連絡改め、RPしていただいた方々のプロフィール先でそのゲーム関連の投稿を見かけ
｢おや…？｣となるタイミングがありました。 シナリオはまだ制作中かつ、現時点で答えられるのは数少ななのですが、類似しているのは恐らくその見た目と、怪奇的な部分だけかと思われます。そもそもこの投稿をした後での発覚な為に既プレイでは無いので、今調べた限りではそちらのキャラクターの詳細までは把握しきれておりません。どこまで類似しているのかは定かではないのですが……。少なくとも今明確にお答えできるのは元ネタまたオマージュ等の関連は一切御座いません。また、類似してしまっていたことに関しては、シナリオの基盤などある程度進捗、完成次第、ふせなどを使用して詳細をまとめられればと存じます。 長々とのご説明にはなりましたがご確認いただけますと幸いです。」

11時32分～34分：告「ご返信ありがとうございます。では、人外のキャラクターにこの赤いコートと赤い傘の組み合わせをどのように思いついたのでしょうか？メインビジュアルにも使われているのですから、よく考えたキャラクターでしょうし、ネタバレにはならないと思いますので、詳しくお答えください。
赤いコートは一般的な怪談に存在しますが、赤い傘はどのような発想ですか？身長が高いことと相手に執着する点も、どのようなアイデアから生み出されましたか？その経過をすぐに提示することは可能ですか？」

11時45分：告「関連は一切無いと断言できる以上、赤いトレンチコート、赤い傘、高い身長、そして執着する人外という、本来はバラバラに存在するアイデアを一つのものとした確かな源があると言えるのでしょうか？」

11時50分～52分：鷲田「こちらビジュアルに関しましてはコート、というよりは"トレンチコート"に強い関心がありましたね。そもそも傘も含め、トレンチコートにした理由も"雨"という状況が言葉に表すにはむずかしいのですが、所謂性癖のようなものがありまして。高身長、執着に至ってはそもそもこちらの好みの1つです。
このシナリオを作る関係なしに、以前からOCや探索者などで高身長や誰かに執着するキャラなどが沢山降ります。最近のXの規約事情で一時的に画像等は殆ど一掃されておりますが、こちらに関しては全くの好みゆえからの簡単な発想です。」

11時52分：告「性癖の一言で、このような合致が今、発生するものでしょうか？」

11時57分：鷲田「はい。類似していたことを知ったのもそもそも昨日という直近も直近ですので、私としては偶然としか言いようがございません。それと、赤色主体のカラーイメージについてですが、こちらは
ホラー、グロゴア▶︎血液▶︎赤色、とまたこちらも安直な連想で成り立っております。 全体赤というのも明確な怖さがあって良いな……という発想です。」

11時54分～57分：告「では、赤い傘と赤いトレンチコートという組み合わせが、なぜ雨という単純な現象から生まれたのでしょうか？なぜ全てが過不足なく一致しているのでしょう？
誤解しないでください。私は、すべての個々の属性が 1 つのキャラクターに集まった状況の特異性について話しているのです。
関連は一切無いと断言できる以上、赤いトレンチコート、赤い傘、高い身長、そして執着する人外という、本来はバラバラに存在するアイデアを一つのものとした確かな源があると言えるのでしょうか？」

12時1分：告「では、再度お聞きします。このシナリオでは顔が見えないはずの赤い男には髪型のシルエットが存在しており、赤い傘の男とそれまでもが一致するのはなぜですか？あまりにも一致する点が多すぎると、あなた自身も感じませんか？」

12時4分～8分：鷲田「雨そのものから発想を得たのではなくて、そもそもトレンチコート、傘、雨という属性の組み合わせが良いと思った次第です。赤色というのは先程も別のリプライでお送りしました通りです。あまりに類似してしまっていることに混乱を招いてしまったのはこちらも確認不足だと反省しておりますが、今私にお答えできるのはこちらのシナリオが意図した類似ではないこと、純粋にこれらが好きだからという気持ちから発想や創造を得たこと。またそもそも作ろうと思ったのも友人からシナリオ執筆してみないかという日常的な会話からです。また、ビジュアル以外の詳細は基盤が纏まってシナリオの内容に矛盾や齟齬などがないと判断できてからの予定となっております。どこまでがシナリオネタバレになるかならないかは今この場で判断できる物量ではございませんので、すみませんがお答え出来かねます。」

12時13分～16分：告「この完璧なパズルが（キャラクターの属性が不可思議なほどに全て一致することを指します）なぜ完成したのか、全く理解できませんでした。作家としてこの個性的なキャラクターを作成する際の経緯に何も確定的なものが出せないことに不安はないのでしょうか？
とても不思議なことですが、アイデアの源流があなた自身からも見えないにも関わらず、あなたは一切の関わりがないという確信があるようですね。 あなた自身が文字化化をプレイしたことがなくとも、参加媒体とあなた自身の「性癖」によりファンアートを目撃することが全く無かったと言い切れますか？」

12時18分：鷲田「そこまでそう仰るのであれば、シナリオ1話からでも構いません。本文が完成後、貴方様本人が直に見て確認してみてくださいませ。凡そ内容が出来次第DMなどでPDFを送るでもよし、兎に角、今この場でお答えできるものがあまりにも少なすぎます。何度自分なりにご説明しても納得できないようであれば、実際に見ていただいたほうが早いと思われます。」

12時20分：告「実際に見なくとも、文字化化のプレイヤーがあなたのシナリオトレーラーを赤い傘の男のオマージュあるいはパロディと受け取り、二次創作として期待した事実を忘れないでください。
12時22分：告「また、あなたがトレーラーで使用した「赤い男」という言葉でXを検索すると何が出てくるかをあなた自身の目で確認してください。どのような感想を持ちましたか？」（「赤い男」X検索画面結果のURLが記載されている）

12時22分：鷲田「であれば、これ以上ご説明できることはございません。 私としてもそのように誤解を招いてしまい、あまつさえ期待までさせてしまったことについては心よりお詫び申し上げます。」

12時24分：告「この事実についてあなたが感じることを答えてください。」
（12時22分の告のポストを引用ポスト）

12時30分：鷲田「ではこれで最後にさせていただきますが。 今検索し調べた限りでお答えできるものにはなりますが、感じることと致しましても、思わないところでこんなにも類似してしまったことに申し訳なさとよく調べもせず軽率な発表をしてしまったということの反省しかありません。 感じることについては以上です。」

12時35分：告「よく理解いたしました。シナリオを制作されるならば、作家としてアイデアの源流も示すことができないまま関連性はないと確信しながら、これほど文字化化の赤い傘の男との類似点を抱えた状態を続けられるのか、今後も何も問題は出ないのか、考えていただきたいと思います。PDFの開示は受け付けます。」

余談
12時27分：告「このままこの「赤い傘の男」のシナリオを制作し続けるならば、PDFの提示についてはお受け致します。広く公開してはいかがですか？」

13時34分：口うるさいようで申し訳ございません。 細かいことで訂正させていただきますが、こちらは｢赤い傘の男｣ではなくて、｢赤い男｣です。

13時38分：あなたの「赤い男」も赤い傘をさしているので「赤い傘の男」であることに間違いはありません。「赤いトレンチコートを着用し赤い傘を持ち人外として人間に執着をする高身長の男」のシナリオを制作されるならば、提案通りPDFの開示をお願いします。