1月22日はセガサターン用ソフト『サウンドノベル 街 -machi-』(以下、『街』)が発売された日だ。
本作は、『弟切草』、『かまいたちの夜』に続く、チュンソフト(当時)のサウンドノベルシリーズ第3弾。開発・販売をチュンソフトが手がけ、製作を中村光一氏、原作・監修は長坂秀佳氏、総監督を麻野一哉氏が務めている。
セガサターン版のタイトルは『サウンドノベル 街 -machi-』。1999年1月28日には、システムを一部変更し、新要素を追加したプレイステーション版『街 〜運命の交差点〜』が発売。2006年4月27日には、シナリオとサウンドテスト機能が追加されたプレイステーション・ポータブル用ソフトとして『街 〜運命の交差点〜 特別篇』が発売されている。
『街』はセガサターンを代表する名作として知られ、現在も熱狂的な人気を誇るタイトルだ。本作の主人公は8人(隠しシナリオを含めると10名)。渋谷を舞台に、10月11日から15日の5日間の群像劇が描かれる。主人公たちはそれぞれ面識はないものの、渋谷で同じ時間帯を共有している。プレイ中、特定の行動や選択、事象(フラグメント)にどう対応するかによって、自身のシナリオはもちろん、別の主人公のシナリオにも影響を与える。
この「マルチフラグメントシステム」は、バタフライエフェクトをビデオゲームに落とし込んだかのような、発明と呼べるものだ。また、別の主人公のシナリオへ移動する「ZAP(ザップ)」機能も搭載しており、シナリオ展開に独特のテンポを与えている。
ちなみに、本作はもともと「主人公が100人」という構想があり、渋谷を舞台に100通りの物語が繰り広げられるプロジェクトだった。この「主人公100人構想」を実現するにあたり、100人の主人公をグラフィックで描き分けるのは困難という判断から、実写画像が採用されたというエピソードがある。
プレイステーション・ポータブル版『街 〜運命の交差点〜 特別篇』には、セガサターン版とプレイステーション版には収録されなかった秘蔵シナリオ「サギ山編」と「パトリック・ダンディ編」が追加されている。「サギ山編」の主人公、サギ山役を演じるのは「ヨースケ」名義時代の俳優、窪塚洋介だ。
本作のシナリオは、ギャグやサスペンス、ホラーなど、さまざまなジャンルで構成されている。ジャンルのごった煮によって予想不可能な展開が繰り広げられるがゆえに、『街』は多くのファンを獲得し、聞かれてもいないのに好きなシナリオの魅力を語り出すプレイヤーを生み出した(ボーナスシナリオ「花火」は絶大な人気を誇る)。また、登場人物はいずれも強烈な個性があり、独特の口調とセリフ回しは記憶に残るものになっている。
筆者がとくに好きなのは、謎の組織「七曜会」がらみのシナリオ。独自のルール、合言葉が印象的で、本作をプレイしたあとには思わず「チンチコーレ!」と口にしていたり……。
<七曜会の合言葉と意味>
・「チンチコーラ」:疑問・質問
・「チンチコーリ」:意義・否定
・「チンチコール」:挨拶・宣誓
・「チンチコーレ」:祝福・賛成
・「チンチコーロ」:禁句。意味は不明
※「チンチ」がもうひとつ付くと、言葉の意味が強調される。
例:「チンチ・チンチコーレ」
というわけで、この合言葉でお別れしたい。
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