2018年上半期、最もアニソンを売った女・上坂すみれが語る“ノーフューチャー”な現在と未来
今年2月、iTunes Storeのダウンロードランキングで1位に君臨し続けた楽曲がある。それが声優・上坂すみれの歌う「POP TEAM EPIC」。毎回アニメ本編の前半パートと後半パートにおいて、キャラクターの担当声優を入れ替えるだけでまったく同じ内容を放送し、時にはニット製のぬいぐるみアニメをインサートするなど、アナーキー極まりない構成で、アニメファンはもとよりサブカルチャーに明るい面々から「クソアニメ」との最大級の賛辞を贈られた『ポプテピピック』のオープニングテーマだ。その昭和趣味、ソ連・ロシアに端を発する共産趣味、ミリタリー趣味などで、声優デビュー当時からなにかと話題を集めていた上坂だったが、今回自身の楽曲とこのアニメがネットでバズった余勢を駆って、一気にアニメソングシーンのマスターピースに。そしてこの8月には3枚目のフルアルバム『ノーフューチャーバカンス』を発表した。
そこで今回、日刊SPA!では上坂を直撃。新作を発表したばかりの“今一番売れているアニソンアーティスト”の現在地と、“ノーフューチャー”な未来予想図を探った。
――シングル『POP TEAM EPIC』のヒットで迎えた2018年前半っていかがでした?
上坂:冠番組(TOKYO MX・BS11『上坂すみれのヤバい○○』。2017年4~6月放送)の収録があったり、年末に両国国技館でライブがあったり、去年は割と大変だったような気がするんですけど、今年は平和な感じというか……。ツアーも来年ですし、今は意外とのほほんとしてますね。『POP TEAM EPIC』がiTunes Storeでずっと1位だったのは「すごいな」と思いました。
――『POP TEAM EPIC』、ひいてはアニメ『ポプテピピック』が盛り上がっている状況にはあまり巻き込まれていない?
上坂:実はなにか言われているのかもしれないんですけど、エゴサーチをあんまりしないから気付かずに済んでます(笑)。あんまりアニメを観ないだろうな、というタイプの関係者の方や、全然違うアニメのプロデューサーさんから「『ポプテピピック』の曲、よく聴いてますよ」って声をかけていただいたりはしましたけど、私が流行を実感したのはそのときくらいです。
――ではヒットの要因を分析できたりは……。
上坂:難しいですね。『ポプテピピック』があんなに話題になるとは思っていなかったので、「何個もラッキーが重なったのかなあ」という気がしています。
――それこそアニメファンやネットユーザー同様、映像を観た瞬間「これはヤバい!」と前のめりにはならなかった?
上坂:ヤバい感じはありましたけど、およそ万人受けするとは思っていなかったです。だからあの作品が万人に受けている、この21世紀の世論はどうなってるんだろう? という気がしています(笑)。昔だったら謎のニッチな番組で終わっていた気がするんですけど、まさかあれが……。なんというかネット文化の成熟ぶりを感じますね(笑)。
―― 一方『POP TEAM EPIC』のヒットの要因は?
上坂:アニメ人気のおかげではあるんですけど、そのアニメとはほどよく相反している感じがいいのかなあ? アニメはギャグものとも言い切れない、なんかあんな調子の作品なんですけど、曲はストレートにカッコいい感じなので。作家さんたちにそういう曲をオーダーした須藤さん(キングレコード・須藤孝太郎。上坂の音楽プロデューサーであり、『ポプテピピック』のプロデューサー)の采配のおかげだと思ってます。
――ちょっと余談になるんですけど、アーティストデビューから6年のお付き合いのうちに、須藤さんに『ポプテピピック』みたいなストレンジなアニメを作ってしまう片鱗が見えたことは?
上坂:「あの人、よく会社員でいられるな」とは常々思ってます(笑)。いつも「会社に行かないよ、僕は」「会社嫌いだからね」っておっしゃってますし。
――確かにそれは会社員向きじゃない(笑)。
上坂:「ドトールが好きで、ドトールが会社だと思ってる」っておっしゃっていて。……あとなんだっけな? 「僕は昼酒が好きで、昼から開いてる新橋の酒場で飲んで、そのあと公園のベンチでホームレスごっこをするのが好きだ」とも。それが近況らしいので『ポプテピピック』は非常に須藤さんの精神世界を表したアニメだと思っています。
――その方にご自身の楽曲をプロデュースされるのってどういうご気分ですか?
上坂:すごい売り上げ至上主義みたいなプロデューサーさんじゃなくてよかったです。意識高い系の人よりクズのほうが私にタイプが近いので(笑)。
――あはははは(笑)。ただ、その“クズ”と作った今回のアルバム『ノーフューチャーバカンス』は本当にお世辞抜きの良盤に仕上がっています。
上坂:ありがとうございます!
――2016年発売の前回のアルバムはタイトルからして『20世紀の逆襲』。ちょっとアナクロな上坂さんの趣味の世界を体現した作品だったんだけど、今作はすごくアップ・トゥ・デートな内容になっている。
上坂:確かに今っぽいですよね。
プロデューサーの精神世界が表出した“クソアニメ”
『ノ―フューチャーバカンス 』 【通常盤】 |
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