自転車操業のようなやり方が続くライブアイドル業界 2025年は淘汰が加速か

2024年の『NHK紅白歌合戦』で乃木坂46が10年連続、櫻坂46が2年連続の出場を決める一方で、SNSでバズったのをきっかけに若い女性から圧倒的な支持を集め、ヒットチャートの常連になって地上波番組の露出も増えたFRUITS ZIPPERと超ときめき宣伝部が落選。一方でTWICE、LE SSERAFIM、ILLITと3組の女性韓国グループが選出されたことから、国内の女性アイドルファンの間で物議をかもした。

いまだに根強い人気を誇る坂道グループだが、彼女たちが表紙やグラビアを飾る雑誌が一時期ほど売れなくなったのは出版業界では周知の事実。一世を風靡したももいろクローバーZも、かつてのようにライブチケットが争奪戦になることもなく、彼女たちや超ときめき宣伝部が所属するスタプラ(STAR PLANET)も毎年のように所属グループが解散するなど苦戦を強いられている。またハロー!プロジェクトも一般的な知名度のあるメンバーの卒業が相次ぎ、固定ファンに頼らざるを得ない状況。AKB48グループも事情は変わらない。

FRUITS ZIPPERと超ときめき宣伝部以外は目立ったアイドルグループの台頭もなく、メジャーアイドルシーンの低迷は慢性化しつつある。一方、ライブハウスを主戦場にするライブアイドル界隈ではコロナ禍以降、地殻変動が起こっている。アイドル業界歴20年以上で、メジャー・インディーズどちらの運営にも携わってきたアイドルプロデューサーにライブアイドル事情を聞いた。

「アイドルに限らず、音楽業界全体のことですが、コロナ全盛の頃は三密でライブハウスをまともに使えない状況が続いていたのが、2年ぐらい前から徐々に緩和されて、今ではライブハウス側も、どんどんお客さんを入れちゃえという強気な姿勢になっています。

アイドルイベントに限って言うと、平日、土日問わず、月に何十本もやっているライブハウスも珍しくありません。むしろコロナ前よりもイベント数は増えています。コロナで落ちた売り上げを回収しなきゃいけないですからね」

ライブアイドルを応援するファンも自粛期間中の鬱憤が爆発したのか羽振りも良く、アイドルイベントをはしごして、お気に入りのアイドルと一緒にチェキ撮影ができる物販で大枚をはたいているという。だが、決してアイドルファンの数が増えている訳ではないことが業界内では大きな不安材料だ。

「昔からライブアイドルを応援していたファンが戻ってきているだけで、むしろ数は減っている印象です。あとコロナ以降で大きく変わったのは、ほぼCDを作るアイドルがいなくなったこと。コロナ前から減ってはいましたが、特にライブアイドルはCDを作らなくなりました。

若い世代はCDプレイヤーすら持っていないですから、メンバーも配信リリースだけで満足しているし、CDに幻想を抱いていないんですよ。アイドルイベントに呼ばれても基本的にノーギャラで、物販での売り上げが唯一の収入源なんですが、CDがないですし、Tシャツなどのグッズも昔より売れないので、チェキだけが頼みの綱なんです」

それでも数多くのアイドルイベントに出演すれば一定の収入を得られることから、このシステムに疑問を抱かないアイドル運営も多いという。また気軽に参入できることからコロナ以降、20代から30代前半の若いアイドル運営が増加したことで、長期的な視点で物事を見ずに、目先の収入に走る者が増えているそうだ。

「アイドルグループを育てるという感覚がないんですよ。極端に言えば、1億円稼ぐアイドルグループを時間をかけて育てるよりも、適当に女の子を集めて1000万円稼ぐアイドルグループを10組作ればいいという考え方。

昨今、アイドルのセカンドキャリアが取り沙汰される機会も増えましたが、それは大手事務所の話。ライブアイドル界隈で、女の子たちの将来まで考えている運営は少数派ですよね。『将来は女優になりたいです』なんて言い出したら、『他のところに行ってください。うちは新しい子を入れるので』と突き放す。でも、こんな自転車操業のようなやり方が続くとは思えないんですよね。すでに淘汰は始まっていますが、さらに2025年は次々とアイドルグループが解散していくと思います」

かつてはBiSHやでんぱ組.incのようにインディーズからスタートして、地道なライブ活動を重ねて、国民的アイドルグループに成長した例もあった。そうしたアイドルグループは運営、アイドルともに志が高かった。しかし今はアイドル本人も承認欲求のみで活動をする者も多く、運営もそれを良しとしている。ライブアイドル界隈という村社会を抜け出して、大勢のファンを獲得するには、女の子に愛情を持って、手間暇を惜しまないことが大切なのかもしれない。

(文=サイゾーオンライン編集部)

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