Colabo問題や貧困ビジネスの本当の罪|福祉関係者が黙るワケ
貧困ビジネスと不正受給
今、仁藤夢乃氏が代表理事を務める一般社団法人「Colabo(コラボ)」が
インターネット上で大炎上している。
この炎上は、元ゲーム開発者の暇空茜氏がTwitterやYouTube、noteなどで
一般社団法人Colaboに東京都からの委託金等に不正な支払いの疑いがあることについて、都への情報開示請求をリアルタイムで発信したことに端を発している。
概要を書くとかなり長くなるので、知らないという方は暇空氏のnoteを読んで欲しい。
そんな中、2022年12月31日に、Twitter上でColaboが運営するシェルターの元利用者であるsioさんが、生活保護費悪用の告発をした。
生活保護の扶助は
①生活扶助
②住宅扶助
③教育扶助
④医療扶助
⑤介護扶助
⑥出産扶助
⑦生業扶助
⑧葬祭扶助
の8つに分かれている。
そして、住宅扶助の上限額は住んでいる場所の「等級」と「一緒に住んでいる人数」で決められている。
東京都だと下の図のような金額となる。
2023年1月2日5:16の記事を書いている今、sioさんはまだ証拠となるものは何も提示していない。sioさんが書いていることを事実とするなら、生活保護の住宅扶助は「一緒に住んでいる人を同一世帯とみなす」ので、1級地に住んでいたならば、本来支給される金額は、3人で69,800円だ。もちろん居住地によっては、決められた家賃上限の物件が見つからないケースもあるので、その場合は行政の匙加減により、特例が出ることもある。だが、3人で69,800円のところを、1人につき70,000円支給されていたのであれば明らかにおかしい。
sioさんはColaboから「親のDVが酷くて、うつ病になった」と詐病をすることを指南されて受給している。これは明らかに生活保護の不正受給だ。
だが、実はこういったことは福祉業界では珍しいことではない。ただ、その受給額を一般社団法人Colaboが徴収し私腹を肥やしていたのであれば、「不正な公金搾取」「貧困ビジネス」と叩かれるのは当たり前だ。
なぜ福祉関係者は口を閉ざしているのか
インターネット上でColaboの詐病の指南を叩いている層を見ると、日々、生活保護受給者や障害者と接している福祉関係者はほとんど見かけない。それは、特に新型コロナ禍で強まった生活保護の水際対策や介護・福祉サービス時間を確保するために、大なり小なり、福祉現場の人間は苦肉の策として使っている「手」だからだ。
ただ、私がライターとして取材してきた数多くの福祉関係者たちは、あくまでも、行政の行き届かないサービスを埋めるために行っていた。そこには、介護・障害福祉制度の歴史的な背景がある。
ボランティアの善意で始まった介護・福祉サービス
介護保険制度が制定されたのは、2000年で、それまでは社会福祉協議会がボランティアを集めて、老人介護のサポートに入っていた。障害福祉はもっと遅く、行政からの措置制度から障害者自身が受けたいサービス事業所を選べるようになったのは、2003年に支援費制度が始まってからだ。
私(47歳)と同世代か一回り上の世代の介護・福祉関係者は、ボランティアを経験し、後にその職についた人も多い。
社会的弱者を助けたいというボランティアたちの思いが根底にあり、様々な制度ができた。だが、少子高齢化や日本経済の低迷により、生活保護は受けにくくなる一方。新型コロナ禍で倒産や失業が増えた今、社会保障を必要とする人は増えている。加えて、国が定めたサービス提供時間では家族で介護を賄いきれないという現状がある。
そういった背景から、行政も含め、現場でサービスを支える人たちは、苦肉の策として、必要なサービス提供時間の確保や生活保護を受給しやすくする目的で、詐病や嘘の言い訳を指南しているケースがある。そういったグレーな部分がないと、救われない社会的弱者が存在するからだ。
Colaboや貧困ビジネスの本当の罪
暇空氏の告発で、一般社団法人Colaboの不正会計に関して、東京都監査委員の監査が入った。監査委員は「本件清算には不当な点が認められる」と報告した。
今後、生活保護受給や介護・福祉サービスの受給について、グレーな部分がなくなり、より審査が厳しくなることが予想される。とりこぼされる社会的弱者のために残されていた社会福祉制度のグレーな部分がなくなれば、困るのは、生活困窮者や障害者、高齢者やそれを支える家族たちだ。そして、Colabo自身が手を差し伸べていた、虐待やネグレクトにより、行き場のない少女たちなのだ。
善意から始まった社会保障制度の隙を、私欲のために悪用していたならば、その罪はあまりにも大きい。
そして、これを読んでいる読者の方にお願いしたい。私は福祉関係者は同じような手を多かれ少なかれ使っていると書いてきたが、それは私腹を肥やす目的ではないことを分かっていただきたい。社会的弱者救済を地道に行っている団体がほとんどであり、それは貧困ビジネスや公金の不正利用とは一線を画すということをご理解いただきたい。
田口ゆう