「夜更かし」と「朝寝坊」
たぶん……僕だけに限ったことではないだろうが、自らの意思の薄弱さに呆れることがある。
無論、それはあらゆる分野に於ても言えることだが……とにかく、「夜更かし」と「朝寝坊」の問題である。
当然、仕事がある時は、最重要な「生活」に係ってくるので、「意思」とは別のある種社会的「規制」によって対処することになる。
しかし、休みの日となると、当の「規制」などキレイサッパリと忘れ去り、懶惰の欲望のままに、……いっそ善悪の境界を踏み外すに吝かではない。
もとより、かって人類は日の出と共に目覚め、日没と共に就寝するが、自然のリズムだったのかも知れない。
だが……現代に突入すると同時、夜といえども人工の光によって、昼もどきの快楽の世界に一変する。
当然、多少の寝不足に陥ったにして、大方はそれなりのリズムを掴み生活は恙ないはず。
ただし、現代社会というものは、快楽の幅を拡張すると同時に、「不安」という厄介な魔物をも開放してしまったのだ。
もとより、「不安」と言っても、その姿は様々で、人生そのものに係る、……要は、明日の自分に対する不確かな恐れ、すなわち……生活と心の問題に対する不確実性に根ざすものが大半だろう。
が……実はそれだけではない。
そう。ある程度、生活面や心の拠り所に根拠を見付けたにしても……それだけでは、どこか不安定で、安心立命できない、漠たる「不安」の黒雲が立ち込めることはないだろうか?
当然、その得体の知れない黒雲の払い方などは、哲学や精神分析に任せるとして……取りあえず、我々は未だ払い切れない「不安」に怯え続けることになる。
……少なくとも、僕の場合は……
先に記した「夜更かし」と「朝寝坊」は、この漠たる「不安」が原因ではないかと考えている。
言うまでもなく、一般的には「なぜ夜更かし」するのか……と問われれば、面白いアニメを見つづけたい、とか、この本を最後まで読みたい、とか色々だろう。
叉、「なぜ朝寝坊」するのかと問われたなら……、単にラクチンと同時に、休日位、日頃の寝不足を解消したいなどと答えるかも知れない。
別に、間違ってはいないが……僕が思うに……実は、それらは単なる言い訳であって……その根本には、先の「不安」に対する恐れがあるのだろうと……
「夜更かし」とは、その実……楽しい振りをしながらも、心のどこかで懸命になって「不安」から逃れ出るための端緒を、その尻尾なりとも掴みたいからではないのか……
たぶん、根拠こそ不明といえども、何らかの救命具を探し続けての「夜更かし」……
一方「朝寝坊」は何かと言うならば……多分に夢の要素が混じり込んでいて……一時とはいえ、今まで感じつづけ、嘖み続けていた「不安」を忘れていられるせいとも思う。
そのひと時を、少しでも延長したいがための「朝寝坊」……
そうは言っても、現実的に考察するならば、「夜更かし」は美容を含め、健康面でも利点はないし……「朝寝坊」しても……特に僕の場合など、一端目覚めで時計を見るに及んで溜め息が出るは毎度のことである。やりたかったコトの幾つかを、諦めたり、先送りにしなければならないのだから……
話は冒頭に戻るが……果たして、僕は意思が単に弱いだけなのだろうか?
漠たる「不安」など持ち出したこと自体、意思の弱さの言い訳に過ぎないのだろうか?
已んぬる哉……そんなコトを考え、今夜も「夜更かし」をし、明日は叉「朝寝坊」をしていまうのだろうが……