Outer Wildsのラストについての個人的考察 宇宙の眼とは何だったのか?
※以下のエントリでは「Outer Wilds」のエンディングについて思いっきりネタバレを含んでいます。既にゲームをクリアした人以外は絶対に読まないように!
みなさん、Outer Wildsクリアしましたか? スッキリしましたか?
僕も自分でクリアして以来、いろんな人の感想や配信を見漁ってきましたが、「クリアしたけど最後よくわかんなかった」という声をまあまあ頻繁に見かけるので、一応自分なりのエンディング解釈をここに書き留めておこうと思います。あくまでエンディングまわりについてだけなので、Nomaiたちの歩みとか灰の双子星プロジェクトの全容などについては、naspapaさんのエントリが非常によくまとまっているのでオススメです。
なお、書き方はわかりやすくQ&A形式にしてみましたが、あくまで「僕の解釈(推測含む)」なので、これが絶対の解答じゃないよ、というのはご承知おきください。特に宇宙の眼やエンディングやまわりについてはゲーム中で説明されていない部分も多く、わからんところは身も蓋もなく「わからん」と書いています。
さて、それでは行ってみましょう。もう一度言いますが、まだクリアしてない人は以下、クリアしてから読むように!
Q:(太陽系だけじゃなく)宇宙って結局滅んだの?
A:おそらく滅んだか、遠からず滅ぶ運命にあった。
大事な前提として、ノマイやハーシアンたちがいた太陽系だけでなく、あの宇宙全体がそもそも滅びかけていたというのがあります(終盤の仰天ポイントの一つ)。
序盤で聞けるものだと、Chertの「あちこちで異様な数の超新星爆発が起こっている」という観測報告。終盤で出てくる情報だと、ノマイの母船に届いていた「宇宙が死にかけていることは明白だ」といった通信。そして最後、宇宙の眼に入った後、木立の中に浮かんだ銀河の光が次々と消滅していく演出などなど――。断片的ではありますが、ゲーム中で何度も「崩壊しかけているのはこの太陽系だけじゃないよ」という描写が出てきます。
Q:なんで宇宙滅んだの?
A:わからん。
宇宙が滅びつつある「理由」について、ゲーム中では具体的な描写は出てきません。宇宙自体が既に寿命を迎えつつあったのか、あるいは宇宙の眼の寿命だったのか……。
Q:宇宙の眼の信号って何だったの?
A:わからん。
これもゲーム中では具体的な説明はされていません。信号を発した目的については、迫りつつある「宇宙自体の滅び」を回避するため、新たな観測者’を呼び寄せようとした――と考えるのが自然ですが、それが意識的に行われたものなのか、それとも一定条件下で自動的に行われるようあらかじめプログラムされていたのかなどは謎。また、ノマイたちが星系に着いたとたんに信号を止めてしまったのも理由は不明のままです。何か眼にさえ想像もつかないようなトラブルが眼の中で起こっていたのか、それとも「最後は自分で突き止めろ」という試練のようなものだったのか……。
Q:最後って結局どうなったの? ハッピーエンドなの?
A:ビッグバンが起こって次の宇宙が生まれた。HAPPY END。
スタッフロール後の「14.3 Billion Years Later(143億年後)」の描写を見れば、キャンプでのセッションの後に起こったアレがビッグバンで、最後のイラストは「新しく始まった宇宙」なんだろうな――というのはなんとなく分かったと思います。結果的に言えば、今ある宇宙の滅亡は止められなかったけど、新しい宇宙を創造することで完全滅亡を回避したわけで、僕はあれは十分にハッピーエンドだと思っています。
Q:なんで主人公が宇宙の眼に入るとビッグバンが起こるの?
A:この宇宙は「眼が観測する」ことで成り立っていたから(推測)。
「本来この宇宙は量子的状態がデフォルトであり、それを眼が『観測』し続けることで、今まで見ていた宇宙の形に『固定』していた」というのが自分なりのこのゲームの宇宙解釈です。ビッグバンとは、眼の観測によって宇宙が一つの可能性に固定されること、宇宙の眼とは、次の宇宙を生み出し、さらに誕生後も観測によって一つの形に固定し続けるためのものだった――と自分は解釈しました(主人公が眼に入り、ビッグバンを起こした具体的なプロセスやメカニズムについては不明)。
ちなみに「本来この宇宙は量子的状態がデフォルト」という部分にはやや僕の推測も入っていますが、最後のセッションでのSolanumのセリフ、「あとは私たちの前にある無数の可能性を崩壊させるだけ」「あらゆる可能性がまだ存在しているうちに、この瞬間にしばらくとどまるのは魅力的よね」を踏まえれば、ビッグバン前は全てが量子的状態だった――というのはまあ筋が通っているんじゃないかなーと思っています(弱気)。
「本来この宇宙は量子的状態がデフォルト」という考えは、僕が好きなSF小説の『(タイトルを言うとネタバレになるので自重)』に思いっきり影響されていますが、あの作品内では観測による波動関数の収縮を「本来は無数にあったはずの可能性の虐殺」として描いていたのに対し(これはこれでシニカルで面白い)、本作では「未知の荒野へと踏み出す勇気」としてハイパーポジティブに描いているのは個人的にかなり好きなところです(特にSolanumの「でも、観察者が可能性を潰さないかぎり、可能性はそれ以上のものにはならないわ」は大好きなセリフの一つ)。
Q:最後、眼の中心に飛び込んだ後は何が起こっていたの?
