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奈良岡功大選手
新世代の旗頭は、世界の舞台で確実に経験を積んでいる。バドミントン日本代表、男子シングルスの奈良岡功大(FWDグループ)は、世界ランクを3位まで上昇させた(7月11日更新時)。昨年6月に日本A代表に昇格した時点では、42位。わずか1年で、世界王者に善戦するなどトップレベルで戦える選手に飛躍した。一方、BWFワールドツアーの優勝は昨年のベトナムOP(スーパー100)のみ。インタビュー後編では、タイトルへのこだわり、いよいよ7/25(火)より開幕するジャパンオープンで見てほしいところなどを語ってもらった。
■遠征中、よく話すのは桃田賢斗選手
――5月に五輪レースが始まりましたが、気疲れやストレスを感じていますか?海外での息抜きがうまくできていない部分はありますか?
うーん、昨年の後半から連戦ですし、上位のツアーを回らせてもらって、世界ランクを上げなければ……と思いながらやっていたので、レースが始まったからという変化はないです。疲れてはいますけど、昨年と同じだなというくらいの感覚です。海外では、試合がなくなった日も、ほかの選手の試合を見たり、自分の試合の映像を見たりしてバドミントンのことばかり考えています。どう勝つか、ばかりですね。
――遠征中、相部屋ですよね?誰とどんな話をしていますか?
最近は、シャッフルされていますけど、桃田(賢斗)さん、緑川(大輝)、古賀(輝)さん、常山(幹太)さん……かな。話す機会が多かったのは、桃田さん。同じ部屋になったときは、試合の感想を聞かれたり、どうやったらあの選手に勝てるか、なんていう話をしていました。面白いですね。プレーも考え方も違うので、そのまま参考になるわけではないですけど、そういう考え方、やり方もあるんだなと思いますね。桃田さんは練習のときはスマッシュを打つけど、試合になると打たずにコントロールすることが多いですよね。理由も聞きましたけど、その方が自分のプレーができると言っていました。練習と違うことをやっても、それが試合で上手くできるのはすごいなと思います。
――奈良岡選手は、練習と試合で違いはありますか?
僕は、練習のプレーが試合のプレーと思わない方がいいというくらい、違います。練習でも初日は守備、次の日は攻撃、その次の日はテクニック重視でネットの白帯を狙うような球を積極的に狙うとか、その日毎にテーマを持ちながら臨んでいることが多いですね。それを、試合の展開に応じて引き出す感じです。
バドミントン 奈良岡功大選手インタビュー動画
新たなフェイントショット誕生!?
■レース中はタイトルより「平均して高ポイント」を優先
――五輪レースが始まってからもプレー内容で手応えがあり、安定してポイントを稼げているのは良い状況だと思います。一方で期待が高まる中、昨年のベトナムオープン(スーパー100)からタイトルに手が届いていません
今は五輪レース中なので、平均して高いポイントを取っていくことの方が大事だと思っています。優勝をしても、次の大会で負けるというパターンだと(世界ランキングは直近1年の成績が反映され、毎週1年前の成績が消えるため)1万点を失って、補填(上位10大会分の成績に追加されるポイント)が3000点しかないと7000点も下がりますけど、失うのも取るのも6000点ならランキングポイントは落ちません。まだ22歳でパリ五輪後も選手生活を続けるつもりでいるので、タイトルを今取らなくてはいけないと焦る必要はないと思っています。
――そういう考え方に至った背景は?
昨年の後半にスーパー750やツアーファイナルズでベスト4に入れてポイントを稼げた時に、今後そのポイントが効力を失う時にどうやって補填すればいいのかを考えたのですが、ジョナタン・クリスティー選手(インドネシア)とか、ロー・ケンユー選手(シンガポール)、チョウ・ティエンチェン選手(台湾)とかは、常にベスト8~4にいて、時々決勝にも上がって来る。それでずっと世界ランク1桁にいてシードを確保しているので、同じような形から決勝進出や優勝を狙えればいいなと考えました。
――五輪レースで必要な10大会分、或いはツアーファイナルズに必要な14大会分の高ポイントが揃ったら、欲を出そうかなという感じでしょうか?
そうですね。上位大会のベスト4で7700~8000強のポイントになるのですが、それが10大会分付いてきたら(上位大会の決勝進出、優勝で獲得できる)1万ポイントを狙ってみようかなというところですね。10大会分あれば、優勝だけ狙っていって1回戦負けの大会が出てきても怖くないので。でも、来年も五輪までに(今までは秋の開催だった)フランスオープン(スーパー750)が入ってきたり、最後にアジア選手権(昨季からスーパー1000に格上げ)があったりと、最後までポイントの高い大会もあるので、ケガなく平均的に高ポイントを稼ぐことがベースになると思います。
■「まだ言えないけど、フェイントショットの練習はしている」
奈良岡功大選手
――1万ポイントを取るために必要なことは?連戦が続くので、ピーキングというかメリハリも必要になるかと思いますが?
今の自分を変えることなく、全てのスキルを全体的に上げていきたいです。ピーキングと言っても、スーパー1000やスーパー750は1年間で何度かある大会なので、そこはベスト8~4でも良いと思います。それよりも(タイトルにこだわるのは)年に1回しかない世界選手権やツアーファイナルズ、あるいは4年に1回の五輪、アジア大会のような大会で勝ちたいです。
――ジャパンオープンは、日本のファンが優勝を望んでいると思いますが?
昨年2回戦負けなので、それより勝ちたいですね。組み合わせを見ると、前回大会で負けたアントンセン選手と再戦する可能性があるので、できれば再戦して勝ちたいです。
――プレー面で変わらなくても、勝ったらシャトルを客席に打ち込んだり、ユニフォームを脱いで投げ込んだりするファンサービスのパフォーマンスなどがあっても良いのでは?
いやー苦手なので(笑)シャトルを打つくらいはしようかな。どちらかと言えば、自分のプレーで盛り上がってほしいです。多彩なショットを打つ方なので。相手のエースショットをレシーブしたり、色々なテクニックも見せたりできるかなと。
――先日、テレビ番組では手首の柔らかさを生かしたクロスショットが紹介されていました
今まだ言えないですけど、他にもフェイントショットの練習はしています。今年の始め頃から練習していて、ほぼ完成しているのですが、まだ使っていません。どこで使っていこうかなと。カナダではちょっと試しながらやっていたのですが。(全部見返せば分かる?)そうかもしれません(笑)
――最後に、あらためて意気込みを聞かせてください
日本でやる大会なので皆さんにたくさん応援してもらえるよう、できるだけ勝ち進みたいです。頑張ります!
トップレベルの国際大会に出場したいと願っていた昨年の春から世界は一変した。今や、世界トップレベルでタイトルが期待される、日本のエースだ。ジャパンオープンで勝ち上がれば、その存在感と期待は、ますます大きなものになる。日ごろから「自分でプレッシャーをかけたくない」と話す選手だけに優勝宣言は出なかったが、自国開催のプレッシャーの中で持ち前の技量を発揮すれば、狙える位置にはいる。どんなプレーを見せてくれるのか、楽しみだ。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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