「単なる計算ツールから脳トレへ」 進化し続けるそろばんの存在価値
最近はAI=人工知能(じんこうちのう)も広く使われるようになったけれど、自力で計算するそろばんは、頭脳格闘技とも言われ、子どもたちの習い事として今も人気がある。
今も昔も習い事として根強い人気がある「そろばん」に注目すると、時代のニーズに合わせて変化するそろばんの「価値」があった。
正月早々に「新春そろばんはじき初め大会」なるものも行われていた県もある。艶やかな晴れ着姿で珠を弾く姿は正月ならではの風景の一つでもあった。
子供の10人に5人はそろばんを習っているほど「そろばんの黄金時代」と呼ばれた1980年代。級や段の習得が銀行などの就職に有利とされ、当時(1980年代)そろばん人口は全国で約800万人にも上った。
「ちびっ子そろばんまつり」では子供たちがハチマキ姿で気合を入れる中、親も読み上げ算に挑戦!と意気込むも子供たちのスピードについていくのはなかなか難しかったようだ。
慣れない手つきでそろばんを弾くのはアメリカ海軍佐世保基地に住む子供たちだ。 29年前の1995年、全国珠算連盟佐世保地区が開いた日米交流会では日本とアメリカの子供たちが一緒にそろばんを弾き、言葉の壁を越えたツールとして国際交流にも一役買ったようだ。
1990年代に入ると競技人口は減少傾向になるが、2000年代に再びその魅力が注目され始める。 その頃、登場したのが 画面の数字を暗算で計算する「フラッシュ暗算」だ。
遊び感覚で楽しく練習ができると話題となり、フラッシュ暗算ができるゲームも登場した。
次々と画面に表示される3桁の数字を、頭の中で足し上げるんだ。
それぞれの数字は、0.1秒しか表示されないんだよ。
暗算と脳の動きの関係を調査した研究も多く行われ、「そろばんは右脳を活性化させ、集中力を高める効果があるのでは」と習い事として再び脚光を浴び始める。
答えを書いている間に、目は次の問題を見て、頭の中でそろばんをはじいているそうだよ。
昭和、平成、令和と時代が変わっても多くの人に親しまれてきた「そろばん」は、最近では「計算ツール」としてではなく、脳の発達や集中力を高めるものとして注目されている。
小学校入学前に始める子供も多く、年々「若年化」が進んでいるようだ。2024年6月に長崎市内で開かれていたそろばん大会に参加していた小学生に習い始めた年齢を聞くと、「保育園の年中さんから」や「年長さんから」など未就学児から始める子供が目立った。
中には4歳から始めたという子供もいた。子供にそろばんを習わせている保護者は子供の変化について「集中力はやっぱりあるし、宿題もちゃんとやってみるみたいなのでやらせてよかった」と話す。
習い始める年齢が早まったことで級や段位の取得のスピードも速まっているようだ。
日本にそろばんが伝わって450年以上。
「読み書きそろばん」と学問の基礎であり単なる計算の道具だったそろばんは、就職に有利な技能、そして、子供たちの学習へのモチベーションを上げ発達をサポートする教材へとその役割を変えながら時代とともにあり続ける。