執筆の作法
これまで借りてきた*アイディアを元に頑張って習得した知恵を少しばかりご紹介します。
まず始めにお伝えしておきたいことは、多くの人は執筆と他の作業を混同して考えているということです。大抵の場合、調査、執筆、編集の3つの全く異なることをごちゃまぜにしています。もし執筆に悩んでいるのなら、それはこの3つのことを同時に行おうとしているからかもしれません。一気に3つのことは出来ません。諦めてください。一つづつ取り組みましょう。
このページのタイトルは、執筆の作法ですので、調査については一言も触れませんし、編集についてもほんの少ししか書きません。執筆するためにはどうしたら良いかだけをお伝えします。では、早速始めましょう。
必要なもの
- 道具がいくつか必要です。
- 工程を学ぶ必要があります。
- ルールを知る必要があります。
- 後は始めるだけです。
道具
時間20分を計るタイマーと執筆用の道具を準備します。その道具はパソコンでも、紙とペンでも、何でも構いません。
プロからのヒント:インターネットに接続できる環境は避けよう。
工程
道具を確保したら、この工程通りに進めましょう。
1. 20分間、中断されずに座って作業ができる場所を見つけます。
2. タイマーを20分後に鳴るよう設定します。
3. 書き始めます。タイマーが鳴るまで執筆作業を止めないでください。
以上です。
ルール
もしかしたら、気付かなかったかもしれませんが、工程の所で少しばかりズルをしました。ルールも紛れ込ませています。気付かなかった人のために書くと、ルールは「タイマーが鳴るまで執筆作業を止めないでください」です。初めの内は、難しいと思うかもしれません。書くことが尽きてしまったように感じたり、どうやって書き始めていいか分からないと思ったりするかもしれません。けれど、それは問題ではありません。そういう時は「書くことがない」と書けば良いのです。他の何かが書きたくなるほど飽きるまで同じことを何回でも書き続けてください。そのうち、「何を書いて良いか分からない」と書くかもしれません。そうならば、それをしばらく書き続けてください。そのうち自分に対して「そういえば、ポスト・リーンスタートアップ時代に到達した、というブログ記事を書こうと思っていたんだ」と自分の内なる声が言い出すかもしれません。そうしたら、「私たちが現在ポスト・リーンスタートアップ時代にいる理由について説明します」と書き出します。
その記事がどこに向かっているか分かる場合は、その調子です。もしそうでない場合も続けましょう。どういうことかと言うと、手が動いている限り、脳は最終的に記事のトピックに対して考え始め、気付かない内に次々とページを言葉で埋めて尽くしてしまうということです。
「タイマーが鳴るまで執筆作業を止めないでください」は、その言葉通りの意味です。書いたものを遡って直したりしないでください。誤字脱字があってもです。(それは編集で、執筆ではありません。)ネットで引用したい文言も探しに行かないでください。(それは調査で、執筆ではありません。)そのような場合は、「アインシュタインが、あの名前を思い出せない例の人に言った言葉をここに入れる予定で、後で探す」とでも書いておきます。そして先に進みます。なぜなら、今は執筆中だからです。調査と編集は後です。
ルールの真の意図
これをこの記事に含めるとは言っていませんでしたが、重要なことなのでおまけで入れておきます。ルールに従うことができれば、執筆は達成できます。執筆を達成するということは、ページやテキストファイルを言葉で埋めるということです。執筆を達成することと良い執筆は同じことではありません。良い執筆のためには文章に戻って他の作業を行う必要があります。そう、編集です。
編集について一言だけ
編集について、多くは語らないと言いました。ただ、これだけはお伝えします。編集中は、自分のことを容赦のないサムライだと思ってください。文章に良質で純粋な価値のある言葉だけが残るように他は切り落とすのです。でも執筆中は、サムライではありません。執筆中は滝になったようなものと考え、言葉を止めどなく巡らすのが仕事です。良い言葉が、他の腐って醜く汚染されたものと滝壺の中で混ざってしまったとしても、続けることです。覚えておいてほしいのは、執筆と編集は同時にできないということ、ただ一点のみです。なぜかって?同時にサムライと滝にはなれないでしょう。そんなの意味不明です。まず執筆、次に編集。それを繰り返してください。
まとめ。執筆の作法はこの通りです。
1. 20分間、中断されずに座って作業ができる場所を見つけます。
2. タイマーを20分に設定します。
3. 書き始めます。タイマーが鳴るまで執筆作業を止めないでください。
では、早速始めてみてください。
後記:先生に敬意を表して
この考え方は、私がHunter Collegeで執筆について初めて教わった、 Suzanne McConnell先生から学びました。制限時間内での執筆練習の授業は私にとって気付きのあるものでした。彼女は私の作品を覚えていないでしょうが、彼女の授業は私の人生に多大な影響を与えました。また、その授業で読んだNatalie Goldbergさんの「Writing Down The Bones」にその方法の詳細が記載されていたと思います。厚かましくも、彼女から「編集はサムライ」の比喩を借りました。彼女たちに大変感謝しています。