コロナ短歌 ─金太郎飴な日々─
出勤の10分前に目覚めても間に合ってしまうリモート・ワーク
ギフト機能バリエーションも減ってきたポケストップは動いてくれない
使いみちなかった色の口紅も部屋や画面では気軽に試せる
一日を家の中だけで過ごすなんてまるで私たち病人みたいだ
この地球の人類全てが病人か、病人予備軍、ひとり残らず
人間はみんな平等なんだってこんなところで実感をする
レトルトの容器のまま食べるんじゃなく器に盛っていのちを繋ぐ
天気予報そんなアプリも入れてたねリモートワークは傘と無縁だ
コロナ禍がもしなかったら今頃は何が話題になっていたかな
鏡だと自然に見えたメイクでもモニター越しだとなんだか不自然
普段だと違和感のあるメイクでも画面を通せば意外と映えるね
濃厚な接触予定もないくせに引き続きピルを飲み続ける日々
昨年の春は深刻だったよねって笑い飛ばせる来年遠く
しばらくは誰とも繋がぬはずの手を念入りに洗い、ケアをする、春
マンションの窓を突き抜け鳴り響く意味をなさない夕焼け小焼け
垣間見る 知り合いに満たないような繋がりだった彼女の姿を
ほんとうはあの子の結婚式だった誰もいないね今夜のTOKYO
このご時世いまなら誰も辿り着けぬ完全無欠の世界は消えて
髪の毛を洗う必要あったっけ常識こそが疑われる今
いつ誰とどんな関係だったって今年の旅行はすべて延期だ
Google Mapのタイムライン見ても変化がないね金太郎飴な日々
文学の可能性が何だって我々はただコロナで荒む
コロナ禍は早く終わって欲しいけど続いて欲しいなindoor日常
エビデンスある情報だけシェアしてよ「知り合いの医者が言ってた」じゃなくて
非日常のどさくさに紛れてみんないろんな告白をするね
運動の不足を解消するために非常階段昇り降りする
みんな同じように存在するわけじゃなく忘れちゃいけない濃淡あること
最上階に向かう非常階段で脳裏に過る秋の江ノ島
批判の的、元凶になるあれこれは夜景の中に内包されてる
日曜日23時53分こんなときでも夜景は続く
午前0時ライトが消える瞬間を見届けられて今夜は満足