A:多分「眼が主人公に見せていた幻影」的なやつ。
(もう大事なことは書いたのであとは補足という感じで)
宇宙の眼に到着してからの流れとしては、ざっくり「空の穴に飛び込む前と後」で別れます。穴に飛び込む前はまだぎりぎりゲーム内の物理法則の範囲内でしたが、空の穴に飛び込んだ後は、次々と超自然的なことが起こっており、恐らく「眼が主人公に見せていた幻影」的なものだったと考えていいでしょう。
もう少し具体的に言うと、あれは「主人公の意識と、眼の意識(のようなもの)が量子的状態で混ざりあっていた空間」だと僕は解釈しています。「量子の月と同じように、恐らく近くのものに応じて見た目を変える」「周囲のものを量子化する」という眼の性質や、さらにあそこで語られたことの中に「主人公が知り得ない情報」も多分に含まれていたことを考えると、恐らく主人公の意識や記憶を下敷きにしつつ、眼が主人公を導くために作り出した空間だったと考えていいんじゃないでしょうか。(特に異質なのが「Nomai自身が目にすることは叶わなかったが、彼らの努力と技術のおかげで、一人のHearthianが宇宙の眼に到達することができた」という文章で、これが「誰視点で書かれたものなのか」とか考えるといろいろ楽しい)
ちなみに、あえて「幻影『的なもの』」と書いたのは、量子的無限大可能性空間内では一応、どんなにありえない確率であろうと「可能性は存在している」と考えることができるから。
仮に宇宙の目が、観測による波動関数収縮だけでなく、蓋然性の操作(任意の可能性を選択できる)能力も持っているのであれば、何もない空間に突然、幻の観測所やキャンプ、先輩飛行士やSolanumたちを出現させることもできなくはない……はず(だからあそこのSolanumたちは幻である可能性もあるし、実体そのものである可能性もないとは言えない)。
Q:宇宙の眼って誰が作ったの? いつからあるの?
A:わからん。
これもゲーム中では一切描かれていないので好きに想像してよいんじゃないでしょうか。僕の想像は「なんかたまたまできちゃった」です。
眼が誕生する前の宇宙(ですらない状態)では、あらゆる可能性が無限に存在していたはずなので。
Q:主人公は最後どうなったの?
A:わからん。
普通にビッグバンに巻き込まれて死んだ……と思っていますが(ヘルメットにヒビも入ってるし)、なんせ量子空間内でのことなので、何がどうなるのかはまったく想像がつきません。これも好きに解釈していいんじゃないでしょうか。ただ、ビッグバン後はどっちみち可能性が固定されてしまうわけで……。
Q:主人公たちは結局救われなかったの?
A:ノマイやハーシアンたちはいなくなったけど、その一部は次の宇宙に引き継がれた。
143億年後の宇宙を見るかぎり、新しい宇宙は前の宇宙と違うところもあれば、似ているところもあるようです。
単純に「宇宙が何巡しようとも似た結果に収束していく」と捉えることもできますが(ジョジョ6部理論)、「君は先人たちの足跡をたどって歩く。そして君がたどった道は後に続く者たちを導くのだ」というのがこのゲームのテーマの一つだとするなら、やっぱり「作った人の意識や記憶が少なからず反映されている」と考えたいところです。新しい宇宙にキャンプやマシュマロが引き継がれたのはきっと、知的好奇心旺盛なノマイたちと、陽気で楽観的なハーシアンたちの思い出の残滓なのです。
ちなみに、「あの宇宙にマシュマロが存在していたのってもしかして……」とか、「宇宙の眼とプレイヤーの関係って……」みたいな超解釈も自分の中ではあるのですが、いかんせん妄想がすぎるのでそのあたりは僕の胸の内にしまっておこうかなと思います。
他にも思いついたら何か書き足すかも。それでは既にクリア済みの皆さん、よいゾンビライフを。
おまけ:個人的オススメ記事、サイト
その他、考察の参考になるサイトなど貼っておきます(たくさん貼ってもウゲッてなると思うので3つだけ)。
ラノベ作家・シナリオライターの砂義出雲さんのエントリ。見るべきものがほぼ全部まとまっていてリンク集としてとても優秀。
カラヤゲさんによるファンページ。圧倒的情報量と考察の深さ。いつも更新楽しみにしています。きみは激ムズOuter Wildsクイズに全問正解できるか(いまだ全問正解者ゼロだそうです)。
制作者アレックス・ビーチャム氏の論文を翻訳したもの。本作がどういう意図で作られたのか、「好奇心駆動型」という本作のコンセプトがどのようにゲームに落とし込まれたかなどを知ることができます。
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