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『あいの里』シーズン2と「あやかん」と「ギタりん」の問題

ここ2日間、硬い話をしたので今日は少し肩の力を抜いた話をしたい。それは先日完結した恋愛リアリティーショー『あいの里』シーズン2のことだ。

『あいの里』はNetflixが全世界に配信する恋愛リアリティー・ショーで、新しいパートナーを求める35歳から60歳の男女が田舎で共同生活を送り、その中で発生する恋愛模様をドキュメンタリー的に編集した番組だ。同じNetflixの『テラスハウス』や『ボーイフレンド』が、おしゃれな若者たちの若者が羨むようなおしゃれな住宅でのおしゃれな共同生活を舞台にしているのに対し、『あいの里』では必ずしも誰もが認める美男美女ばかりとは言えない、言ってしまえば地味なメンバーが集められ、等身大の……もっと言えば泥臭い恋愛模様が展開するのがその特徴だ。

僕はこの番組が好きで、先日も座談会を配信したりもしたのだが、今日はそこで言い忘れたことを書いておきたい。それは、「あやかん」と「ギタりん」のその後のことだ。

「あやかん」とは大阪出身の35歳の女性で、普段はある会社?)で秘書の仕事をしているという。そして「ギタりん」は北海道出身の52歳の男性で、音楽教室の先生をしてるという。

あやかんは、過去に受けたいじめの経験などから体型コンプレックスが強く、特に前半から中盤にかけては精神状態が不安定で、ちょっとしたことですぐに泣いたり、怒ったりしていた。そのため配信完結前は(つまり配信が進行している途中では)もっとも「アンチ」が湧いていた出演者だったと思われる。

その一方で男性陣でもっとも非難を浴びていたのがギタりんだろう。彼はこの2024年に「嫁さん」という言葉をためらいなく使うなど、昭和の男性的な感性が目立つ上にそもそもの言動が直情的で、他の住民からもクレームを受けている場面が度々描かれていた。

しかしあやかんとギタりん、終始視聴者に叩かれがちなこの二人は、結果的にこのシーズン2でもっとも視聴者の心を掴んだ2人になったはずだ。あやかんは思いを寄せる「隊長」にほとんどアプローチができないまま失恋し、ギタりんはターゲットに定めた2人の女性、「ちぃ」と「ニノ」に果敢にアプローチするも拒絶され、半ば拗ねてしまっていた。しかし後半になって、前半はかなりどうしようもない問題でケンカしていた2人が、一緒にいると「楽」な相手として仲良くなっていくのだ。

ただ、この時点で2人の心情にはかなり落差があったと思う。あやかんがギタりんを年長の友人として大切に感じていったのに対して、ギタりんは自分の運命の相手はここにいたのかと盛り上がっていく。その結果として最終回は大方の予想通り、ギタりんがあやかんに告白することになる。あやかんは結局、ギタりんを恋愛対象とは見れず、彼の告白に対して「私の親友になってください」と返して、ギタりんはそれを受け入れる。この結末が、視聴者の心を掴んだ。つまり、コンプレックスが強く自己肯定感が得られないあやかんが、恋愛による承認ではなく、腹を割って話せて、一緒にいて楽な「友達」を得ることで自信をつけたのだ。ラストシーンで、ずっと体型コンプレックスから着られなかったノースリーブをあやかんは着てカメラの前に立つ。あやかんの成長物語として、そして恋愛リアリティーショーならでなのアプローチで恋愛「ではない」の関係性の可能性を提示するものとして、この『あいの里』シーズン2は完結した。視聴者の多くが、この2人の「友情」に希望を感じたはずだ。

しかし……批評家とは因果な商売だ。世界の真実を見抜く目を持った僕には分かってしまうのだ。この2人の「未来」が。youtubeでは数カ月後に再開したあやかんとギタりんの東京デート?が配信され、好評を博しているが、僕はここに既にある兆候を発見してしまっているのだ。

解説しよう。あやかんとギタりん。この2人の関係は典型的な「白雪姫と7人のこびとたち症候群」に当てはまる。

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僕はもはやFacebookやTwitterは意見を表明する場所としては相応しくないと考えています。日々考えていることを、半分だけ閉じたこうした場所で発信していけたらと思っています。

宇野常寛がこっそりはじめたひとりマガジン。社会時評と文化批評、あと個人的に日々のことを綴ったエッセイを書いていきます。いま書いている本の草…

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