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第九話 帰宅と反省

「おぉ。これで帰れます! 師匠、ありがとうございました!」

「まぁいつでも遊びにこいよ。修行もつけてやる。あ、この剣と手紙を持っていけ。今代の王に手紙を見せればわかる」


 カインは剣と手紙を受け取った。剣は鞘から一度抜いてみると、日本刀のように片刃で少し反っていた。七色に光る刃を確かめてから納刀しそのままアイテムボックスに仕舞う。


「俺が昔使ってた剣だ、日本刀に似せてつくってみたんだ。これからその武器を使うといい」

「ありがたくいただきます。また遊びにきますね『転移』」



 カインはユウヤが創った世界で数年間(・・・)修行をしていた。

 あちらの世界では一年がこちらの一日だ。

 外見は数年間で身体的な成長しているはずが、数日前とまったく変わらない(・・・・・・・・・)外見のカインは屋敷の近くに転移した。 


 この世界では数日だったかもしれないが、カインは5年間の修行を終えて帰ったきた。

 自宅の屋敷を外から眺め、やっと帰ってきたんだと実感した。

 自分の屋敷の扉をそっと開けて中のロビーに入る。


「ただいま……」


 カインは小さく呟いた。


 ロビーには、なぜかコランやシルビアが数人の騎士を含めて円になり話をしていた。

 何かあったのかと思い、その円の中に入っていく。


「本当に王都内と王都の周りを探したんですか! 必ずどこかにいるはずです。探してください」


 シルビアが鬼気迫った勢いで騎士たちに指示を出している。

 円の後ろ側にいた騎士にカインは聞いてみることにした。


「騎士さん、何かあったんですか?」


「カイン男爵が行方不明になったのだ。二日間で帰るといい、家を出てすでに五日が経過している。それで王都内を含め王都の外まで捜索隊が結成されているのだ」


 騎士は答えてくれた。


「……」


 カインの額には冷や汗が垂れる……。


「ところで君は誰だね? ここはカイン男爵様のお屋敷だ、冒険者としてカイン男爵様の捜索の手伝いにきたのかね? それなら、そこにいる家令のコラン殿を尋ねるといい」


 騎士が丁寧にカインに説明してくれる。その話し声を聞いてコランとシルビアがこちらを向いた。

 二人の視線が、カインを捉えた。



 そして、シルビアは持っていた書類をそのまま落とした。

 ブルブルと震えながら、涙を流す。



「ガインざまぁぁぁ~~~~!!!!」



 シルビアが飛び込んできた。

 カインの胸に頭を押し付けシルビアは泣いている。

 話していた騎士もまさか、カイン男爵本人とは思わずに驚いていた。


「よがったですぅ。ふづがでがえるっていっだのにもういづかもがえっでこねーがら~」

(よかったですぅ。二日で帰るって言ったのに、もう五日も帰ってこないから)


 胸に抱きついてきたシルビアの頭を撫でながらカインは皆に謝った。


「皆さん、ご迷惑をおかけしてすいません。無事に帰ってきましたのでご安心ください」


 捜索をしてくれた騎士たちにカインは頭を下げた。


「カイン男爵、頭をお上げください。王城の方でも心配する声があがっておりました。さっそく王城のほうに報告に向かいます」


 騎士たちは頭を下げ退出していった。

 個室に移ったあと、コランとシルビアの三人になった。


「カイン様、きちんと説明してください」


 カインは説明することに悩んだ。初代国王と一緒にいたと言えないからだ。

 

