TBS NEWS いらすとキャスター爆誕☆裏話
TBS NEWSさんのバーチャルキャスターを、SIXの大八木さんと一緒にプロデュースいたしました。まさかの「いらすとや」さん起用です。
そんなバーチャルキャスターが、生まれるまでの裏話。
ことの始まり
去年の後半、SIXの大八木さんから誘われ、一緒にTBS NEWSさんのデジタル展開をサポートすることに。主にアドバイザリとしてお手伝い。抑えるべきテクノロジ、これからくるサービス、ソーシャル展開のコツなどを、入れ知恵するお仕事です。
そんな中、TBSさんから「若者向けの番組作りたいんだけど、一緒にやろーよ」というお話があり…そこで企画提出したのが、
バーチャル・ユーチューバーを作成し、そのままニュース報道をしちゃうまでを記録した、プロジェクトX的ドキュメンタリー
これが、いらすとキャスター計画の始まりです。
なぜ「いらすとや」なのか?
世間的にVTuberといえば、バ美肉(バーチャル美少女受肉、バーチャル美少女として転生することの意)がメインですが…
ここはちょっと競争が激しくなるだろうと予想。
あとチャレンジとして、「VTuberの特性が、生得的外見からの解放であるのに、みんな美少女に制約・集約される」事に対して、違うアプローチを提案してみたいなぁと。ある種、コンセプトアート的なチャレンジですね。
で、まずはクリアしたい要件を書き出し…
・ど真ん中なこと
・みんなで運用できる匿名性
・美少女キャスターに負けない、存在強度
・広告代理店系キャスターに負けない、存在強度
・最初にやったもんがちであること
ウンウンと唸りながら、色々なのイラストレーターさんや、フォトグラファー、3Dモデラーさんや、クレイモデラーさんなどを考えたすえ…
「あ、これはいらすとや案件だ」
と思い至ったわけです。この存在強度!
実は一緒にアドバイザリをやってるSIXは、こんなのとか、こんなのとか、こんなのとか、すごいお仕事ばっかやってる、イケてるクリエイティブエージェンシーです。
正直、ぶん殴られるかなぁと思いながら、「いらすとやさんってフリー素材のアレあるじゃないですか! あれで行きたいんです!」って言ったら、まさかのOK&GO。試してみることに。
怒涛のプロトタイピング
VTuberの可能性とポテンシャルを見せるためには、説得力のあるプロトが必要でした。となれば…言い出しっぺとしては、やるしかないでしょプロトタイピング。徹夜で作成。
この初代は、いらすとやさんの標準フリー素材がベースでした。
徹夜して作ったプロト1号。ぬるぬる動くよ!
全身ボーン稼働!どんなポーズもとれる!
英語のVやRまでサポートした、世界展開の口パクパターン。
ヘッドバンクや乗り出しなど、エンタメ番組用のオーバーアクション対応
豊富な拡張オプションも完備!
ガッシガッシと愛情と勢いだけで、手弁当でガチ実装です。プロトはAdobe Character Animatorで作成。
で、できあがったプロトを実演しながら、TBS NEWSの池田さんにプレしたところ、まさかのOK。
プロジェクトが正式スタートと相成りました。2017年も暮れのことです。
なぜTBS NEWSがバーチャルキャスターを出すのか?
あわせてみんなで、「TBS NEWSがバーチャルキャスターを出す意味」というものを練りこんでいきます。
我々はディストピアを作りたいわけではありません。なのでとりあえず、「人間のキャスターを排除する」といった世界観は最初に無くします。
あくまでチームが目指すのは、テックによる可能性の拡張。
・テクノロジーによる報道の拡張
・ニュースキャスターという働き方の拡張
・打席やチャンスの拡張
みたいな方向性を打ちたてました。
具体的に、これらがどう実行されるかは、今後の展開で少しづつ出てくるかなぁと。
実装
最終バージョンの実装は、Live 2D。僕はあくまでプロト提案、最終はTBSさんのインハウス実装となります。
自分で作りたいところですが、アドバイザリ視点では、アセット資産はインハウス実装を推奨すべきかと思います。というわけで、プロト以後は監修とアドバイザリをお手伝い。
開発を正式にスタートする前に、TBSさんから正式に、いらすとやさんにオファーを出していただきました。TV局のアセットを作るプロジェクトで、権利処理をしないままフリー素材として使うのは、道義上あるべきでないと考えたからです。ちゃんと、いらすとやさんにお金流れて欲しい!
正式オファーののち、オーダーメイドのお仕事として3体のバーチャル・キャスターをデザインいただきました。
本当は、2018年の3月ぐらいにデビュー予定でしたが…
諸事情により、公開延期がおきてしまいましたが…半年の雌伏を経て、遅咲きながら無事にデビューとなりました!
休眠してるあいだに、かなりVTuber戦国時代になってしまいましたが、当初の計画どおり、圧倒的な存在強度で埋もれずにすみました。いらすとやすごい。
今後の方向と倫理的なチャレンジ
いらすとキャスターは、納品して終わりというわけではありません。今後もアップデートを繰り返し、監修/アドバイザリ的な立ち位置でお手伝いする予定です。
個人的に一番大事にしたいのは、「いらすとや」さんの表現の中立性です。TBS NEWSで使ったことが原因で、いらすとやさんに右派、左派といった政治的な色がつくことは絶対に防がねばなりません。
まずは、政治やスキャンダル系ニュースでの運用はNG or 少なめの方向で、提案をしています。お茶の間がほっこりするニュース、みんながポジティブな議論をできるニュースを中心に、運用する。そんなアドバイスしていきたいなと思います。
この辺はnoteの世界と同じように、ポジティブな世界を大切にしていきたいと思います。
自分の中では、「いらすとや」はグッドデザイン金賞とって欲しいし、MoMAに収蔵されて欲しいし、デザイン史の教科書に刻まれて欲しいムーブメントです。長年の夢が叶いました。
おまけ
ちなみに企画のロケットスタートができたのは、だいぶ昔から、「絵画のアバター化」を研究開発していたおかげです。以下、THE GUILD社に死蔵される。VTuberの原型たち。
アンクルネ・サム(2015)
「Live 2Dで美少女以外を作ろう!」を合言葉に作った。この当時はまだ、VTuberの概念はない。Intelさんスポンサーで、MakersFairに出場。その後、Live2DさんブースでSWSXデビュー。キャラが強すぎて商業化に至らなかった。
シャラクネ・エドベー(2015)
アンクルネ・サムと同時開発。羽田空港の国際エントランスに置きたかったが、コネが無かった。いまでも展示場所を募集中。
XXXXちゃん(2016)
アンディ・ウォーホール財団から許可がでずに欠番。闇に消えた。
ゴッホネ・ゴッホ(2016)
作ってる途中で、「デッサンが超時空すぎて3D化は無理」として凍結。
個人的には、シャラクネ・エドベーちゃんを羽田空港に飾る夢はまだあきらめてないので、関係者の方は興味をもったらご一報ください。