カウンターの隣席#11
虹の橋
何年振りかに虹をみました。それも片面じゃなく両面の完全なるアーチタイプは初めてかもしれない。
3秒後に涙が溢れて止まらない。なんだこの涙は。やばいやばい。俺はまだ酔ってる?すぐそこに散歩中のお爺さんがいるって。
慌ててiPhoneで動画を撮っていると、ふと昨年10月31日に旅立った愛するクロ(柴犬)のことを思い出しました。なんだろうこの気持ちは。あれから約80日。なぜ今彼を思い出す⁉️
実は一昨年くらいから少なくとも昨年12月前半までの間、僕の身の周りでは信じ難いような激変が続いているのです。
いったいこの乱気流がいつまで続くのか。
不安でいっぱいだったところに、12月中旬頃から中高時代の親友や20代前半の店の仲間たちと飲み会が続き、年が明けてもすでに3回の飲み会が。しかもほとんど僕ん家で。同窓会なんて行ったこともやったこともないのに、なぜかみんな集まってくる。戸惑いながらも、昔の戦友というか同じ釜の飯を食った親友が大勢存在してくれていることに、また時を超えてこうして再会できることに、絆と感謝の気持ちでいっぱいになりました。
そして1月18日にはここ沖縄で飲み会が。これは僕のメンターからのお誘いです。彼は僕よりも10歳近く年下なのですがとても尊敬するすごい人。だから声がかかると理由や内容に関わらず行くのです。
で、来てみればこれがまた信じられないようなすごい方々が勢揃い。もう面白すぎるやらワクワクすぎるやらで、超久しぶりに声張って後頭部が筋肉痛になるほど笑いました。夜8時からスタートして気がつけば朝の3時。なんだかわからないけど、今度はよっしゃやるぞ!新たな旅に出るぞ!なんていう走り出したいような気持ちでいっぱいになっていました。
そして昨日19日は時差ぼけを修正するかの如くホテルでぐっすりと眠り、今朝20日は6時に起床。朝飯を食べて、散歩に出かけたのです。沖縄に来たのだから海を見ておかなきゃと、ホテルすぐ隣の港とまりんへ。
好奇心に任せて、釣りするおっちゃん、散歩の爺さん、フェリー乗り場の兄ちゃんなどに話しかけたりして少しずつ先へ歩き進んでいくうちに、観光用のマグロ市場なんてのが出てきて中を散策。あーここで朝飯うという手もあったのか、なんて思いながらそろそろホテルへ戻ろうと。
で、来た道とは違う海沿いを歩きたくなってゆっくりとテクテク。するとめちゃゆっくりと歩くお爺さんとすれ違い、ふと気になって後ろを振り返ると正面にどでかい虹が現れたのです。なんじゃこの大きく美しく橋の形をした虹は。
とその瞬間に、僕の心の奥底がこう叫ぶのでした。
「大丈夫、俺はもう大丈夫、お前怖がりやから、俺もそうやけど、もう気ぃつかわなくてええから、いいぞ、よしっ、クロっ、張り切って渡れ!」
あかん、もう止まらない。こうして愛犬クロと心の中で再会したのです。
クロは最高にいいやつでした。最初僕は犬を飼うことに逃げ腰で。だってカミさんはなんでも最初だけだから。案の定そうなって。でも当時はまだ黒柴が希少種だったこともあってか近所ですごく人気を呼んで、何度かテレビに出るほどアイドル的な存在になっていきました。なんだお前すごいやないか。
そして13年近くの月日が流れ、最後は8ヶ月に渡り、どんどん不調になっていくクロを僕は一人で必死でサポート。そして最後の最期はあっという間でした。僕に迷惑をかけることなく潔く。
心の準備はしていたはずだったけど。クロは僕の一部だったことをこの時痛いほど思い知らされました。こういうのを魂の絆って言うんやろうなと。
でも、それでも。今年に入ってどんどん忘れてしまうんです。お供えすることが。水をあげることすらも。いや骨や墓などはないんですよ。一頭2000円の市の合同火葬です。ただ写真とお供えを置いてるだけ。
この13年間毎日毎日、朝夕の散歩、水、メシをかかさずやり続け、車で動く際はできるだけクロも連れていくという生活でした。そんなだからしっかりと僕の身体にはクロへのアテンドが染み込んでいて、旅立った後も朝の散歩と水のお供えはしてしまうわけです。
でも、なぜか今年に入って急激に忘れていく。僕の中のクロがどんどん消えていくのです。寂しくて悔しい。
そんなことを感じていた矢先の今朝、美しすぎる虹の橋が突然現れたのです。そして撮った動画を確認し、もう一度撮り直そうと視線を再び空に向けるとアレレ虹はもう消えている。
動物は成仏するのに虹の橋を渡る、と近所の犬友たちはそう言います。最初は、まぁ夢のある話やな、と思って聞いていました。が、もしかしたらそれってほんまかもしれないと思ってしまいました。
クロは僕に見せたかった、のかな。そして僕も見たかった、のかな。彼の本当の卒業式に立ち会えた気分です。
「最高の卒業式やったで!虹の橋キレイやった。ありがとう。お前はこれからも最高の相棒でありほんまもんの家族や。絶対にまた会おう!」
牧志公園ガジュマルの木の下にて