「グラシア領の魔物の森に行ってたんだけど、そこで迷子になっちゃって……」


 二人から冷たい視線が……。


「「通用しません」」


「ごめんなさい。それについては、今は説明できません。するなら陛下か宰相になると思います」


 カインは素直にそう言った。陛下というその言葉に二人は喉を鳴らした。


「それとお願いがあります。家で召喚獣を飼いますのでお願いします」


「「えっ」」


「見てもらえればわかるかと……」


召喚(サモン)「ハク」「ギン」』


 地面に魔法陣が出現し、現れたのは大型犬くらいの大きさの白い狼と、同じ大きさの銀色のドラゴンが出てきた。


「「えぇぇぇぇぇえええ!!!」」


 コランとシルビアの二人はいきなり出てきた白狼と銀竜に驚いたが、シルビアはその可愛さに手が伸びていく。


「かわいい……」


 シルビアはそーっと白狼のハクに手を伸ばしていく。

 ハクはそっとカインの後ろに隠れた。もちろんギンもだ。


「あっ……」


 シルビアは悲しそうな顔をして、伸ばした手を戻していった。


「この子たちをうちで育てる予定です」


「カイン様、この二体の種類は……」


「それは聞かないでください……。ハク、ギン、二人ともシルビアの言うことを聞くんだよ」


「ワゥ」「キュィ」


 二体とも返事をした。


「ハクもギンも頭がいいから、言葉を理解しているからね」


「わかりましたカイン様」


 二人共了承してくれたみたいだ。


「あ、そういばカイン様」


「うん? どうしたの?」


 コランが思い出したように話し始めた。


「テレスティア王女殿下とシルク様がかなり心配なされてると……学園も休んでますし。学園が終わってから毎日お二人が見えられてました」


「あ……」


 カインの背中に冷たいものを感じた。


「王城から呼び出しもあると思いますし、よろしくお願いします」


「コラン、それはちょっと実家に行ってたとかいってごまかせないかな……」


「残念ですが……。捜索するための騎士様もテレスティア王女が手配いたしましたの無理かと」


 怒られることを覚悟したカインであった。



 ◇◇◇


 次の日、朝から普通に登校するとさっそくテレスとシルクの二人に捕まった。


「昨日捜索隊の騎士から聞きました。カインさま、どこに行ってたんですかっ! 本当に心配したんですよ」


「カインくん。学校休んでどこに行ってたのかな?とりあえずそこに正座しようか」


 二人から攻められた。テレスにおいてはどんだけ心配したかを説明され、途中で泣き始めてしまった。

 魔物の森で迷子になって、魔物の森の中にあった民家でお世話になったと説明した。


「魔物の森は見たことがないですが、強い魔物がいっぱいいるんですよね? そんなところに住んでいる人がいるなんて……」


 説明が済むと二人とも魔物の森に興味津々だ。いたのはテレスの先祖だったがさすがに言えなかった。


「家に飾ってあるレッドドラゴンも魔物の森で見つけたんだよ。その人も強くて少し修行をつけてもらっていたら、つい居座っちゃって」


「お父様は心配はしておりませんでしたが、戻ってきたらすぐに王城に来るようにと言ってましたわ「あいつめ次は何をやらかすつもりだ」とも言っておりました……」


「……学園終わったら帰りに王城に行きます……」


 がっくりと肩を落としたカインはその日憂鬱になりながら授業を受けた。




「このまま家に帰りたい……」


 もちろんそのまま帰れるわけがなかった。両隣にはテレスとシルクがいた。


「それではお父様のとこに行きましょう」


 テレスを迎えに来た馬車に乗り込み三人で王城へ向かった。


 もう常連化した応接に案内され、紅茶を飲む。このまま帰りたい気持ちを抑えつつ陛下が来るのをまった。

 少し時間を置き、陛下と宰相の二人が入ってきた。


「おっ。カイン、やっぱり無事だったか。心配はしておらんかったが、テレスが心配してオロオロしておったぞ。お主どこいってたんだ?」


「それがですね……。ゼノム様からの依頼である人に会ってました」


 創造神の名前を出したことに二人が驚いた。


 手紙をアイテムボックスから出して陛下に渡す。


「そのとある人から陛下に渡すように言われました……」


 陛下は受け取った手紙の封印をしている印を見て固まった。


「カイン、これはエスフォート王家の印だぞ。これを押したのは……」


 印を外し、中を読み始めた。

 読み始めると次第に陛下の顔色が変わった……。

 全て読んだあと、手紙を宰相に渡し読み始めたが同じく顔色が変わっていた。


「ま、まさかそんな……。カイン、お主、初代様と一緒にいたのか……しかも神となられているとは……」


「……はい、そのとおりです。初代様は別の世界を創造し、新しくその世界の創造神となっておられました」


 カインは肯定し頷く。

 そして手紙と一緒にもらった刀をテーブルに出した。


「これは……まさに、初代様が使われていたと言われてるカタナと言うものだな」


「はい、初代様からいただきました」


 そう言って、刀をアイテムボックスにしまった。


「初代様は、お主には使命があると書かれておる。それは言えることか?」


 陛下が聞いてきた。それに対しカインは首を横に振った。


「陛下、申し訳ありません、その使命については今は話せません。まだその時ではありませんし、確定もしてません」


 カインと陛下の視線が合わさる。その瞬間に陛下がフっと息を吐いた。



「初代様がお主に修行をつけたと書いてあった。どうなんじゃ?」


「それはもちろん、本当にきつかったですよ。五年間、昼夜問わず修行させられましたからね」



 カインは流れで正直に話してしまった。




「お主……。今、五年と言ったな?」




「あっ!!!!!!!」



「ちょっと詳しく聞こうか……」




 いつものとおり、ちょっと抜けているカインと、怪しい笑顔を見せる陛下であった。



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