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少佐!減速できません!助けてください!……え?ソビエト式でどうにかしろ!?

アメリカの有人宇宙開発が大きく遅れている一方で、近年ロシアはこれまで秘密とされてきたソユーズの最大の機密情報を公開して各国は驚かされた。


ソユーズといえば半世紀以上用いられている宇宙船である。

そのソユーズ、アポロ時代ではアメリカのプロパガンダにより「ソ連の宇宙船は耐熱処理も不十分で非常に危険」と宣伝されていた。


実際にソユーズの耐熱処理能力はアポロ宇宙船やスペースシャトルと比較するとそれほどよろしくない。

にも関わらず、ソユーズが大気圏突入にて失敗して燃え尽きたという事件が1つも無いことに誰も違和感を感じなかったのはアメリカのプロパガンダがいかに凄まじかったかを如実に表している。


ソ連から言わせると「なんでそんなに無駄に重くしてむちゃくちゃな大気圏突破の仕方をしているんだろう?」と当時から思っていたようだが、この情報は宇宙開発において宇宙船の重量を大幅に軽量化できる技術であったため、極最近まで伏せられていた。


筆者はこの公開された技術を初めて見た時、「どうして流体力学の権威達はこの盲点に気づかなかったんだ?」と思ったものなのだが、米国の最新有人宇宙飛行ロケットの開発にも大きな影響を及ぼしていることはあまり語られていない。


ではソユーズはどのようにして大気圏突入をしているか。

まず大気圏突入についてだが、米国がソレまで語り、一般常識化しているものだと、角度が浅いとはじき返され、角度が急だと燃え尽きて、その中間地点だと辛うじて突破できるということだった。


そしてもし仮に大量の燃料を積載して減速できれば、大気圏突入は怖いものではないが、そんな燃料など無いというのが米国の主張であった。


実はソ連は持ち前のモジュール式による補給によって大量の燃料を宇宙空間内で補給する技術を持っていて、それで減速を試みたことがあるが、これはさほど知られていない。


というか、その技術はISSでも使っている。

なぜならISSは地球の重力と大気の影響で高度が下がっていくのを定期的に加速させて上昇させねばならないのだが、その上昇はソ連側に付属したブースターによって行われている。

そのブースターの燃料は補給用の無人式ソユーズであるプログレスで補給できる。


実は、宇宙開発において様々な部分で真摯に技術開発していたのは米国ではなくソ連だったりする。

だからやろうと思えば大気圏突入にて大幅に減速させて行うというのも金と資材さえあれば可能で実際に試してみたが、従来ソ連が行ってきたソ連式で十分と結論を出しており、緊急時に使えるかどうかといった程度の評価であった。


ではソ連はどうやったかというと、角度を浅くし、大気圏内を何度もはじき返るような状態になることで減速する。


前回のトイレの件もそうであるが、我々日本人のように西側諸国に所属する人間は、米国の技術こそ正しいといった視点をもってしまいがちで、今日までの宇宙関係のアニメでも大気圏突入は大変な事のように描写されている。


実際大変ではあるのだが、耐熱性能が低いとされるソユーズの実態を見たらむしろ過剰装備でゴリ押しして非常に危険なことをやっている米国がおかしいと思うようになるぐらい「何で物理学者は誰も思いつかなかったんだ?」と思うような盲点であった。


ようはソユーズは何と川の水で石がポンポン跳ねるようにして大気圏突入をするわけだ。

米国は「ロケット推進でもないと減速できない!」とのことだったが、ソ連から言わせると「ブランだってこの方法で十分だったが」ということで、リフティングボディですら同様の手法による帰還が可能。(冷静に考えると飛行艇で同じように減速する方法があるのでどうして気づかなかったのか)


実はブラン計画というのは後述するようにブラン自体は割とどうでもいい代物だったのだが、どうもソ連は米国への対抗として「リフティングボディ」でも同様の方法によってもっと安全に大気圏突入ができることを実証したかった様子がある。(ブランはスペースシャトルと同じ地球と宇宙の往復機であるが、耐熱タイルの性能がそこまで高くないにも関わらず持ち前の軽量さと大気圏突入方法によってスペースシャトルとは異なり耐熱タイルに全くダメージを受けない状態で着陸しており、この方法がいかに安全なのかを証明している)


それはさておき、この大気圏突入方法、何が画期的かというと「はじき返す回数を増やせば自由自在にスピードコントロール可能」な点にあり、重量が重ければ重いほど回数を増やすことで対応できるのだ。


よって今回のサブタイトルのような状況になった際、3倍の少佐がもし流体力学と物理学に詳しく、さらにその3倍の少佐が所属する国がソビエト的な何かだった場合は……


「クラウン! 今すぐ加速して言うとおりの角度で飛行しろ!」といって対応できたかもしれない。


いや、少々間違っているな。

そもそも大気圏内において完全な人型のものを使うのは不利であるので、もっと丸っこい、丸まることが出来るような機体を重力圏で扱うのではないだろうか。


そして「さすがだ! 減速してる! 大気圏突入でもなんとも無いぜ!」とかいって突入していく気がする。(実は初期設定ではコイツはその国で始めて突入能力を持った機体になる予定だったが、きっとそれが本当に描写されていたならば現代になって主人公機よりもコチラの方が正しいと評価されたことだろう)


逆に地上に降りた3倍の少佐は、主人公の姿を見たら汗を垂らしながら。

「な、なんでそんなに危険な方法で突入していくのだ!? あいつら馬鹿なのか……」と、白い人型の機体が金にものを言わせてゴリ押しする姿を見て、資材と金の無駄遣いに寒気がしたのではないだろうか。



