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第10話:世界の闇に飛び込む者

>更新履歴

・午前4時17分付

誤植修正:描けば→書けば


・2021年8月23日付

細部調整


・2023年5月27日付

細部調整

 草加市内のとあるゲーセン、入口には新作入荷を告げるポスターが貼られていたり、告知のポップが目立ったりしている。そのゲーセンの自動ドアの前に立ち、ドアを開けたのは私服姿のガーディアン所属の女性だった。


 彼女は過去に団長こと蒼流の騎士とも戦い、敗北をしている。その後は団長の一件で部署変更もありえる状態になっていた。最終的には今までの実績もあって、左遷や転属はなかったが――数日の謹慎を命じられている。


「貴方、ガーディアンの私服でしょ?」


 自分の目の前に現れたツインテールにメイド服と言う女性、秋葉原等で見かけそうなコスプレイヤーにも見える。しかし、ガーディアンは事前情報もあったのでおびえる様子もなかった。逆に敵視しても不利になると考えているのかもしれない。


「まさか、あなたが動いているとは――ビスマルク?」


 ガーディアンは目の前の人物が団長から聞いていたビスマルクだと分かった。しかし、探していた人物とは違う為か、いわゆるマニュアル対応でごまかそうとしているのかもしれない。


「それを教えたとして、何をするつもりだ?」


 ガーディアンの女性は、ビスマルクの要求している情報が何かをある程度把握している様子。要求している情報は『七つの鍵の所有者』の正体と出現するパターンである。何故、こう言った表現で要求しているのか?


 普通であればまとめサイトの表現を使えば『七つの鍵の所持者の行動パターン』等と言うはずだろう。何故、ビスマルクは『出現』と言ったのか?


「バーチャルアイドルの原理は知っているでしょう? もしくは、AR技術を応用した特撮技術――」


 ビスマルクはさらに専門用語を混ぜて彼女に情報を要求する。ここまで説明している以上、その情報が重要であると――明白だろう。それでもガーディアンが情報を喋る気配がない。よほどの機密事項なのか、それとも知らされていないのか?


「バーチャルスーツアクターか。そう言えば、ARゲームの一部で試験的に運用されているな」


 ガーディアンの方もバーチャルスーツアクターは知っていた。いわゆるAR映像を使用した特撮で、スーツ制作等の作業を簡易化する為のシステムである。実際は別のジャンルで使う予定の物だったが、ARゲームの分野で使用を開始していた。それが今はバーチャルアイドルの着ぐるみとして運用もされ、応用技術も拡散し始めている。


「そこまで知っている以上は、彼らの正体も把握しているのでは? 蒼流の騎士も――」


「!? 何故、それを知っている」


 ビスマルクの話したワードに思わず反応してしまい、自分が何を知っているかまで気付かれてしまう。向こうは蒼流の騎士の正体も把握している可能背が非常に高く、下手に話せば――。


「初代蒼流の騎士がまとめサイトの管理人だと言うのは分かっているだろう。彼らがやろうとしていた事は別にしても」


(そこまで――他のサイトに流出しているのか)


「しかし、彼らがやろうとしている事のおおよそは分かっていた。過去に類似事例はWEB小説に書かれていたからな」


(WEB小説の登場人物の一人に蒼流の騎士がいる事も、向こうは知っているのか?)


「そして、その舞台は異世界ではない。厳密には現代かもしれないが、その詳細は――」


(蒼流の騎士、棋士と言う称号からも異世界作品ではないのか?)


 ガーディアンの方は明らかに焦りが見え始めている。ビスマルクの話し方もあってか、誘導尋問に見える可能性はあるだろう。


「蒼流の騎士が異世界作品の人物ではないと言うのは、ある程度のヒントは出ていたのだな」


「ヒント? ソレはどういう事?」


 その言葉を待っていた――と言わんばかりにビスマルクは口で笑みを浮かべる。おそらく、誘導尋問のような話をしたのも――。



 立ち話もアレだったので、ビスマルクは視界の近くに見えたベンチで話そうと言わんばかりに移動を始めた。話の内容も長くなるだろう――とビスマルク側が考えているのだろう。ガーディアンの方も、ある程度の覚悟を決める。


「飲み物はいらないな。話自体はすぐに終わるが、周囲に聞かれるのも都合が悪い」


 ビスマルクがスマホを操作し、ある物をガーディアンの女性に見せた。その画像は、八人目の鍵の所有者でもあるアルストロメリアだったのだが――。


(彼女は確か、アイオワでは――)


 ガーディアンの女性は口を手で押さえてつぶやく。まさか、彼女が呼ばれたのか――と。そうであれば、こちらが掴んだ情報もフェイクではない事が分かってきた。これが流出すれば、一部勢力が悪用しかねない。


「外見を見る限りでは、ある作品に登場するコスプレゲーマー、アルストロメリアだと記載があった」


 先ほどの画像を見せた後にビスマルクはスマホを操作し、アルストロメリアのファンアートの一枚を見せる。その外見は先ほどの画像のスーツ姿とは異なり、ビスマルクと同じようなメイド服にセミロングと言う髪型の女性だ。体格の方も、何だかぽっちゃり気味に見えた先ほどとは――違和感があるかもしれない。


(確かに、あの作品にアルストロメリアは出ている。しかし、彼女は明らかに――)


 ガーディアンの女性は、イラストタグにアルストロメリアと記載のあるイラストを見て、どうしても何かが引っかかっている。この違和感の正体は何なのか? 本当に彼女はアルストロメリアなのか?


「こちらとは別に、リアルの世界でコスプレゲーマーのアルストロメリアは存在する。しかし、それを題材に小説を書けば明らかに二次創作と判断されるな」


 ビスマルクが引っかかっているのは、リアルでアルストロメリアと名乗るゲーマーが存在する事だ。WEB小説サイトに掲載されている作品は原則として一次創作であり、二次創作ではない。二次創作を扱うサイトもあるが、実在人物の二次創作を鍵の所持者として呼びだしたとなれば肖像権侵害等で、あっという間に足が付く。そこまで蒼流の騎士がヘマをするのか? ビスマルクが気にしているのは、そこだったのである。

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