エンターク竜王国
後アナンタ朝、アナンタ九世の弟であった、エスラターカという男が建設した国家である。
サモネウム戦争を経て、エンターク竜王国を立ち上げ、新王朝を立ち上げたエスラターカであったが、彼は竜帝国に配慮して王国を名乗った。
エスラターカと、その兄にあたるアナンタ九世との関係は、仲睦まじい兄弟愛によって結ばれた関係であったとも、憎しみあっていたとも言われる。
確かなことは、東部のいくつかの戦役において多大な活躍をしたエスラターカが、民衆と軍部両方の人気が絶大であったことである。
そんな状況であったので、信望厚く有能でもあったエスラターカにとっては、兄王を引きずり下ろして自分が皇帝の座につくことは、さほど難しいことではなかったであろうと思われる。
だが、エスラターカは自分に与えられた所領を返上する代わりに、軍団を一時貸してほしいと申し出た。
軍団を率いて当時のペニンスラ王国を攻伐し、自分で奪い取った国に己の国を建設するという、一種独特な野心を抱いていた。
アナンタ九世は、それを了承する。
ほぼ全軍に当たる兵を私人となったエスラターカに貸し与え、私戦に協力させた。
そうして、エンターク竜王国は誕生した。
だが、エンターク竜王国が成り立った地域は、もとはイイスス教圏であり、住民はもちろんイイスス教徒であった。
統治は難航したが、エスラターカを慕って多くの人々が植民に訪れ、地域は徐々にココルル教が浸透していった。