話を戻すが、実はソユーズには非常に重量の重いモデルも存在し、何度か試験飛行が行われたりしたのだが、これらも普通に大気圏突入能力は確保されている。


というか、重かろうが軽かろうが、推進力など無くとも角度調整だけでどうにかなるというのがここ最近になって突如としてロシアが公開したソ連の秘匿技術だった。


これは当時本当に衝撃をもって西側各国に伝わった。

何しろこれは宇宙船の重量制限を大幅に緩和できる存在だったからだ。


これまでの米国式の場合、重量と耐熱処理はイコールの存在だった。

重量が重くなる分耐熱処理を厳重に施さねばならないので限界点がある。

これは私が航空機に関する別の小説にて「1kg増加させることは10kg増加させるのと同じ」といった話に近いが、一応言うと宇宙を飛行する宇宙船の増大係数は戦闘機とは計算式は異なる。


これは地上では一定方向しかGがかからず、宇宙でもほぼ同様であるからだが、それはその計算式をさらに狂わす存在だったのだ。(耐熱処理能力を大幅に緩和できることにより、従来よりも軽量化が可能)


もしアポロ計画時にこの技術が外に漏れるとアポロ計画は5年は早まったと言われ、前回の話のような装備品不足による嘆きというのは緩和された可能性が高い。


理由としては指令船を小型化できることと、指令船の重量を4分の3に出来るからであるが、それぐらい凄い技術だったのだ。


アポロ11号の時、実はサターンVの出力は足りていなかった。

だから必要なものを極限にまで減らして飛ばしていた。

しかしサターンV自体はソ連をして「最も成功した超大型ロケット」と評価するように、後年になるとパワーアップすることでアポロ宇宙船に積載できるものが増えていったのだ。


最終的に当初の2割近くの出力まで上がったのだから、ソ連が評価するのも頷ける。

問題はこのサターンVの使い方にあったということをコロリョフは懐柔しているのだが、それはまた別の話にて解説するとして、ようはサターンVの足りない出力をアポロ宇宙船の軽量化にて補うことが可能だったからこそ、ソ連は近年までその技術を公開しなかったのだった。


ソユーズには米国や日本人を含めた者達が非常に多く搭乗しているにも関わらず、この突入方法は一切伏せられたまま現代まできたのだから凄いものである。


一応言うと、1970年代の宇宙関係の雑誌では「米国はソユーズの性能を低いと呼称し、安全性も考慮せず大気圏突入能力も低く危険な代物である」と一般的な宇宙関係のジャンルのもに書かれている一方、赤い関係の宇宙技術雑誌では「どうもソユーズは通常と異なる方法で大気圏突入をしているらしい」と、具体的な方法は書かずとも存在を示唆する資料には溢れていた。


ここまで書くと「ではどうして今なのか? デタントの時期やISSなどを作る際に公開しても良かったのではないか?」と思うのが普通であろうし、筆者もそう思っている。


ロシアがこういった技術を突如として公開しはじめた理由で今回の話は最後を締めくくりたい。


2000年代に入り、ロシアはこれまで培った技術をとある国に「実施許諾」として売却した。

「譲渡」ではない。


とある国はこれによって宇宙開発を一気に進め、宇宙ステーションらしきものまで作ってしまった。

これはいかにソ連の宇宙技術が合理的で安価でコストが低くかつ技術力が低くともそういったことが可能になるかを表しているが、問題はここから先にある。


そのとある国はなんとその宇宙船を自国の技術で改良したのだが、改良した技術を「世界各国で特許登録して商売をしはじめようとした」


どこの国か言わずとももうわかるであろう。

そして日本人ならば同じ真似をやられたのでロシアの気持ちも理解できるであろう。


とある国とは中華人民共和国である。


宇宙開発にかかる資金調達を行いたかったロシアは、あろうことか中国とこういった契約を結んでしまったのだった。

いや、実はこの時、米国にも販売を薦めたりしたのだが、米国はソユーズについて別段欲しいとは思っていなかった。(ISSによる共同開発である程度技術把握が出来ていたという側面もある)


中国は自国で多少改良を施したソユーズを作り上げて打ち上げ、そして成功すると、

「これは自国で全て作った」などとどこかで聞いた話をして世界各国で特許出願を行おうと画策しはじめる。


これにロシアは激怒し、「既知の技術」とするために一連の技術を公開してしまったのだった。

この一連の技術を分析するとインドあたりでも十分に有人宇宙飛行が可能なのが判明したのだが、何よりも私が思ったのは「JAXAはこれを見て有人宇宙飛行計画を考えないのだろうか?」ということである。


すでにそのための事前準備は整っているとはいえ、中国の暴走に激怒して公開した情報は米国の有人宇宙飛行計画にも大きな影響を及ぼすものが多数あり、米国の有人宇宙飛行計画を文字通り軌道修正するほどのものが平然と公開されていた。


この裏にはどうもロシアにとって「宇宙開発関係はもうこれ以上発展が見込めない」と考えている部分があり、後は金にものを言わせて後続の者達がどういった形で宇宙に問いかけていくのか静観したい姿勢があるようだが、ロシア自体の最近の宇宙開発はもっぱら「大気圏外超高速飛行往復機」といったスペースシャトルに近い存在ばかり考えており、かつて彼らが掲げていた壮大な計画はなぜか消えうせている点について疑問に思う部分がある。


ソ連が考えた壮大な計画と、その時に生まれた副産物については次回説明する。

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