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ナルメル王のパレット。下エジプトを象徴するデシュレト(高さのない赤冠)をかぶったナルメル王が、死んだ敵を検分する姿が描かれている。紀元前3100年頃、エジプト博物館所蔵。(SCALA, FLORENCE)

古代エジプトの最初のファラオは誰なのか? 「統一王」の謎を追う

2022.11.05

 今から5000年以上前、エジプトという単一の国家は存在せず、南の上(かみ)エジプトと北の下(しも)エジプトという2つの国があった。古い陶器に記された銘文や王を描いた絵は、上エジプトと下エジプトが異なる伝統を持つ別々の国だったことを示している。

 統一前の上エジプトと下エジプトの王の姿は、異なる装束で描かれていた。上エジプトの王はヘジェトという細長い白い冠をかぶり、下エジプトの王はデシュレトという高さのない赤い冠をかぶっていた。

 紀元前3100年頃、上エジプトのナルメルという王が、この状況を一変させる。ナルメル王は、肥沃なナイルデルタ以西の下エジプトを自らの王国に組み入れ、南部の緑豊かなナイル川流域(現在のカイロからナセル湖にかけての地域)まで広がる統一国家を作り、エジプト第1王朝を創始した。

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 上エジプトと下エジプトの統一は、政治的な国家の始まりとなっただけでなく、偉大な文化国家の始まりでもあった。ナルメル王以降、エジプトは独自の視覚的な表現形式を発達させていった。その図像とシンボルは、クフ王からハトシェプスト女王やプトレマイオス12世まで、代々のファラオの権力や力や結束を示す道具として、数千年にわたって使われつづけた。

ナルメル王のパレット

 ナルメル王の時代の記録はほとんど残っていない。だが、その治世に起こった変化を教えてくれるものが残っている。それは、灰色のシルト岩に、神々や獣、王の姿を彫刻したパレット(化粧用の顔料をすりつぶして混ぜるための石板)だ。

【関連ギャラリー】古代エジプトの初代ファラオの謎を追う 写真14点(写真クリックでギャラリーページへ)
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アマルナで発見されたこの泥岩製のパレットは、「狩人のパレット」または「ライオン狩りのパレット」と呼ばれている。中央の円形の仕切り部分は化粧用の顔料をすりつぶすためのもので、その周囲には、武器を持った人々が、2頭のライオン、ガゼル、ダチョウ、ジャッカル、ウサギなど多くの動物を追いかける様子が表現されている。パレットは割れていて、破片の1枚はロンドンの大英博物館に、残りはパリのルーブル美術館に収蔵されている。紀元前3200年頃。(ALBUM)

 ナルメル王のパレットは神殿に奉納されたもので、19世紀末に英国の考古学者によって、ルクソールの南にあるヒエラコンポリス(ネケン)の神殿跡から発見された。制作時期は紀元前3200〜前3000年頃と推定されている。

 パレットは両面に彫刻が施されていて、どちらにも王が描かれている。現在発見されているファラオを描写した作品としては最も古い。片方の面のナルメル王は上エジプトのヘジェトをかぶり、敵の髪を掴み、メイス(棍棒)を振り上げている。もう一方の面のナルメル王は下エジプトのデシュレトをかぶり、首をはねられた敵の死体を検分している。これは2種類の冠をかぶる王の姿が描かれた初の作品だ。

ナルメル王のパレットの裏面には、上エジプトを象徴するヘジェト(細長い白冠)をかぶった王が敵の髪をつかんでメイスで打ちかかる姿が刻まれている。王の背後にはサンダルを持つ人が控えている。パレットの上部に2つ並んでいる、角のある女性の頭は女神バトを表している。バトは、後に重要な女神ハトホルと関連づけて考えられるようになった。(BPK/SCALA, FLORENCE)
ナルメル王のパレットの裏面には、上エジプトを象徴するヘジェト(細長い白冠)をかぶった王が敵の髪をつかんでメイスで打ちかかる姿が刻まれている。王の背後にはサンダルを持つ人が控えている。パレットの上部に2つ並んでいる、角のある女性の頭は女神バトを表している。バトは、後に重要な女神ハトホルと関連づけて考えられるようになった。(BPK/SCALA, FLORENCE)
ナルメル王のパレットの表面には、下エジプトを象徴するデシュレトをかぶり、首をはねられた敵の死体を検分する王の姿が大きく描かれている。真ん中には、長い首を絡ませたメソポタミア風の2頭のサーポパードが、下には、ナルメル王を表していると思われる雄牛が城壁に突進する姿が描写されている。(SCALA, FLORENCE)
ナルメル王のパレットの表面には、下エジプトを象徴するデシュレトをかぶり、首をはねられた敵の死体を検分する王の姿が大きく描かれている。真ん中には、長い首を絡ませたメソポタミア風の2頭のサーポパードが、下には、ナルメル王を表していると思われる雄牛が城壁に突進する姿が描写されている。(SCALA, FLORENCE)

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