チリ沖の深海を探査していたチームが最近、新種と思われる奇妙な生物を100種以上も発見した。SF番組にはエイリアンとの遭遇が付きものだが、たとえ想像上の生物でも、こうした深海生物ほど奇妙なものはほとんどいない。
「探査が進んでいない辺境の海で新種を発見すること自体は予想外ではありませんが、100種以上も発見できたことには感激しています」と主任研究員のハビエル・セラネス氏はナショナル ジオグラフィックにメールで語った。セラネス氏はチリ、北カトリック大学の海洋生物学者だ。
セラネス氏らは1月、シュミット海洋研究所の調査船「ファルコン」で南東太平洋の深海探査に出発した。そして、ライトとカメラを搭載した遠隔操作の無人潜水機(ROV)を1500メートル以上潜らせ、海面のはるか下に隠された驚異をライブストリーミングした。(参考記事:「トワイライトゾーン 暗い海の生き物たち」)
チリの深海には、星座のような外見で、回転草(タンブルウィード)のように水中を転がる生物、細長い脚がとげに覆われた深紅の甲殻類、生物発光するさまざまな生きものがいた。
ひときわ目を引いたのが「歩く」魚で、大きく見開いた目とかぎ針編みのような皮膚を持つ。獲物をおびき寄せる餌のような「誘引突起」で有名なアンコウの仲間、フサアンコウの一種だ。かぎ針編みのような皮膚は小さな針でできており、体を保護するとともに、感覚器官のための穴が開いているようだ。(参考記事:「【動画】海水を吸って膨らみ息止める魚、初の発見」)
このフサアンコウはひれで海底を歩けるが、狩りの戦略であると同時に、泳ぐよりもエネルギー効率が良いためではないかとセラネス氏は述べている。(参考記事:「黒い深海魚、99.9%の光を吸収と判明、闇に紛れる」)
南東太平洋でフサアンコウが報告されたのはこれが初めてで、新種の可能性が高いと専門家は考えている。
「(フサアンコウ科)Chaunacops属の生態や行動はほとんど知られていません」とブルース・マンディー氏は話す。例えば、Chaunacops属の誘引突起がどのように機能するかについては、「私が知る限り、全く研究されていません」とマンディー氏は話す。氏は元米海洋大気局(NOAA)の魚類学者で、今回の探査には参加していない。(参考記事:「【動画】交尾する深海アンコウ、史上初の撮影」)