9月6日、死海の近くの洞窟で古代ローマ時代の剣が4本発見されたとイスラエル考古学庁が発表した。剣は木と革でできた鞘(さや)の中で2000年近く保存されていて、その状態は驚異的に良好だという。
剣は、エルサレムの南東に位置するユダヤ砂漠の洞窟の奥深くで、鍾乳石の壁の後ろに隠されていた。隠された時期は紀元2〜3世紀で、当時、この地域はローマ帝国軍とユダヤ属州の反乱軍との戦場であり、反乱軍の隠れ家でもあった。
金属や、木や革のような有機物で作られた工芸品が、何百年も何千年も風雨にさらされながら残存することはめったにない。しかし、「剣の洞窟」と呼ばれるようになったこの洞窟の環境条件は、鉄製の刃を、鞘、つば、柄(つか)とともにそのまま保存した。
英レスター大学の考古学者で、『Rome and Sword: How Warriors and Weapons Shaped Roman History(ローマと剣:戦士と武器はいかにしてローマ史を形づくったか)』の著者であるサイモン・ジェームズ氏は、「最高の保存状態ではありませんが、これまでに発見された古代ローマ時代の鞘つきの剣としては最高のものです」と言う。
鍾乳石の後ろに隠された剣
4本の剣は、イスラエルのエン・ゲディ自然保護区で2023年6月に発見された。ヨルダン渓谷沿いの崖に点在する洞窟群は、1万年以上前から人々の隠れ家になってきた。
イスラエルのアリエル大学とエルサレム・ヘブライ大学の研究者は、鍾乳石に書かれた古代の碑文を記録するために洞窟を訪れた際に、岩の間から鉄製の槍の穂と加工された木片が見えていることに気づいた。彼らがこの発見についてイスラエル考古学庁ユダヤ砂漠調査プロジェクトに報告すると、金属探知機を携えた調査チームが現地に派遣され、それまで調査されていなかった洞窟の上部の鍾乳石の後ろに隠されていた4本の剣を発見した。
2017年以来、調査チームはイスラエル考古学庁遺物略奪防止部門の協力を得て、ユダヤ砂漠に点在する数百の洞窟を体系的に調査し、盗掘者に略奪される前に遺物を見つけようとしている。最近では、1万年前の籠や、60年ぶりとなる死海文書の新たな断片などが発見された。(参考記事:「死海文書の新たな断片を発見、「恐怖の洞窟」で」)
紛争と混沌
ナショナル ジオグラフィックは、発見から数日後にエルサレムで鉄剣を独占的に撮影した。場所は、ジェイ&ジーニー・ショッテンシュタイン・イスラエル考古学国立キャンパスの保存研究所だ。
4本の鉄剣のうちの3本は、古代ローマ時代の騎兵隊や歩兵が使った両刃の長剣スパタと考えられている。長さは60cmほどで、それぞれに木製のつばと柄が付いているが、様式や技巧はまちまちだ。研究者たちは紀元1世紀後半から2世紀のものと推定している。
4本目の剣の長さは45cmほどで、金属製の環状の柄頭(つかがしら)がついている。この特徴的なデザインは、もともとはローマと敵対する人々が好んで用いていたもので、ローマ軍は紀元2〜3世紀に採用した。